2024/08/09 のログ
ご案内:「落第街裏通り・廃材溜まり」にエルピス・シズメさんが現れました。
エルピス・シズメ >   
 落第街の裏通りのより深く。
 "右腕が2つある"義手義足の少年が、持て余した廃材を投げ捨てる。
 
「生活していると、どうしても溜まるからね。」

 ゴミを捨てて息を吐く。
 思えば落第街を住まいの中心にしてから大分経つ。 
 男子寮にも暫く帰っていない。

「でもまぁ、イーリスやナナがいるし──こっちのがいいや。」
 

ご案内:「落第街裏通り・廃材溜まり」に紅き月輪ノ王熊さんが現れました。
紅き月輪ノ王熊 >  


        「どーんっ♪」


 

紅き月輪ノ王熊 > 空間が破れる。
まるで空間そのものに
爪を立てて、
そこを切り捨てたように。

少年目掛けて
出てくるのは超速で飛び出る鉄の塊―――
超重量の車

それは

Dr.イーリスが
あの決戦で使っていた

車型の兵器の成れの果てだった



悪趣味で
愉快な挨拶


さりとて"王"はその車には乗っておらず―――

声だけ聞こえたのは

少年が少女と分かち合った呪縛故

エルピス・シズメ >  
「、!、?」

 超重量の車型兵器よる轢撃。
 想定の外から弩級の衝撃を叩き込まれれば成すすべも無く舞い上がり──

 ──廃材置き場の頂点に叩き落とされる。

「ぐ、あ……」

 今の一撃だけで大分イカれた。
 第三の腕は故障。義足も辛うじて動く程度。

 内臓へのダメージは考えたくはない。動けはする。

 何が起きたのかは理解できない。
 ただ、忌々しい言葉は聞こえた。

紅き月輪ノ王熊 > 「エルピスきゅ~ん、こんばんはぁ!」
「はろはろはろーぉ♪」

吹っ飛んだ彼の吹っ飛んだ先に、
王は現れた。

愉快で軽快で爽快な挨拶。

「会いたかったよ~!」

「沢山挨拶してくれてたよねッ♪」
「いや~面目なぁい!」

「ウチの"ちょっとした事故"に巻き込んじゃって!」
「自動車保険でもかけときゃよかったかね~」

熊。
紅い熊。

ブッ倒れた彼を見下ろしてニヤニヤしている。

エルピス・シズメ >   
「僕も会いたかった、よ。こんな……で悪い、ね……。」
 
 満身創痍。
 そもそも無防備なまま弩級の車に轢かれて無事で居られる訳がない。
 廃材置き場に落ちたから、どうにまマシであっただけ。

「落第街の『保険』なん、て、ろくなものがない、よ。
 騙されておわり。……さ。」

 無理くりに身体を立ち上がせようと藻掻きながら、王を見据えて喋る。

「……イーリスの手前ああいったけど、」
「やっぱ、僕も王様とは話したく、てね、どんなところが好きになったのかぐらい、教えてよ。」

 軽口。
 復帰の時間稼ぎ半分、本心半分。

紅き月輪ノ王熊 > 「あ!」
「それ!」

王様、食い入る。
その問いかけは…歓迎する様だった。

「実はさあ、王様もキミにその話したかったんだよねぇ!」
「いや~、」
「本音を言うと」
「最初はキミの事―――」

紅き月輪ノ王熊 >  


   「大ッッッ嫌いだったんだけどねぇ!」


 

紅き月輪ノ王熊 > 「よくよく考えると」
「呪縛を通してイーリスを見る事が出来たんだ」

「イーリスはいつ見ても美しい」
「気高く、愛らしく、…時折抜けているところもあったようだね」

まるでストーカーだ。
だが王はそれを臆面もなく語る。


「王様はイーリスの全てが…美しく感じる!すべてが大好きなんだよ!」

「そして」

「イーリスが美しくあるのはキミのお陰でもある」

「敢えて言おう」

紅き月輪ノ王熊 >  


   「ありがとう!キミのお陰でイーリスはより美しくなった!」


 

