2025/03/19 のログ
ご案内:「Wings Tickle:扉前」にメロウさんが現れました。
ご案内:「Wings Tickle:扉前」に黛 薫さんが現れました。
メロウ > 「ん、しょ……っと」
小さなスロープをまたいで、彼女は最後の扉を潜る
振り返った時に、記憶に浮かぶのは初めて扉を潜った日
夢が叶っていた。故に、その対価を要求されて
悪い日々では無かった。少なくとも、それ以前と比較すれば十分すぎたこと

そこからの出会いの大半、そして主人との出会いも
このお店があったことから全ては始まっていた。機械の私でも、感傷ってものはあるのかな
日記帳を開くまでもなく、過った過去を追うように手を伸ばせば自然と薄汚れた扉に触れて

「またね」

呟き。誰も知られない夜、忘却が優しく封をする筈だった

黛 薫 >  
路地裏を往く。

人目を避けるなら大通りよりは気楽に歩けて、
しかし別の道でも大差はない。そんな路地。

人目を避けるだけならもっと人気の少ない道がある。
けれど人目の少なさは悪意に目を付けられた場合の
リスクの大きさでもあって。

ごちゃごちゃした余計な思考、無用な心配に
思考領域を占有されがちな彼女からしてみれば、
どの道を通ったって気疲れするのは変わらない。

それでも、とりわけ気分が沈みがちな日に
この道を選ぶのは、お気に入りのお店があるから。

ここ最近は特に忙しくて、営業中の看板を
一瞥するのが精々ではあったけれど。
たったそれだけが息抜きになる程度には
生きるのが上手じゃない自覚もある。

今日も、お気に入りのお店に視線を向けて。

「……あ?」

閉店の時刻と被ったのだろうか。
見慣れた顔を、想定していなかったタイミングで
見つけて、思わず間の抜けた声が漏れた。

メロウ > 扉に触れた指先が硬直する。丁度、異能行使のタイミング直前で
首だけ傾くように貴方のほうを見た、その動きは初めから驚きを表すように目を見開いていた
『それ』のことをよく知っていたら当たり前。彼女はいつも、視覚よりも敏感なもので相手を図っている

「わお、すごいタイミングだ」
旅行鞄を隣に置いた彼女。普段このお店で寝泊まりしているはず
遠出の予定を入れたにしては、直前からの連絡も彼女からはなかっただろう

「えっとぉ、ね?この邂逅はもうちょっとあとの予定だったんだけど……」
向き直る彼女、バツの悪そうな声。閉店直後にしては通りに存在しない芳香
少なくとも、通常ではありえない要素ばかり
胸の前で両指を一つずつ重ねる、言葉を出力する待ち時間

黛 薫 >  
纏う香り。色で例えるなら青と白。
南国の海を透かして見る、水底の白砂。
香りの印象を拾うなら、ひとひらの花弁。

ともすれば、香りは『視線』より早く届く。
まして店主自身が調香し、きっと誰よりも
頻繁に買い足しに来る少女の香りであれば。

店から漂う香りのない今晩なら、なおのこと。

「……何、秘密の旅行とか?」

寝泊まり含め、仕入れ以外のほぼ全てを
この店内で完結させている彼女だから、
旅行鞄なんてイレギュラーもイレギュラー。

旅行と仮定すれば、サプライズ好きな彼女のこと。
帰ってきてからお土産をお披露目するという形で
此方の不意を狙ってくる線はまああり得る。

状況の把握は適切で早く、しかし安閑としている。
店主への全面的な信用が、本来悪癖であるはずの
『悪い状況の想定』を思考から追い遣っていた。

店を空けるなら休業日程くらいあるだろうと、
閉じたお店の扉を何気なく見やる。

メロウ > 貴方の想像の大半は正解で、確かに信用と意味では正しい箇所がある
彼女は確かにサプライズ気質で、いつも唐突に話を切り出すことも多い
不意を打って相手の反応を窺う事それ自体、数多く薫にも繰り出された事

しかし、『秘密の旅行』という部分に首を傾け、もじもじと動かす手を止めた
何かが違う。そう説明するよりも早く扉へと目を向けた視界にふと飛び込んでくるのは一枚の張り紙

絵があるようなものでなく、何かしらの堅い文章が書かれていそうなシンプルな資料
細かい文章は果たして読めるかどうかはさておき。その強調された箇所に書かれているものは大体こういうもの

