2024/11/10 のログ
ご案内:「『数ある事務所』鍛錬室 」にエルピス・シズメさんが現れました。
ご案内:「『数ある事務所』鍛錬室 」にDr.イーリスさんが現れました。
■エルピス・シズメ >
『数ある事務所』の地下に位置する鍛錬室。
今回は〝まほう〟の実技とテストを兼ね、二人で鍛錬室へと足を運んだ。
エルピスの保持する魔力は術理の定まった魔術ではなく、
感情や想像に準ずる形で現象を発露させる〝まほう〟との親和性を有するもの。
問題は〝まほう〟師がおらず、ほぼほぼ手探りや古書漁りで習熟を進めるしかなく、
最近になってようやくある程度形になった次第である。
「お待たせ、イーリス。」
とは言え異能とは違い、分かり辛いものの体系がある。
不可思議な〝まほう〟の観測と分析に、イーリスの技術を頼っている次第だ。
■Dr.イーリス > とても頑丈な金属製の壁や天井、床で覆われた広い鍛錬室。
実戦訓練をも想定した地下施設。事務所で暮らす方々が何かしらの鍛錬を気軽にする事を想定して造られていたり、イーリスもメカの実験でよく使っている実験場の側面もある。
今日は、エルピスさんの〝まほう〟のテストだ。
エルピスさんが〝まほう〟をうまく扱えるよう手助けするべく、観測や分析、データ収集のためのPCなどの機材が無数に鍛錬室の端っこに置かれている。助手を務める《試作型メカニカル・サイキッカーMk-Ⅳ》もまたイーリスの傍で観測や分析などの手助け。鍛錬室のそこら中にドローンが飛行しており、それ等もまた分析や解析に一役買っている。
また訓練用に改良されている量産型の人型メカ《ジャンク・アーミー》も何体か隅っこで待機している。また、ターゲット用に機械の案山子が置かれていたりもする。
イーリスはPCの前にある椅子に座りキーボードを叩いた後、エルピスさんに笑みを浮かべつつ視線を送る。
「では、まずはどういった方向でテストしましょうか? ターゲットが必要であれば案山子に向かって〝まほう〟を使ったり、軽く実戦なら《ジャンク・アーミー》を扱ったり、色んな状況を試したいならVRで風景や状況を丸々変えてしまう事もできますね」
VRは、特殊訓練区域にあるものと似たようなもの。
さすがに広さなどの限界はあるけど、空間系魔術のプログラムである程度誤魔化していたりもする。
■エルピス・シズメ >
「そうだね。軽くの実戦形式のテストで観測を進めていくのが良いのかな。
本格的なシチュエーション戦闘じゃなくて、挙動の確認と観測に重点を置きたい。」
どういう事が出来て、どれだけ出力や実戦適応能力があるか。
また、リスクや稼働時間はどの程度か。そういうものを計測したいと伝える。
「その前にちょっとおさらい。僕の魔力はロジックのある魔術とは相性が悪くて……
空想・感情・想像・創造に準ずる魔法群。これらの、感情のままに動かす〝まほう〟と相性が良い。
おとぎ話に出てくるような、不思議で不可思議な魔法群。」
今までの学習を振り返る。
実践の前に、自分の〝まほう〟について振り返る。
「これだけ聞くと異能みたいだけど、〝まほう〟には一応の体系がある。
感情に由来するから同じ結果が出るとは限らないけど、イーリスの魔術生成AIでも再現可能な要素。
根本的には、〝分かち合える体系のあるもの〟だから異能ではない。……と言うのが、今分かっているところ。」
分かち合える。
同じ本を読んで違う感想が出るように同じ〝まほう〟を使っても現象にブレが起こるものの、
根本的にはおなじもの。エルピス・シズメの〝まほう〟への認識はそういうもの。
「僕の準備はOK。イーリスの方で気になる事とか、懸念はある?」
■Dr.イーリス > 微笑みながらこくんと頷いた。
「それでは、軽く実戦という事でゴム弾のマシンガンを装備している訓練用《ジャンク・アーミー》を使いましょうか」
そのまえにおさらいに、イーリスはお耳を傾けた。
実技やテストをする上で、おさらいはとても大切。
お伽噺に出てくるような魔法群。エルピスさんの〝まほう〟は、エルピスさんの経験や想像が力になるということ……。
「なるほどです……。魔術生成AIは、十分に収集された感情やお伽噺などの学習データがあれば、確かに理屈の上では〝まほう〟の再現ができるかもしれませんね」
魔術生成AIは、しっかりとした明確な体型のある魔術の方が学習データとして向く。
とは言え、既に完成している魔術生成AIのモデルから感情データなどを追加学習をする事で〝まほう〟の再現ができないとも限らない……と言ったところだろうか。
イーリスが用いる技術でヒントとなるのはやはり《神話型魔術生成AI》。
