2024/10/20 のログ
■武知一実 >
「言ったが……確かに言ったが……
だからっていつでも飛ばせるぜ、みたいな心持で居るんじゃねえよ」
そういうのって大抵オレが居合わせない場所で飛ばすからな。
ひとまず今はその心配は無さそうだからいちいち気にしねえことにはするが。
「後悔はしてねえよ。ただ、もうちょっとマシな知り合い方もあったかもしれねえって思っただけだ」
思ったけど、熟考の末まだあの時のがマシだったかもという結論に落ち着いた。いや、落着きたか無かったけどな。
だからそんな顔すんな、とオレはリリィの頭に掌を乗せる。ぽすぽす。
「んまあ、悪い事でもねえし。そういう淫魔も居るってだけの話だもんな、他の淫魔は話でしか聞いたことねえけどさ」
淫魔にも色々居るんだなあ、て納得出来てしまう。
とはいえリリィが淫魔じゃなかったら、と考えるとそれはそれで心配になるから不思議だ。
「まあ、そんなとこだな。
……無感動、とまではいかねえが、実験体生活の間に感受性が死んでんじゃねえかっていう不安はある。
このままで居ても困ることは無いんだが、オレだって他の奴らみたく年相応なバカな話も、出来るんならしてみてえんだよ」
別に猥談出来なかったら男子高校生じゃない、みたいな認識で居るわけじゃねえことは補足しとく。
■リリィ >
きらーん。
振られた気がしたので、手を解いてサムズアップからの、親指で自分を指す恰好。
自分、いつでもボタン飛ばせます!のポーズ。
は、さておいて。
「ああー……や、でも初対面では倒れてなかったですし、わりといい出会いだったとわたしは思いますよ。服も着てましたし。」
シーツ一枚で道端に落っこちてた最初期を思い出す。
それを思えばブランコにハマってたくらいどうってことない気がした。
頭をぽすぽすされて不安な色は何処ぞへと。
瞳を細くして人のぬくみに感じ入る一幕。
逆に少年の掌が知るのは、ポンコツ淫魔の髪の柔らかさと――角のごつごつとした感触が指先に掠めることもあるだろうか。
「他の淫魔!ぜひお話を伺ってみたいものです。学園に通えば会えるでしょうか?」
ぱっと喜色を瞳に宿して半年ばかりの先輩を見つめる。
とはいえ、少年が言うには淫魔と認識しているのはポンコツだけらしいから、早々出会えるものでもないのかもしらんが。
兎角、認識の擦り合わせは完了した。
「しましょうよ、バカな話。」
少年の手は――未だ頭の上にあるのだろうか。
否、何処にあろうとも関係なしに、その手へ白い指を這わせて捉えたい。
叶えばそれを引き寄せて、指先を軽く撫でる心算。
「知ってますか?普段何気なく使っているからあまり意識はしないでしょうが、指っていっぱい神経が集まってるんですって。
指先で何かに触れたり……動かしたりすることでも、脳の働きを活性化させるんだそうです。」
■武知一実 >
分かってんのか、この淫魔ホントに分かってんのか。
分かっててやってるなら、さすが淫魔だと認めざるを得ないが、絶対分かってねえだろコイツ。
飛んだボタンを直すのに、服脱いでもらう必要があんだぞ。
「ああ、そうだな。良い出会いだった……と、思う。思うことにする」
普通は服を着てたかどうかは判断の材料にならねえんだ。
一体あの看護士姿に落ち着く前に何があったのか。気になるような、怖いから気にしない方が良いような……。
それはそれとして、初めてリリィの頭に触れた気がするが、ホント外見だけはちゃんとしてるんだよなあ。髪も普通の女子と変わらねえし。
角も……こうして手の間近に感じると、本物だという威圧感もある。
「オレは会ったこと無いけどな。同類を感知して向こうから声掛けてきてくれたりすんじゃねえのか」
オレに訊かれても困るが、淫魔の生徒の一人や二人、居てもおかしくは無い。
居ればそのうち会う事もあるんじゃねえか、と希望的観測は口にしておく。
と、これまでの対話でリリィの中では何かが腑に落ちたらしい。
「―――まあ、過度に期待はしやしねえが」
猥談でなくとも他の生徒とは育った環境が違い過ぎる。
その辺の感覚のズレは、直したくないと言えば嘘になっちまうな。
そんな事を考えていたら、リリィがオレの手を取った。
思えば手と手同士で触れ合ったのは初めて……か?
