2024/09/21 のログ
■エルピス・シズメ >
「……だいじょう、ぶ。
そもそも……暴力も言葉も、あの手合いには……意味が、ない。
既視感も、そう言っている。……ただ、少しだけの反論は、ゆるして。」
静かに、絞り出す様に。答える。
握りしめられた手を通じて、少しの平静を戻す。
甘えるように、握り返した。
またひとつ、イーリスの愛を受け取る。
今はまだ芽吹いてはいない。ただ、いずれに至る想いの重ね合い。
これ見よがしに口を叩かれれば、苛立ちを覚えた。
「……懇願する。それ以上の愚弄は、よく考えて喋って欲しい。超越者。僕たちのこと犬やら飼い主やらペットと、愚弄して…………それが如何に単調であっても、怒りを覚えない訳がないと分かっているとしても、だ。」
畜生に例えられ煽られれば、無為や挑発であっても感情には来る。
特に弁えた結果ならば、猶更だ。
「おまえのようなものが、この場を切り抜ける確信しかもっていないのは、分かっている。公安時代から、まともに付き合って沢山痛い目をみた。」
そうされて、激情を覚えない人間はそう居ない。
反射的にあげつらい返し、言い返すことそのものは容易だ。
だが、目の前のものには真っ向から舌戦を挑んでも意味はないし、
却ってこちらを傷付ける言葉を返して愉しむだろう。
冷静に、慎重に、言葉を選ぶ。
イーリスの前はやさしくありたいし、カッコつけたい。
そんな気持ちなど、目の前の超越者は理解しないのだろう。
これらを踏まえ、この場での舌戦で渡り合える分野は、相当に限られる。
■エルピス・シズメ >
「……愚弄するならもう少しだけ、頭を使ってほしい。
イーリスの前で、化かし合いは、したくない。」
「カッコ、つけさせてよ。超越者。」
■Dr.イーリス > (扉越しで小さな声で会話するだけでは、黒き泥には聞こえてしまいますか……。迂闊という程ではないですが)
「私、居候として彼にはお世話になっていますからね。家主さんの顔色が気になるのですよ……という程他人行儀な関係ではないですが。よく知りもしない他人の思惑感情にまで一喜一憂していては無駄に疲弊するだけ、というのはあなたの言葉でしたね」
あえて遜って主従関係を入れ替えた論点ずらし、ギフターさんへの皮肉と、エルピスさんへの擁護。
「事実だとすれば思ったよりだいぶ弱いですね。さすがに本体よりかなり質が落ちるとは予想していますが。仮にもマリアさんに闇の力を与えた存在でしょう」
マリアさんから出てしまえば弱くなってしまうという可能性もなくはないだろうけど。
あまり真に受ける必要もないし、殴って砕けたならそうなった時に考えればいい程度の問題。
「……そうですか。では仕方がありませんね。マリアさん、いえ麻木真子さんは風紀委員として逮捕させていただきますね」
何人もの人を殺害した大量殺人犯。
イーリスに敵意を向けたまま。
更生の余地は、もはやイーリスだけではどうにもならない。
洗脳の証拠提出、人格が混じり合っている事に対する治療の手配はするけど、マリアさんは安心して情状酌量を求められるような人格ではない。
人情による風紀は、別に何でも赦すわけでもない。仁義も何もない相手に加える手心はあまりない。
(マリアさんの人格を随分と見誤ってしまったものですね……。私が死にかけてから、事務所のみんなと蒼先生に随分と的外れなメッセージを送ってしまったものです)
「さて、親愛するマリアさんをこのような状態になるまであなたの成し遂げたい事とは何でしょうね。あなたが始めた曲芸は一時勢いもありましたが、異業者の一角である魔法少女マリアさんがこうして落ちているわけですし、観衆の興味が少しずつなくなっていく光景に関して曲芸を演じる道化師さんはどう思われているでしょうか?」
きょとんと小首を傾げた。
「……そうですか。では、エルピスさんがしないなら私は代わりにやってきますね。どのみち、あの黒い泥をみすみす逃すつもりもありません」
まだ攻め込む意思は見せないが、エルピスさんにそう告げる。
ギフターさんに発せられるエルピスさんの言葉には、イーリスは目を細めた。
■黒い泥 > 「懇願と言うからには地に頭を擦り付けて物を言ってみるのである。
……私の様な相手に黙って怒りを覚えるのが君の言う格好つける、であるか?
