2025/02/03 のログ
ご案内:「伊都波家・リビング」に伊都波 悠薇さんが現れました。
ご案内:「伊都波家・リビング」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 悠薇 >  
「ただいまー」

がらり、手を洗って荷物をおいて。
制服のまま、挨拶。

そして、冷蔵庫へ向かって歩いて水をコップに注ぎ、ごくごくり。

「はぁ、寒かった……」

なんて口にしながら、リビングのソファーに座り一息……

伊都波 凛霞 >  
「おかえりー」

リビングは少々賑やか。
テレビに電源が点いて、モニターには映像が映し出されている。
どうやらなにかのスポーツらしく、賑わっている音が流れていた。

「外、まだまだ寒いよねー。
 ほら、こっち暖かいよ~悠薇」

ぽんぽん、とソファの自分の隣を手で叩く。おいでおいで。
二人掛けできそうな電気毛布もある。
暖房をつけるまでもない、この時期にリビングでテレビを見る時の必需品である。

伊都波 悠薇 >  
「お姉ちゃん」

いたんだ、みたいなリアクション。
寒かったのと、なんだかぼんやりしてたから気づくのが遅れた。

「え、いや、私はここでいいや」

そのまま、だらーり

伊都波 凛霞 >  
「じゃあ私がそっちにいこうかな~?」

なんちゃって、くすくす。
スキンシップしたがりの姉。
 
「で、どしたの? ぼんやりして」

何かあった?と少し心配そう。

伊都波 悠薇 >  
「えっ」

まさかの。
こちらは一人占めソファーをしたかったのに。

じとー。
抗議の眼差し。

こんなのをするのは、姉妹だからだ。

「いや、なんとなく、考えること多いなってなって。ぼーっとしただけ」

伊都波 凛霞 >  
「冗談だって。
 でも最近甘えてくれないからお姉ちゃんは寂しいんです~」

「あっ…いいところなんだった。
 ああー、負けちゃった。残念、頑張ったのにな~…」

言いつつテレビに視線。
エアースイムの中継、贔屓目に見ていた生徒がギリギリで負けてしまった。無念。

「考えること」

なんだろう、なにか悩みでもあるんだろうか。

「悠薇一人で大変そうだったら、お姉ちゃんがいつでも相談に乗るからね」

あえて突っ込んだりはしないけど。いつでも力は貸せるよと姿勢を示す。
以前だったら積極的に妹の世話を焼きにいっていたところだけど、今はある程度の線引ができるようになった。
これも天秤の一件がもたらした姉妹の関係性の一つだ。
────……天秤。
気にはなる。
でも必要ならきっと悠薇のほうから話してくれる、そう思って、自分からはまだそのことには触れない。

伊都波 悠薇 >  
「えー……でも、そんな必要のあるタイミングはないしな……そも甘えたことあったっけ?」

首をかしげ、なるほど応援してたのかと納得。

「ん? んー。相談ってこともないけど

お姉ちゃんって、一級? とかのことどう思ってるの?」

伊都波 凛霞 >  
「ショック!!」

オーバーリアクション。

「子供の頃はあんなにお姉ちゃんお姉ちゃんって…」

どうやら最近の範囲が相当広いらしかった。
お姉ちゃんは妹とのスキンシップ不足。

「ほら、考え事って煮詰まったりすることもあるからさ。
 そーゆー時には、遠慮なく…って、一級…?」

ああ、と納得したように小さく手を打つ。

「監視対象のこと言ってる?
 どう思ってるって…どう?」

いまいち要領が掴めない、小さく頸を傾げて。

伊都波 悠薇 >  
「いつの話ですか」

つい敬語になった。

「うん。そう。お姉ちゃん、組んでるんだよね? その人と。

制度のこと、そこにいる人のこと、どう思ってるの?」

伊都波 凛霞 >  
姉のショックと裏腹に妹は冷静である。
でもここは妹の成長をよろこぶところ。
スキンシップも我慢だ。

「追影くんかあ……」

うーん、と少し、考え込む。

「もう結構付き合いも長いし、印象はそれこそ結構変わったけど…。
 彼は私を信頼してくれているし、私も監視役として、風紀委員として責任もって彼のことを見てるつもり…かな」