「急に何の話だよ?
……まあ、実験体時代にそんな話を聞いた気もするな、その一環で料理やら裁縫やらも出来るようにはしたんだが」
知ってはいるが、どうしてそんな話をするのかが、いまいち繋がらねえ。
そんなに不器用そうに見える手だったか……?
■リリィ >
性欲の単語すら口にできずに誤魔化したこのポンコツ淫魔――わかっていると、お思いで? キラーン。
キメ顔キメポーズがとっても間抜けだね、せやね。
良い出会いだったということで納得してもらうことにして。
緩くウェーブする髪はセットではなく生来のものらしい。病院でシャワーを借りているのでにおう……なんてこともない。
頭部の丸み。角だけは異質だろうか。触れても特段反応はない。神経は通っていないのだろうか。
「むむ!感知……なるほど、わたしも感知がんばってみます!」
どうやればいいのかさっぱりわからないが、希望で胸を膨らませておくことにする。
元々過剰な膨らみがあるので変化はすまい。
そんなことよりも、何処か諦めの見える物言いに、むっと唇が曲がる。
何かを確かめるように――或いは確かめさせるように、暫く撫で擦る動作。
「思うに、かずみん様には蓄積が足りないんだと思うんです。経験とか、実感とか、そういったものが。
だから、色んなものを見て、触れて、感じて、覚えていけば――自然とわかるようになるんじゃないかなって。」
撫でる動作を止めて掌を合わせてみると、その違いがよく分かる。
色も、掌の大きさも、指の細さも。肌の質感なんかも違うかも。ポンコツ淫魔の手は苦労を知らない滑らかな其れだ。
次いで少年の手を引き寄せて頬へ添わすように。
「わたし、ほっぺたの柔らかさには結構自信があるんですよ。他の人と比べたことはないですが。
でも、頬の柔らかさと唇の柔らかさの違いは……こうすればわかりますよね。」
すりと頬で掌に懐いた後で、そのまま軽く口付けるみたくする。
頬はもちっとした感触。唇はふにっとした感触。
「あとはそうですね……首とかどうです?」
輪郭に添わすように下へ招く。少女のようにほっそりとした白い首。当然喉仏なんかの凹凸も少年に比べると少ない。
もう少しだけ下に寄せて、心臓の位置……は、流石に少しはずかしいので少し上めで止めといた。
それでも多少なりと柔らかさを知るだろうか。それよりも脈打つ鼓動を知らしめたい気持ち。
「こうすると、少し緊張してるのがバレちゃいますかね。」
苦笑い。
言葉通り、平時よりも少しだけ鼓動が速い。
「わたしが教えてあげられるのはわたしのことばかりですけど、それ以外でも力になります。
だから期待してください。がんばりますから。
……ね?」
■武知一実 >
間の抜けたキメ顔を尚も続けているリリィ。
え、これ一度理解させる必要があるのか……?
