2024/11/01 のログ
ご案内:「落第街 悪童王通り」に真詠 響歌さんが現れました。
真詠 響歌 >  
「ハッピーハロウィーン!」

通りすがりの知らない女の子にピースピース。
なんて、こんな所で言って何になるのって話。
──だったはずなんだけど。

(……おろ?)

結構ノリいいね。返事が返って来る。

違反部活の巣窟、存在しない(アンタッチャブルな)街。
そう呼ばれて久しいこの街も、少しだけ変わった。
もちろん全部がそうって訳じゃないけど。
少なくともあっち側(歓楽街)こっち側(落第街)の曖昧な境界線の上で、
黒と白の混じったグレーゾーンにヴィヴィッドな色が確かに根付いてきた。

真詠 響歌 >  
不良達(ワルガキ)が幅を利かせる悪童大通り改め、誰が呼んだか『悪童王通り』。
何時からっていう物でも無いけど、きっかけは多分ちょうど二年前のバカ騒ぎ。
ここには何にもないけど、何でもあって良い
ゴミだらけの、まっさらなキャンバス。
邪魔な物を全部押しのけて、自分の絵を仕上げて掲げる事のできる場所。
誰も見向きもしないかも知れないし、誰かの目に留まるかも知れない。
売り込む為に場所を活用しても良いし、誰かの居場所を搔っ攫っても良い。

ノスタルジックを奏でるその真横でシャウトを重ねたって、構わない。
ただ、ここは結果だけが全て。
聴衆の心を惹き付けなかった方は石を投げられてもおかしくないし、
何ならどっちも見向きもされない、なんてこともざらにある。

真詠 響歌 >  
表の街だって風紀委員に届け出せば演奏許可も降りるし、
百貨店も予定の無い時なら無名だろうとお金を払えばポップアップストアは開ける。
でも━━そうじゃない。
正規の手段の全部を否定する訳じゃないけど。
無許可のストリートライブが、風紀委員が手を焼く程の人波を作る事もある。
迷惑行為扱いの壁に描かれたグラフィティ・アートが、途方もない額で競り落とされることもある。
そうして輝きを得る人は、行儀よく階段を登るよりも果てしない所まで辿り着く。
法に守られた彩りの中で自分を語るのが正道なら、
無法の中で無彩色に自分を叩きつけるここは邪道かも知れないけど……
そんな事は、関係ない。
ここ(落第街)は、表現者(私たち)は、結果が全てだから。

真詠 響歌 >  「良いね、やっぱりここは刺激がある」

日々、数多の才能が無選別に転がり込んでくる。
掃いて捨てるような物から、島外にまで轟くような才能まで。
玉石混交って奴だね。

種族や異能の都合で、絶対に再現できないような歌唱や演奏もある。
その中で、只人(無能力者)の身で誰かの心を射止めない限りはただ埋もれていくばかり。
逆に言えば━━ヒトの身でも、異能なんて無くても心を射止めれば届く。
私という存在の、全部が。

「んー、違うなぁ」

目で、肌で感じたインスピレーションを、形に起こす。
溢れ出すメロディを口ずさんで、ちょっと浮かれた(いつも通りの)街を歩く。
━━違う。
求めるのは水底で感じたくらいの命の全部を振り絞ったような物。
ハロウィンのせいかな、キャンディみたいな甘い旋律が出てくる。

「……お菓子なんて要らないんだよね」

いたずらしたい。
心に、記憶に、消えないモノを刻みたい。

真詠 響歌 >  
「ん……」

昨日は無かったものが、そこに在る。
そこにあったのは、絵描きの路上販売。
一瞥もくれずにひたすらにキャンバスに新しい絵を描き続けてるこの画家を、私は知らない。
適当に付けられた値札が、素人の絵に付けられるにはちょっと強気。

「ねぇ、それ全部買わせてよ」

抽象的な絵で、説明も何も無い。
それでも一目見るだけで何が描かれているかが分かった。
━━喜怒哀楽。
全部、食べ尽くして、歌にしてあげるから。

真詠 響歌 >  
油絵四枚、大荷物だ。
だけど、そんな物を感じる気も起きないくらいに帰路につく足取りは軽い。
途中で誰かに声をかけられた気がしたけど、聞こえない。
メロディが、歌詞が零れちゃう。

「ふふっ、この街はホント……」

刺激で、満ちている。

ご案内:「落第街 悪童王通り」から真詠 響歌さんが去りました。