「〝まほう〟の体型の基礎部分が共通しているけど、術者の経験や感情で実際の効力が千差万別に変化するもの……という事になるでしょうか」
同じものを見ていても、人によっては違うものに見えているかもしれない。
その人の人生観や感覚で、同じものを見ていても、導き出される結論はかわってくるもの……。
「えるぴすさんのご説明がとても丁寧で分かりやすかったです。ありがとうございます。懸念点と言えば、万が一えるぴすさんが負の感情で〝まほう〟を発動させてしまった時になるでしょうか……。〝まほう〟も、負の感情に効力を及ぼすもの……という事になりますよね」
そうなった際、エルピスさんはどうなっていくか……。
■エルピス・シズメ >
「たぶん、そうだと思ってる。
同じ経験をしても、どう感じるかは別の話。イメージの強いものだと思う。
……そう言う意味だと、僕の持つ異能と重なる領分も多いのかな。」
そう言う異能を持つからこのような魔力体質なのかもしれない。
まだ実情を知ることは無いものの、そんな風に考えたりもする。
「だから千差万別なのかも。……と言っても、他に使う人が居ないからわからないけれど。」
あくまでかき集めた資料やデータから類推したもの。
そうだろうと思いながらも、推測の域を出ない。
「……そうだね。感情でちゃんとコントロールしないと。
なんとくなく、あぶない気がする。この前も……。」
童話の人物の再現〝まほう〟の使い過ぎて倒れていたことを思い出す。
その時の状況は可愛らしいものであったが……。
幻想型、と仮定義していた気はする。少しばかり知識が増えてきたので、再分類も考慮。
「とりあえず、安全そうなものから試してみようと思う。」
親指と人差し指の間に、光り輝く電気を生じさせる。
命名、ぶんめいのひかり。これもひとつの〝まほう〟
■Dr.イーリス > 「えるぴすさんの異能と重なる部分があるというのと、あと色んな経験を追体験したイフの姿になれるえるぴすさんの異能と組み合わせることで効力が発揮する〝まほう〟の効力もある、という事になってくるでしょうか」
エルピスさんは、例えばイーリスを継いだ虹の奇蹟になれる。虹の奇蹟には、イーリスの経験やそれに伴う感情などもあるので、それも〝まほう〟に活かされるのだろうか、という疑問。
そうなれば、イーリスの体験がある程度エルピスさんの〝まほう〟のお役に立てて嬉しくも感じてくる。
「使う人がいないので、〝まほう〟は手探りみたいなところはありますよね。私もお手伝いしますから、えるぴすさんが望むまま〝まほう〟の開拓していきましょう」
そう言って、イーリスはにこっと笑みを浮かべてみせる。
「私も、えるぴすさんが安心して〝まほう〟の実力を伸ばしていけるようがんばりますね」
エルピスさんが〝まほう〟を特訓する際に、万が一にも負の方面にいかないよう、イーリスがいっぱいエルピスさんを愛したり応援したり、時には元気づけたりしたい。そうして、エルピスさんが気持ちよく〝まほう〟を伸ばしていければ、イーリスもうれしい。
エルピスさんんお親指と人差し指の間が光る。
電気だ。
「電気で光らせる〝まほう〟ですね。では、効力が分かりやすくなるよう、照明を消しますね」
鍛錬室の照明が消えて、真っ暗闇となる。
明かりは、えるぴすくんが放っている電気、計測器やモニターなどの光のみ。
■エルピス・シズメ >
「組み合わさるというより……
……ううん。分析が必要かも。」
イメージが引っ張られている。
あるいは僕自身にその様な指向性が与えられている。
そのようにも感じる所が多く、感覚だけでは結論が出せない。
計測や分析を続ける必要がありそう、と、口にした。エルピス・シズメが産まれた理由はやや特殊だ。
「うん。……いつもありがとね、イーリス。」
はにかみながら実験開始。
ほぼ暗闇の鍛錬室に、光り輝く電気が電飾の紐のように舞う。
物理的にも、魔術的にも電気として計測されている。
一方、電気に付随する光属性や熱属性としては観測されていない。
反面、物理的な電子の動きは観測された。
「うん……上手く行っているね。
攻撃への転用には出力が足りなそうだけど……」
■Dr.イーリス > 「そうですね、分析や解析、進めていきましょうか」
エルピスさんの〝まほう〟を扱える魔力も、“成果物”により形作られたもの……という事になるだろうか。
もし〝まほう〟の分析に《囚う心》の解析まで必要となったなら、どうするか考えなければいけない……。
〝まほう〟を分析して得たデータは全てエルピスさんに見せるものなので、それに伴い《囚う心》を解析したデータもエルピスさんに見せる事となってしまう……。場合によっては、エルピスさんが《囚う心》の過酷な真実を知ってしまう事にもなるのだろうか……。
