2024/11/07 のログ
ご案内:「『数ある事務所』地下ラボ」にDr.イーリスさんが現れました。
ご案内:「『数ある事務所』地下ラボ」にエルピス・シズメさんが現れました。
■Dr.イーリス > 夕暮れ時。『数ある事務所』の地下にあるラボ。
装置がずらっと並ぶメカメカしいラボ。ラボには、量産型メカの《ジャンク・アーミー》数体と『数ある事務所』を守護するキメラ型メカのキメちゃんがうろついていた。
ラボの端っこの方では、イーリスの助手を務める《メカニカル・サイキッカーMk-Ⅳ》が何かの装置で何かの実験をしていたりもする。ちなみにメカニカル・サイキッカーは最近、Mk-ⅢからMkⅣにアップグレードした。
その他、魔法少女ツイン・メニーのステッキが二本ともガラス製の装置に入れられていたりもする。ちょっとしたメンテナンス中ではあるけど、今日中に済ませられるものだ。
色んな機械やら、何らかの液体が入った試験管やらが並ぶ実験台の椅子で、エルピスさんとイーリスが隣り合わせに座っていた。猫型メカであるミケちゃんとクロミちゃんも実験台の上に丸くなっている。
イーリスの独自技術をエルピスさんはお勉強中。エルピスさんは《虹の希蹟》形態になればイーリスの独自技術をある程度理解して扱えるようになるけど、お勉強して扱える技術の幅を増やしたり、知識の補強が行える事だろう。イーリスにとっても、教える事は自身の技術の再確認が出来たりして、とてもためになる。
これまでイーリスの独自技術や知識を理解する人はいなかったので、恋人という事以外でも、技術者としてもエルピスさんはイーリスにとって特別だ。
実験台にはクッキーが置かれたお皿や紅茶が入ったティーカップとティーポットが置かれていたりもする。
クッキーはお勉強前に、エルピスさんとご一緒に作ったものだ。
「それでは今日もお勉強を始めますね」
“今日も”、という事で技術のお勉強は日常的に行われていた。
その成果として、例えばエルピスさんの第三義手アガートラームは、まだ未完成ではあるけどエルピスさんがイーリスの技術を用いて造られているもの。
クッキーを摘まみ、お口に入れる。
「クッキー、とても美味しく出来ましたね」
おいしそうに、にこっと笑った。
■エルピス・シズメ >
落第街の裏通りに位置する『数ある事務所』。
混沌とした落第街に置いて珍しく一般的な営みが行える例外的な施設の地下にあるラボ。
イーリスが開発した大量の電子機器や設備、キメちゃんを始めとしたメカがずらりと並ぶ。
日常における暖房器具から動物を模したメカ、明確な戦闘兵器としての《メカニカル・サイキッカーMk-Ⅳ》。
魔法少女になれるツイン・メニーのステッキも、いまはメンテナンス中で保管されている。
そんなこんなで、『数ある事務所』の地下室。
エルピスはイーリスの技術を学ぶ為、
異能を行使して『虹の希蹟』と呼ばれるイーリスの要素を一部継承した状態で着席。
それでも継承しきれない膨大な知識を補う為、
自分自身の知識として定着させるために『イーリスの機械技術』を学んでいる。
「うん。今日もよろしくね。」
そのために、定期的に行われる勉強会。
イーリスのことをもっと知りたいと言う気持ちも強いモチベーション。
お茶菓子のクッキーは『二人で料理も出来るようになろう』と、練習したもの。
なんだかんだで色々と勉強し合っているエルピスとイーリスの姿がここにある。
「うん。お菓子の方は上手く行ったね。
お菓子は科学とも言うから、イーリスとは相性がいいのかも。」
微笑みながらクッキーをつまんでから、本題へ。
「この義手……アガートラームは義手形になったけど、これ以上弄るのはもう少し先かな。
一旦、イーリスの機械技術の基礎からおさらいしたいんだけど……。」
少なくとも自分でひとつ作れるぐらいになった。
何かを学んだりするにあたって、おさらいは大事なこと。
そんな気持ちで、今日のお勉強内容を提案した。
■Dr.イーリス > 荒れる落第街。でも、『数ある事務所』は今日も平和。
過去は色々な事あったけど、最近の『数ある事務所』はとても落ち着いている。
この辺りが指定保護区域管轄課《フェイルド・スチューデント組》が管轄とする指定保護区域という事もあるだろう。
最近の風紀委員としてのイーリスもまた、落第街でも比較的平和な指定保護区域の治安維持に努めたり支援するのが主な任務で、危険な分類にあたるお仕事をしていなかった。