エルピス・シズメ >  
「好かれていたら、趣味を疑う……よ。」

 上身を起こす。
 割り込みが入らなければ、賞賛の言葉を受けながらそのまま立ち上がるだろう。

「どういた、しまして。……確かに、今のイーリスは前よりもずっとずっと素敵だ。」
「僕から見ても同意、だよ。」

 息も絶え絶え。
 だが、こんな状況でも──王がイーリスを誉めれば、同意はする。 
 いかに嫌な存在で、危険因子であろうと、イーリスを称える言葉は遮らない。

「もうちょっと礼儀正しければ、お友達ぐらいにはなれたんじゃないかな、おうさま。
 それにしては、悪縁を作りすぎたかもしれないけど──」
 

紅き月輪ノ王熊 > 「あ、そう?」
「ぶっちゃけさあ、王様今結構キミの事好きだよ?エルピスきゅん♪」

ゆったり話しているのは、
王たる余裕であろうか。
時間を稼がれているという事を理解した上でなお、
お話しは辞めない。

「お友達から始めてみるのもよさそうだねぇ~!」
「意外と仲良くなれるんじゃないかなぁ!」

「夏場だし海に行くのも良いねぇ!」
「或いは~、花火を見るのも良い!」
「そういえば~、氷祭りなんかも参加してたねぇ~!」
「うらやまちぃ♪」

「逆に聞くけどエルピスきゅーん!」

「キミはどうなんだい?」

「イーリスのどこが好きなんだ?」

エルピス・シズメ >  
 先の一撃を除け弩、絶対的な格差。
 王が余裕で会話に付き合えってくれるのも。それが理由だろう。

(悪い気は、しないね。)
(とは言え……どうしたものかな。)

「ああ、とても楽しかった。
 ……イーリスがキミに抗って。みんなを頼った。」

「その結果出来た想い出だ。」

"好きな所。"
 改めて王に問われれば、待ってましたとばかりに口を開く。
 轢撃の痛みは何処へ行ったのか、と言わんばかり。

「抜けていて、甘えん坊で、でも頑張り屋さんで、いっぱい怪我をして帰ってくる──。
 ──ケガをさせた相手の事は煮えるほど腹が立つけど、『それでも』とがんばるイーリスが好きでね。」

 イーリスは度々怪我をして戻ってくる。
 時には呪いであったり、包帯まみれであったりもする。 

「知っていると思うけど、イーリスはとてもこわがりさんなんだ。
 それでもあんなに頑張ってる彼女と、頑張ったからこそ気を抜いて楽しそうにしてる彼女が、とても好きだ。」

「で、おうさま。──今はギリギリでないない尽くしの僕だけど。
 お前と暴力の準備がある。──どうか『喰らって』くれるかい。」

エルピス・ロッソルーナ・エミュレイタ >   
「王様がそこに居る以上。呪いもある。条件は整った。」
「キミの呪い(想い)を、僕の異能で限りなく受け止めて僕のものにする。」

「想いを継ぐ異能の、本来の使われ方だ。最悪な方の。」

感情から記録を読み取り、記憶・経験として引き継ぐ能力。
また、思念や感情に由来する概念を継承する能力。

危機的状況になればなるほど効果を発揮する傾向にあり、
極端な状況では『属性や技術』ごと想いを継承する。

引き受けた『殺害欲』を想いと見做して基軸にし、それらの記憶から技術を属性を継承する力。

殺害欲に濡れ、王の力の一端を備えた怪物としてのイフとしての属性の再現──
──その人格に呑まれることがなく、ある種の英雄を継承する異能──

「『夜が来た。』エルピス・ロッソルーナ・エミュレイタ。紅き月のエミュレイタ、エルピス。」

「どっちでもいいか。……イーリスには見せたくない姿だから丁度良かった、まんぞくするまで殺意を交わそう、王様。」

紅き月輪ノ王熊 > 「あッ、そういう感じなんだ♪」

「良いね良いね。」
「王様、ちょっと…昂ってきたかもしれない。」

「よし。」
「王様は高貴な立場」
「自ら他者にその名を名乗ることもしない」
「姿を現す事だってしない。」

「だが。」

「特別に。」

面白いものを持ってきたねぇ。
殺害欲を。
紅き屍骸の持つ殺害欲と呪いを解釈してきたのか。

そして、月の名を背負ってきたのか。

呪いを、想いを、殺害欲を自身のものとして?



「その名乗りに、応えよう―――」

紅き月輪ノ王熊 >  


「月すら平伏す絶対王者!
 月輪ノ王―――ここにさーんじょーう♪」


 

紅き月輪ノ王熊 > 「楽しい夜にしようね、エルピスきゅん♪」

今宵の月は紅く、満月となった。

この王の力は。

月すらも平伏し
夜すらも操る


紅き殺意を

夜空に迸らせる



ここは元には戻らない程紅くなった

エルピス・ロッソルーナ・エミュレイタ > 銀色の髪。
赤い瞳。
血の様な文殊。
赤と黒の色のドレス。
潰れかけた赤い義手義足。第三の腕は擦り切れた様に朽ちている。
基盤はエルピス・シズメと変わりがない。

異様な様相であるが、『エルピス・シズメ』の人格は失われていない。

失われてたであろう末路の『人格のカタチ』を、乗っ取った(エミュレイトした)

拾い上げた壊れた標識が、赤い戦斧へと変貌する。

「素敵な名乗り、ありがと……な!」

だけど殺す。喋り始めには振りきっている。
その名に違わぬ、殺害欲で研磨された一撃。だが──。

 

紅き月輪ノ王熊 > 「おお~!」
「まるで魔法のように大へんし~ん♪」
「エルピスきゅん!今の姿、相当イカすよ♪」

さっきまでの茶髪はどこへ行った?
全く格好も違う。ドレスのようだ。

そして、拾ったブツすら変貌する。
殺意に満ち溢れた斧…!

