2024/09/14 のログ
ご案内:「禁書図書館/永遠の間」に蒼き春雪の治癒姫さんが現れました。
>  
そこは。
踏み入れた者を、
永遠という無限の時間の檻に捕らえる、という――。

踏み出すたびに、
ゆっくりと、
辺りの時間の歪みに捕らえられていく。

蒼き春雪の治癒姫 > 時計が時を刻む音が、聞こえる。

それは
一歩踏み出すたびに
遅くなっていく。

正常ではない
常識では測れない

時を刻まない世界へ、
終わりの世界へ、

一歩

一歩

一歩―――。

蒼き春雪の治癒姫 > 「……終わりだね。」

最後に。

あの方に

緋月様に貰ったメッセージを振り返る。
楽しかった、な。

蒼き春雪の治癒姫 > ―――一番後ろに、私が消したメッセージが残っている。

これで、いいんだ。

これで―――。

ご案内:「禁書図書館/永遠の間」に緋月さんが現れました。
足音 >  
――かつ、と、足音が響く。ブーツの立てる、乾いた足音。

外套が靡く音、和服が擦れる、独特の音が。

奥へと向かおうとする蒼い少女の元へ響く。

――急いで走って来たのか、小さく息を荒げるような呼吸音。

時を刻む音に混じり、確かに聞こえて来る。


――――それは、「あなた」が思い描いた人の音、そのもの――

 

蒼き春雪の治癒姫 > 「!!」

音に、振り向く。

―――そっか。

それが。

貴女様の

選択なんだね。

そっか―――。

私は、貴女様から逃げた。

殺害欲から逃げた。

そうすれば、誰も傷つかないで終われるから。

きっと、こうして……

出会う事になったら

お互い

無事では済まないだろう。

でもね。

こうも思うんだ。

蒼き春雪の治癒姫 >  


      こんなところまで、来てくれて嬉しいな、って。


 

蒼き春雪の治癒姫 > 「幻滅した?……私、こんな女なんだ。」

頭を抑えながら、貴女様がいることを確信して、
足音へ声をかける。

緋月 >  

         「――――お久しぶりです、"蒼雪"さん。」

 

