2024/11/05 のログ
■挟道 明臣 >
「視姦とかいうんじゃねぇ人聞き悪い」
いや、今のは俺が悪いんだが。
まぁ深い意図も本気でも無い他愛も無い話。
「アルカディアの心臓? なんで━━」
言いかけて、口をつぐむ。
第二方舟にあった物に何かが細工された事とポーラという女の急変が直結するのは、分かる。
だが、これはアレをホシノモリアルカの心臓として認識していたからに相違ない。
アルカディアの心臓とポーラ・スーがリンクしている事に疑問を覚えるのは、何故だ。
視点と手持ちの情報が違っているせいなのかもしれない。
(……言うか?)
このちびっこに。
それなら、島外への連絡を頼んだという鳴火から告げられていてもおかしくはないが。
考え込む素振りのそのままに、結論を飲み込む。
「チャンスなんてもんは数で数えるもんじゃねぇっつの。
一つ拾い損ねた時点で全部ご破算なんだよ、レトロゲーやった事ねぇのか?
108人仲間集めないとバッドエンド直行の奴」
向き合うのであれば、一つの取りこぼしも許されない。
セーブもロードも無い一発勝負だからこそ、振り返って膝をつく事を計算に入れるつもりは無い。
「足洗ったっつってるだろ、飽くまでも趣味の範疇だ。
直接出向けねぇなら映像で見とくしかねぇだろ?」
そのツテと物は、落第街で活動していた時の物をそのまま流用する事にはなるのだが。
「連絡?」
登録なし、なんなら発信元不明。
怪しすぎて普段なら取りもしないが、したり顔のちびっこにせかされるように受電する。
■神樹椎苗 >
「――?」
互いの情報の不一致に気付かない。
もし気づいていれば、青年との情報交換で齟齬を修正出来たかもしれないが。
それは、『切り札になりうる情報』を広める事にもなってしまう。
そう、青年が偶然にも手に入れた物は、情報としても、物としても切り札に成り得るのだ。
「あー、はいはい。
最近のリメイク作品の流行で触ってますから、年寄りみてーな事を言ってんじゃねーですよ」
青年の言う事は、嫌というほど耳に痛い物だ。
そうひらひらと手を振って答える椎苗もまた。
一つだって取りこぼしたくない側なのだから。
「代わりに出向いてやっても構いませんが?」
とは言え、実際に動くには今の自分の体がいまいち信用できないのだが。
いつ、突然に電源が落ちるか分からない端末ほど、信用できないものもないだろう。
「ええ、連絡ですよ。
それも、肉声で直接、とのご希望で」
■??? >
そして、青年が通信を繋げれば。
「――よっ。
どうだ、元気してるか?」
死んだはずの大馬鹿者の声が、明るく響いた事だろう。
■挟道 明臣 >
「……いや、ちっと考え中だ。
纏まる前にお嬢様にお出しするには粗末な内容だったんでな。
また今度、だ」
人柄を取って信頼が無いかと言えば、そうでもない。
こんなナリだが、その信条自体は信を置いても問題はないと言える。
が、信用問題となれば別。
当人の問題ではなく、運用の問題が出てくる。
席を置いておきながら、408自体を全面的には信頼はしていないのだから。
端末として、彼女の大本たる神木に全ての情報がバックアップされる以上は不用意に伝える事ができない。
狂った手牌が手元にあったとしても、雑に切れば後からそれは自分の首を絞める事になる。
「馬鹿言え、そんなホイホイ出向ける身体ならこんな所でチマチマ生きてねぇだろ」
他所で文字通り回収でもされたらかなわん。
それに限っては自分も変わりはないのだが、電池切れを起こすのは死ぬ時か死にかけた時くらいの物。
通信越しに聞こえてきたのは、しゃがれたような幾分か歳を食った男の声。
一瞬、思考が追い付かずに停止する。
そして━━
■挟道 明臣 > 「っざけんなっ! 死んでろ!」
■挟道 明臣 >
諸々、湧きだした感情の全てを声量に乗せて。
困惑に満たされた内、色濃くにじみ出た怒りに語調が荒くなるが、こればかりは性分だ。
「それか━━寿司でも奢れ馬鹿野郎」
そう、小さく零す。
亡くしたと、思っていた。
失くしたと、思っていた。
ちっぽけな両手が取りこぼし、欠いたままになっていた領域。
それが少しだけ、帰って来たような感覚があった。
「わりぃ、椎苗。
小難しい話は、今日はここまでだわ」
マトモに考える思考回路は、沸点と一緒にどっかに行ってしまった。
ただ、こうなるといよいよもって檀上から降りるなんて真似も手抜かりも許されなくなった。
コイツが生きてるなら、妹に顔向けできないような格好悪い真似はできない。
ただの意地だ。男の、意地。
それと、俺もお兄ちゃんだからな。
方舟の連中はツラも知らねぇけど、仕方がないから守ってやるよお前らの妹。
ご案内:「Free5 研究区408研究室」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「Free5 研究区408研究室」から挟道 明臣さんが去りました。