2024/08/17 のログ
ご案内:「常世Elevenシネマズ」に蒼き春雪の治癒姫さんが現れました。
ご案内:「常世Elevenシネマズ」に緋月さんが現れました。
■映画 > 内容は、よくある熱血バトルものの映画。
少し変わっている点は、常世島の異能者たちの戦いをモチーフにしている点。
混黒のなめ「この世に生きる全ての者の名を奪い」
「全ての者に変わって生きてやる―――」
「そして私の名だけが、この世界に残る時!」
「私は―――"私という絶対なる存在"となれるのだ!!」
映画も終盤
いよいよ最後の敵
"名を奪う者" 混黒のなめが登場する
他人の名を奪い、姿を奪い、異能を奪い、生きる意味を奪う、この映画における絶対悪。
そして―――
■映画 > 向日きょうや「勝手に俺たちの人生をお前のモンにされちゃあ…
たまったもんじゃねえぞ、この野郎ッ!」
柊もえか「全くだわ…!」
相対するは、主人公とヒロインの二人。
無効化系の異能力を持つ主人公
火炎系の異能力を持つヒロイン
この二人が、
数多の異能と姿を操り、七変化する混黒のなめと激闘し―――
■映画 > 混黒のなめ「…!結局、私は……
何者にも、私にすらも、成れなかったんだな……」
ラスボスが敗れて、ハッピーエンド。
主人公たちが仲睦まじく結ばれて、
混黒のなめの被害に遭って全てを奪われた人々も元通り。
それでこの映画はおしまい。
■蒼き春雪の治癒姫 > ―――という映画。
単純なアクションもそうですけど。
贋作物の私としては。
どうしても、緋月様とこれを見る機会が欲しかった。
ええ。
欲張りでしょう。
最低でしょう。
遠くから貴女様を眺めているだけで良かったのに。
もっともっとと望んでしまう。
どうしてこれを見たかったのか。
"絶対悪として描かれた彼女"が
どうしても他人とは、思えなかったから。
「お付き合いくださって、ありがとうございました。」
上映後、嬉々とした、然し緊張したような顔持ちで
今日も共にしてくれたお礼を恭しく述べる、蒼い雪。
■緋月 >
「いえ、こちらこそお誘いありがとうございました。」
ぺこり、と頭を下げる外套に書生服姿の少女。
冷房が効いているので、外套を脱がなくて済むのは面倒でなくてよかった。
「映画というものは、話にだけは聞いていましたが、目にするのは初めてです。
随分と大きな動画活劇でしたね……。」
そもそも映画と言うものが初めてだった少女。
つくづく、どれだけ田舎で暮らしていたのか。
「作り物の映像だとは分かっていますが、何と言うか、こう…テレビより、随分と演出が派手ですね。
ちょっと目がチカチカしてしまいました。」
ちょんちょん、と、軽く目頭を押さえる仕草。
CGとも本物ともつかぬ激しい異能戦闘のシーンは、ちょっと目に痛かったらしい。
■蒼き春雪の治癒姫 > 「ええーーーっ」
まず、そこからだった。
初めてだったらしい。"動画活劇"って。
お言葉遣いやおふるまいから、少々古めかしい文化の世界からいらしたとは思っていたけれど、
「初めてだったのですか!緋月様ッ」
なんと映画を見るのが初めて!
