2024/09/02 のログ
ご案内:「数ある事務所地下・医療ラボ」にエルピス・シズメさんが現れました。
エルピス・シズメ >  
 数ある事務所、地下医務室。
 《イリデッセント・リング⦆の光と、ナナからの連絡を受けて急いで帰宅した。
 幾つかの瓦礫や廃棄物の山を無理矢理突き破ったので、身体が痛い。 
 

 ナナがら状況を聞き、イーリスの身柄を預かる。
 大丈夫だからと言い聞かせて、落ち着かせる。

 イーリスの状況を確認。

 状態は瀕死で体が半分以上吹き飛んでいる。
 それだけではない。手に持った時に異常な熱としびれを感じた。

 少なくとも呪いを持ち出しているし、無茶な技術を持ち出している。
 厄介な状態になっている。ひとまず、自分の異能でイーリスに応答を呼び掛ける。

 生きていて欲しい、と強い願いを込めている。

「ナナ、本館の旧倉庫にアンプルの入ったケースがあるから取ってきて。
 それとペットボトルの水と食料。悪いけど、3日ぐらい籠る。」 

 応答を呼び掛けながら、強い願いでイーリスに精神から応答を呼び掛ける。 
 生命力の類も魔力に載せて送る。

 (いーりす……!おねがい、声を……!)
 

エルピス・シズメ >  
 壊れそうな自分の心を覚悟と理性で繋ぎ止める。
 自分まで崩れる訳

「……ッ」
 
 生きていない訳ではない。
 ただ、応答はない。

「ごめん、イーリス。
 知識を借りるために……継がせて、貰うね。」

 思いを継ぐ異能の、ひとつの使い方を行使する。
 その場に残された遺志を継ぎ、記憶や経験として得る能力。

 彼女は死んでいないが、応答が出来ない程にその淵に居る。
 故に、抵抗なく読み込むことが出来た。

ご案内:「数ある事務所地下・医療ラボ」にDr.イーリスさんが現れました。
Dr.イーリス > 下半身と左腕と顔の左半分が消し飛んで瀕死の重傷(頭は無事)。
加えて、無茶な戦い方をして、体内コンピューターの過剰な演算で熱暴走したり、呪いを自らにかけてそれにより呪いに体を蝕まれたりした後。

(…………)

イーリスは、エルピスさんの継ぐ能力でも応答できない。
臨死体験すらしていない程、意思すら呼び起せない程の瀕死。
もはや生きているというのが奇跡な状態。

エルピスさんの思いを継ぐ異能。
イーリスの意思ではなく、記憶や経験を直接継ぐのならば、それらがエルピスさんに流れて地下医療室にある医療機器の動かし方が伝わるだろうか。
例えばカプセル型の医療機器は、怪我人を中に入れて治療を促進する液体により体を癒して治療する。医療機器なので取り扱いが難しく、基本的にはイーリスがいないと起動させられない。

エルピス・シズメ > (……イーリスの頭の良さ。改めて思い知るよ。こんなに……)

 知識を得たが、多すぎて処理が追いつかない。
 このままでは、扱い切れない。
 
 なのでもう一歩、踏み込む事にする。

 継いだ感情から、思念や感情に由来する形而上要素を継承する能力。
 上記要素を経験した『自分の記憶』を再演算して、その存在を自身にオーバーライドする能力。
 
 記憶の読み取りを介する為、本人の能力そのものを奪う訳ではない。
 演習場に設置されている《ムネーモシュネー・システム⦆に近い性質。

 その能力を行使して、自分の在り方を変える。
 

『虹の希蹟』エルピス >  
 髪に金色が混ざる。
 ほんの少し、身体が縮む。
 力が抜ける。
  
 その代わり、継いだ知識の一部が理解できる。

「……これ、なら……。」 
 
 ただ、意識が混濁する。彼女の記憶の一部が流れ込む。
 見てはいけないものは見ないようにしつつ、罪悪感を覚えながら事を進める。

 戻ってきたであろうナナから生命を維持するアンプルをイーリスに打ち込み、
 バイタルカプセル型の医療器にイーリスを運び、イーリスの記憶を頼りに動作させる。

(ちゃんと使い方、聞いておけばよかった。)