腹の中に澱みを抱えるだけなどただの自傷行為とは思わんのかね?
惜しむらくは冷静な判断力を以てして感情を押し殺すには君は少々感情が豊かすぎるであるな。」
もういいである、と視線を外す
大人しくしていて恰好がつくのなら存分に大人しくしていてもらおう
「ふむ、言い切り返しであるな。これは手痛いである。
闇の力とは異な事を、多少の記憶の改ざんと私と言う魔力バッテリーを与えただけである。
本来の私の力があったとして、一度混ぜ切った卵をもう一度割った直後の状態に戻すなど到底できんであるな。
それこそ、割直すでもしない限り。」
破壊と創造とはよく言ったもの
スクラップアンドビルド、ゼロに戻してもう一度ゼロから編集し直す
そんな事をしろと彼女は言うのかどうか
「では私はマリアの減刑でも求めて署名活動をしてみる事にするである。
まぁ、ここから出て引継ぎが出来たらの話しであるが。
流石のイーリス嬢もそれについては分かるまいよ。
だが、言っている事はその通りであるな。異業者のマリアと他の2人も何かしらの形でエンディングを迎えるだろう。
はてさて、それで私は何かを成し遂げられるのであろうか?
因みに現状については私は大変満足しているのである。特にあれ、マリアの最後に使った魔術と呼べない魔術。あれは特によかったである。」
だからこそこんなにもマリアが愛おしい
彼女は自身の価値を示して見せた、他の有象無象達とは違って
■エルピス・シズメ >
「……そうだね。それで十分だ、僕が悪かった。
だからこう呼び直す。エルダー。」
最初の句はともかく、懇願で挑発の解像度を上げさせた。
そうすることで、あのものの中にある観念を、ほんの少しだけ紐解く。
ざっくり言えば、ギリギリ、理解の出来ぬ相手ではない。
同時にこれ以上は暴かれると判断し、謝罪の言葉で会話を切る。
これ以上の論には乗ってはいけないと、理性が抑えた。
安易な言葉や大げさな仕草は使うが、頭は回る。ただの狂人ではない。
(思ったよりは化け物ではない。
このズレ方は神にしては妙だ。……異能によって強くなったにしては、凝り固まっている。
長生きした魔術師。魔族、エルダーリッチ。多神の神の一つは有り得るライン。)
この会話だけでも分かることはある。
理屈では人の心は分析しているが、機微まで読めない。
同時に、感情が伝わらない訳ではない。神にしては思慮がある。
改竄や魔力バッテリーとつぶやかれたものも、魔術の側面を補正する。
(ギフトを与えるルーツだけが分からない。)
(考えても仕方ない。異能を知りたい? いや……)
(老獪過ぎる。明確な信条を出さない。ルールが見えない。)
(lawがない。無秩序にしては理知。芯はあるように見える。)
減刑の言葉も嫌な所を突いてくる。話術は思っているより強力。
だけど、一番よかったのは……。
絶対に分かり得えず、どちらかがどちらかのすべて殲滅するまで終わらない絶望戦にはギリギリでならないこと。人と人でありながら、人と獣の戦いにならぬ、戦争にならぬこと。
それをイーリスに理解させなくて、済みそうなこと。
「……まかせる。たすけて、イーリス。
僕がやると、やりすぎるし……身体が持たない。」
イーリスが不殺と正義を貫こうとして、足搔いてくれるならば。
いくらでも道化になれる。そう言うイーリスは、僕は好きだ。
イーリスの感情を、敵対と逮捕で押しとどめる。
今の僕では倒してはいけないし、倒してはならないから、
いまは、イーリスの正義の夢はイーリスに守ってもらう。
……どうせ、相手は死なず、終わらない。
なら、イーリスが気兼ねなくやって綺麗な正義を貫いてくれる方が、良い。
