2024/10/20 のログ
ご案内:「Free5 第二方舟」に焔城鳴火さんが現れました。
ご案内:「Free5 第二方舟」に挟道 明臣さんが現れました。
■挟道 明臣 >
【9/25 12:59】【適合値:002%】【浸食値:3】【~研究エリア】
重たい稼働音と共に扉が開く。
それと同時に、明らかに空気が変わった。
(……何人死んでんだ?)
エントランスで感じた恐怖と未知に捕らわれた物と打って変わって、
そこは暴力的な鉄の匂いが満ちていた。
暫くぶりのそれに、自然と背筋が伸びる。
恐ろしくなど無いと言えば、それは嘘になる。
此処は容易く命が散る場所なのだ。
だからこそ、手持ちの札は全部切る。
覚悟なんてもんは、決めれる内に決めとくもんだ。
「痛っ……」
実験時以外には意識的に留めてきた、左腕の封を切る。
物理的な物や呪術的な枷ではない。意識の問題。
化け物には、化け物をぶつけんだよ。
人としての常識を持って対峙するな。
相手取るのは異形の存在と化しているのだから。
人としての常識で以って対峙するな。
己の手は異形の存在と相違ないのだから。
刹那、腕の形をしていたソレは激しく蠢きだし、不自然に巨獣の前腕を継いだような形へと変じていく。
硬質化した巨木のように肥大化した物がパキパキと音を立てながら己の肩先で収縮を繰り返す。
扱いやすい形に、最適化されていく。
(━━準備は、できた)
悲鳴は既に聞こえない。
ただひたすらに続く破砕音に向けて、慎重に廊下の角を曲がる━━
■焔城鳴火 >
【9/25 13:02】【適合値:0%】【浸食率:0】【研究エリア:北側研究室前通路~】
――第二方舟の状況は、かつての方舟と比べればマシだった。
少なくとも、鳴火はこの惨状を見た上でそう断じた。
不愉快極まる事に変わりはないが、まだ全てが消え去るほどではない。
「――っても、しつこいヤツは居る、のよねっ!」
振り下ろされる、歪な形のカギヅメを右手に持った、銀色のケースで受け流す。
凄まじい暴力にもケースは傷一つ負わず、カギヅメは鋭く深く、床に突き刺さった。
同時に、下半身がムカデのように変貌した怪物の懐に潜り込み。
その頭部、異様に発達した顎を真横から弾くように蹴り飛ばした。
――ゴキン、と。
やや重たく響く音がして、怪物の頭はあらぬ方向へと曲がり。
その二メートルほどにまで膨れた体は崩れ落ち、あっさりと沈黙した。
「これで、三つ、と。
クソが――適性持ちを集めすぎだっての」
手慣れた――というよりは、よく理解している様子で怪物を黙らせ。
明らかに不愉快な感情を隠そうともせず、通路の壁にどん、と背中からぶつかった。
手元の銀色の大きなケースは無傷。
一体材料は何を使っているのやらと――
「――で、そこの覗き見してる奴は、まだ理性が残ってんのかしら?」
そう、右手側――研究エリアの入口側に視線を向けながら。
現れた人影へと声を掛けた。
■挟道 明臣 >
【9/25 13:08】【適合値:002%】【浸食値:3】【北側研究室前通路~】
「覗き見とか人聞き悪い事言うな。
これ以上無いくらい理性的に暴力女の蛮行を見守ってただけだっての」
両手を挙げて、通路の真ん中まで躍り出る。
覗き見るどころか怪物を蹴り飛ばす様が見えたあたりから聞き耳立てていた位だ。
どの程度破損させればそれが沈黙するのかを熟知したかのような手際。
おっかなびっくり行うような対処ではない。
あれは━━処理だ。
「こっちとしては害意は無いし敵対するつもりもない━━から1個質問良いか?」
ツカツカと、足音の響く廊下を手を挙げたままに近寄る。
その距離は1メートル弱。敵意があれば、お互い瞬きの間に仕掛けられる距離。
「あんた、ここの人間か?」
ちなみに俺は違う、と。
首から下げたゲスト用のネームプレートを見せながら手短に問う。
良いかと問うておきながらさっさと疑問を投げつけるのは無作法だろうが、この際だ。
礼儀正しくやっていくような事も無いだろう。
■焔城鳴火 >
「それはまた随分と理性的だこと。
残念ながら私は、無能者なもんで。
体一つで何とかするしかない、か弱い女の子なの」
肩をすくめて、盛大に自嘲を浮かべる。
確かに身なり、体格こそ少女のように小柄ではあるが。
