2024/10/08 のログ
ご案内:「Free4 第二方舟」に挟道 明臣さんが現れました。
挟道 明臣 > 【9/25 9:58】【■■■:000%】【■■■:】【応接室~】

『――――未だ――は我々に――超常の――えます』

所持品確認の最中、僅かに聞こえる演説の端切れを耳にぼんやりと天を仰いでいた。
……なんでこんな所来てんだ。
乗せられた、というべきか。

『お願いできないかなあ、あきおみくん』

普段と変わらぬ穏やかな物腰と声音で、『408研究室』室長はそう言った。
第二方舟なる施設の募集要項を突き付けられたのは数日前。
メディカルチェックも終え、研究所の試薬も調整中という期間の事。
本人に何処までの意図があるのかは読めないが、仕事が無いなら行ってこい、
と聞こえるタイミングでのそれは、半ばタダ飯食らいになってる自分には良く効いた。
敵情視察という程の物々しい話ではなさそうだが、気になるから洗ってこいと言った所。
早々に切り上げて帰参したとしても、お誘いには乗ってきましたと言える程度の成果があれば何も言われまい。
室長命令ともなると不本意でも従う他無い。
決して同僚からおあつらえ向きじゃんノア博士! などと煽られたからではない。
断じて無い。乗せられてなんか、ないのだ。

気の抜けるような電子音と共に右手にリストバンドが装着され、余計な思考を切り上げる。
痛みは無い。恐らく妙な薬剤なりを注射する為の機構なんかは無いのだろう。
純粋な計測器。
適当に類似品の操作に倣って幾らか触ってみたが、こちらからどうこうできるものでは無いのか液晶には000%の表記が映るのみ。

『中へどうぞ、暫くこちらでお待ちください』

マニュアル通りの案内に従い、開け放たれたままの鉄扉の奥へと歩を進める。
怖いくらい清潔に保たれた施設の床、響く足音。
それらにただ、溜息が出る。
死と隣り合わせのリノリウムの質感、そんな物をどこかで連想したせいかもしれない。

挟道 明臣 > 【9/25 9:59】【■■■:000%】【■■■:】【応接室~】


開け放たれていた扉を通された頃には、職員によるありがたい話はいよいよもって熱を帯びていた。
殆ど聴き損ねたが、後からどうとでも聞き直せるような前説の類である事を祈るほかない。

(しかし━━出遅れたな)

訳アリ過ぎてチェックに他人よりも遥かに時間がかかったせいか、随分と前に人の列ができていた。
丁度目の前にいる頭一つほど背の高いグループが壁になって碌に見れる物も無い。
背伸びでもすれば顔見知りくらいは見つかるかも知れないが、こんな施設ではそんな人には出会わない方が良いだろう。

『━━そのために払われる対価と倫理をどこまで認めるかを』

その先の言葉と、背後で電子ロックの鉄扉が閉まる音が重なった。
振り返れば先ほど自分が通ったばかりのソレは堅く閉ざされて、近づこうとも触れようとも開こうとする素振りを見せない。

「マジか」

扉が開かない、という情報が少しのラグを伴って伝播していく。
随分と長く説法を聞かされて嫌気が差していたのか、前の方から染めて時間の経った茶髪混じりの少年が鼻息荒く歩み来る。
静止する間も無く乱暴にドアを叩く。何度も繰り返し、果てには蹴るが━━結果は変わらない。
ただその暴力的な振る舞いが、沈黙を保ったこの状況の恐ろしさをより際立たせていた。

人の列が、崩れて乱れて動き出す。
動揺と困惑、それぞれが状況を理解できずに浮足立った瞬間に、それは鳴り響いた。

挟道 明臣 > 【9/25 10:00】【適合値:002%】【浸食値:1】【応接室~】

『────────────』

誰が手に取ったのか、施設内通信用の内線からスピーカーで響いたそれは言語化不可能(理解不能)な異音。
ノイズやハウリングといったただただ不快な音というでも無く、
かといって知らない言語を聴いた時の不明さでも無く。
いっそ聴覚を通じて知覚したという事以外では、それを音として認識すらしていない。
否、できない
ただ───

(何っだ……これ、頭が……)

自分という器に妙な物が捻じ込まれて、攪拌されるように。
混じって蝕まれていく感覚に、思い至る。
さっきの異音はあの時と同じ、触れて(聴いて)はいけない物だった。
ふらついて手を地についた拍子に手元が視界に映り、リストバンドの表示が僅かに変わった事を知る。
用意されていた物が正常に作動しているという事は、何処から何処までが想定通りなのか。
嫌な予感がその通りに働いた事への溜息を吐く間も無く、けたたましい警報が聞こえる。
シャッターの降りる音が連続して聞こえ、次いで人の群れを挟んだ前方で悲痛な叫びにも似た何かが聞こえた。
数秒後にはその何倍もの声量の悲鳴の合唱へと変貌したが、向かってみれば原因は一目瞭然だった。

人に囲まれるようにして、それでいて避けられるようにぽっかりと開いた空間には黒い水。
研究員の物らしい衣服の跡だけがその上に乱雑に散らされていた。

(……いや、これは)

水の散り方、残された衣服の向き。足跡のように引き摺ったような跡。
となると内側から弾けたのか?
肉体を構成していたのか? コレが?
疑問は尽きないが、付近に居たらしい生徒に話を聴く限りは大きく認識はズレていないだろう。

リストバンドは職員達も着けていたはずだが、持ち去られたのかそこには見当たらず。

「……帰りてぇ」

ほら見ろろくでもない事になったぞ室長。
壁に穴でもブチ開けて脱出と行きたい所だが、実践したであろう少年少女がそれを実践して倒れていた。
どうやら無意味らしい。
いや、即座に異能や魔術を駆使して状況を打破しようと思える人間が、あぁも無様に転がるか?
否、制御に失敗している。

「ひとまず外部への連絡か、もしくは出口が開くならそんでも良いんだが……」

開かねぇだろうな、あれ。

「さーって、どうすっかな……」

_ > 【ROLL!】 [1d6→1=1]