■Dr.イーリス > 「闇の力という言葉に不快を感じたならごめんなさい。それはそれとして、洗脳の手段として記憶改竄も行っていたという事でございますか。異能や魔術において、あなたのその卵の例えが必ずしも正しいとも限りません。ただ、凄く難しいという事は伝わりました。これは、まだマリアさんの人格に関する診断をろくにしていない立場の言葉ではございますけどね」
暗に、診断してみればギフターさんの言う通りだった、という可能性が高そうだと思いつつも、鵜呑みにもしきっていないといったところ。
「風紀を乱さない程度に、精々署名活動頑張ってくださいね。単に大量殺人犯を擁護するだけの署名活動を普通にするだけなら、白い目で見られてしまうだけだと思いますので、そこはお気をつけください」
助言、のつもりは毛頭ないただの皮肉。
尤も、ギフターさんの言葉をそのまま本気で受け取ってもあまり意味ない。
「そうでしょうね、《逃亡者》弟切夏輝さん、《不死姫》エリザベトさん、両名とも捕まるなり死亡するなりするでしょう。風紀委員も優秀です。道化師さんとすれば喜ばしい方向に進んでおりますか。あなたの舞台で舞うマリアさんは、あなたがある程度満足のいく演者に育ってくださいましたか。親愛を注いで育ててきたマリアさんが、あなたの期待通りの成長が出来てよかったではないですか。《逃亡者》さんと《不死姫》さんは、あなたの期待通りに育っておりますか?」
きょとんと小首を傾げる。
「分かりました、お任せください。ご無理はなさらずです……エルピスさん」
エルピスさんにこくんと頷いてみせた。
ギフターさんから辛辣な言葉を並べられたエルピスさんに少しでも安心していただこうと、微笑みながらそっと彼を抱きしめて柔らかく髪を撫でた。
■黒い泥 > 「エルダー、良い得て妙であるな。ギフターと語呂も似ているしすきにするのである。」
どう呼ばれても特に大した意味はなく、相手の中で紐づいているならそれでいい
さて、相手が本格的にイーリス嬢へと移った
ここからは説明のお時間
「気にする事は無いのである、明確に我々は敵対しているのだから相手が快か不快かなんてものは些事である。
あぁそこはご安心である、余りにもマリアが不憫に思えば私の持てる全てを使ってマリアを取り戻すだけなのでな。
イーリス嬢の手腕には大いに期待しているである!」
応援、そして自身が持つ最大限の脅しをプレゼントする
「あの2人に関しても面白い成長は遂げているようである。
だが、まだマリア程明確に成果は出ていないのでこれからに期待という事で評価はB+と言った所であろうな。
因みにだがイーリス嬢、其方はA+であった。大変すばらしい成長だったのである。」
再びべたべたと拍手
先程より泥が壁に飛び散る
■エルピス・シズメ >
(興味を切られた。少し、面倒だ。)
どうでもよさげな肯定。
つまり、この言葉は外れだ。
あるいは完全に興味の対象から外されている。
ひとまずは会話を黙って聞く。
彼の中では、神格の線が再び浮かび上がる。
イーリスへの強い興味は残している。
(……好むものは分かった。ただ……)
正体は分からないが、傾向は分かった。
目的のための、悪路を均すための嫌がらせの手段はそれなりに選ばないことも理解した。
そうなると、この相手はやっぱり見過ごせない。
だから、態度を二転三転させてでも、こう告げる。
イーリスが撫でてくれて、やさしくあやしてくれた気持ちを受け取って、
悪手であっても立ち上がる。
「次からイーリスに危害を加えようとするなら、僕はちゃんと手を出すよ。狗と言うならそれでいい。
今はこんななりで、弱いけど……興味がなくても、無視はさせない。今後ともよろしく。」
復燃する明確な敵対宣言と、軽い意趣返し。
イーリスを集中狙いさせる訳にはいかない。
E-程度であっても認めさせる必要が出てくる。
次にこの前のような危機がイーリスに向いたら絶対に我慢できない。
無意識の内にそう認識し、その激情に流されたエゴの言葉だ。