面白い。

面白いなぁ―――ッッ!

だが。

紅き月輪ノ王熊 >  


    「面白いだけだ」


 

紅き月輪ノ王熊 > 刹那。

紅き月光をその身全身に宿しながら、
殺戮のツメを振るう。

斧を弾きあげる。

殺害欲をその身に纏い王と対峙する―――?



笑止千万ッッ!!

紅き屍骸の王に!!

"殺害欲を統べる"王に!!

"殺害欲で敵う"と思っているのか―――ッッッ!!?


―――さあ。


死ね。

その身を以って、この攻防にて理解せよ―――!

攻めるは貴様
防ぐは王

だが単に防ぐには非ず―――

攻めた側が砕けん程の勢いを以っての防御ッッッ

エルピス・ロッソルーナ・エミュレイタ > 熊の爪が斧を弾く。

自身の内にある『殺害欲』と目の前の『王の感情』。
湖に映った月を描き、カタチにしたもの。

付け焼き切った刃が。"統べる"ものに叶う筈がない。
土俵の上に立てはすれど、『格が違う。』

王と模造器の『殺害欲』。
動物と人間の『殺意の本能』。

その格差を、覆せるものではない。

斧は砕かれ、姿勢は崩れる。
更には、当然のごとく奮われた爪撃の反で模造器(エルピス)の右手に罅が入る。

紅き月輪ノ王熊 > 「……くく。」

愉悦。
……王は愉しそうだった。
あの憎き男を、
やっと、傷つけられるのだから。
同時に、あの女へ、
その攻撃は必ず届く。

なんと
なんと
なんと

なんと素晴らしい事か!

この爪を振るうたびに男は傷つき、女は泣くだろう!!

素晴らしい―――素晴らしすぎるッッッ!!!

「キミは」
「知っているよね。」
「この魔法を。」

月光が照る。

「見ていただろう?」

月光が、紅く―――

「月すら平伏す大魔術―――」

王に従うように、辺りを暗く
王だけを明るく、照らす

「―――いっくよぉ~!」

月王絶命爪(ゲツオウゼツメイソウ)―――!!!」

月光の加護を乗せ切った
紅き殺戮の爪

たったの一撃であらゆる生命を狩る、
妖獣の王の一撃は、



さりとて、何故かその名に反して、
彼の命を"決して奪わぬように"放たれる。

―――何故か?

(キミには生きたまま最高の結末(フィナーレ)の為の材料になってもらうんだ♪)

勿論それは―――

紅き月輪ノ王熊 >  


     (イーリス、キミへの贈り物だよ)


 

エルピス・ロッソルーナ・エミュレイタ >  
「僕ひとりに使うのかよ……!」

 Crisis。Danger。Critical。
 どこかに危機を伝える報せが響く。

 自身の修理中であった筈の炉を使おうと気を奮う。
 "エルピス・ロッソルーナ・エミュレイタ"の属性を継いでいることもあってか、ほとんど反応しない。

 基盤の炉が壊れていることもあってか、"エルピス・ロッソルーナ・エミュレイタ"にとっては、もはや変換しなくなって久しい廃炉。

 そんな印象すら覚える炉を、無理矢理動かす。


 殺害欲に濡れていなければ、その一撃が加減のされたものであることに気付いたのだろう。
 さりとて、気づいたところで結果は変わらぬ。

 あれだけ啖呵を切ったのだ。
 どんな一撃であれ、最後まで抗わない理由はない。

 再び燃え滾った炉は、力を振り絞りある種の共鳴を果たす──。
 
「焼き切れ、皆既日蝕の槍──!」

 月光から落ちるるは、本来ならば全ての命を奪う凶爪。
 迫る刹那、ほんのわずかに、その月を囲う円環が産まれる。

 皆既日食。
 赤き月の王の模造器として、月の在り方をほんの僅かに換えて力を得る。

(死んで、たまるか……!)

 残りった感情全てとほんの僅かな月の揺らぎから得た力で、 
 王の思惑を知らずに、生存のための抵抗を択んだ。

 慈悲なき(慈悲ある)一撃へ、最後の一撃で答える。

 ──エルピスの姿も、ここで戻る。
 

紅き月輪ノ王熊 >  


    「抗うキミへの敬意を表して!」
    「王が統べる月夜を魅せよう!」


 

紅き月輪ノ王熊 > 月輪の王が統べるのは。
月夜そのもの。

煌めく美しき皆既日食、
円環より生み出されし、
最後の一撃の槍―――!