 自分の落ち度だ。
 罪悪感と共に、緊急処置を終える。
 

Dr.イーリス > (エルピスさん……好き……。愛してます……。愛で、胸が張り裂けそうです……。エルピスさん……。エルピスさぁん……。えへ。すき……)

イーリスに秘めるエルピスさんの愛を直接感じる事になるだろうか。

『虹の希蹟』エルピス >  愛を感じる。
 通じ合った瞬間に、彼の不安と焦燥がイーリスに伝わる。
 直後にその意思を抑え、彼女が罪悪感を抱かないようにする。
  
「……大丈夫。イーリスは生きてる。生きてる……。」

 これは遺志にならない筈だ。
 記憶と処理を伝い、難しい動作をどうにかこなす。
 
 この状態でも、少しばかり苦しい。
 これは少しばかり違うものだから、彼女の知識に追いついていない。

 あくまで疑似的な再現であり、本物には及ばない。
 加えて、得意分野が少し違う。エミュレートでしかないから。

 以前、イーリスを仮説ラボから救出した記憶と併用してどうにかこなせる。
 極限まで知識を稼働させて、何とか処置を終える。

(愛してる、イーリス。呪いも半分、引き受けるから……ゆっくり休んで。)

 閉じる間際に愛を伝えて、不十分な知識を頼りに3割ほど呪いを継ぐ。
 元に戻ったことを考えると、これが限界だ。

 カプセルを閉じる。
 後は、回復を祈るだけだ。
 

Dr.イーリス > エルピスさんのお陰で無事に、イーリスはカプセル型医療器に入れられ、治療を始められる事となった。
しかし、カプセル型医療機器に入れて治療を進めても、イーリスの目は全然覚めない。

(…………)

いや、現状回復するかすら分からない。
カプセル型医療機器の中でさえ、もしかしたらこのまま目を覚まさず死んでしまうのではないか、そう思わせる程の瀕死な体。
意識のないイーリスは、己が今どのような状態なのかも自分で把握できない……。