制度のことまで問われるとは、思っていなかったけど。

「更生、っていう面目は私はちゃんと残ってると思ってるよ。
 実際、追影くんは最近どんどん普通の男の子っぽくなってきてるしね。今後も期待大!って感じ?」

返答としてはポジティブな部類。
問題を色々抱えているのも間違いないのだろうが、ひたすらに前向きな表情だ。

伊都波 悠薇 >  
「そうなんだ」

割りとポジティブだ。
マッチングは悪くなかったのだろう。

犯罪者と警察のコンビで立ち回る、そういったフィクションを読んだことがあるが。
相棒、かつ、その人の未来のことも考えてる。つまりは好印象。

「……でも、普通、って。なんだかむずかしいよね」

伊都波 凛霞 >  
見るべき番組の終わったテレビを消す。
暖房がついていないとやはり少し寒い、電気毛布を膝上に乗せて。

「そうだね」

普通が難しい、と口にする妹に、苦笑する。

「でも出会った時なんてもっと凄かったんだよー?
 誰お前、みたいな感じの目つきで見られてさ~。ニコリともしなかったんだから」

初めて会った時のことなんかを思い出しつつ、随分丸くなったなあなんてしみじみ。

「凶刃なんて言われてる通りの、抜身の刃みたいな男の子だったもの。
 今は…ある意味監視対象の本来の意義…更生プログラムとしての在り方を体現してくれてる気すらするよ。
 ……まぁ、もうちょっと愛想があるといいなあ、なんて思うけど」

うーん、でもその敷居はまだ高いかな。なんて自問自答。

伊都波 悠薇 >  
「お姉ちゃん、頑張ったんだね」

それはどちらも努力したからの変化だろうと思う。

『普通』の定義が違うふたりが、ある『普通』を目指すのは難しい話だから。

「監視役、やってよかったと思う?」

伊都波 凛霞 >  
「そりゃあもう。お仕事ですから」

人一倍、責任感は強い。
引き受けたからには精一杯やるのは、いつものこと。
もちろんそこにはビジネスライクな感情だけがあるわけではないけれど、
自身の監視役としての立場はそういうものだとちゃんと理解もしていた。

「やって良かった…かどうかは、まだ先の話かな。
 彼の異能抑制装置()が完全に外れる時が来たら…良かった、ってはっきり言えるのかな…」

うーん、と天井を仰ぐ。
でもその時はきっと、監視役の役目も終わる時だ。
そうしたら……彼とは普通の友人として過ごしていけるのだろうか。
それは、実際にその時が来てみないとわからない。

「で、どうしたの?そんなに彼のこと、気になったりなんかした?」

伊都波 悠薇 >  
「ううん、そゆわけじゃなくて」

ぼーっと。
いつもなら、気になったりなんて、とか加尾を真っ赤にするのに。

「監視役、私もやることになるかもなって」

だから、色々調べていた。
結局、自分にできることなのかどうか、わからなかったけれど。

「でもお姉ちゃんでそうなら、私はもっと大変そう」

伊都波 凛霞 >  
「………」

驚いた。
思わず眼を丸くしてしまって、絶句である。

「悠薇が監視役…どうして急に?
 大変だよ?監視対象の生徒には異能犯罪を犯してしまった人なんかもいるし…」

監視、は見ているだけでは務まらない。
監視対象が許されない動きをした時はしっかりと処罰を与えることもある。

「私は、ほら」

「監視対象の彼に恵まれてたから。
 なんだかんだで私を無碍にするようなこと、彼はしなかったし…。
 問題行動も…まぁ、私が処罰を検討しなきゃいけないようなことはなかったから。
 ああ見えて結構模範的なのかも、追影くん」