…いや、そう珍しいものでもないのだろうか。
今どきは端末で見るのも当たり前だし…
「ええ、音も光も、大分と…迫力の為でしょうけど、
若干鼓膜にどんときますよね。特にあの、咆哮とか閃光のシーン。
炎の異能使ってたのもあって派手さが凄まじかったです。」
「な、なれぬことを申し訳ないです…如何でしょう、償いにさっと癒して差し上げたく…」
余計なお世話とは思いつつ心配げにしている。
慣れてないと目に毒なのはそうだから…
■緋月 >
「あ、いえ、お構いなくです。
刀を振るう以上、どうしてもこう、ああいった光の類には目が向かうもので。
ちょっと休めば大丈夫です、はい。」
お構いなく、と、苦笑しつつ軽く手を振る。
「ええ、テレビの番組は――居候先の部屋や、電気店などで幾度か見たのですが、こちらの方は初めてで。
随分と座席がありましたが、入る時はあの座席が満員になるのでしょうか…?」
ちょっと腕組み。
あの数の座席が全部、人で埋まったら、中々壮観であろう、と思う。
割と後ろ側の座席に座っていたので、前の方でなくてよかったのか、と思ったが、実際に見始めると
後ろ側の席の方が真っ直ぐ、しかも全体を見渡せていい具合だった。
前の方に座るとなると、あの大幕を見上げなくてはいけないので、首が大変だろう。
「………あの大幕で、もし隠れ刀の物語を上映すれば、さぞや見ごたえがあったでしょうね…。
――っと、すみません。私がまだ旅に出る前、故郷で読んでいた数少ない娯楽だったんですが、
こちらでは存在していない小説になるかも知れませんね…。」
実際、そんな名前を持つ小説の類は常世島には流通していない。
■蒼き春雪の治癒姫 > 「そ、そうですか。残念です。」
癒したくってソワソワしているようだ。
「大きさが違うだけ…にもかかわらず、テレビとは全く違った迫力でしょう。
モノによりますが…はい、満員座席になる事だってあります。
お休みの日の、人気のモノでしたら、全員がぎっしり、なんてことも。」
常世には、特に色んな生徒が数多いるから、ここも恐らく人気の映画はつめっつめだろう。
横から、間近からと、見る場所が違えば大変だったろうなとは思うが…
ここは良い感じに魔術で見やすくしてくれているそうだ。
「ふむ。」
「隠れ刀…」
「小説とな…」
「数少ない娯楽…」
「…そうですね。でも…それに似つかわしいものは、どこかにあるかもしれません。」
聞いたことがないけれど、逆にこの世界には娯楽は溢れるほどある。
それはそれとして…緋月様、お住まいの文明は映画も娯楽もなかった辺り、
どういうところからいらしたのかどんどん見えてくる…
青春とかかけらもなかったんだろうな…おいたわしい。
「そっ、それですね。……映画の内容、いかがでしたでしょうかぁ……!」
「いえ、内容は無難にハッピーエンドでしたけども……ッ」
……そこは、聞いて置きたくって。
■緋月 >
「お、ぉぉ……やはり、満員になるのですか、あの数の座席が…!
この街の人の多さもですが、それだけ入るような作品があそこで上映されるというのも、ちょっと、理解の外です…。」
ちょっと予想外で少しめまいがした。くらくらとするようなものではなかったが。
同時に、映画ってすごいなぁ、と子供みたいな感想。
「はい、世に語る事を伏された「秘剣」を身に着けた剣士と、その周囲で起きる事件を描いた小説です。
まあ、小説といっても短い物語を集めた…ええと、短編集、で良いんでしたか。
そんな形式なので、読みたいお話だけさらっと読んで、別の話は次の機会に、なんて事も出来ます。」
短編集は確かに読みやすい。
問題はその短編集にどれだけの物語が収録されているかだが。
数によっては数冊に別れて発行されるものもあるだろう。
「似ている物語、ですか…あるとしたら、ちょっと興味はありますね。
どんな物語が、どう収録されているのか。」
と、映画について訊かれれば、少し難しい顔。
「そう、ですね……何と言うか、出来過ぎている物語だな、と。
悪の権化に、正義の味方が立ち向かい、最後は大団円。
…それが悪いとは言いませんが、どうにも、筋が出来過ぎてしまってるようでして。
――自分が捻くれたことを言っているのは、分かってるつもりです。
ただ、すべての物語が大団円で終わるなんて、都合のいい事はありえない。
「これを叩けばすべてが丸く収まる」という悪者の存在そのものが…都合が良すぎるのだ、と感じてしまって。
隠れ刀の物語には、そんな救いなどまるでない物語も少なくありませんでしたし。
――すみません、捻くれた感想で。」
最後は、ちょっとだけ申し訳なさそうに。
■蒼き春雪の治癒姫 > 「―――面白いですよね、映画の実態って。
ここで上映されるだけで、みんなそれを見ていきたい。って。」
それだけ人を熱狂させるものがあるんだろう。
理解しがたい―――あれ程強気剣士様であっても、そう思う事って、あるんだなって。