『虹の希蹟』エルピス >  
「ナナ、ご飯を5日分。栄養剤もありったけ。
 赫さんには、暫く任せるって、伝えて……。」
 
 集中と焦燥故に、ナナがそこにいるかどうかすら把握できていない。
 居たらでいいと、声だけ出す。

「……いきて、いーりす。」

 回復を祈るしかない。
 カプセル越しに感情を伝え続ける。
 
 そのどこかで、視界が消える。
 異能によって自我だけは保てているらしいが、
 肉体としての意識が消えた。
 

イーリスの記憶 > それは、エルピスさんに流れ込むイーリスの記憶……。
回想(三歳) > それは、イーリスが三歳の頃。
スラム街にて。

「お義母さん、凄いです! どうやってこんなにも楽しいメカを造るのですか?」

義母「イーリスは、メカを造る事に興味があるのね。でもちょっと早いかしらね」

「造ってみたいです! どのように動いているのか、凄く気になります!」

義母「では、少しずつ教えてあげるわね」

「嬉しいです! ありがとうございます!」

イーリスはとても無邪気に笑っていた。

回想(四歳) > イーリスが四歳の頃。
スラム街での出来事。

「お義母さん……どこかに行ってしまうのですか? 帰ってきてくださいますよね……?」

義母「ごめんなさいね、少しだけ留守にするわ。大丈夫よ、必ずイーリスのところに戻ってくるわよ」

「約束ですよ。私を……一人にしないでくださいね……」

義母「ふふ。そうね、約束」

そうして、お義母さんはいなくなった。

回想(五歳) > イーリスが五歳の頃。
スラム街にて。

「お義母さん……。いつ帰ってくださるのですか……。どうして……私を一人残して……」

イーリスは、夜空を見上げた。
流星群が、降り注いでいる。

「お星様……お願いします……。お義母さんが常世島に帰ってきますように……」

イーリスは両手を組み、祈りを捧げた。そんなイーリスの瞳から、涙が頬に伝った。

回想(六歳) > イーリスが六歳の頃。
落第街にて。

落第街のワルA「お前、よくもぶつかってくれたな、おらぁ!!」

「痛ッ……! ごめんなさい……。痛いの嫌です……。ごめんなさい……。ごめんなさい……」

落第街のワルB「金置いていけば許してやるよ、らあぁ!!」

「ああぁっ!! 痛い……痛い……! ごめんなさい……。ごめんなさい……!! お金ないんです……。許してください……!」

落第街で、泣き叫ぶ幼い孤児たるイーリスに暴行を振るう男達。
無慈悲であった。

回想(七歳) > イーリスが七歳の頃。
スラムにて。

少年「へぇ……。てめぇ、面白れぇもの造るんだな」

緑髪の少年が、イーリスの造る小さなロボットを見てニッと白い歯を見せて笑っていた。

「私のメカ! お褒めいただき嬉しいですよ! 見てください! このメカ、背中のボタンを押したらお目めが光るのです!」

背中のボタンを押して、メカの目が光る。
イーリスは無邪気に、どやっと胸を張った。

少年「やるじゃねぇか。てめぇもスラムで暮らしていてお腹空かせてるんだろ? 俺と一緒に、この地獄を生き抜かねぇか?」

「そうですね……お腹空きました。私の事はDr.イーリスとお呼びください。あなたは?」

少年「俺か? 俺は、エメラルド田村っていうんだ。よろしくな!」

『虹の奇蹟』エルピス >  
 記憶が垣間見える。
 断片的な記憶が、暗い意識の中、クリスタルとして映される。

 3歳。純粋なイーリスと義母。
 イーリスの純真さを培ってくれた、聖母のような女性。

 イーリスの技術は、この義母から由来するらしい。
 義母の名前は、分からなかった。

 4歳。義母が何処かへと行ってしまい、帰ってこない。
 軽薄でも脆弱でもない、太陽のような義母が簡単に行方を眩ますと思えない。
 だから、死んでいない筈だ。

 感受。同期。見えているものが自分の事のように思えてしまう。
 この気持ちが、自分のものなのかイーリスのものなのか分からなくなる。
 僕とイーリスはちがうから、自分の事だとは、思う。
 
 5歳。誰か、イーリスの傍にいて。

 6歳。お願いだから、誰か、イーリスを認めて。
 誰か、助けて。

 7歳、あの人だ。よかった。本当によかった。
 直接会ったことは、まだないけれど。

回想(九歳) > イーリスが九歳の頃。
不良集団《常世フェイルド・スチューデント》アジトにて。

「……ようやく《試作型メカニカル・サイキッカー》が完成しました」

ちなみにMk-Ⅰである。
この頃、イーリスはどこか冷めたような表情だった。
不良集団《常世フェイルド・スチューデント》として、仲間と共に生き抜くために随分と苦労した。不良集団として盗みも働いてしまった……。
落第街やスラム……。この島の闇も随分と知ってしまった……。

「《常世フェイルド・スチューデント》も随分と人が増えましたね、エメラルド田村さん」

エメラルド田村「そうだなぁ。そろそろアジトを増やす事も考えねぇとな」

「せっかくなので、新しいアジトは私が改造しておきましょうか」

回想(十歳) > イーリスが十歳の頃。
不良集団《常世フェイルド・スチューデント》アジトにて。

「重大発表です。自分の体を改造してみました」

エメラルド田村「め、めちゃくちゃな事するな……」

ルビー山本「姐さん……すげぇマッドサイエンティストなんだよねぇ……!?」

この重大発表で、不良達からとても驚かれた。

回想(十二歳) > イーリスが十二歳の頃。
学生街の裏路地にて。
イーリスは《試作型メカニカル・サイキッカーMk-Ⅱ》を侍らせ、四人の不良を従えていた。

不良A「金出せ、おらぁ!!」
不良B「痛い目に遭いたくねぇよなぁ!?」

被害者「ひいいいいいぃぃぃ……!!」

不良達がかつあげしている中で、イーリスは室外機に座ってつまらなさそうにスマホを弄っていた。

本当に、このような人に迷惑かけてまで生き続けていいのだろうか……。という疑問。
でもそうしなければ、《常世フェイルド・スチューデント》のみんなが飢えて死ぬ……。

(私は守るのです……。《常世フェイルド・スチューデント》のみんなを……。私達を頼ってくれたスラムのみんなを……)