まあ、放っとけばそのうち自然と理解させられてる気がするが、コイツの場合。
髪はまあ、人間と遜色ない物である事が分かったとして。
そうなると今度はやっぱり角が気になってくる。明確な意思を持って指先でそっと触れれば、感じるのは当然の様に人体とは異なる感触。
……ちょっと面白いかも、どう生えてんだこれ。頭蓋?頭皮?それとも髪が変質したもんなんだろうか。
「うん、向こうから気付いて貰えるように頑張った方が良い」
絶対コイツの場合ロクでもない物を感知する気がするんだよなあ……
そしてオレを引っ張って行きそうな気がするんだよなあ……
……まあ、良いか。
オレの手を弄りながら、何やら不服そうに口元を歪めるリリィ。
何が気に食わなかったのか分からねえが、何かが気に食わなかったんだろう。
「蓄積?……まあ、そりゃ、そうなんだが。
自然と分かる様にねえ――」
本当になんのか、と疑問を抱かないわけでもなかったが、なるほどリリィの言うことも一理ある気がする。
実際学園に転入してからは実感を埋めていく事が多かったし、コイツとの吸精の時だってそうだった。
滑らかな手の感触を半ば強引に覚えさせられながら、妙に納得する。
が、手がリリィの頬へと誘導されて新たな感触を手で感じれば少し面食らう。
いやいやいや、別に今知らなくとも問題無くねえか?
「っ……リリィ?確かにアンタの頬は柔らけえが……ッ」
もちもちしている。オレの頬とはだいぶ違う。
直後に唇が触れ、自分でも分かるほど手が強張った。いや、顔も強張ってるに違いない。
「首?……てか、アンタさっきから何を……」
首筋を辿る様に撫で(させられ)てゆき、リリィの手触りを刻み込ませられる。
男子とは違うほっそりとした首に、滑らかな肌。どうしてオレは今こんなふうにリリィに触れているのだろう、という困惑が隠し切れなくなってくる。
「お、おい、リリィ……何の意味が――」
さらに下へと誘導された手が、リリィの着る制服のネクタイの結び目の真下辺りで止まった。
さすがにそれ以上進めば色々と引き返せなくなりそうで、オレも止めに入ったことだろう。
それでも隆起の始まりで、十分な柔らかさと―――リリィの鼓動が速まってるのが伝わってくる。釣られてオレまでドキドキしてきやがったじゃねえか。
「緊張って……いきなり仕掛けて来て何言ってんだ。
ったく、オレまで緊張すんじゃねえか……」
いや、コイツなりに色々考えがあってのことだとは思うが。
「あ、あのな……アンタが頑張ることなんて、そんなに無ェんだって。
気にせず腹を満たしてくれりゃあ良いんだ、それだけで十分―――ったくもう。
……じゃあまずは、リリィを知るとこから、だな」
何の期待をせえっちゅーんだ。
けどまあ、オレなんかの為に頑張ると言ったコイツの気持ちは、無碍には出来ねえわな……
■リリィ >
勝手に理解る系ポンコツ淫魔の角は、髪を掻き分けて覗けば内側から生えているのが分かるかどうか。
温かくもなく、冷たくもない。触り心地的には骨に近しいものを感じるかどうかといった具合。
細かな凹凸があってゴワゴワザワザラしているそうな。
「気付いてもらえるように……名札でもつけておくとかでしょうか?」
赤いチューリップ型の名札に、いんまリリィって書いてつけとくけばいいのだろうか。
感知もくそもない。
「そもそもそういうお話でしたしね。」
実感を求めているのは先日聞いていたことだ。
何処かちぐはぐだと感じていた理由も知ったし、ならばと早速少年にはない女子の柔らかさをその手に教えている真っ最中。まあ、正確にはこのポンコツに性別なんてものはあってないようなものなのだけれど。今は一応女の形をとっているし。
「ふっふっふ。そうでしょうそうでしょう。しかもよく伸びるんですよ。あんまりすると痛いからイヤですけど。」
もちーんて伸びるらしい。その時はきっと間抜けな顔をするに違いない。
「だって、グラビアアイドルじゃふーんってなるんでしょう?それって女の子の柔らかさを知らないからだと思ったんです。
こうして実際の感触を覚えれば、ご友人とそういう話になったときに違った感想を抱けるかもしれないじゃないですか。」
見て、触れて、感じて、知ってもらおうとしただけだ。
恥ずかしさはあるけれど、さんざお世話になってるんだから多少身体を張るくらいなんてことない。
「そうやって自分でなんとかしようとするの、偉いとは思うけど、ずるいですよ。
かずみん様はわたしのことを助けてくれるじゃないですか。わたしがかずみん様を助けようとするのはいけないことですか?」
バカな話をしたいというのに、期待はしない、っていうのがなんとなし気に食わなかったっていう、ある意味ではポンコツ淫魔の意地みたいなものもある。
幸いにして、触れた手から強張りと緊張を知れば、身体を張った甲斐もあるってもの。
「まあ、それはそれとして吸わせていただきますけどね!