「秘剣……異能を持った不思議な剣、みたいなもので良いのでしょうか。
―――おすすめなんでしょうか?何か、そういわれると、気になってきましたけれど…
剣、ですよね…?……緋月様の里は数少ない娯楽すら、刀剣に纏わるものなのですか。
刀剣についてのお話なら……今度、ご一緒に図書館巡りなんかも、してみましょうッ!」
それ程までに、刀と強く結びつきがあるらしいのが伺われる。
産まれた時から刀を共にするそうだから、ある意味、最も身近な部分なんだろう。
……刀、ずっと頭から離れることなさそうだ。
「ふふ、そうですか。いえ。―――当たり障りのない偽りを述べられるより」
「ひねくれても誠実な言葉が欲しかったんです。」
捻くれた、と自称された感想を、静かに黙って聞いた後、微笑ましそうに頷いた。
「ご都合主義なハッピーエンドと、」
「その絶対悪とされた彼女」
「緋月様が仰る言葉にうなづくなら、実に、都合のいい存在がいて」
「物語がそのように動いていった―――そんな風にも捉えられますもんね。」
「最初から、ゴールが設定されていた、みたいに。」
「……仰る通り、これは物語の中だから、有り得た事、ですもの。」
「緋月様が御覧のお話―――隠れ刀は、そうではなかったんですね…。」
凄く、都合が良い敵役って存在。
絶対悪って存在。
だからこそ、創られたものの中でのみ許されるんだろう。
…むろん、そうではない創作物だって沢山、沢山ある。
「どうも…」
「他人と、思えないんです。」
「最期に出てきたあの敵―――のなめ、…というキャラクターが。」
「絶対悪と定義された、あの人が。」
■緋月 >
「ああいえ、ここでいう「秘剣」というのは「秘された剣技」…つまり、概ね一人相伝の剣術技法の事です。
その「秘剣」で以て窮地を逃れたり、逆に「秘剣」の存在が窮地を呼んだり…一言では表しにくいですね。
うーん、お勧めかと訊かれると、ちょっと難しいです。
今言った通り、割と救いのない物語も少なくないですから。
図書館巡りか…それもいいかも知れませんね。」
里の外に出て分かった事だが、やはり現代の感覚では里の暮らしというのは一種異様なものだ。
この島は兎も角、元居た世界では誰も刀を持ち歩かないし、そもそも和服の類も身に着けない。
里の中で暮らし続けて、それが当たり前だった頃は初めて見た外界に異様なものを感じたが、
外界が今や「当然」とするなら…里の方が、「常識」にとっては異様なのだろう。
「……ええ、何事かの思惑に、倒せば全て解決するような悪玉がいる事自体がそもそも稀でした。
敵となった者を倒せたとして、迎えた結末はどこか苦いものを抱えていたり、結局は更に悲劇を呼ぶだけだったり…
場合によっては、主人公が陥れられて命を落とす、なんて物語もありました。」
叩けば全てが解決する悪の親玉。
それは言ってみれば、「大団円」を迎える為の「生贄」だ。
現実というものは、それほど易しくもなければ都合がよくもない。
大方の物事は、もつれて絡まった糸のように複雑なものだ。
「ああ…あの、最後に倒された、「何者にもなれなかった」という…。」
軽く、思い返す。
「……物語の中では、あの者は許されざる悪事を働いた。
故に、倒されるべき存在であった。
だから、「悪」と。
…すべては、物事を幕を挟んで眺めていた私たちだから言える事です。ある意味、傲慢かも知れない。
ですが、私には――あの者が、「決められた予定調和」に至る為の生贄に見えてしまいました。
「悪だから」、誰もその心中を顧みない。
「悪だから」、倒されねばならない。
……果たして、現実でそれ程都合よく進む事が許される事態があるのか。」
軽く、ため息。
「…すみません、何だか水を差す様な感想で。
子供であるなら、こんな現実に絡めとられたような、ひねた感想など抱かないんでしょうけど。」
軽く、視線を泳がせる。
小学校の高学年位だろうか。両親に連れられ、大はしゃぎで例の映画を「たのしかった~!」と語る姿がある。
■蒼き春雪の治癒姫 > 「―――な、なんです。緋月様…
その、隠れ刀とは……随分その…あの、大分人を選びますね?!
どうも聞いていると、その秘剣―――剣術とやらが必ずしもいいものではなく、
なんならお話が悪い方向へ進むことも多い―――結末が苦い…悲劇を呼ぶだけ…さらには主人公が死ぬ…
な、なッ…なんですかそれはッ?!」
おすすめかっていうと、おすすめできないっていうのが非常によくわかる。
聞いていると段々と蒼い雪が苦い顔をしだしてきた。
単純に読んで面白かった~!では済まず、読むのにかなり覚悟がいりそうな代物だった。
恐らく、読んでいて充足感は得られるし評価は高いのもうなづけるけれど、
読もうと思ってもなかなか手を出そうと思えないタイプのやつだ。
(―――私も…"倒しても悲劇を呼ぶだけの敵"?)
(都合の良い敵なんていない"苦い結末を抱えさせる存在"?)
