2024/08/12 のログ
ご案内:「転移荒野」に里中いのはちさんが現れました。
■里中いのはち >
―― カッ!!
瞬間、夏の昼空を染め上げる閃光。
その光が収束すると共に中天から墜つるは黒い影。敏い者がよくよく目を凝らせばそれが人型であることを知るかもしれぬ。
黒い影は成す術なく地に激突す――と見せかけて、ある一点で器用にくるりと身を翻し、空中で素早く印を結んだかと思えば、何事もなかったかのように四肢でもって無事人の形を保ったままに地面へと殆ど音もなく着地してみせた。
■里中いのはち >
「~~ッッあ……っぶないでござるなぁ!? 久々に死を覚悟したでござるよ!!」
黒い影――忍び装束を身に纏った男は吼えた。
生温い風にのってそんな叫びは何処まで届くだろうか。
目元以外すべてを覆い隠す頭巾の上から後ろ頭を掻きながら周囲を見回す。
薄らと下生えが広がってはいるが、だだっ広い空間だ。
…否?
人差し指と親指で円を模り、レンズでも覗くが如く遠目の力を用いれば、遺跡のようなものや村のような人工物も見つけられるか。そうでなくとも山の姿は視認できよう。
足許の土塊をひょいと拾い上げ、地質と雑草や周囲の植生を確認。
「ふむ? 里の近くではござらんな。」
■里中いのはち >
乾燥した土の塊を指先で砕く。
指の腹を擦り合わせて残りの砂の感触を確かめた後、懐をまさぐり巻物を取り出した。
慣れた手つきで結い紐を解いて広げる。
「……ん?」
首を傾げて、巻物を閉じる。また開く。
「んん??」
閉じる。開く。閉じる。開く。
「んんんん~?? なにゆえ導が示されぬ? 出立前に確認した時は確かに……あるぇ????」
散々巻物をこねくり回した後、諦めて元通りに封をしてから懐へ。
「さてはて…如何したものでござろうか。
先ずは人里を探し、情報収集に努めるが定石……とはいえ、外つ国であるのは確実なれば。」
腰に手を遣り、嘆息を呑む。ぶっちゃけてしまうと面倒でござった。
第一村人……なんてものは望めまいか。再び周囲を窺うが。
ご案内:「転移荒野」にシアさんが現れました。
■シア > 転移荒野。
そこには何が落ちてくるかわからない。
怪異、アーティファクト、奇怪な植物、など、など
そんな混沌の領域に、少女は再び現れた。
以前は、魔獣と巨大なドラゴンだった。
今度は……
「……人?」
首を傾げた。そういえば、前も人が居た。
体格はそこそこ良い。狩人とかそういう類の人だろうか?
じっと様子を見ると、巻物を出して広げたり閉じたりしている。
……不審者?
再び首を傾げて、様子をうかがいながら少しずつ近づいていく
■里中いのはち >
人も居なければ、不思議と獣の気配も薄い。ただ、異様な空気は感じられた。
陽炎の中に、何が潜んでいてもおかしくないような――……
ふと、上空を見上げる。何処までも高く青い空が広がっていた。
「……いのには無事でござろうか。否、拙者に心配される程彼奴は耄碌してはござらんな。
となると、事は恙無く行われよう。なれば、拙者が慌てて帰還を果たす必要もなし。ふむ。」
顎を擦る。
命令がない。其即ち、たとい此処で果てようとも問題はないということ。
――と、思考の末が垣間見えた折に、その気配を察知せん。
ゆるりと流れる様な動作でもって少女の方へ顔を向けた不審者―――もとい、その男は、
にっっっっこり!!
と、目許しか窺えない癖に、満面の笑み!といった様相を呈す。
「やぁやぁやぁ!そこゆく娘よ!否、闇夜に差す一条の光が如きその姿、よもや貴殿は女神でござるかな?
どうか憐れなる我が身に慈悲を与えてはござらぬか。
もそっと具体的に述べるのであれば、「ココハドコ?」という拙者の素朴な疑問に答えてもらいたいのでござる!」
とっても早口、とってもニコニコ、とってもフレンドリィに語り掛けるし、ずんずんと大股で距離を詰めんとす!
■シア > 「……」
満面の笑顔(頭巾姿につき、目許しか見えない)を浮かべる相手を改めてよく見る。
頭巾、装束、手甲……いわゆるNINJAというやつだろうか。
本物を見たことがないからよくわからないが。
「ん……」
ずんずんと歩み寄ってくる不審者、
そしてさらに、ものすごい早口で話してくる。神速もかくやというものだろう。
身のこなしよりも口のこなしが立派であった。
しかし、その不審者のマシンガントークに引くこともなく対する。
とりあえず、ノイズのような情報が多いのでセリフを片端から処理しなければいけない。
「女神じゃないよ、ボクは。
それから……転移荒野だよ、ここは」
おそらく答える必要があるのはそこだろう、と判断して応えてから少し考える。
あれ、もしかしてこの人、異邦人というやつだろうか。
「……常世島だね、それと。」
一応、それも付け足しておく。
「……何者、貴方は?」
■里中いのはち >
頭巾の隙間から覗く目の形は絵に描いたが如くにこやかなる山なり。
たとい少女が此方を不審者めく何某かを見る目で見て居ようとも気にはせず、なんなら掌をふたぁつ晒してヒラヒラと振って見せようか。或いはそれは、一見すれば――ではあるものの、無手である。敵意の無さを示している心算なのやも。はてさて。
静止を求められることなくば、遠慮のない歩は少女の目の前に辿り着く迄止まらぬ。
逆に言えば、「止まれ」と一言さえあれば即座に足を止めるということだが。
何にせよ此方の対応は変わらず、笑顔の侭に歌うが如く雑音塗れの言の葉を連ねるばかり。
「女神ではござらんかったか!いやはやそれは失礼致した!なんせ目の前がピカッ!と光ったかと思えば見知らぬ土地に真っ逆さま、あわや潰れた赤茄子と成るところでござってなぁ!
さてそれで? ふむ? 転生荒野とな?常世島とな? 知らぬ土地でござるなぁ。然し、言葉は通じる。なんとも不思議でござる。」
機関銃が如く絶え間ない男の言葉は不要な情報の多さを除けば不自然な程に聞き取り易いに違いない。
と?少女に問われて一度口を閉ざし、束の間の沈黙。
「拙者は日ノ本、忍びの里に属するものなれば。“里中いのはち”と、便宜上。」
まるで用意された科白のように、硬質な口上であった。