エルピスさんがイーリスの機械技術、そしてイーリスのことを知ろうとしてくれている事がとても嬉しい。
少しずつではあるけど、イーリスもまた惜しみなくエルピスさんに知識と技術を伝えていた。
『虹の希蹟』になっているエルピスさんと、クッキーを楽しむ。
「えるぴすさんとお菓子作りしていると、とての楽しく感じられますからね。言われてみれば、お菓子作りは科学に似ている……ような気がしなくもないです」
エルピスさんにこくんと頷く。
「そうですね、何事も復習はとても大切です」
エルピスさんとイーリスの眼前、虚空にモニターが出現する。
「私の扱う技術は、異能と魔術を取り入れた科学技術です。一見、機械に見えるものであってもどこかしらで異能や魔術の技術が扱われ、それ等が複雑に絡み合ったりしています」
タッチペンを握り、虚空に表示されるモニターに『「科学」という文字とそれを表す「歯車」の絵』『「異能」という文字とそれを表す「人の脳」の絵』『「魔術」という文字とそれを表す「魔導書」の絵』を書いて、それ等だが相互に繋がっている様子を描く。
実験台に置かれているサーキュレーター型冷房を手に取る。
今年はもうお役御免になったメカ。来年の夏にまたお世話になる事だろう。
「今年の夏、とてもお世話になったサーキュレーター型冷房。例えばこれには、凍てつく氷系統の魔術式プログラムが組まれた私お手製の電子魔導具小型コンピューターが搭載されていたり、動力源が電力の他に魔力を使用していたりもします。プロペラの回転で効率よく冷気が部屋全体に行き届くように出来ているのですよ。魔術もまた一つの技術でございますからね」
そこまで説明して、視線をちょっと逸らす。
「……このサーキュレーター型冷房、設定を間違えたら夏なのに部屋全体が雪景色になってしまったりします。今年はそういった事故が起きなくてよかったです……。去年の夏は、今は《フェイルド・スチューデント組》の詰め所として扱われているアジトが白銀に輝く凍える世界になって大変でした……」
当時の事を思い出して遠い目。
エメラルド田村に凄く怒られた……。
サーキュレーター型冷房は今年の夏、『数ある事務所』で造ったものが第一号ではなくて、似たようなものを造った事があった。そして、夏なのに冬が訪れてしまった……。
■エルピス・シズメ >
「異能と魔術を取り入れた科学技術……
……機械に見えるものでも、必ず魔術や科学を組み込んでいる。」
筆記を読み取って補正し、文章として変換するタイプの電子式ノートを走らせる。
これはイーリス発明ではなく、一般的に普及している純粋な科学の端末。
大変容前の電子式ノートは不安定だったと聞くけれど、手元の電子ノートは紙に書くのと変わらない書き心地。
「うん……科学単体では矛盾や不整合を出る所を、魔術や異能で補正しているんだよね。」
板書を自分なりに呑み込んで復習のお時間。
一見不可能な事象や説を科学技術・機械として成立させる。
そのための補正・整合要素として魔術や異能が組み込まれている。
当然の様に言っているものの、前提となる『それら』に理解があるからこそできるもの。
エルピスが瀕死のイーリスから要素を継いで尚、定着しきれなかった根源の原理。
想いを継ぐ異能による継承、
その感情を構成する主要な体験を『エルピスが体験していたら』と言うイフの追体験・再現によって成立する。
故に上辺をなぞる似たようなものでしかないため、
イーリスの根源的な部分や深い知識などは継承しきれない。
「異能や魔術の要素が複合的、効率的に使われているのも分かったけど……
……魔術や異能に整合を委ねている部分があるから、不安定になることがある……みたいな感じなのかな。」
科学技術単体なら、たぶん、出力を超えて雪景色にするような、大きく逸れることはない。
魔術や異能によってコントロールされているからこそ、
失敗した時に行き過ぎたり、事象がすり替わる。
イーリスの扱う技術がとても繊細であることを改めて理解した。
■Dr.イーリス > 「今時の科学技術は、異能や魔術も取り入れちゃってるものですからね」
異能や魔術を取り入れない科学は時代遅れ、というのは科学者としてのイーリスの個人的な感覚。