ギブアンドテイクです。その方がわたしも遠慮なく頂けるので、諦めてください。」
ふんす。
■武知一実 >
角ってこうなってんだ……気が付けば無心でリリィの角に触れていた。
けれど反応が無いところを見ると、神経は通っていないんだろうか。
それとも痩せ我慢……してたら分かるよな、さすがに。
ともあれ十分調べたので、そっと角からは指を引くが。
「背中に名前でもデカデカと書いておけば良いんじゃねえのか」
そこは百合じゃないんかい、というツッコミが無性にしたくなったが、グッとこらえる。
遠目にわかる様にするんだから名札よりはゼッケンとか、そういうのにした方が良さそうだ。
背中の理由?正面だと字が歪みそうだから。
「ああ、憶えてたんだな」
知識としては知っていても、実感は無い。何せ殆ど真っ当に人間と接触する機会すら無かったんだ。
かと言って今こうしてるのも、段階をいくつかすっ飛ばしてる気がしないでもないんだが……?
「なるほどな、次何かやらかした時にどれだけ伸びるか試してみよう」
それはいい事を聞いた。さぞ伸びる事だろう。泣くまで伸ばすぞ。
「それは、そうかもしれねえけども……!
でもこれじゃ、違う感想を抱くというか……都度アンタの事を思い出すようになるだけなんじゃ……?」
並のグラドルじゃ比にならんような体躯をしている自覚は無いのかコイツは。
まず見るところからじゃないのか、どうしたいんだ、リリィの事が頭から離れない様にしてえのか……?
「オレの事なんだから、オレが何とかすんのが道理ってもんだろ。
……ッ、リリィの癖に痛いところ突いてくるな……
けどそれはオレがそうしたいからしてる事で、別にデメリットを押してまでやってるわけじゃねえぞ。
緊張するとか、恥ずかしいとか、そこまで身体を張ってまですんなよ……」
まったく、リリィの癖に……。
と言えるほどリリィの事をよく知ったわけじゃないから、完全に負け惜しみみたいなもんだ。
それとも、これから知っていけば堂々と言えるようになるだろうか。
「……そういうところはさすがと言うか何と言うか……
自分で恥ずかしい思いをしておいて、その代償に精気を貰います、ってひっでえマッチポンプじゃねえか」
まあ、こっちは最初からそのつもりだから構いやしねえが……ったく。
■リリィ >
「背中に名前……なるほどッ!」
立てた人差し指を二本、それだ!みたいに向ける。それなのか?
背中にデカデカと「淫魔リリィ」のゼッケンつけて校内を練り歩く人物に、果たして誰が声をかけてくれるというのか。――まて、次週!
