2025/01/26 のログ
ご案内:「常世学園占星術部 - CASE1・進捗」に竜胆 襲さんが現れました。
■竜胆 襲 >
「───………」
1月某日。
冬季休暇が開けての図書室にて。
初心者用の魔術学入門書を手に、襲は一人、気配を殺す。
風景に溶け込むかのように、己の主張を許さず。ひっそりと。
手元の図書から視線を僅か、外して"視る"は……窓の外。そこに一人の男子生徒がいた。
男子生徒は一人、校外の清掃をしているようだ。
見た目は…少しだけ頼りなさ気な、眼鏡をかけた普通の少年に見える。
■竜胆 襲 >
なんの変哲もない光景に見えた。
否、普通の人間が視界に収める分には、何の変哲もない以上に何事も怒らない。
少女は眼を薄く、細める。
夜間以外では少し、その"視力"が落ちる故に。
月の光を映す様な、黄金色の瞳は確かに、少年の足元から──沸き立つ黒い影を見据えていた。
「(──、やっぱり生徒が発生源。それも……)」
「(無意識)」
少年の特徴を記憶する。
髪型、背格好、顔立ち…。
無意識に生まれている黒い影の怪異は、陽光に照らされすぐに煤けて消えてゆく。
見た所、無害な小動物のようなものばかりだった。
あれが、何かしらの異能の力の発露だとすれば…学園側がきっと把握している。
だから無意識化だったとしても…彼自身に問題がある可能性は少し薄れる。
「………」
ぱたん、手元の図書を閉じる。
■竜胆 襲 >
無意識に怪異を生み出す。
それらは人を害するものもあれば、ほとんど無害のものもいる。
異能の暴走や、無意識の発動の線を覗くなら、似たケースを一つしっている。
閉じられた手元の図書へと視線を落とす。
「………」
「…あの子、呪われてますね」
少々重苦しく、誰にも聞こえぬ小さな言葉として、それは吐露された。
■竜胆 襲 >
大元となる怪異に見初められたか、
何か、触れてはならない呪物に触れたか、
それとも、誰かに呪われ続けているのか。
「(──さて、どうしましょう)」
き…と小さく背凭れを軋ませる。
誰かが呪詛をかけているのであれば、突き止め止めさせることが出来る。
大元となる怪異に呪われているのであれば、それを始末すれば恐らく解決する。
厄介なのは───危険な呪物に触れてしまっているパターン。
解呪に専門的な知識が必要になるし、呪物そのものを破壊することも危険である。
爆弾処理班のような、専門家が必要になってしまう。
「(…騒ぎを大きくしたくはないですけど、その場合は祭祀局に匿名投書でしょうか)」
湧いてくる怪異を始末する分には望むところだけれど、根源を絶とうとなると色々な可能性を考慮しなければいけない。
黒い影の怪異の発生は、春以降に急激に増えた。
ほとんどは無害。これまでに3度、人に危害を加える危険なものが確認されている、だけ。
それも恐らく、夜の学校に近づかなければ平気な部類。
「………」
「(…もう少し、時間をかけましょうか)」
窓の外、寒空で箒を手に清掃に励む少年はとても真面目そうに見える。
とても誰かに呪詛を向けられるような、溌剌とした目立つタイプには思えないけれど──。
■竜胆 襲 >
やがて、清掃を終えた少年が歩き去る。
その場に生まれ落ちた怪異の姿は…見えない。
ああやって生まれ、夜が訪れると黒い影として実体が見えるようになる…が恐らくは真相。
「………」
立ち上がり、図書を手に、本の本棚へと戻しにゆく。
魔術は広い学問である。様々な図書文献が本棚には並んでいる。
噂に聞く禁書庫とやらにはもっと色々な本があるのだろうが、今はそちらは良い。
一つ、二つ、視線を下げてゆけば…先にいあるのは、呪術についての知識が記された本。
あまり気乗りのしない表情で、その本を手に取ると、少女は図書室を後にした───。
ご案内:「常世学園占星術部 - CASE1・進捗」から竜胆 襲さんが去りました。