緋月 >  
其処に、その少女は立っている。

暗い赤色の外套と、グレーの髪色のポニーテールを靡かせて。
いつものように、長物の入った刀袋を腰に差して。

その赤い瞳は、蒼い少女に真っ直ぐに向けられている。

「――――」

恐らく、此処まで来るのに何者かからの手引きがあったのだろう。
でなければ、ただ息が軽く上がった程度で済むはずがない。

その手引きを行ったのが誰であれ。
如何なる手段でこの危険な領域まで辿り着いたのであれ。

書生服の少女は、確かに此処にいる。
悲しみも怒りもなく、ただその瞳は、蒼い少女に向けられている。

「……最期の時を迎えるその瞬間。
独りきりでは、寂しいでしょう。
見送る者の一人位は、居てくれてもいい。そうは思いませんか?」

まるで、世間話か何かのように、そう声を掛ける。
"友人"と他愛ない会話を交わすように。
 

蒼き春雪の治癒姫 > 時計の針の音が聞こえる。
足音が消える。
人の…憧れた彼女の声が聞こえる。

足音から人の姿が見える。
今日も書生服なんだね。
初めて見た時も
初めて会った時も

―――最後に見る時も。

「……久しぶり。」

貴女を見る顔は。
どんな顔をすればいいのか
もう分からないといった風だった。

普段は猫被っているけれど。
こんな冷ややかな顔が本性。

「―――来ないでッ」

一定以上の距離を、
保つように。
それ以上踏み込んだ時が、
最期だと悟るように。

「でも」

「嬉しいよ」

「来てくれて」
「――そう、だね」

「……(わたし)を、貴女が、見送ってくれる?」

「だけれど。」

「それには、きっと悪夢が付き纏うよ。」
「――単に見送ってもらうだけでは気が済まなくなってしまう。」

緋月 >  
「……。」

叫びに、足を止める。
そのまま、友の声を聞く。

来てくれて、嬉しかったと。
見送ってくれるのか、と。
――其処には、悪夢が付き纏う、と。

答えは――

「………。」

しゅるり、と、腰の刀袋の紐を解き、中身を引き出す。
白い柄巻に、金の鍔、白い鞘の刀。
すらり、とその白刃を抜き放つ。

「……イーリスさんから、お話は聞きました。
『紅き屍骸』の殺人欲を、何とか抑え込もうとした、と。

……嬉しかったのです。あなたの事情を知って、尚、「人」として助けようと
してくれた人がいた事が…その、気持ちが。」

双眸に、蒼い炎が宿る。

「――彼女の思いも背負って、私は此処までやって来た。

あなたが、『紅き屍骸』へと落ち果てて……殺人欲に飲み込まれ、咎無き人を害し…
「敵対的な怪異」として、誰かに「処分」される位ならば――」

劫、と、その顔を、黒い狼の仮面が覆い隠す。
その瞳は蒼炎で隠れども、向けられる視線は変わることが無い。
 

緋月 >  
「傲慢だと言われても良い。思い上がりと詰られようが構わない。

――あなたの"友人"として、あなたの「尊厳」が『紅き屍骸』に踏み躙られる前に、

私が、あなたに最期の「祝福(慈悲)」を送りましょう――!!」

 

開戦の狼煙 >  

――それこそは、友人同士の、争いの口火を切る宣言。

最早、互いに後戻りは出来ない――

 

蒼き春雪の治癒姫 > 最期を、感じさせる言葉。
ドキドキする。
ゾクゾクする。
……体中を紅い紅い紅い殺害欲が、
いけないのに、滾っている。
おかしい。

「ふふ」

「かーっこいいなあ」

祝福(じひ)、だって。」

他人事のように。
貴女の言葉を反芻する。

そうだ。
それは、あの時は他人事だった。
私はただ、外から見ているだけだった。

今はどうだ。

―――まさか。

貴女と。

こんな形で、相対する、なんて。

ね。

「ありがとう、緋月様――いや。もう、緋月、でいい?」

名を呼び捨てにすると、距離感が近くなるらしいね。
――今更だけれど。

「えーっと、こういう時はさ、名乗るんだったよね?」
「――知っているよ、貴女が名乗ったあの剣術の名」
「九天無骸流魔剣術――だったね。ふふ、懐かしいな。」

カッコよかったよ。
あれ。
今でも思い出せる。
昨日のように。

「私も先に名乗っておこうっかな!」
「何者にも贋れるが故、何者にも成れぬ血色の雪――、血雪(ちゆき)。」
「――よろしくね。」

ふふ。やっと言えた。
本当は名前も墓場まで持って行くつもりだったんだけど――。
もう、いいや。全部吐き出しちゃおう。
殺害欲と一緒に。
全部。

「どうか、」

「私を」

「―――斬って(救って)ね。」

「そして――貴女が慈悲をくれるなら。」

「私と」


「わたし、と――」

殺害欲。

もう、抑えきれない。
ああ、なんて汚い欲望なんだろう。

それも、吐き出しちゃおう。

ご案内:「禁書図書館/永遠の間」から蒼き春雪の治癒姫さんが去りました。
ご案内:「禁書図書館/永遠の間」に紅き春雪の治癒姫さんが現れました。
紅き春雪の治癒姫 >  


     「紅に染まり、永遠を共にしない?(死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね)

 

紅き春雪の治癒姫 > ヒリつく空気

向けるソレは全てが殺害欲。
抑えきれぬ欲望は
共に屍骸に落ちて永遠を共にしたい憧れと入り混じった、
されど結論としてすべて殺害欲に帰結するモノだった――。

緋月 >  
「――――それが、」

刀を構えたまま、小さく声をかける。
蒼く燃える双眸が、その変貌を見届ける。

「あなたが、隠し続けて来た、本性(秘密)……ですか。」

燃える。燃える。
蒼炎が、まるで涙を流すように、怒りに震えるように、燃える。

「………敢えて、我儘を言います。」

蒼炎が、更に勢いを増す。
身に着けた者の身体にまで、燃え移り、焦がさんばかりの勢いで。

「――信じたく、ありませんでした。あなたの、その姿を。
見たく、ありませんでした。あなたの、その衝動に呑まれた様を。


――――許しては、おけぬ。


あなたを、そのような有り様とした、忌わしき者の、存在を――――!」


怒りと悲しみが、綯い交ぜになった叫び声。

それに呼応するように、涙のように零れ落ちる蒼炎が、書生服姿の少女を包み込み――――
 

ご案内:「禁書図書館/永遠の間」から緋月さんが去りました。
ご案内:「禁書図書館/永遠の間」に黒き大神の剣士さんが現れました。
黒き大神の剣士 >  

        「――その妄執、安らぎの地へと送り届けん(私がアナタの最期の友【死】を呼ぼう)。」

 