■Dr.イーリス > 「別に、敵に対して微塵も気にしてないのでご安心ください」
闇の力と決めつけるという、単に会話の中でイーリスに非があると感じたから謝罪した程度
「不憫な部分もある人生を歩んできたのでしょうね。あなたの持てる全てを使ってマリアさんを救出なさるとは……本当に随分とマリアさんの事を可愛がられてますね。世間を盛り上げるスペシャルなショーになるでしょうから、集客が大盛り上がりで道化師さんとしてはとても喜ばしき事でしょう。精々、集客を盛り上げた報酬として余生を生涯牢獄ツアーにて楽しんでください。優秀な風紀委員の皆さんがツアーガイドしてくださいます。では、あなたのご期待に添えられるよう私も励ませていただきましょうか」
イーリスは会話しながらも、記録を取っていた。
同時に、意味のない脅しであると一蹴。
記録
ギフターさんは、大量殺人犯マリアさんを救うためなら手段を選ばない旨を発言。
風紀委員会でも十分警戒を強めるべき。
「B+、なるほど、彼女達の評価をした上で成長も期待できるというあなたの期待値がよく分かりますね。出来れば成長していただきたくないところですよね、観衆がとても迷惑してますから。お褒めいただきありがとうございます。大変高い評価値をいただき、喜ばしく思います」
泥の拍手に、わりと淡々にお礼を述べた。
このような関係になっていなかったら、ギフターさんの賞賛を素直に喜んだ。
ギフターさんに認めていただけた事をとても喜ばしく思えるはずだった……。
「残り二人の異業者がどれ程の成長を遂げるかは未知数ですが、二人が捕まればギフターさんの手札もぼちぼち尽きるでしょう。あれだけギフトを無暗にばら撒いても、異業者なる存在に到達する人がそれ程多くないですからね。名残惜しくも閉幕に進むだけです。次に期待する事はなんでしょうか?」
■黒い泥 > 「忠犬であるなぁ。
安心すると良い、こんな身体で誰かに危害等無理無理カタツムリである。」
出来るとすれば引っ付いてべたついて不快感を与える事
それはそれで危害を与える事になるかと考えを改める
「一大遠征ツアーと言うのも憧れるものであろう?
落第街から一般の学生達の多い場所にまで騒ぎが広がる、勿論そんな事になれば誰も彼も不利益しかない。
なので、清く正しい風紀委員であるイーリス嬢には頑張っていただきたいものである。」
最悪のシナリオを回避したければそれなりの扱いを
最低の司法取引、もはやテロとも言える
「そうであるなぁ、あの2人が終われば…そろそろここにも見切りをつけるか、もっと盛大にやってみるのも良いであるな。
それこそ戦争でも起こせばもっと手っ取り早く私の目的も達成できるであろうし。
っと、もうそろそろ限界であるか。」
ぼとぼとと手の先から人の形を保てず泥の様なものが零れ始める
「私はここで終わりであるが、会った時は本体に宜しくである。
この魔力流体についてはマリアの生存のお礼として進呈する為、好きに使ってみるである。
それではご両人!おさらばである!」
べしゃりと崩れ落ちる粘性の液体
黒いそれは完全に魔力切れ、ただのドロドロとした液体に変り果てる
■エルピス・シズメ > 「予告する。
……キミに与えられたギフトを、暴いてみせる。」
エルピスは、一つの認識を確かめようと試みた。
当然、相手が答える保証はどこにもない。
指標による評価。
老獪な言動。大げさな言動。
大袈裟に言えど、完全な嘘を避ける傾向。
悪平等への否定。
魔術への理解。
興味あるものへ執着と興味。
ギフトをばらまき、特筆すべき結果への理解と執着。
ギフターもまた、異能を与えられたと認識している側ではないのだろうか。
その可能性を、探っているのではないか。
当然、完璧な空回りならそれでいい。
恥と共に、その線が一つ潰れるだけだ。
「……イーリスにやってもらうつもりだったけど、どっちが良い?