恐らく今、この施設の状況において、自分以上に適切な処置が出来る一般人はいないだろう。
事と次第によっては、この施設にいる誰よりも。
「どうぞ」
と答えたときには、掛けられる問い。
ハッ、と嘲笑するように息を吐き、ひらひらと左手を振った。
「後が面倒だし、今は違う、と言っとくわ。
それと、こいつらに慣れてんのは、昔、散々目にしてるから。
壊し慣れてるように見えるのは、スペックを知ってるから――チッ」
手癖でポケットをまさぐって、シガレットチョコすら没収された事を思い出す。
舌打ちしながら、怪訝そうに男の方へ左の指を向けた。
「で、私としても害意も敵意もないんだけど、一応質問。
あんたが少なくとも異形体じゃないって事はわかったけど。
――その腕、なにを寄生させてんの?」
男の明らかに、生身ではない腕を指して問う。
寄生か共生か支配か、主導権は頭の方にありそうだが、その状態によっては鳴火にとって、異形体よりも厄介である。
■挟道 明臣 >
(……か弱いの意味を辞書で引いてこい)
いつからこの島はか弱い一般人がプロ顔負けのミドルを打つようになった。
ポテンシャルがあるかどうかの問題ではない。
実践できる奴は、マトモに平和を享受してきた人間じゃない。
「今はって事は、多少なりとも情報は持ってんだろ。
俺からしたらコイツらがどういう理屈でこうなってんのかも分かりかねるんだが。
ちょっとそこん所、教えてくれよ」
頭を壊せば止まるのか、それとも内に核でもあるのか。
その辺りは試しながら進むつもりでいたが、詳しい奴がいるならそっちの方が早い。
「あー、医療用の接ぎ木だって言って信じるか?
便利な義手みてぇなもんさ。アブねぇことは何も無い。
少なくとも俺が生きてる限りは、ね」
闘争の種子に関しては、公には伏せられた話だ。
実際、今回みたいな使い方をしない限りは本来の用途や研究理念に沿うなら嘘にはならない。
主導権のシーソーゲームは、それこそ全身にその根が伸びきるような事でも無ければ起こりはしない。
「実際、アテも無く探し回るにはちっと手が足りないんでな。
敵だって訳じゃないなら、お互い知ってる事くらい共有させて欲しいんだが?」
言いつつ、苛立たし気にポケットを探る姿に小さな箱を放る。
本数の減った紙煙草の箱。その内にはガス式のライター。
自分で吸う事は無いが、何かの際に火種はあっても困るまいと警備員室で拝借してきた代物だ。
銘柄の好みがあるかもしれないが、そこまでは知った事では無い。
実際に休息が取れるのかは定かでは無いが、休憩室のプレートを指してみるが乗って来るか否か。
■焔城鳴火 >
「まあ多少は、ねえ。
こいつらは通称で異形体。
低レベルの奴らなら、基本的には見た目通り――」
そう言いながら、床に突き刺さったカギヅメを蹴り飛ばす。
硬質な音を立てて爪がへし折れ、男の方へ腕が僅かに転がった。
「医療用植物?
――驚いた、こんな場所で紅博士の研究成果を見るなんて」
専門がまるっきり違うが、医療者として近年発表された論文は目にしている。
欠損した肉体の代わりに、植物を利用する治療技術。
実用されるにはまだ遠いと思っていたが、目の前にあるのは恐らくはその成果物の一つだろう。
「――悪いけど、禁煙してんのよ」
放り投げられた箱を受け取りはするが、ため息が出る。
とは言え投げ返すのも馬鹿らしく、ポケットの中にねじ込んだ。
「そうね――独りでやるつもりだったけど、まだイカれてないなら放っておくのも後味が――」
通路のどこかから断末魔の悲鳴が聞こえてくる。
まだ異形体がうろついているのだろう。
「とりあえず、場所を変えるか。
あんた、そいつの腕へし折って持って来なさい。
それ、Cクラスだから」
命令口調で指示しながら、歩き出す。
言葉通り、死んだ異形体の腕にはCクラスのリストバンドが肉にめり込んでいるだろう。
――ただし、休憩室は別にDクラスの権限でも問題なく使えた。
内側からロックも掛かり、比較的安全と言っていいだろう。
鳴火は遠慮なくベッドの上に腰掛け、手に持っていたケースも投げ出す。
二列ある二段ベッドの内、座ったのと反対側のベッドには、黒々とした沁みが出来上がっていた。
「――それで?