黒き大神の剣士 >  
其処に立っていたのは、黒き剣士。
髪留めは弾け飛び、グレーの髪は更に色素が薄く、ライトグレーへと。
書生服は漆黒へと染まり――その顔を覆い隠す仮面は黄金の隈取で目を覆われ、
牙を剥き出しにした怒れるかのような、和を思わせる形状へと、その姿を変容させる。

黒き剣士は、その殺害欲を真っ向から受け止め、受け流す。
その有様は、まるで冥界の使者が如く。
死を想え、安寧を願え。

死とは即ち、生の最期に迎えと来る、最期の友。



――かけまくも 畏き 黒き御神――
――畏み 畏みも 白す――

――諸々の 禍事・禍魂・禍人 有らんをば――
――祓え給へ 清め給へと 白す事を――

――聞こし食せと 畏み畏みも 白す――


――我 黒き御神の 使徒なれば――
 

紅き春雪の治癒姫 > 「ふふ、そっか。それが貴女の――答えなんだね。」

紅き雪
相対するは
黒き剣士
変り果てていく様を、黙して見守っていた。
……随分と、変わった。
特に―――いつもの書生服の色が変わったのが、とても印象的だと思った。
黒い――。

「私の想いを――妄執と、斬り捨てる。それが。」
「あーあ」
「――美しいお顔が、見えなくなっちゃった。」

呟く。

「でも」
「それでも今日も美しいよ。貴女は。」
「だから」
「――死んで?一緒になろうよ。」

幾ら受け止められようと、受け流されようと。
殺害欲は、尽きぬ。

「始めよっか。」

「そして。」

「終わらせよっか。」

永遠の間に紅い雪が降る
血色の幻影が宙を舞い、渦を巻く
それら全てが
紅色の贋作記録

「ごめんね。」
「痛いのは一瞬にするから。」

貴女に見せた

永劫融けぬ蒼雪 の 真逆の異能。

優しく、温かく、誰かを癒すための蒼い雪とは正反対の、
痛々しく、冷たく、誰かを殺すための紅い雪。

注ぐ雪の中で、
大切にしまい込んだ刀を抜く。

きっと
その抜く所作すらも、
貴女からすれば面白い程慣れていないだろう。

だが。

斬る(殺す)という意思だけは、莫大だった。
慣れぬ手つきで、まるで飛び掛かるように、
斬りかかる。
抑えるのも、弾くのも容易だろう。

だが――

紅き春雪の治癒姫 >  

      「死ね―――ッッッ!!!!!!!!」

       伴うは天地を返すかの如き広範爆轟。
 

紅き春雪の治癒姫 > 否。
それは、何かが爆発したわけではない。

本来は不可視であるはずだが…
貴女になら見えるだろう。
それは全て「斬閃」にて贋られたモノだ。

そう。

その正体は、贋りの斬月。

抑え込んで、抑え込んで、抑え込んで、
やっと解き放たれた、純粋なる殺害欲。

斬るという意思(殺害欲)に乗せて放つ、

三日月によって構成される満月。

―――一つ大きな欠点があるとすれば。

―――その「斬閃」は全てが「拙い」事だ。
―――達人の技とは到底言えない、
―――あの日訓練施設で見たような、拙い斬閃だ。

黒き大神の剣士 >  
強烈な殺気。
恐らくは、今までに抑制を続けて来た結果の反動と思えるような。

そして襲い来るのは、黒い剣士が今まで重ねて来た修練から見れば、酷く拙い一閃。

だが、油断はしない、出来ない。
そして、見えたのは――

「……ッッ!」

同時に見えるのは爆発――否、円…それも違う、「球状」の、斬撃!