マリアと、泥の掃除。」
■Dr.イーリス > 「ごめんなさい、普通に家族旅行の方が好きです」
謝罪してるけど、先程と同じで別に敵に対して微塵も気にしてないところか、むしろ皮肉混じってる。
「あなたは聡明な人ですので、手段を間違えればあまりよろしい結果にならない事は理解しているでしょう。ふふ、お任せくださいね。マリアさんの身柄は、責任もって引き受けていますので」
イーリスは優雅な様で笑った。
(ギフターさんは、それ程までにマリアさんが大切でございますか。なるほど、マリアさんは手札になり得ますね)
記録
ギフターさんは、強引な司法取引をしてまでマリア容疑者の身を案じました。
つまり、ギフターさんにとって、それ程までにマリア容疑者の事が大切だという事ですね。
マリア容疑者をあまり無碍に扱わず、ギフターさんに対抗するための手札するという方法も考えられるでしょう。
(洗脳の被害者ではありますが、捕まえてみれば思ったより情状酌量の余地に欠けていたマリアさん……。……果たして、マリアさんにどれ程の更生の余地があるでしょうか)
洗脳の被害者で罪は軽減できよう。
だが洗脳の効力が軽減してしまい、素に近い状態でより悪質な事をしてしまっていた。責任能力がない、というだけでは多分済まされない。
それでも反省の態度などを示してくださればよかったけれど、ずっとイーリスに悪態をついている。
さらに、バトンがなくともその態度は変わらないとの事だ。
人情による赦しでもなく、単なる戦略によるマリアさんの処遇の軽減となると、刑の軽減は実際厳しい可能性もある……。
脅しに屈した、少なくとも風紀委員としてそのような結果になってはならない。
(カードは有効に使いたいわけですが、さて、どうしたものでしょう)
「なるほど、この島に戦争を仕掛けるという手札も一応はあなたにあるのですね。それではまた会いましょう。本物のギフターさんに、ここでの会話がちゃんと届いているか分かりませんけどね。素敵なプレゼントをありがとうございます。次に本体に会えるのを楽しみにしておりますね」
扉にぺこりと頭を下げる。
エルピスさんへと向き直る。
「ひとまず、マリアさんを医療室のベッドで寝かせてあげてください。黒い泥が排出された後に異常がないか診断します。それと、黒い泥が取り除かれてマリアさんの自我がどうなっているのかのカウンセリングも行いたいです。泥の方は私が回収しますね」
二体の《ジャンク・アーミー》が、メカニカル・サイキッカーに装着する大きなグローブタイプの義手、そして機械の箱を持ってくる。触れるものの異能や魔術といったものの効力を制御するグローブ義手と機械の箱だ。
メカニカル・サイキッカーがグローブタイプの義手をはめ込み、防災倉庫の扉を開け、安全性確認のため泥を解析しながら慎重に回収し始める。
ご案内:「『数ある事務所』」からマリアさんが去りました。
■エルピス・シズメ >
「分かった。マリアを寝かせるね。
医務室で……点滴繋いで、休ませておく。」
多分、食べないままだろう。
体調が安定するまでは、そうしようと。
……そして、マリアを医務室に運ぶ前にエルピスはイーリスに、こう話す。
「ねぇ、いーりす。ぎふとを貰ったり受け取ったりするってさ……
……それそのものは、僕はささやかだけど忘れちゃいけない、
日常の事だと思ってる。さっきは穢されるのが怖くて、黙っていたけど……」
与える。受けとる。
お互いが気持ちよく、想いを込めて与え合うもの。
そうして、巡るもの。
恩師の言葉を借りるなら……
(……「持続可能な良心の向け合いと言った所じゃな」、だよね。)
懐かしむように内心で呟き、
自分の言葉に置き換えてイーリスへ向ける。
「ずっとつづけられる、良心の向け合い。
お互いに気持ちよく与えあえる。しあわせな心の通じ合い。」
一方的に与えられる異能や能力ではないもの。
たとえそうであっても、どこかに合意があり、心を通じ合えるもの。
ささやかな、想いの流れ。
「そうして続くささやかな、想いの流れ。それが『ギフト』の本質だと、僕は思っている。