『虹の奇蹟』エルピス >  
 9歳。ちゃんとそだった。
 僕の知っているイーリスとすごくちかい。でも。

 そうだよね。そんな顔をするのが、普通だよね。
 楽園みたいな常世島の秩序をすり抜けて零れ落ちて、

 死と暴力の穴倉みたいな落第街。
 冷めた眼をするのが、当然だよね。

 ……こんな顔は、すこし、みたくない。
 でも、今のイーリスの、だいじな理性。
 ちゃんと、優しくて強いイーリスのひとつ。みとめなきゃ。
 
 10歳。僕の知っているイーリス。

 自己改造をした。どんな気持ちでしたのかまでは分からなかった。
 ただ、故エルピスの僕は……辛い気持ちで、無茶をして弄っていた。
 結果、魔法も異能も使えなくなった。

 そういえば僕、故エルピスの自己改造と反転異能は持ってないや。
 年齢も、違う。でも今は、そんな事はどうでもいい(僕のことは)んだ。重要な事じゃない。 

 伝わっちゃったから、ちゃんと見なきゃ。

 12歳。僕の知らないイーリス。
 組織をまとめ上げるようになって、歩んできた道。
 ……すごく悩んで、苦しそう。でも……イーリスなら、そうしちゃうし、できちゃうよね。
 イーリスは、身体は弱くても、それ以外はすごくつよいから。
 

回想(十四歳) > イーリスが十四歳の頃。
学生通りにて。

イーリスは紅き屍骸、紅き地泳グ酸鮫と戦い討滅に成功した。
しかし、それによりイーリスは右腕と右脚を失っていた。機械仕掛けの車椅子に乗り、学生通りに訪れる。
スラムのストリートチルドレンであるイーリスは、お金なんて持っていない。だけど、暑さに耐えきれずに昼食を我慢してまで自動販売機で飲み物を買う事にした。

しかし、自動販売機にコインを投入したはいいものの、欲しいりんごのパックジュースまで手が届かない。

「……えっと……こんなはずでは……」

誰かに代わりに押していただこうと、きょろきょろと周囲を見渡した。

その時に、イーリスの青い瞳に映るのは──。

──栗色の髪に多義手で義足。学ランを羽織っていてる女の子……(と当時思っていた)エルピス・シズメさんだった。

エルピスさんとイーリスの目が合った。
とても可愛らしい少女のような少年との出会い。

二人の物語は、そうして始まった──。

『虹の奇蹟』エルピス >  
 14歳。今で、はじまり。

 僕が居た。何もかも忘れて、普通に暮らそうとしていた僕。
 自販機に苦戦したイーリスにりんごのパックジュースを手渡して、
 お願いしてくれるまで自分で刺せるように見守ってた。

「あのときの僕……そういえば、そうだったね。」

 他人同士であるはずなのに、そのやりとりはすごく、覚えがある。
 
 ぼくはイーリスの頑張りと選択を認めて、応援してる。
 助けを求めた時と、もしもの時に、出来る限り支える。

「この時から、そうだったね。イーリス。懐かしいね。」
「今回も、頑張った結果だよね。」
「だから、僕が出来ることはなんでもするし、支えるよ。」

 想い出を映すクリスタルに手を伸ばす。
 現実の僕が、どう動いているかは分からない。

「イーリスのぜんぶが大好きで、応援したいから。」
 

エルピス・シズメ >  
「愛してるし、愛し続けるよ。」
「何度だって、助けるから……」

 能力にも限界が来た。
 元の自分に戻った と思う。

「くじけないで、生きて。」

 言いたいことを、何とか言えた。ぜんぶ、真っ暗になった。
 身体が揺れた気がする。気のせい、かも。
 
 ──エルピスの意識と身体は、此処で落ちた。
 

ご案内:「数ある事務所地下・医療ラボ」からエルピス・シズメさんが去りました。
ご案内:「数ある事務所地下・医療ラボ」からDr.イーリスさんが去りました。