斬撃とは刀から作られる、極めて「平面」に近い攻撃である。
その「常識」を、容易く覆してくる脅威!

(――これが、熟練の者の技だったなら、今頃私は死んでいた…!)

幸いだったのは、「見てから」対処する事が出来る攻撃であった事。
そして、その余裕が――黒い剣士に、的確な攻撃法を選ばせる。
 

黒き大神の剣士 >  

                    『――界ヲ斬ル(界断チ)

 

黒き大神の剣士 >  
放たれたのは、「界」を断つ攻撃。
「球状の斬撃」という「界」…空間を裂き得る斬撃。

しかも、その太刀は一刀に非ず。
まるで居合術のように、通常一閃の間に幾度もの斬撃が放たれ、
「球状の斬撃」を斬り刻み、無効化せんとする――!

(……あの人が使っていた界断チを見ていなければ、思いつかなかった…!)
 

紅き春雪の治癒姫 > 球状に発生する斬閃は、
しかして拙い。
そして、無駄が多い。
貴女が「必要な部分だけを」斬って捨てるだけで、
無効化は容易い。
だが、
無駄となった斬閃は、
拙いながらもあたりを刻み、食い込む。
1つたりとも有効射程範囲を見逃せば、拙い斬閃が無効化の域を掻い潜り、
血を流させよう。

「あ、あーう…」
「だめ、か…」

見て分かるだろう。
"慣れない事をやった"のだ、と。

そして。

聞いて分かるだろう。
先の一撃で"殺し合いを終わらせる気"だったのだ、と。

故に

そこには大きな後隙が生まれる。
刀を手に、ぐったりと地面に這い蹲る――
凡そ、殺し合いの最中では決して見せてはいけないような後隙が。



自らを守るように、紅い雪を注がせる。
人を殺すための冷たく痛々しい紅い雪を。

黒き大神の剣士 >  
「……恐ろしい、攻撃でした。
もしあなたがより熟達していたなら、今の一撃で私は死んでいた。」

そう返しながら、黒い剣士はゆらりと手にした刀を最上段に構える。
その刀は振り下ろす為に非ず――即ち。

「……こう、でしょうか。

――界断チ、重ねて、斬月・醒――!」

大上段に構えた刀を、ゆっくりと回転させる。
その軌道に、「斬月」と、その軌道を追う多数の斬撃を重ねながら、
軌道は大きな円を描き――

「――放つ()ッ!」

轟、と、「円形」の斬撃が、中心を縦軸として「回転」しながら放たれる!

円の中心に縦の軸を取り、高速で回転させれば――それはつまり、疑似的な「球」。
大仰過ぎて実戦には向かないが――それは、飽くまで今回の話。
工夫はいくらでも出来るだろう。

そんな間にも、多数の斬撃を纏いながら、「回転する円の斬撃」という怪奇が、
紅の少女に襲い掛かる――!

黒き大神の剣士 >  
――その球は、界を断つ球の斬撃。

触れれば、「球の斬月」の残滓は、抉られるように消し飛ぶレベル――!
 

紅き春雪の治癒姫 > 数多ある斬撃が、
円を回して球を成す。

私は球を作るために「無数の点」としての斬撃を仕向けた。
貴女は球を作るために「回る円」としての斬撃を仕向けた。

(敵わないなあ。)

斬撃の質は、

比べるまでもない。

見ればわかる。

あれは触れてはいけない。

触れれば即ち、死。


だが。

慣れぬ技に、地に伏した紅い雪は、
抵抗すらできなかった。

自らを守る事も出来ぬまま、

斬撃を浴びて

洗濯機に回されるように

消し飛んで

逝った――。





―――拉げてぐちゃぐちゃになった紅い雪が注ぐ。

紅き春雪の治癒姫 >  


     「運命ってのは、残酷だね」
     「死んで、死んで、死んで、それでも――」
     「貴女を殺したいと体が動く。どうしてなんだろう。」

紅き春雪の治癒姫 > 「……ふぅ……ッ…!」

元に戻る。
あれ程の斬撃をその身に無抵抗で浴びながら。
融けて水になった雪が、再び冷えて戻るように。

「ええっと。覚えてくれてるかな、私の。異名―――」

黒き大神の剣士 >  
「………。」

その場の思い付きで放った、「球」の斬月。
それが、紅い少女をズタズタに引き裂き、消し飛ばし――しかし、まるで何事もなかったように
紅い少女は元通りとなる。時計を逆回しにしたかのように。