いーりすへの好きは、ずっと与えたいし、受け取りたいから、ギフターにも聞かせなかった。」
(だからこそ……どこかで、言わないと。)
心のしこり。抑えてい"た"。自分の気持ちの一つ。
ギフターが言う様に狗ではだめなのは、きっと確か。
狗(愛)のまま、イーリスに恋を伝えてない。
「ねぇ、いーりす。……こんな時だけれど、一息ついたら一緒にデートしたい。
……一泊二日で……温泉とか、観光とか、ふたりで遊びに行こうよ。」
そこで、抑えていたものを伝えよう。
抑えきれないし、抑えちゃいけない。
……当然、不安はいっぱいある。でも、言わなきゃ。
エルピスからイーリスをデートに誘う決め手となったのは、
数奇にも、ギフターの辛辣な言葉であった。
そのあとどうなったのかは、ご存じの通りである。
■Dr.イーリス > 「ありがとうございます、お願いしますね」
緊張の糸も切れた事で、エルピスさんに微笑んでみせる。
「……能力を配り歩く者、受け取る者がいるというだけならいいですけどね」
ふと、天井を見上げる。
「ギフターさんがマリアさんや私に親愛を向けているのは確かなのでしょう。考えようによっては、ギフターさんなりにマリアさんを助けるために現実を逃避させる洗脳を用いたという解釈もできます。魔法少女という夢を、ギフターさんはマリアさんに見せてあげていたのかもしれません」
洗脳も含めて、ギフターさんには良心が混じっていた、という解釈。
マリアさんもまた、ギフターさんのために頑張っていたのかもしれない。だから、ギフターさんも最後はそれに報いようと脅しの司法取引を持ちかけた……。
想いの流れが『ギフト』の本質。
そう語るエルピスさんににこっ、と視線を戻した。
「ふふ、エルピスさんはとてもお優しいです。想いの流れ、そうなのかもしれませんね。ありがとうございます、エルピスさん。私もあなたに、すきを……与えていきたいと思っていますよ。ふふ、いくらでも、あなたのすきを受け取ります。どれだけの愛でも……」
イーリスの心臓近く、《パンドラ・コアMk-Ⅱ》が桃色に光った。愛情がエルピスさんへと流れていく。
エルピスさんのお誘いに、イーリスはぱぁっと表情を明るくさせた。
「いいですね、行きましょう、一泊二日のデート! 温泉、行きたいです! 来週、予定の空いている日に、温泉旅行です!」
とても楽しみな事が増えて、凄くしあわせ。(※このロルの時系列は一週間以上前)
そうして一週間後、エルピスさんとイーリスのお二人で、一泊二日のデートに行く事になったのだった。
■エルピス・シズメ > 「そうだと良いんだけど、他の人にも与えすぎている。
だから僕とギフターのギフトは、決定的に異なると思う。
これを言い切ったら、後には引けない。だから我慢した。」
マリアへ向けるそれは、少し違うとの彼の認識。
そもそも、ギフターは受け取ろうとしてない。
「ギフターと言えどアイデンティティを刺激し過ぎれば、どうなるか分からない。
そんな場所に、僕の『ギフト』は持ち出せない。
だからこそ、ギフター『ギフト』のルーツが気になる。」
絶対なる断絶があると認識している。故に興味を持つ。
Giftなる単語の起源は、不吉なものであった気もする。
それに準じるものだろうか?それとも、別のものだろうか。
そもそも、ギフトを与えるのがギフターの能力なのだろうか。
確信できることは、ささやかな日常ではない。
故にそんなものを気にしないで暴力で殲滅した方が良い気はしなくもないが、
老獪たる彼の裏を取るのならば、『ギフターのルーツ』は考えても良いと認識している。
「うん。……さっきも僕を庇ってくれて、ありがとう、だいすき。イーリス。」
それはそれ。これはこれ。
イーリスがかばってくれて、代わりに怒ってくれたのは嬉しかった。
少しずつ、すきだけじゃ収まらないすきが増えていく。
「その為にも、状況を安定させなきゃ。
やることやって、がんばろ。」
ご案内:「『数ある事務所』」からエルピス・シズメさんが去りました。
ご案内:「『数ある事務所』」からDr.イーリスさんが去りました。