「褒めてもいいですよ。」
勿論だとばかりに大きく頷く。ドヤ。
よく笑う頬がどのくらい伸びるのか。それを少年が知る日はくるのだろうか。すぐきそう。
「暴力反対~!」
なのでぶーぶー言いながら平和を掲げておく。ラブ&ピース。世界よ平和であれ。
「えっ……え、そうなんですか? いい考えだと思ったんですが……?」
あれおかしいな、って感じで首を捻りながら胸元から手を退ける。
機会があれば他の人を触って色んな感触を覚えてもらって……なんとか……こう……ならないだろうか。
先も告げたが、ポンコツ淫魔が教えてあげられるのは自身のことばかりなので。
「精気吸われるのはデメリットでしょう。
わたしがうっかり吸い過ぎたら死んじゃう……まではないにしろ、憔悴して数日寝込むくらいはあり得る話なんですから。」
死んじゃうことだって、全くないとは言えない。やろうと思えばそうすることだって出来る。やらないけども。
加減が下手なポンコツであるのは既に少年も知るところだろうに。
「は、恥ずかしいのは、今回はしょうがないっていうか……普段からそんなことばっかりする気もないですよ!
……必要ならまあ、多少は考えますけども。
なんにせよ、買い物の時の話だとわたしに利があり過ぎるんですもん。」
ノーリスクでリターンばかりもらうのは気が引けた。
あとなんかこう、見た目は兎も角、年端も行かない少年が色々諦めてたりなんだりっていうのは嫌だっていう我侭もある。
――三つか四つの頃と言っていたか。両親は死んじゃいないだろうが、身寄りはないと断言していたのも記憶にある。
先程聞いたことも併せて思い出せば出す程に口は曲がるし眉間に皺が寄っていく。
「ハードめな人生だと言ってましたが、あんまりにもあんまりですよ。
いっぱい楽しいことはあるんですから、知るべきだし、楽しむべきです。そうじゃないと、……。」
眉間に皺ッ。
■武知一実 >
なるほどされた。
まあリリィが実行するにせよしないにせよ、同種はすぐに見つかると思うが……
案外、学園内では淫魔であることを伏せているって場合もあるのかもしれない。コイツも伏せさせておいた方が良い……あ、角と尻尾で分かるわ。
「そうやって調子に乗らなきゃ褒めてやったんだがな……」
華麗に墓穴を掘って自分から飛び込んでいく奴だなホント……まあ、頭くらいはまた撫でてやるか。
ついでにぶーぶー文句たれるのは聞こえないフリ。
「リリィを知るって点に限れば良い考えだとは思うが。
そもそもそんな方法でヨシってなるのはアンタくらいなもんじゃねえか……」
ちょっとでも納得したオレがバカでした!!!
やっぱり、リリィはリリィだった。もしかすると空腹が進んで来てるのかもしれない。
手を退けられて、オレは安堵の息を吐いた。まだ少し鼓動が落ち着かない気がする。
「オレの場合、その分の対価はあるわけだしな……
別にリリィがそこまでする奴には思えねえし、こないだ程度で済むなら割と日常でもあるし……言うほどデメリットじゃねえよ?」
喧嘩した後の怠さと然程変わりは無い気がする。
……と言ったところで納得はして貰えない気がするし、これはいっそのこと吸精されること自体がメリットだ、と言えるようになれば……なれるか……難しいな……
「ふぅん……なら良いけどよ。
別にアンタに利があり過ぎても、オレに損がねえなら良いんじゃねえか?
……まあ、良しとしなかったから今回こうしてるんだろうけどな」
変に気を使うんだから、よくわからん奴だ。腹減って飯屋に行って、店の在庫気にするみてえな事してるんだもんな。
普段は高確率で抜けてるのに、こういう時ばっかり頭使ったり気を回したりするんだから……もうちょっとリソース配分考えろと言いたい。
今もほら、何か余計に考えてる顔になってる……
「はぁ、やっぱり。だったら、これからアンタが教えてくれりゃ良いんじゃねえか?