『テナント料滞納』『立ち退きの要請』『委員会にも然るべき対処を』


「……うん。このままだとお店、出来ないんだよね
 忘れてもらえば時間稼ぎは出来るけど」

つまり、夜逃げを画策していたと。彼女にはそれが完璧に出来るだけ
正規の学生でないならば、この町に住む上で享受できる要素は決して多くはないのだろう

黛 薫 >  
シンプルなれど、お硬い文面。

「うん」

最近フォーマルな文章ばかり読み書きしていたから
内容ばかりはすんなりと頭に入って……入って……
入った、後。それから? いつもどうしていただろう。

「……うん」「……?」

金銭。営業。委員会。対処。
断片的な単語が理解というプロセスを素通りして。
いや、仮に理解したとして、その後どうなるんだっけ。
聞き慣れたはずの声と、環境音の境が分からない。

「?」

酷く、頭が冴えているような錯覚を感じた。
そう勘違いするくらい、珍しく頭が空っぽになった。

──黛薫は、身体の操作を魔術で代用している。
最初は不自由だったそれも今や慣れ、魔力切れでも
起こさない限り、ほぼ無意識での操作が可能となった。

「   」

だから、動けなくなるほどの思考停止なんて
久しく体験していなかった。

糸が切れた操り人形のように。
自覚する間もなく、くしゃりとその場に頽れそうに。

メロウ > 「か、薫さま!!」
目を伏せて、逸らそうとしたタイミングで崩れ落ちそうになる相手の体
慌てて駆け寄って、どうにか膝が崩れ落ちた直後のタイミングでその胸に抱く仕草
決して俊敏ではなかったけれど、どこか起こりえる想定もあればかろうじて

「あの、聞こえてる?薫さま
 立てる立てない、答えられる?
 私だって、力がある体から……」

先ほど潜り抜けた扉を逆戻りする?
四の五の言ってられなさそうな、小さな決意を自分からぐしゃっと踏みつけてしまうのはこの際いいとして

黛 薫 >  
「え」「あ、あ。うん」

ショックを受けたという自覚すらなかった。
いや、いっそその方が良かったのだろうか。

思考は未だ痺れたまま。早鐘のように鳴る心臓と
全身の血が落下していく冷たさ。本来あるべき動揺は
空白の時間に置き去りにされて。現実味のない感覚の中、
妙に凪いだ精神が浮遊している。

「立て……る。あ、でも、すぐは、歩けないかも」

息を吸って、吐く。春めいてきたはずの夜風が
こんなにも冷たい。身体を支えられて、直立して、
石畳の道路が未だにふわふわしている。

「……つまり」「お店、やって行けな、ぃ?」

どうにか、理解した現実を絞り出す。

メロウ > 「そうなるね、出来なくなることは多いから」

一方の彼女の声は、相変わらずで変わらないように
相手の心揺れ動く、そんなことは言葉から知らずともわかること
特に、彼女となら胸を重ねて普段と比べるくらい難もないくらいには

メロウの胸も動いてると感じさせるのは、新たな芳香を作る合図
調子の乱れた主人の背中に手を添えて、香りを重ねて落ち着かせる
彼女にとって『出来ること』。むしろ場違いながら、幸福の一端ですらある

「立てる、本当に?あなたは思いこまないと動けないもんね
 丁度お店の前だから……」

自分の境遇は大変だけど、彼女がショックを受けたままだと大きな誤解に繋がりかねない
どこか落ち着ける場所を探してか、改めて別れを告げた扉に手を伸ばす

黛 薫 >  
「待って」

咄嗟に声を上げる。
どうして声を上げたんだろう、に
後から追い付いた思考が、感情が意味を与える。

「扉、開ける前に確認しとかなきゃなんだ」

脈動ではなく、駆動。触れ合った場所から
感じ取れる彼女の心遣いであり、生き甲斐。
香りそのものは素より、その気遣いを受ける
此方が茫洋としたままでは居られない。

「メロウは……お店、続けたぃ?」

もし、そうであるならば。
閉じる扉はきっととても重かっただろう。
もう一度手を掛けさせるのが躊躇われるくらいには。

メロウ > 目線をそらして、ドアノブに手をかけている
意気消沈してる貴方をいったん宥めてからだと考えていた
その時に聞こえた言葉は決意を問うようなもの
意義を秘める言葉に動きが完全に停止する

メロウはいつもそう。相手の言葉の機微を窺い続けるものだから
決して、後付けの感情であっても。解釈しない、という選択肢はないものだ

「続けるよ。それが薫さまが私に求めた意味だもん」

責任や根拠を求めるのなら、間違いなく貴方の『お願い』である所
断定した言葉に込められたものはそれ以上。自分たちの出会いを思い出した先程と同じだ
いつか取り戻さないといけない、私を奪わせない

その為に、後ろ暗い『忘却』ですらも扱うことが出来るのが彼女であるという事

黛 薫 >  
想定した通りの答え。
そうでなければ "時間稼ぎ" なんて言葉が
出てくるはずもないだろう、分かっていた。

「オーケー」「10秒待って。落ち着くから」

其処に『理由』まで付け足されてしまえば、
自分だって当事者だ。3つ集めた『お願い』から
始まった集積が、今や願いだけの空虚なモノじゃ
なくなっていることくらい、気付いている。

