2025/12/24 のログ
ご案内:「Free5 とある日の、杉本家」に杉本永遠さんが現れました。
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【これはいつかに有った、兄妹の一幕】

※関連項目
・競技:エアースイム
https://guest-land.sakura.ne.jp/tokoyo/wiki/index.php?%E8%A8%AD%E5%AE%9A/%E7%AB%B6%E6%8A%80/%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%83%A0
・PC:焔誼迦具楽
https://guest-land.sakura.ne.jp/tokoyo/pclist2/list.cgi?id=152mode=show

杉本永遠 >  
 ――これは挫折の物語である。

 ≪人間に限界はあるのか?≫

 そんな問いがあったとして、平凡な美少女で完璧な妹であるところの、杉本永遠ちゃんはこう答える。

「人間に限界はなくても、能力に限界はあるよね」

 要するに、人間という種に限界と言える限界はなかったとしても――というより、その限界を計る事が出来ないだけだと思うけど。
 人間という個には、能力の限界が確実に存在するのだ。
 それはもう、非情なまでに決定的に、超える事が出来ない物として。

 だから永遠ちゃんは、色んな事を諦めてきたのである。
 だって。
 どれだけ頑張っても、たどり着ける限界が分かってしまったら、どんなに好きな事でも熱が冷めてしまうから。
 勉強も、運動も、魔術も、科学も。
 私には何一つ、究められる物はなかった。
 

杉本永遠 >  
 まあ詰まるところ、私には悲しいくらいに才能がなかったわけですな。
 なにをやっても、ほどほどか、まあまあ良い、くらいにしかなれない。
 到達できる限界が分かっちゃうから、頑張ってみよう、って気持ちにどうしたってなれなかったのです。

 もし一つでも、究められる、遠い目標に出来る物があったなら、ちょっとは違ったのかなぁ、なんて思った日も――随分昔が最後。
 がむしゃらに頑張ってみる、なんてメンタリティでもなかったというか、我が事ながら、物分かりが良すぎたのも良くなかったのかな、なんて思ったりはするかも。
 でもしょうがない、私はそういう生き物だったのだ。
 

杉本永遠 >  
 それが、私が産まれ持った唯一の才能。
《人間の潜在能力と、その限界を測定できてしまう能力》
 これっぽちも欲しいなんて思ってなかった、私の異能の本質だ。

 まー、そんな能力、表に出せばトラブルの種にしかならないわけで。
 公的には、《人の身体能力を測定できる》っていう、ほどほどに便利な異能という事になってるのですな。
 実際これが便利だったりするもので、私の前じゃズルが通用しないってんだから、あっちこっちで測定員みたいな事をしてたりするわけなのだ。

 だもんで、そんな今の自分に別段不満があるわけでもなく。
 まあ、そんなもんだよねえ、って納得できちゃう永遠ちゃんですから?
 その日その日をのらりくらりと、楽しく面白く生きていければ十分すぎるくらい、幸福だと思うわけでして。
 
 だから、じゃないけども。
 

杉本永遠 >  
「――ほい、これが今年の三種目混合の参加予定選手。
 で、こっちが予選測定会の参加予定選手ね。
 やっぱり本土は予選から激戦になるよ」

 そう言いながら兄ちゃんにタブレットを渡せば、兄ちゃんは眉をしかめながら、選手のリストを眺めて、大きく唸る。

 そりゃそうだ。
 本土の予選会なんて、ぶっちゃけ、実質的な決勝大会と大差ない。
 選手の数も多いから、決勝出場枠も10人ってなってるけど、その10人に入る事すら至難って言って過言じゃない。
 それだけ、本土の競技スイムは洗練されているのだ。

「ハッキリ言うけど、今の兄ちゃんに入り込む隙間はないんじゃないかなー。
 決勝大会に出る事を考えたら、やっぱり地方の予選会の枠に入り込むのが現実的だよねー。
 それだけで強敵が勝手に減ってくれるわけだし」

 なんて。
 毎度言ってる事だけど。
 どうせ兄ちゃんは聞く耳持たな――
 

杉本永遠 >  
『――ああ、だから常世島の予選会に登録したよ。
 それでも決勝の枠は三つ。
 いや、実質二つと考えたら、中々厳しいとは思うけどな』

「ほへ?」

 ヘンな声が出ちゃったと思う。
 また変な冗談を言いおって、なんて思いながら確認してみたら。
 本当に、常世島で登録されてるんだから、驚かないわけがないのだ。

 ――だって、あの、諦めの悪い馬鹿兄ちゃんだ。
 自分に才能がないってわかった上で、それでも、ってがむしゃらに努力が出来る、そんな兄ちゃんだ。
 近道があるって教えたって、自分から険しい道に飛び込んでいく、そんな兄ちゃんなんだ。