そんなに短い付き合いになるわけでもねぇんだから」
オレの事を考えて眉間に皺なんざ作るんじゃねえよ。
ちょっと納得がいかなかったのと、手を退かされた事への名残惜しさが混じって、オレはリリィの胸を指で突いてみることにした。
■リリィ >
「! のってません!」
慌てて背筋を伸ばしてキリリと表情を引き締める。
今後の褒められ待ち顔はこれになるのだろう。忘れなければ。
あからさまに聞こえないフリするのに牛みたいに鳴いたとか。
「ど、どうしてですか?女の子ですよ?いちおう……。」
一応。
本気でこれで青少年のバカ話ひとつ、乗っかる取っ掛かりくらいにはなれると思っていた様子。
安堵の息を溜息と勘違いしては狼狽える。
「わかんないじゃないですか~!極悪非道の淫魔かもしれませんよ!油断させてガブッと行くタイプの!」
いや行かないけど、行かないけども。
現状、淫魔=ポンコツリリィの図式が成り立っているらしいから、危機感をどうにかして植え付けたいところ。
これは一度理解させるべきなのかもしれない。
「ンモ~!モ~!」
損ならあると語ってもわからないらしいので、やはりわからせは必須か。
牛みたいに鳴いてもどかしげに踵を上げ下げする。ついでに尻尾もびっちびちと跳ねている。
「! そうですね、教えて差し上げましょう!
近いとこだと、ハロウィンでしょうか?お祭りもいいです……ね!?」
手を合わせてはしゃいでいたら、突かれた。胸を。Why?
胸のどの辺りを突いたかはわからんけども膨らんでるところは指先が沈むくらいにやわらかい。
一瞬キョトンとして、直後顔を真っ赤にしたら、思わずと言った風に仰け反った。
「な、な、なななに、なにを……っせ、セクハラですか!?急ですね!?
あっ、わ、わたしが触って知れとか言ったからですか!?ならば仕方ない……んでしょうか!?」
混乱してる。
■武知一実 >
「………。
まったく、ちゃんと覚えてて偉いぞーリリィー」
自分でも驚くくらいの棒読みが出た。
ついでに褒められ待ちしてる頭をわっしゃわっしゃ撫でてやる。よーしよしよしよし。
ブーブー鳴くのかモーモー鳴くのかどっちかにしなさい、と言うまでもなくモーモーになってたな。
「その“一応”でそじょそこらのグラドル顔負けのスタイルを覚えさせるのが問題なわけだ。
あと普通の女子は自分の顔や体をそう簡単に触れさせようとしねえ」
この認識のズレはリリィが淫魔だからなのか、それともリリィだからなのかが分からない。
いや、正直分からなくていい。出来れば考えたくない。
「だったらもうとっくにしてるだろ、二度目の吸精の時とか、オレ意識はっきりしてなかったし?」
というかそんなに淫魔が危険だったら、既に対策を取られている気がするが。
それが無いってことは、実害は出てないんじゃねえかなあ……。
「どうどう、落ち着けって。そのあたりはもうちょっとオレも考えてみるから」
妙にモーモー言ってるのがしっくり来るのが謎だ。※乳のせい
ひとまず落ち着かせよう、淫牛とか字面がヤバイ。
「物心ついてからずっと研究施設に居たからな、季節のイベント、軒並み初めてなんだ。
よろしく頼む……は、良いとして」
オレは一突きで沈んだ指先をまじまじと見る。
何だ今の、すっげえ柔らけぇ。……なるほどな、なるほど。
そして凄い勢いで赤くなったリリィを見る。いや、だから仰け反るなって……!
普通こう、抱え込むみたいに隠すもんじゃねえのか?
「いやまあ、アンタが要らん事考えて眉間に皺作ってたからよ。
そんな考えどっかやっちまうにはどうすれば良いかなーって……思って」
思った以上に効果的だったらしい。よし、もうやらん。
■リリィ >
「むっ。もうちょっと感情込めてください。」
お手本のような棒読みに不満を漏らしつつも、撫でられると満更ではなさげ。割かしチョロいポンコツ淫魔である。
豚なのか牛なのか犬なのかハムなのか。
「そっ……それは、だって、わたしがこうなんだから仕方ないじゃないですか!