私はどんな尋問をされるのかしら」
そう言いながら、自虐的な笑みを浮かべて、男を見上げる事だろう。
【9/25 13:11】【研究エリア休憩室~】
■挟道 明臣 >
「低レベル、ね。高レベルの奴とか見たくないんだけど。
ってか蹴るな蹴るな、危ねぇだろ」
折れたカギヅメの断面がこっちを睨むように転がって来る。
恐らく、警備室のモニター映像の中に映った連中の殆どがその低レベルなのだろう。
形通りの異形体、となれば高レベルになるとどうなるやら。
「お? 割かしマイナーな部類な筈なんだが、医療畑かアンタ?
プロトタイプみたいなもんだから公称通りのもんじゃないけど、よくご存じで」
医療用植物、それは主治医が公に向けて発表している治療技術としての名称で相違ない。
コレが同じ物かと言えば、少々どころでは無い違いがあるのだが。
「まるでじきにイカれるって知ってるような言いぶりだな……
そして人使いまで荒い、と」
何処の誰が育てたんだ、この不遜なちっちゃいの。
とはいえ、手持ちより上位のリストバンドは願っても無い。
丁寧に肉をバラシて、というのもできなくはないが面倒なのも事実。
「……悪いな」
一言だけ、変わらず言葉を述べて左腕を振り降ろす。
力任せに、硬質な骨ごと更に硬質化させた暴力でへし切る。
やけに重たく、熱を帯びた肌の質感をそのまま手でつかみ、
聞こえてくる悲鳴に追い立てられるように、小さな背を追って休憩室へと追従する。
■挟道 明臣 >
「で、開口一番がそれかよ。
尋問されるような事しでかしてきたのか……?」
先行して実質一個しかない席に陣取った女のセリフがこれだ。
隅に寄って並んで座れるスペースを確保するとか、そんな淑やかさは未実装らしい。
そうされたら立つしかないのだが、あまり下から見上げられるのは良い気がしない。
いや、横に並んで座る方が嫌か。
「知ってる事があるなら洗いざらいって言いたい所だが……とりあえず。
あの黒い水、あれ何だ? それと━━アンタ何者だ?」
目下の不明事項は、そこ。
情報が圧倒的に足りていないからこそ対処に手間取るし時間も食う。
そんな中を平然と苛立たし気に処理していくこの女は、何者だ?
■焔城鳴火 >
「あら、密室に二人きりの男女。
そして生きて帰れるかもわからない現状。
そんな状況でも紳士的に振舞える男だったなんて。
人間、やっぱり見た目じゃわからないわね?」
まさに減らず口。
一つ鳴けば、二つも三つも鳴く、不遜な鳳凰だ。
言いつつ、少しだけ姿勢を変えて、男も座れるように場所を空けるだろう。
その間に銀色の大型ケースを置いて。
「――質問が多い。
とはいえ、とりあえずはそれか」
と、反対のベッドに染みついた黒に視線を向ける。
「そうね、概念的に言うのなら――あれは正真正銘の人間よ」
そう目を細めながら、やや低い声で答えた。
「ただ、あんたの常識からしたら、あれを人間だなんて言えないだろうし?
現実的に言うなら、人間を進化させようとした実験の失敗作、って所。
あの異形体共も同じ。
理性こそぶっ飛んでるけど、概念的には人間。
当然、現実的には失敗作でしかないけど」
つらつらと、まるで自分にとっては当然の事であるとでもいうかのように説明して見せる。
その視線にも口調にも、有るのは不愉快さと憐みだった。
「――で、なんだっけ、私の事だったかしら」
手を伸ばして、休憩室の菓子棚を漁りつつ、あからさまに面倒臭そうな調子を崩さない。
「常世学園、保健体育担当教員。
だけど、あえてこの場に相応しい紹介をするなら――」
菓子棚から、キャンディを見つけて、酷く不満そうにしつつもそれを咥えた。
「――元第一方舟所属、研究助手候補生。
そして被検体番号五番、焔城鳴火。
こんなところかしらね?」
そう言って、男に向けて非常食のカロリーブロックを差し出した。