2024/07/27 のログ
ご案内:「黄泉の穴・より深くへ」にエルピス・シズメさんが現れました。
ご案内:「黄泉の穴・より深くへ」にDr.イーリスさんが現れました。
Dr.イーリス > ──黄泉の穴に行く前。

慰霊祭が始まる。
あまり落第街には関係ない行事、と思う人がいるかもしれないが落第街にも弔いたいと願う人はいる。
死者の全員がちゃんと石碑に刻まれているわけではない。
例え石碑に刻まれていないとしても、弔いたいという気持ちは変わらない。

落第街においても所々慰霊碑が立てられる事もあるという。
イーリスはスラムで顔が広かった。
スラムにある古びた教会。そこの神父はイーリスとは知り合いであり、また教会の前には慰霊碑も建てられていた。

今日のイーリスはいつものセーラー服姿ではない。
喪服とまでは言わずとも、黒いワンピースを着ていた。
イーリスが連れるのは漆黒のアンドロイドのメカニカル・サイキッカー、それと鉄の脚が生えた棺桶型メカ。

「やはり、ここの教会には慰霊碑が置いてありましたね」

慰霊碑の前に歩み寄ると、既にいくつか花束が置かれている。

エルピス・シズメ >  
 事の発端は、こうだ。

『慰霊祭で弔いたい人達が居る。』

 その言葉を受けて、スラム街にある古びた教会と立ち寄った。
 エルピスの装いも黒に寄せている。

(この後のことを考えると、申し訳ないけど喪服だとね……)
 
 神父との会話を邪魔しないように、三歩後ろを歩きつつ。

「みたいだね。手入れもされている。
 供えるものは持ってきた?」

 バックパックから小さな花束を取り出し、慰霊碑に近づく。

Dr.イーリス > 弔いたい人、いっぱい……。
先日、“王”に殺害された仲間の不良達。
それ以外にも、過酷な生活で亡くなった不良達もいる。
いや不良仲間だけではない、スラムの知り合いも貧困な生活に耐えきれず命を落とした人達がいる。

そして『エルピス』さん……。
今、目の前にいるエルピスさんは、かつての『エルピス』さんから色んなものを託された。
そんな『エルピス』さんは、黄泉の穴に落ちて亡くなったという……。
想像を絶する死……。苦しかったのかな……。辛かったのかな……。
それでも、『エルピス』さんがとても温かい方で、その温かさが今のエルピスさんにも受け継いでいるというのは伝わった。

神父さんとの会話も程々に慰霊碑を眺める。

「はい。あまり立派なものではありませんが、花束を……」

エルピスさんに頷いた。
メカニカル・サイキッカーはどこからか白百合やカーネーションの小さな花束を取り出す。
メカニカル・サイキッカーから花束を受け取り、捧げる。
宗教の作法などはあまり分からない。
慰霊碑の前に跪き、両手を組んで祈りを捧げた。

亡くなった知り合い、

そして、出会った事がないまま亡くなった『エルピス』さん。

どうか安らかに……。

イーリスの閉じた瞳から、雫が流れて、地面に零れ落ちる。

エルピス・シズメ >  
「──」

 献花の後、静かに弔う。
 イーリスの顔は見れなかった。

 極力、余計なことを考えないようしていた。
 ただただ弔いと祈りを捧げる。

 ……押し寄せる感情に呑まれないように。
 そしてそれを悟られることのないように。
 
 イーリスが声を掛けるまで、そのままで在ることだろう。 
 

Dr.イーリス > メカニカル・サイキッカーから花束を受け取って献花した後しばらく弔いの祈りを捧げ。
やがて瞳を開ける。
さすがに弔いの祈りの最中でお声は掛けられない。
長くてもエルピスさんの祈りを終えてから、ぽつりと呟くように声を出す。

「……『エルピス』さんも、皆さんも……安らかに眠っていただきたいです……。そのために……やらなければいけない事がありますね。まだ、安らかに眠れていない方々がいます」

例えば、“王”に殺害された不良達はゾンビとなっている。ゾンビとなった不良は半数以上眠らせる事ができたが、まだ安らぎに辿り着いていない者達もいる。
そして『エルピス』さんは、黄泉の穴に落ちたまま。奥底で、未だ放置されたまま。
不良になったゾンビ達については追々になるが、今日は『エルピス』さんの亡骸をちゃんと弔ってあげたい。

「……そのために、黄泉の穴で『エルピス』さんを助けにいきます。黄泉の穴でずっと放っておかれているなんて、あんまりですからね」

『エルピス』さんの死体の回収、そのために棺桶型メカである。
追悼後に気持ちを改めて、凛と頷く。

エルピス・シズメ >  
(僕は直接会ったことは、ないけれど。)

「……イーリスの大事な仲間や友達のためにも、頑張らないとね。
 それにそうだ。ちゃんとアイツも『弔ってあげない』と。」 

 とは言ったが、イーリスの不良仲間にも"王"にも直接会ったことがない。
 彼女の気持ちを汲んで、同意することが精いっぱいだ。

「そうだね。僕たちはこれから黄泉の穴に放棄されたエルピスの遺骸を回収にしに行く。……危険だから、」  

(覚悟を決めたつもり、だったけれど。)