触らせてくれないからインプットが出来ない、インプット出来ないから分からない……なら、触らせるしかないでしょう?」
唇を突き出してはもごもごと。
危機感の差にしろ、吸精の対価としての意識の差にしろ、結構な深さの溝が横たわってる感じだ。
「わああ!その説は大変申し訳ございませんでした~!
いやでも、あの、あれだって自分の中では結構すぐに理性を取り戻した方だと思ってましてぇ……。」
もごもごしてたのがごにょごにょし出す。
ちまちまちまっとこの時点では背中が丸く小さくなってたんだけれども。
落ち着けと言われたから背も伸ばして尻尾も大人しくさせる。
不承不承と言った風ではあるものの、考えてもらえるならば今はそれで納得しておくことにした。
「じ、じゃあ、どっちもですねっ!
…………そのリアクション込みでものすごく恥ずかしいんで、やめて頂いてもいいですか~!?」
指から逃れようとしてした結果、余計強調するような体勢になったってオチ。
真っ赤な顔で主張しながらいそいそと姿勢を戻……否、ちょっと警戒するみたいに背中を丸めて腕を寄せるが、それはそれで逆に強調されてしまうのでもうどうしたらいいかわからんね。
「だからって、やることが極端すぎますよ!
これはもうあとでたっぷりと吸わせて頂かなくてはなりません。この後出かける体力なくなるくらいは覚悟してくださいねっ!」
ごほんと咳払いで無理矢理羞恥を余所へ逃がすとして。
「……ちょっとくらいはバカ話できそうだなって気になりました?」
せめて触られ損になってないことを祈って訊ねる。
■武知一実 >
ちょっとだけコイツの扱い方についての理解が深まった気がする。
飴貰えるって聞いて知らないおじさんについて行かないか心配だ。
「何だかひどく極端な話に聞こえるけどよ……
やっぱり知らないから関心が向かないってのは……いや、そうな気もするけど、だからと言って……」
やっぱり段階を飛ばし過ぎでは?と首を傾げざるを得ない。
けれどまあ、首を傾げたところで他に何か方法が、と思い付くわけでもないから困るんだけどよ。
「それでも一時的には理性失ってた訳だろ?
けどオレは無事だし、自分でも知らんうちにちゃんと加減してたんだよ」
だから吸精に関してはオレはそれなりな信頼をコイツに置くことにしたのだ。
理性を失いかけても、ちゃんと戻って来るってのが分かったから。
「ああ、よろしく頼んだぜリリィ。
リアクション込みで……? ああ、悪い。つか、こういう場合どんなリアクションが正しいんだろうな……」
ふーむ、と少し考えてしまう。 柔らかかったし、少しドキドキしたのも事実だ。
思った以上にリリィの反応がでかくて、オレの方はすぐに落ち着いてしまったけども。
ひとまず手を下ろしてリリィを見れば、しっくり来る体勢を探していた。ええと、なんか……すまん。
「悪かったと思ってるよ、もうやらねぇから。
……帰って来た時からそのつもりだったんだが、ああ、でもアンタを途中まで送ってくくらいの余力は残しといてもらえると」
夜道は危険だからな、せめてリリィが今住んでいる辺りまでは送って行きたい。
「ん?……ああ、まあ……努力はしてみる」
正直、今のところリリィがあちこち柔らかい、という事しか実感が無い。
けど正直にそう言ったら、また口を尖らせそうな気がするしな……。
■リリィ >
少年の中でポンコツ淫魔が淫魔からかけ離れつつある――最初からか??――とも知らず、呑気な顔をしていたそうだ。
「極端でしょうか。当たり前のことだと思ったんですけど。
そもそも知らなければ関心なんて持ちようがないでしょう。」
段階を踏んだとて、いずれ触らせるなら一緒じゃない?……という思考回路が極端なのだろうか。
首を捻っているのを見るに、自分では割とマトモだと思っていそう。ポンコツだけど。
