2024/06/28 のログ
藤白 真夜 >  
 はたして。
 おあずけは、出来るだろう。
 おりこうさんだったからか。
 きっちり首輪がかかっていたからか。
 美しいものを見せてくれる予感がしたからか……は、わからない。
 ほんの少し、歯型と、血を吸った跡(キスマーク)が増えるだけ。

 元来、わたしは眠りが深い。そんなに表に出てこられる存在ではないから。病弱なの。
 それでも、眠気をこらえて、語り続ける。
 どう■したかとかじゃない。
 それに対して、わたしがどう想ったか。どう、悦んだかを。
 耳を塞ぎたいような話もあったかも。
 到底同意出来ないような感情もあったかも。
 猟奇を美と言い張る傲慢が。喪失を蒐集する強欲が。屍肉を喰らう暴食が。そこにはあった。
 でも、厭わない。隠さない。
 理解は、必要としない。同意もなく、添い遂げる必要もない。
 ただ、わたしの美しいと思うものを、何も考えず、何も飾らず、語った。
 わたしの識る、欲望と愛を。
 あなた個人へ、なんかじゃない。
 あなたの音楽へ。捧げる。

 まどろみの中でも、紅い瞳が輝きを失うことは無い。
 堪えるものがあるのか吐息はいつまでも熱く、巡る血はいつまでも熱を持ち続けたまま。
 ──愉しそうに、話し続けた。
 
 殺人鬼の、甘い死のお話を。

 落ちていく感覚。わたしの出番は終わり。眠ると、いつもそう。その前に。
 この夜の最後の囁き声を、聞き届けた。

 やっぱり、なぞなぞが好きなヒトらしい。
 その言葉も、暗号も。それよりもずっと。
 あなたの音楽の意味を知った今。あなたの歌のほうが、わたしの中に響くはず。
 
「……わたしもね。好きな言葉、あるよ」

 あなたの言った言葉は、わたしにはちょっとむずかしい。
 わたしは、単純で、わかりやすいのがすき。

「 おやすみなさい 」

 終わりのことば。死と眠りを分かつものは、わたしの中には無くて——

 
 きっと、ほんのすこし、壊れていた。
 普段のわたしなら……ぜったい、殺していたんだから。
 でも、そう。
 それは、あなたの音楽のちからなのか。
 ──首輪を引く手が、あなたを識ってたからなのか。
 答えは、ゆめのなか── 
 

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