(…だよね。)
…………。
否
今は、まだ……。まだ……。
「いいえ。」
「―――ありがとう、緋月様。」
繰り返し、ひねくれている、申し訳ない、
そういう貴女様に、首を左右に振って…お礼を言った。
「ならば」
「あの者の心中は如何様だったか。少しだけ私の想いを、聞いていただけませんか。」
「どんなものにでもなれる」
「故に」
「何者にもなれなかった、哀れな舞台装置の事を。」
「誰にも寄り添われない、絶対悪と定義された者を。」
目を伏せる。
「もし、仮に―――」
「彼女のように、他者の持つ全て、悉くを、己の手にすることが出来たなら」
「その者は、幸福なんでしょうか」
「生きる意味を、得られるんでしょうか。」
「自分が自分だと、言えるんでしょうか。」
「彼女はきっと。」
「そうじゃなかったんです。そうじゃないようにされたんです。お話の中で。」
(きっと、私も……。)
「何者にもなれる者が、誰にもなれずに、誰にも向き合われずに、朽ちていく心情―――」
「……」
「さぞ、苦しかったんでしょう…。」
声が、震えている。
「…ッ…失礼しました。」
言いたいこと。
気付けば夢中で言ってしまってた。
ダメだ
もう全然だめだ
こんなはずでは、なかったのに
「湿っぽくなってしまいましたね…本当に…大変失礼いたしました…」
■緋月 >
「はい。あの物語も創作であるとはいえ、世の中は決して安易な善悪だけで出来てはいない、という事を
子供心に思い知った気持ちでした。」
遠い目。
「――だからこそ、少しでも残された救いに僅かばかりの光を見る、という所が大きいのですけどね。
そういう、僅かな救いを探して読み直せば、本当に救いのない物語は…なくなりはしませんが、決して多くはないです。」
それはまた、随分と上級者というか、苦行的な楽しみ方ではないだろうか。
勧善懲悪の方が遥かに分かり易く思える。
「……………………。」
書生服姿の少女は、蒼い少女の言葉を無言で聴いている。
彼女が語り終え、更にいくばくかの時間を置いて、口を開く。
「――自分が何者か、なんて、疑問を抱く事がある人が、果たしてどれ程いるんでしょうか。
そんな考えに至る事の方が、きっととても難しい事なんだと…私は思います。
あの者の真意は、私には読み解けません。
私は、彼女ではないから。
でも――誰からも向き合われず、誰にも「看取られなかった」事は――とても、そう、とても寂しい事、でしょう。
私は、そう思います。
せめて――――」
せめて、絶対悪として誰にも看取られる事なく消え逝く事がなければ。
せめて、誰かがその最期位は看取ってあげれば。
「からっぽ」を抱えたまま、ただ散るだけの寂しい結末ではなかったのではないか。
書生服姿の少女は、終わってしまった物語を、そう鑑みる。
「――いえ、私も随分と湿っぽくしてしまいました。
帰る前に、何か気分が明るくなる、おいしいものでも食べましょうか。」
その点、食はいい。
おいしいご飯は、それだけで心を満たしてくれる。
食への感謝は、命への感謝だ。
食べられる命、食べて繋ぐ命、その双方への感謝だ。
■蒼き春雪の治癒姫 > 「そうでしょうね。―――絶対悪なんて、ないんでしょう。この世の中には。」
(でも小説にはあると思うけど子供のころから読むものかなぁそれ?!)
「……僅かばかりの光、僅かばかりの救い。それに縋るのは、何だか、本当に―――
なんとも、その。おすすめできるか分かりませんねそれ…?
緋月様、その。……あの、ご、娯楽ですから。楽しい小説も読まれた方が良いのでは…」
余計なお世話だと思うけれど、
何だか悲壮の中にせめてもの救いを求めるのって、聞いてるだけでちょっと辛い。
「……贋作の話を、しましたね。」
「ニセモノ。」
「後追い。」
「パクリ。」
「他者と同一ながらニセモノでしかない者は、ずっと、ずっと自分とは何なのか……って思うんです。」
「ふふ。」
目を開く。
「言わんとされた事、分かりますよ」
「せめて」
「悪と断じない誰かがいたら」
「寄り添ってくれる人がいたら」
「自分を自分と見てくれる人がいたら」
「どんなに幸せだったでしょうねッ」
(―――嬉しかったよ。その言葉が聞けて。)
(私は、そうならなかったけど)
(死後、そうだと思えたなら、もうそれでいいのかもしれない。)
「重ね重ね、ありがとうございました。」
「ええ、参りましょう。」
「映画館には、色んなレストランがあるんです。」
「ふむ」
「……甘いものでも行きますか。あちらです。」
お食事の話を振られると、いつもながら元気に同意して、
一緒に目指すのはパンケーキのお店。
看板の写真にカラフルなトッピングが目立つ。