「まあ、うっかり魅了が洩れちゃうくらいには。
そうなんですかねぇ……それにしたって信頼度が高すぎる気もしますが。」
或いは自身が自身を信じてなさ過ぎる、ってことなんだろうか。
分からないことを考えていると段々眉間に皺が寄ってくるが、先程のことを思い出して指で皺を伸ばす。
「えーと……どうなんでしょうか……。
そもそも余計なこと考えてるな!乳触ったろ!ってなるのが稀なのでは……いや、そうでもない??のかな??」
思えば最近別の人にもちょこっとだけ触られてたわ。
あれ、もしかして胸を触られたくらいで大袈裟だったのかもしれない。少なくとも淫魔としては大袈裟だろう。
気が付いたらスンとした。淫魔だもん……。
「そうしてください。いえ、理由があるなら内容次第では考えますけど、せめて事前に申告をお願いします。」
対価の内と判断すれば是非も無し。武将めいた覚悟の面で告げる。
「たくさん吸ったら飛んで帰るから、送らなくてもへーきですよ。
わたしだって一応多少なりとも身を守る術くらいはありますし、対処できないようなものが出るほど危険な場所も通りませんから。」
訳すならそんなことよりいっぱい吸わせろ、ということで。
「んん。効果のあるなしはこの際置いておきましょう。
…………だから、その、……そろそろ、いいですか……?」
成果がなければ吸精もなし、っていわれたら悲しすぎるので置いといて。
もじと僅かな身動ぎ――少年へ向ける瞳は物欲しげに揺れていた。
その後、宣言通りたっっぷりと口と精気を吸わせて頂く。
今回はきちんと気をつけて行ったので、少年の意識を奪うこともない。その分、ポンコツ淫魔も少年も共にじっくりとっくり味わうことができる筈。
つやつやのポンコツ淫魔とげっそりした少年の対比は今後度々目撃されることになるのだろう。
■武知一実 >
「言われてみるとそうかもと思えるんだよな……
けど、それならもっと触れてみる……べき、か?
……うーん?」
引っ掛かるのは微かに覚えた名残惜しさ。
もっとリリィに触れたいと確かに感じたことは、今は言わないで置いた方が良い……そんな気がした。
「そもそもありゃオレの凡ミスも原因っちゃ原因だろ?
もっとリリィは自分を信じて良いと思うぜ? 自分で思ってる以上に、良い淫魔だよ、アンタは」
いずれ自覚することもあるかもしれない。それまではオレがコイツを信じててやる。
まあやり過ぎない様に監視するって方が比重が大きい気がするが。
「アンタにも分かんねえか、そっか。
……やっぱその辺り、オレもズレてんだろうなあ」
今度クラスメイトにそれとなく聞いてみるか。
いや、要らん騒ぎになりそうだから止しとこう……。
「理由……理由か。パッとは思い付かねえけど、インプットのため、とかなら理由になんのか……?」
それに関してはそもそもリリィが言い出したことだからな。
まあリリィの負担も考えたら、そうそう言える事でもねえか。
「そうか、飛べたもんなアンタ……
わかったよ、じゃあ遠慮なく吸ってけば良い」
減るもんじゃねえし、いや、減ってるのか。
ともかく、了承の頷きを返して、リリィの隣に腰掛ける。
「じゃあほら……ええと、めしあがれ?」
リリィへと顔を向けて目を閉じる。そうした方が良い、ってちょっと調べたら載ってたので。
その後たっぷりと吸精されたことは言うまでもなく。
今度は意識がある状態での口からの吸精は、今まで感じた事のない感覚を存分にオレの身に齎した。
先日のリリィの言を信じるなら、今日の精気は前回よりも格段に上質だったことだろう。
……だって、その、こんな気持ち良いものだなんて、知らなかった……
ご案内:「ボロアパートの一室」からリリィさんが去りました。
ご案内:「ボロアパートの一室」から武知一実さんが去りました。