 だからかな。
 なんか、なんとなく、分かってしまったのかも。
 

杉本永遠 >  
「常世島の出場枠は三つだけど、迦具楽先生が出るから、実質二枠かあ。
 本土枠よりはよっぽどマシだけど、それでもそこそこ厳しいよ?」

『ああ。
 だが、今回は予選会上位常連の選手が少ないんだ。
 特に三種の方は、前回より明らかに少ない』

「え?
 うわ、ほんとだ」

 予選会参加選手の多くは、種目を一つに絞っていた。
 三種目の参加者は年々少なくなってると思ったけども、前回からの減り方は明らかに大きい。
 とはいえ、その理由も大方の察しは着く。

 エアースイムのベテラン選手は、徐々に高齢化している。
 若い選手も入ってきているけれど、まだ、三種目を泳げるほど、熟達していない。
 対してベテラン選手たちは、加齢によってスタミナが低下していく。

 そうなると、必然的に得意な種目一つに絞っていくのが、恒例の流れだ。
 今回はちょうど、そんな選手の世代の谷間になったのだ。
 

杉本永遠 >  
 ――とはいえ、こうも示し合わせたように減るとは思わなかったけど。

「やっぱり異能研究の最先端じゃ、異能も魔術も使わないスポーツはウケなかったかあ。
 まあわかっちゃいたけどねー」

 私たちの世代の選手が極端に少ない。
 そりゃあそうだ、異能や魔術を学びに来てる世代だものねえ。
 わざわざ、そのレールから外れるスポーツに本気になる子は少なかろう。
 まあ、ゼロじゃないだけありがたいと言っていいんじゃないかな、ってところだけどさー。

「んー、ベテランにルーキー、合わせても強敵って言えるのは両手に届かないくらいだね。
 兄ちゃんならまあ、可能性くらいはあるんじゃないかな。
 前回の本土予選くらいの動きが出来れば、五分はあると思う」

 まあ、甘く見積もって、それでも五分五分、って意味だけど。
 ライバルの総数が減ったって、枠が少なければ競い合いは厳しくなる。
 そこまで甘い世界ってわけじゃないのだなあ。
 

杉本永遠 >  
『だっはっは、そうだろう!
 それに、迦具楽先生と泳げるとも考えれば、オレとしては一石二鳥だからな』

 笑う兄ちゃんに、肩を竦める永遠ちゃんです。
 まあ、憧れの人と同じ予選に出れるってなれば、テンションが上がるのも無理ないかぁ。

「んだねえ、兄ちゃんのコンディションもここんとこ悪くないし。
 狙いどころとしては、悪くないんじゃないかなー。
 ま、後はいい加減、勝つためにS-Wingを新調すれば、もう少し勝ち目が出るんだけどねー」

 これも、毎大会言ってる事。
 兄ちゃんは、憧れの迦具楽先生から貰ったS-Wing『紅月 壱型』を意地でも脱がない。
 高性能なS-Wingだけど、兄ちゃんのスタイルには正直言って、合ってない。

 というか、そもそも三種目じゃ、それぞれでS-Wingを着替えるのが当たり前。
 S-Wingに拘ってる時点で、自分からハンデマッチをしているようなもんなんですなあ。
 なんて言っても、今更兄ちゃんが聞くわけもないのである。
 

杉本永遠 >  
『――そうしたら、五分が幾つまで上がるんだ?』

 今度は、ヘンな声を出さずに済んだと思う。
 ちょっと自信ないけど。

「そだね、五分――五割なんて言わない。
 兄ちゃんなら八割、ううん、九割。
 甘く見積もっても、迦具楽先生の次で抜けられる」

『わかった。
 なら、お前の見立てで、一番いい組み合わせを用意してくれ。
 予選までには、全部、慣らして見せる』

「――わかった。
 予算をもったいぶったりはしないよね?」

『構わんさ、全部お前に任せる』

 真剣な目の兄ちゃんに、私は腕組して、息を吐くしかなかったのだ。

「おっけー。
 それじゃ、この天下無敵の美少女マネージャー、永遠ちゃんにお任せあれ!
 決勝でも通じるだけの、兄ちゃん向けバリッバリのカスタムで用意しちゃうからね!」

『おう!
 頼りにしてるぞ、永遠』
 

杉本永遠 >  
 なんて話をした、二か月後。
 兄ちゃんは予定通り、迦具楽先生の次点で、ぶっちぎりの予選通過をしたのであった。
 まあ永遠ちゃんからすれば、当然の結果なのである。
 それだけの実力を、兄ちゃんはとっくに身に着けていたんだから。

 ローカルチャンネルでの配信も、ほとんどが迦具楽先生のファンの中で、少しでも話題に上がったくらい。
 二分だけとはいえ、迦具楽先生とのドッグファイトを耐えきったんだから、話題にだってなるよね。
 流石に、本物の天才相手にあれだけやったのは、永遠ちゃんもドン引きでしたよ。

 でも、これは夢を叶えるお話し(フィクション)じゃない。

 ――これは挫折の物語なのだ。
 

ご案内:「Free5 とある日の、杉本家」から杉本永遠さんが去りました。