伊都波 悠薇 >
「うーん。お姉ちゃん、麝香さんって知ってる?」

知ってるだろうけれど。

「その人が、ならない?って、言ってきたから」

だから。

「なるかも、って思って」

でもそうか、抑える。
それは無理だ。なにせ自分は、そういった面では落第生並みだ。

「やっぱ、やらない? って言われてなれるもんじゃないよねぇ」

どうするつもりなんだろうか。

伊都波 凛霞 >  
「知ってる」

淡とした答え。
深く知って…否、深く彼のことを理解しているわけではないけれど。

「監視対象から監視役の推薦…はできたかな。
 うん…でもいざとなったら彼らを抑制できるくらいの力はないと…だから」

今の悠薇じゃ、まだ難しいかもね、と苦笑する。

「彼の監視役って、あんまり長続きしないみたい。
 理由は…まぁ、色々あるんだろうけど…。
 悠薇にその資格があるかどうかは結構厳格に見られるんじゃないかなあ…」

「……悠薇は、(麝香廬山)の監視役になりたいの?」

伊都波 悠薇 >  
「……どっちでもいいかな」

なりたくないわけでもないし、なりたいわけでもない。

誘われたからどうしようかと悩んでいる。
それくらいの感覚。

ーーよくないのはわかっているのだけれど。

なにせ『思い入れ』がない。

「でも、なるんだろうなって気はしてるよ」

伊都波 凛霞 >  
「大変な仕事だから、悠薇がやるっていうなら、お姉ちゃんは反対しないけど…」

予感を感じている妹。
監視役として的確であると判断されるのか、否か。
…少し、険しい道のような気もする。
そして妹自体には確固としてその役目に就きたいという意識があるわけでもない。

「お姉ちゃんは、ちょっと不安です」

なので、はっきりそう伝えることにした。

「異能犯罪者を取り押さえる、くらいは出来ないと。
 そもそも不適格で任命されないとは、思うけど……」

伊都波 悠薇 >  
「多分、あの人はそんなの求めてないよ」

出来ないといけないと思ってるのは、私たちの普通だ。
でも。

「面白いことが、大切だから。できなかったら、できないなりの過程を、楽しむんじゃないかな」

想像はできる。

「…………なりそうだ」

さて、そうだとしたら。

「どう、がんばろうかなって思うよ。お姉ちゃん」

がんばる、方向性は。

「どうしたら良いとおもう?」

伊都波 凛霞 >  
「彼が求める、求めないじゃなくて」

「制度として、監視役に適格であるか不適格であるか判断するのは私達じゃない。
 私は───色々な実績があって、異能犯罪を犯した犯人を何人も捕まえたり、みたいな結果を残してたから、任命されたの。
 もし、(凶刃)が暴れても取り押さえられるだろう、って選ばれたのは…はっきり言われてはないけど、なんとなくわかってた」

──だから、どうがんばろうか、なんて悠薇が問うのなら

(麝香廬山)を制御できるくらいに、悠薇がならないとダメ」

「…そして、更生の道を歩ませるのが、監視役の役目だよ。
 それは…向き合い方だったり、彼への理解の深さだったり、色々必要だと思うけど」

でも、まずは──。

「…とりあえず、強くなることを頑張る…?」

伊都波 悠薇 >  
「ホントにそれだけなのかなぁ」

わからない。
判断基準、それが『本当に』そうなのか。

「……つよくなる、現実味のない言葉だよ。お姉ちゃん」

そして、苦笑。

伊都波 凛霞 >  
「それだけ、じゃないと思うけど」

「それも必要なのは、明らか。
 "一級"を冠する彼らは、普通の異能犯罪者っていう枠ですらないんだから」

だからこそ監視役が必要な、監視対象。
しっかりと監視されているという条件の下、断罪されずにいるようなもの。
とびっきりの危険物である…という認識が妹にあるのか、若干不安になってきた。