「…ええ、覚えていますよ。」

ゆら、と牙を剥きだす狼面の双眸の蒼い炎が揺れる。
まるで、思い出話に花を咲かせるように。

「『蒼雪の治癒姫』――でしたか。
異能の名前は、《永劫融けぬ蒼雪(エターナルヒール)》。
複合的な治癒を行う、「不死身の軍団」の要の異能。」

知り合いに無理を言って調べて貰った結果は、そういう内容になっていた。
だが、どうやら――――

「……その様子では、飽くまで「自己申告」、だったみたいですね。」

――その本当の異能は、違うらしい。
そう、凡その見当をつける。
 

紅き春雪の治癒姫 > 「ああ―――やっと、斬って(救って)くれたね……!」

とても。
とても満足そうだった。
あれほどに、待ちわびてこがれた斬撃を、
その身に浴びる事が出来たのだから。

「その通り」
「そこまで知っててくれたんだ、ちょっと照れちゃうかも」
「そこまで知ってるってことは、まあ……」
「キャラ作ってたのもバレてそうだね、あはは、はっずかし。」

調べてもらったんだったら、知ってるだろう。
本当は冷たくてぶっきらぼうな奴だったって事も。

「申告が嘘ってわけじゃないよ。その異能、ちゃんとあるんだから。」

「それに」
「もう、どんな異能か――分かってるんじゃないかな」

今までの言葉で、見当もついてしまうだろう、と。
けれど。

「――分かったところで、どうしようもない、ことも。」

答えは贋作。
他人のモノを自分のモノと贋るに過ぎぬ能。
その代償がある事も…多分知っているだろう。

不死身の軍団にも、限界がある。

だから死んだ、殺された。
と、ここまでは容易に推察がつくはず。

「恥ずかしながら」
「――慣れてないんだ、殺し合い」
「一撃放ったら隙を生むし、一撃放たれたら斬られる。」
「だから一刻も早く終わらせないといけない。」

紅い雪の贋作記録の一つを掴み取り、

「こんな、どうしようもない、卑怯な手を使ってもね。」

注ぐ紅い雪は、
より、苛烈に、
辺りを彩る。

――― > ―――

「指定した部分の痛みを感じなくする。自然治癒力を増やす。即死しかねない攻撃を耐える程の活力。低くなった抵抗力の治癒。疲労感や眠気を和らげる。立ち眩みや不安定な感覚を正常に戻す―――希望される治癒。なんでも、どうぞ。」

―――

紅き春雪の治癒姫 > では。
これらをすべて逆回転させれば、どうなるだろうか……?

蒼い雪の表裏一体のソレは、
悍ましき呪いとして、

あの時与えた癒しの真逆のモノとして、注ぐ。

痛み、
治癒の低下、
何らの衝撃ですら死に繋がる脱力、
疲労感、
眠気、
立ち眩み、
不安定、

しんしんと、間隙を満たす、
あらゆる癒しの真逆を与えんとする、紅雪―――ッ!

黒き大神の剣士 >  
「っ……!?」

ぐらり、と、紅い雪が、触れた瞬間。
活力が奪われたように、軽く足がもつれかける。

(いや、違う…!)

苦痛、脱力、疲労……あらゆる「侵食」が襲い掛かる…!

「なる、ほど……これは…治癒の異能の…反転――!」

しかも、予想が正しければ、それは降り注ぐ雪全てが効能を持つもの。

「納得です…これほどの規模を、治癒能力として、一人で齎す事が出来るなら…
「不死身の軍団」の、異名も……大仰なものでは、ない…!」

そんな間にも、更に雪が降り注ぐ。
これは、まずい。長期戦であるほど…重く、圧し掛かる。

――こんな力を扱える彼女ですら、『紅き屍骸』へと堕とした…彼女を殺す事が出来る
実力を持った『屍骸』がいると、言う事か…!?