 『エルピス』の話題が出ると、どうしても頭が痛む。
 今回、慰霊碑に乗じて黄泉の穴へ『エルピス』を弔い──助けに行くことは了承した。

 ただ、拭いきれない既視感と不安がある。
 それ等の感情を振り切って、イーリスへと向き直った。

「とりあえず進んで、黄泉の穴に向かおう。」

Dr.イーリス > 「ありがとうございます。改めて、頑張れる気がします」

いつか、仲間達の紹介もエルピスさんに出来ればいいな、と思いつつ。
その機会とすれば、エルピスさんの義肢をメンテナンスする時だろうか。不良集団アジトのラボを使ってメンテナンスする予定なので。

『エルピス』さんの救出は、エルピスさんにはやはり負担があるだろうか……。
心配にはなる……けど、エルピスさんにとって向き合わなければいけない事でもあるだろう……。
エルピスさんに力強く頷き、そして二人で黄泉の穴へと向かった。



──黄泉の穴──


落第街でも特に危険な場所。
この穴の周囲では、怪異が起きやすいという……。
“王”と戦う以前、イーリスは不定期的に訪れて黄泉の穴のデータ収集及び解析を行っていた。
そのデータが、イーリスの体内コンピューターにある。

「……これまで、黄泉の穴の中の調査はドローンに頼っていましたが、直接入るのは初めてです。出来る限りの備えはしてきましたが、危険なのは変わりありません……。覚悟していきましょう……」

イーリスの左手にはアタッシュケース。備えの一部である。
右手にスマホを握る。画面に映るのは、黄泉の穴に関するパラメーター。これまでデータを集めてきた賜物だ。

「予測通り、今なら突入しても比較的安全に穴の向こうに辿り着きます。無論、それでも危険と隣り合わせですが……」

エルピス・シズメ >  
 落第街、スラムの最奥の岬近くに存在する巨大な「穴」、通称「黄泉の穴」。
「新世魔術師会」の暴走により発生した「穴」は異界化し怪異など存在しており、内部は非常に危険な状態だ。

 だが、今回はイーリスが事前に調査を行い、安全な経路を予測立てている。
 後は彼自身の『既視感』を頼りに流れを追えば……
 
「危険でも、きっとたどり着ける。」

 そう確信を抱き、彼を前へと進ませる。
 イーリスへの信頼感は大きい。

「ひとまず、どこから降りればいいかな?」

Dr.イーリス > 少し前のドローンを使っての事前調査で、安全経路の予測はばっちり。
危険な場所だが、出来る限り安全に行く。
アタッシュケースを開けると、そこからドローンが発進した。
ドローンが穴へと消えていく。

「エルピスさん、手を繋いでいただいても大丈夫ですか?」

アタッシュケースを棺桶型のメカに預けて、エルピスさんに右手を伸ばした。
直接“穴”に入るのは初めて。緊張もする……。

「この大きな穴から……突入します。ドローンが先行して、その後一気に私達も穴へと入りましょう」

手を繋いだなら、エルピスさんやその他メカと一緒に穴へと突入していくだろう。

エルピス・シズメ >  
「うん。離さないよ。」

 機械の右手を差し出し、伸ばされた手を握る。
 何があっても離すまいと、力強く握りしめた。 

「了解。まずはドローンに先行させるとして……」

 飛び降りるのだろうか。
 それとも伝っていくのだろうか。
 突入方法のすり合わせは念入りに確認しておこう。

 いずれにしてもドローンが拓いた道に続き、進む。
 進むたびに既視感が強まり、頭が痛む。

「……イーリスちゃん、この腕や足、それと炉を開発したのは英雄開発プロジェクトだけど……」

「英雄継承プロジェクト、って、出てきた?」

Dr.イーリス > 「ありがとうございます、エルピスさん」

離さない、と言ってくれた事にイーリスは微笑む。

「先行するドローンのカメラの映像がこちらに映し出されます」

イーリスの持つスマホ画面、そしてイーリスの体内コンピューター内で映し出される映像だったが、エルピスさんにも見えるよう二人の眼前、虚空に映像が浮かび上がる。
その映像は、先行するドローンが映し出しているものだ。

「それでは跳び下り……いえ、ゆっくり伝っていきましょうか」

突入方法は、跳び下り……と思ったけど、エルピスさんの気分が優れていない様子に気づいて方針を転換。

「……エルピスさん……。もし耐えられなくいつでも言ってくださいね……。無理をするのはよくありませんからね……。頭痛薬もお渡ししておきます。私お手製の頭痛薬は効き目がいいのですよ」

そう言って、機械の両手も生えている二足歩行の棺桶型メカがアタッシュケースから飲み薬が入った小さな瓶を取り出してエルピスさんに差し出した。
エルピスさんの問いに頷く。

「あれから『エルピス』さんの事、調べていましたからね。さすがに公安で活動していた時のものまでは分かりませんでしたが……」

公安については、イーリスは公安所属ではないという事もありそこは大した情報を得られなかった。
しかし、あの事務所を拠点としていた時の活動記録。また英雄開発プロジェクトや英雄継承プロジェクトについては情報を得た。

「──完全な英雄の無尽再現……。それを目標とするのは、英雄継承プロジェクト……。どのような形で『エルピス』さんが関わっていたかまではまだ分かりません……。『エルピス』さんが関わっていたところまでは確実ですね」

どのような形でというのは、任意的な協力なのか、強制的な協力なのか。
イーリスは、無理やり人体実験を行うような行為が、一人の科学者として好きじゃない。