「…そんなことないよ。
 悠薇には私にはできない技もできるし。
 それに、ああいうことがあったんだから、今はもう伸び代しかないんだから」

苦笑には、苦笑を返す。

伊都波 悠薇 >  
「難しいね」

思考の放棄、ではなく。
考えることが多すぎて、難しいという言葉がでてきた。

「出来ても、使うだけの基礎能力や下地、持っていき方がなかったら宝の持ち腐れだよ。実践でなんにもならないしね」

ぐーとのびをして、立ち上がる。

「お姉ちゃん、なんか飲む?」

伊都波 凛霞 >  
「冷えてきたし、暖かいココアでも飲もうよ」

やっぱり甘いもの。
手伝うね、と自分も立ち上がる。

「(…にしても悠薇に監視役って)」

(廬山)が何を考えているのか、本当にわからない。
それなりの戦闘経験がある風紀委員でも持て余すのが一級の監視対象だっていうのに。

伊都波 悠薇 >  
「太るよー?」

からかうように。

「ダイエットココアあったっけ」

台所探しながら。

「センパイ、うまく決着つくといいね」

伊都波 凛霞 >  
「ふ、冬はクマだって脂肪を溜め込むものだし」

謎の言い訳。

「普通のでいいよぉ、ちゃんと運動するもん」

ちょっと背伸びして、戸棚から普通のココアを取り出して、
悠薇に向けて、お湯お願い、なんて言いつつ。

「ん…大丈夫」

「今の追影くんなら、残滓なんか敵じゃないよ」

鞘に絆され刃が鈍った?とんでもない。
彼の鋭さは、凶刃と呼ばれていた頃となんら変わってはいない。
抜くべきところを見極め、鋭く放たれる居合抜きが如く、むしろ今のほうが。
それが監視役である凛霞から見た、現在の追影切人の評価。
──故に、例の件については心配の一つもしていない、というのが本音だ。

伊都波 悠薇 >  
「なにそれ。いつからお姉ちゃん、クマになったの」

ツッコミつつ、ココアを準備中。

「いや、そうじゃなくて」

いや、それもあるけど。

「それだけで終わったらいいなって」

だから、決着という言い方をしたのだけれど

伊都波 凛霞 >  
「戯言だから聞き流して~~~」

妹のツッコミに情けない姉の声。
さらさらとカップに入れられるチョコレート色の粉。
既にふわりといい香り。

「そうじゃなくて…?」

「…悠薇も一緒にいた時に遭遇した、例の件の話じゃないの?」

だから知っているんだろう、と思っていたけど。
どうやら妹の言っていることは、その件だけの話ではないようで。
ぱっと浮かぶものがなかったため、素直に問いを投げる。

伊都波 悠薇 >  
「いや、その件なんだけど」

勝手な深読み。

「こゆのって、倒しただけじゃ終わらないのがセオリーだから」

小説の読みすぎかもしれないけれど。

「ちゃんと、決着になるのかなって不安なんだよね」

伊都波 凛霞 >  
「───」

なるほど。
言語化の難しい、漠然とした不安。
なんとなく、というやつ。

「悠薇の心配しすぎ…だといいけど」

「大丈夫。今後はお姉ちゃんもばっちり協力するんだから!」

笑いながら、力こぶを作って見せるようなポーズ。

「ほらほら、お湯いれて、濃さはお好みでね♪」

姉妹それぞれ用のマグカップにお湯を注げば、鼻腔をくすぐる甘くも香ばしいカカオの香り。

伊都波 悠薇 >  
「そうだといいけど」

ぎぃ、ぎぃ。
おもりのおと。

誰にも聞こえない、おもりのおと。

「……お姉ちゃん、入れすぎ注意だよ」

なんてからかうようにいったあと、完成したココアをちびちび飲みながらソファーへもどり。

まったり時間を過ごす

伊都波 凛霞 >  
「そうなるように、頑張らないとね」

マグカップから伝わる優しい熱。
それを掌に感じながら、二人でソファへ戻る。
ちゃっかり今度は妹の隣に座って、過ごすのんびりとした時間。
チク、タク、とリビングの時計の秒針の音が妙に大きく聞こえる。
まるで聞こえないなにかの音の代わりのように。

──甘く優しい時間は過ぎてゆく。伊都波家のとある日。

ご案内:「伊都波家・リビング」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「伊都波家・リビング」から伊都波 凛霞さんが去りました。