異能や魔術なしで頑張っていて、尚且つ凄い発明をする科学者さんもいる事だろう。
エルピスさんがまさしく純粋な科学技術の優秀な端末を扱っている通り、純粋な科学力というのも凄いのだろう。
だがイーリスは基本、自分が造った機械しか使わない。スマホも異能や魔術技術を取り入れた自作のものであり、オモイカネ8は使ってなかったりする。自作の方が、自身の体内コンピューターと同期させやすいというのもある。
エルピスさんの問いに、こくんと首を縦に振った。
「なんだかんだで、科学単体の物理法則に則れば限界がありますからね。魔術や異能は、技術をさらなる可能性へと押し上げてくれます。魔術や異能単体より、そこに科学を用いる事で効率化が行えたりもしますね」
相互、良い点を取り入れた技術、というのを虚空に映るモニターに書き示す。
「良い点だけを都合よく取り入れる……なんて事は現実的に難しいですからね。サーキュレーター型冷房は、謂わば氷系統の魔術を用いられているも同義です。制御を誤れば雪景色……みたいな不安定な事が起こり得てしまいますね。扱いの難しい技術ではあるのですよ。事務所のみんなにも、発明の失敗でご迷惑おかけしてます……」
二ヵ月ほど前、イーリスは海や川にいかずともお魚がつれるようになる装置の実験をしていたのだけど、なんとその装置が煙機魚なる煙を撒き散らす機械の魚を自動で造り出した。事務所が煙まみれになっていたところをナナさんが装置を破壊する事で止めた、という事があった。
そうした感じで、イーリスの技術が事務所にとって便利になっている反面、ご迷惑をかけている事もわりとある……。
「異能の技術を扱う場合は、異能者の遺伝子や細胞を使います。不良時代の私は……島の方から遺伝子や細胞を気づかれないようにナノサイズのメカで採取するといういけない方法を用いていました……。今は……それ等のデータをもとにしているというのはあるのですが……バイオテクノロジーを用いて実在しない異能者の遺伝子や細胞を造り出し、そうして異能を造り出しています。この非実在異能者の遺伝子や細胞をメカに搭載する事により、異能技術を用いたメカを造り出せます。さすがに万能とまではいかず、思い通り上手く扱いやすい異能を造り出すのはそれなりに苦労したりはしますね」
科学、異能、魔術。それら三つの分野を複雑に応用した技術の説明。膨大なデータを搔き集めて、試行錯誤を重ね、研究に研究を重ねて開発した独自技術。
■エルピス・シズメ >
大変容から齎された〝幻想だったもの〟が、科学の限界を取っ払った。
当然その中には秘匿すべきや神秘や政治・倫理的に出せなかった大変容以前の最先端科学や、
秘密裏に継承され続けた魔術や呪術の一般化もあるだろう。
いずれにしても、複数の原理を併用することで成立させている高度な複合科学技術、
そのイーリスの科学技術の思想には、科学だけでは成し得ないエンハンスメントの理念があることを追認する。
端々で説明される難しい用語や参考書などを読み込んで、何とか頭に落とし込んでいく。
「ううん。その辺りは大丈夫。それだけ難しい、ってことだからね。」
イーリスの試行錯誤で何かしらの誤作動が起こることは慣れてきていたけれど、
ちゃんと考えてみればそれだけで難しい要素を取り扱っていて、それでもめげていないこと。
イーリスが描く図をみながら、そんなひたむきなイーリスがすき、と、内心で想う。
流石に勉強中なので、すこしがまん。
「今はおさらいだから端的に説明してくれているけれど……
……実際は、この理念を成立させるための沢山の論理が必要で、異能の場合は更に基になる要素が必要。
イーリスの技術が優れていたから、ナノサイズのメカで生体データを採取していた程度で済んだ……と思う。」
イーリスの取った手法も、落第街の少し宜しくない倫理に基づく言えばそうかもしれない。
ただ、今はその生体データから無数の非実在異能者の遺伝子を生成出来る。
物理的には、誰も傷付いていない。
──その程度のことすら申し訳なく思うイーリスが、知るべきではないと告げたエルピス・シズメの在り方。
自分から知ろうとすることは少ないが、自分の過去や異能と向き合えば向き合う程、その闇の深さを垣間見る。
知ろうと思わなくとも、その輪郭ぐらいは理解してしまう。
「……出来るだけ傷付けないようにしたのは……イーリスのきもちだから。僕は良いと思う。」