「よし」「んじゃ、考えよ。どーしたら続けられるか」

『異能』による時間稼ぎは最終手段に、
まずは真っ当な方法の模索を提案する。

店頭の張り紙は読んだ。
お店が続けられない根本の理由は金銭の不足。
黛薫が独力でどうにか出来る問題ではない。

けれど。

自分は学生で、しかも学園に援けて貰った側だ。
援けてくれる人がいて、援けてくれる制度があると、
人よりほんの少しだけ知っている。

メロウ > 10秒、告げられればそれ以上でもそれ以下でもない
経歴上、口にすることの怖さを知っているはず
決めたというのなら"そう"であると決めるはず

或いは慣用句だとしても敢えて空気を読んでないか
この目の前、扉に添える手は掌に変えて見つめる彼女なら

「くきき。あなたの人形だよ、責任は取って貰わないと」

一度言ったことは、やっぱりこうして立場を強要してばかりになるんだもの

「といっても、作戦ばかりじゃ成立しないよね
 こうなっちゃったら言わなきゃいけない事もある
 今までの『どうして』は残っちゃうでしょ?」

こんな事態になった時、どうして薫を選ばなければいけなかったのか
大きな組織より、小さな個人。大抵その背後には影がある
お店がお店としてこれまで成り立っていた理由。察してはいるかもしれないけれど

「もう立てるんだよね。薫さまが休める場所ってあるのかな」

持ち直したとはいえ衝撃は衝撃、違いない
今からこの距離帰る?とは言いにくい

黛 薫 >  
「承知の上だし覚悟の上ですー。
 ったくもー、やっぱし強かでいやがんの」

半分……四半分くらいは軽口で、残りは本音。

高々時間稼ぎのために、誰の意識からも消える
手段を講じられる彼女のこと。我を通すにも
応えるにも、"所有者" なら腹を括らなければ
ならないことくらい、とうに理解している。

それとは別に、振り回される覚悟も?
そっちはまあ、出来てるような出来てないような。
だから振り回されてもつい強く出られないのかも。

「ま、そだな。どーしてこーなったのかとか、
 聞かなきゃなんねーコトは山ほどありますし?
 それよかまず、外で話してイィコトなのかを
 問い糺さなきゃだかんな」

自分だって長らく後ろ暗い道を歩いて来た身。
故に察しても深く踏み込めなかった部分もあるが、
この期に及んで見て見ぬ振りなど出来ようもない。

外で話せる内容なら寄れる場所も数多。
しかしそうでないのなら、期せずして遠く
感じられるようになってしまった帰り道、
責任を持って付き添ってもらうからな、と。

メロウ > 「気にされなければどこでも大丈夫じゃなかな?」

表情は薄ら笑みのまま、相変わらず首を傾げる仕草
この見積もりが果たして砂糖菓子のように甘すぎるものかどうか
主人の判断に委ねられた所。敢えて彼女の性格に捕捉をするというのなら、
対面した相手以外の人間は、存在しないものとして扱ってる場合が多いというだけ

「あ、というか薫さまが訪れてくれたってことは、大きな行事は終わったんだね
 どうしよう。お疲れ様なこともしたいな、最近ずっと忙しかったもん
 お店はこんな調子だけど、ほかにも私に出来ることはあるもんね。にひ」

今更、気付いたように。本来はそうあるべきだった貴方の予定も論う
しかして対面した側の調子というものを考えてみよう。盆と葬式が同時に来たようなものではなかろうか

貴方への支えは解いて、片手に鞄を持つ。そしてもう片手を柔らかく差し伸べた
調子はずれの続くメロウの事をどの位信じ、どのくらい御すものか

さて、主人の選択は?

黛 薫 >  
「おま……今それ言っ……こんの……」

そう、そもそも自分が定期的な来店のリズムを
崩さねば、事此処に至る前に相談出来たはず。

出来なかったのは此方の都合、魔術学会の冬季
学術大会のため、強行軍めいたスケジュールで
缶詰状態になっていたから。

なかなか会えないのを我慢して机に向かい、
いざ会えたらこの有様はあんまりではないか。
と、いう感想は放っておいた負い目を天秤の
逆側に置かれ、無情にも優先度の枠外へ。

「あぁクソ、ソレ言われちゃどっか探すしか
 ねーじゃん。今から空いてる店、しかも
 内緒で話せるよーなトコ……あ゛ぁーもー」

相手が無頓着なら警戒は此方でするしかなく。
想定が甘いのが貴女なら、その貴女に甘いのが
この少女。付近で個室付きのお店を検索して、
何度も頭を下げながら予約を取るのだった……。