――――それが、どうした。

「……戦いに、卑怯もへったくれも、ありませんよ…。
それを使わなければ、「敗ける(殺される)」なら……全力で使って、当たり前、です…!」

彼女を一度、殺した者がいるというなら――


「………その上で……」

自分が、その「二番目」になれば良いだけの事。

「私は――必ず、あなたを……安らぎに導く(呪いから解き放つ)…!」


――――――――

 

「なにか」 >  


                                 かちり。
 

「なにか」 >   
黒い剣士の、その背中。
そこから、響いた、ちいさな音。

――――ほんの小さな筈の金属音が。

やけに大きく、しんしんと降る紅い雪の中、響き渡る――。
 

紅き春雪の治癒姫 > 「あー…わかっちゃう?」
「そう、癒しなんていうけど…本当は殺傷(コッチ)だよ。」
「ごめん」
「本当にごめん」

「こんな殺り方したくなかったよ」

これは。
最大限相手を苦しめる卑怯なやり方だ。
屍骸になってなお、
これはやりたくないと思っていた方法だ。

で、
なんだ?
だったら
その方法を拒んでいいのか?

いいわけないだろうがッッ!!!

持てる手段を全部尽くす!!
ありとあらゆる手段を以って殺戮する!

それが紅き屍骸!
殺害欲の権化ッッ!!

「一瞬で終わらせたかったんだ」
「だけど。貴女を相手にそれは絶対に無理だという事を、最初の攻防で理解したんだ。」

あの一撃で、
こちらの攻撃は阻まれ、あちらの攻撃は全て受けた
その事実だけで、真っ向勝負では勝てぬ、と理解する。

「一撃を放ったら、返されて、此方が追い詰められる」
「普通のやりあいで長期戦になったら、私が負けるなら」

「その前提を覆せばいい」

「――恨んでくれていいのに。」
「どうして、貴女はそんなことを言うの?」

こんな手を取った以上、正々堂々となんて言えないだろうに。
それでも全力で、と貴女は言う。

――何かの物音がする。

本能的に察知する。

これはいけない、と。

「ごめんね。ごめんね。」

「本当に、ごめんね。」

「こんな形で」

「初めての出会いを」

「汚してしまって。」

紅い雪が豪雪となり、
軈て、

新たに一つの効果を付随する。

それは―――

紅き春雪の治癒姫 >  
経絡系の、破損。

あの時、癒しとして感じたものと正反対。
効いてしまえば、体の中に氷でも織り込まれたように、
気の巡りを凍てつかせる、ソレが注ぐ。


初めて出会った時――貴女は照れくさそうに、受け入れてくれていたね。

――それなのに今、なんて、酷いことを…!!

なのに、止まらない、止められない。

殺さねば、気が済まない。

殺さねば。



さぁ、死ね。

「―――死んでよッッッ!!!!!!!!!」

「■■■」 >  

――相対する者の邪念――

――手にする者の、解放の決意――

――天地に満ちる、祓うべき悪――


――今、此処に、放たれるべきモノは満ち来たり――

 

「■■■」 >  

              ――――臨メル兵 闘ウ者――――
             ――――皆 陣烈レテ 前ニ在リ――――

 

「■■■」 >  

               以テ

            解 キ 放 ツ !!!!

 

黒き大神の剣士 >  
「…!?」

ばしゅん、と音を立てるように、黒い剣士の外套の中から飛び出したのは――
刀身に刻まれた九の字が輝きを放つ、武骨な片刃の大剣。

その刀身が光に包まれ、割れるように分かれてゆき――


偽りの刀身が光と消え去り、真の刃が、その姿を現す。

殆ど反りの見えない、直刀と言っていい、大太刀。
紅い雪の中に在って――尚、それは清冽な輝きを放つ。

かの剣の名は、「斬魔刀」。
あらゆる邪を、魔を、悪を、斬る為の、妖なる刃。

それが今、戒めより解き放たれる。

在るだけで、この空間を満たす邪なる思念を纏った異能を消し飛ばさんとする気を
放つ刀が――

――黒い剣士の元に降り立ち、握られる――!

「う――あぁぁぁっ!!」

気合と共に、半ば本能的に、その刀から、一太刀を放つ。

この地を満たす、紅い雪(悪しき力)を斬り断たん、と。