エルピスさんが傷つく道を選べない……。ひとまず、〝まほう〟を伸ばす上で《囚う心》の解析が必要になった時に考える事にしよう。
はにかむエルピスさんのお礼に、柔らかく目を細めて微笑みながら、こくんと頷いた。
計測した結果、エルピスさんが放出する電気は、紛れもなく物理的な電気で、紛れもなく魔術。
「お見事です、えるぴすさん。今のところ、光を出す程度にとどまっていますね。えるぴすさんの電気を出す〝まほう〟は、どういったイメージから得たものでしょうか?」
きょとんと小首を傾げた。
■エルピス・シズメ >
イーリスの不安を感知することはなく、〝まほう〟の行使を続ける。
デザインされた実在存在……と言う意味では、イーリスの懸念や不安は間違っていない。
ただ、解析まで必要かどうかは別の話。少なくとも、今じゃない。
「えーと……夏の時のファミリーマリアンヌ様の時。
あの時の電気の魔力のイメージが強いのかな。他にも神話と文明に強都するシンボル、と言うのもあるけれど……」
神話や童話の天の象徴として、あるいは人間の文明:灯りの象徴として。
この二つの架け橋となる電気は、エルピスの認識する〝まほう〟においては肝要なもの。
その起点となったのは、ナナとイーリスと共に体験したひと夏の想い出。
「あとは……こういうものとか。
ここまでは、負荷は無いんだけど……。」
鍛錬室の地面に、エメラルドの石柱が生えてくる。
魔法的な宝石なので、見た目よりも硬いが砕くと消える。
石属性異能者が扱うような、土石や金属生成による防護や攻撃に近しいものがある。
何故エメラルドかと言えば、オズの魔法使いの童話とイーリスに近しい者のエメラルド田村の存在が浮かぶか。
■Dr.イーリス > 「ファミマ様の海底神殿での電気の魔力……と言えば、私の魔力ではないですか!? 私の魔力のイメージで電気の〝まほう〟を扱えるようになったなんて、凄く嬉しいです……」
嬉し気に、ちょっと頬を赤らめてはにかんでみせる。
イーリスの魔力には電気が含まれている。これは、イーリスが科学技術と魔術、異能技術を扱った改造人間であり、つまり魔力と電気がこの体に流れているが故。
そんなイーリスの魔力が、エルピスさんの〝まほう〟のイメージとなっているのがすごくすごく嬉しい。
ただ、イーリスの電気を含む魔力は派手なものではなく、体内の人工臓器や《体内超高性能コンピューター・イリジウム》やその他の機械などを動かすためのもの。
「文明は、電気により格段に進歩しましたからね。なるほどです。そういう事でしたら、私の魔力をえるぴすさんに流せば、イメージの補強になったりしませんか?」
そんな疑問を口にして、首をひねった。
続けて、エルピスさんはエメラルドの石柱を地面から生やした。
その光景にイーリスは、ちょっと驚いてしまう。
「エメラルドを出現させる〝まほう〟ですね!? 私、最近は異能開発にも力を入れてしますけど、エメラルド田村さんもちょうどエメラルドに関する異能の適正があったりしたのですよ。そのエメラルド田村さんと親しくなったところから、イメージした〝まほう〟になるでしょうか」
■エルピス・シズメ >
「えへへ。イマージュの補強は強いみたい。
〝文明〟って属性でくくられていることも多いみたいだけど……電気でイメージしてる。」
〝まほう〟は術理よりもイマージュによる所が大きい。
エルピスの中での強固なイメージとして、電気のまほう:イーリスとして扱っているらしい。
「イーリスがいるだけで補強になる気もするけど……
……〝大きな電気のまほうを使う時は、効率の良いリソースいになるかも。」
肯定の意味で頷く。
ただ、それほど〝大きなまほう〟のイマージュを会得出来てない。
「うん。その時の想い出と……最近読んだオズの魔法使いかな。
あのおとぎ話に出てくるエメラルドの都とあわせて……こういうものを編み出せた感じ。」
エメラルド田村さんのイメージも強いけれど、明確な形となったのは童話のオズの魔法使いとの混合。
旅の果てにエメラルドの都に着いた一行のイメージと、幻想的なエメラルドの街のイメージ。
出会いと旅路と、オズの魔法使いの童話によって産まれたひとつのまほう。
「問題は……幻想型だけど……」
童話や物語そのもののイメージを継承して身体に落とし込む、〝エルピスの異能に非常に近しいまほう〟。
以前使った時は魔力切れを起こしてお姫様だったり魔法少年のペイルライダーだったり。
いちばん扱いが難しく、感情の影響も受けやすいまほう。
こなせきれていない目下の課題でもある。