それを、
王の深淵の如き月光が反抗する。

月光を纏いし
絶命の爪が



砕く。



槍を。
彼を。
全てを。

闇夜に沈めるように。




ああ、生存するがいい!!
生存してもらってこそ意味がある!!

イーリスを愛するキミは、
イーリスが愛するキミは、

ここでは殺さない。

紅き月輪ノ王熊 >  


「キミに会えて本当に良かった―――エルピスきゅん♪」


 

エルピス・シズメ >  
「あ、ああッ──ああああっ!」

 月光の加護を持つ爪に触れた焔の槍は砕切る。
 月光の爪は暗むことなく、皆既日食の槍(偶然のひとつ)を砕き切り、その力の下──

 闇夜に紛れた凶爪が、エルピスの左腕から胸、右脚に掛けて引き裂き、深い爪痕を残す。
 抵抗と加減。どちらの一つでも欠けていればここにあるものは肉と鉄を混ぜた団子(取り返しのつかない肉塊)だったことだろう。

 いずれにせよ、決着は付いた。

 エルピス・シズメはその力を使い果たし、
 傷だらけのまま地面に転がり、赤い染みを廃材の上から染めた。

 

紅き月輪ノ王熊 > 「ふふふ―――はははははははッッッ!!!」
「イーリス、見ているか?!」
「キミの大切な彼の無惨な姿を!」

呪縛に声を乗せて高らかに笑う王。

(―――なんと、なんと愉快なのだろう!!)
(こんな…こんな楽しい事があっていいのか?!)

王は心の底からこの勝利を喜んでいた。
勝利。

"勝利がこんなに嬉しい"と感じる事等、いつぶりだろうか?!

「イーリス!」
「彼がこんな目に遭うのはッッ!!」

紅き月輪ノ王熊 >  


    「キミが彼を愛したからだよ。イーリス。」


 

ご案内:「落第街裏通り・廃材溜まり」にイーリス製の対紅き屍骸ウイルスさんが現れました。
イーリス製の対紅き屍骸ウイルス > 『数ある事務所』のエルピスさんとイーリスのお部屋で、イーリスは車椅子ごと転倒してうつ伏せに倒れていた。
エルピスさんに危機が迫っている事は察知している……。
だけど、右脚が粉砕されていて、メカニカル・サイキッカーもまともに動かせる状態ではない……。

動けない……。

そんな時に、イーリスは機械で出来た注射器が目に入る。転倒した時に、机に置いていたものを一緒に落としてしまったようだ。
床に落ちた注射器をイーリスは必死に手を伸ばして、そして手に取った。

「エルピスさんをもう傷つけさせないです……!!」

“王”の呪いを制御しているイーリスは、その呪いの“繋がり”を“王”に繋いだ。
機械仕掛けの注射器を自身に首に刺し、そして対紅き屍骸ウイルスを注入。
呪いの“繋がり”を通して“王”へと注がれていく。

そのウイルスは機械的なものと生物的なものが半々、
生物的なウイルスが増殖しながら“王”を蝕み、そして苦痛を与えていく。
そして生物的なウイルスが排除されても、今度は機械ウイルスが生物ウイルスを再生させる事になる。
先日、“王”に送り込んだウイルスと同様のものだ。

紅き月輪ノ王熊 > 「では、…キミに呪いをかけよう。」
「お待ちかねのお楽しみタイム♪」

転がった彼に迫り、声をかける。

―――その言葉を聞けば、理解できるだろう。

"最初から殺す気などなかった"のだ、と…!

だが、その前に―――"救済"が入った。

エルピス・シズメ >  
「楽しそうだとおもったら、そういうことか、い……」

 苦悶と嫌悪で王を見遣る。
 このために最初から加減されていた。

 その呪いが入る前に──

「イーリス!」

 "救済"が入る。イーリスの介入だ。
 

紅き月輪ノ王熊 >  


     「"知ってた"よ」
     「……なーんちゃって♪」
      あっかんべー♪

 

紅き月輪ノ王熊 > 呪いを通じる繋がり。

それは言わばバックドアとでもいうモノだろう。
それがあるからずっとイーリスに弱点を晒し、いつでも遠隔攻撃を許すようになってしまっていた。

だが。

いつまでもいつまでも、
その穴を晒していると思ったか?!

あの日から何日たったと思っているッッ!!

そんなものとっくに対策済みだ―――ッッッ!!!

呪いを通じて流れ込んでくる外部からの異物を、
破り捨てるように次々と"破滅"させていく…!!

ウイルスは死滅し、
機械は体外へ、まるで空間を破り捨てて巻き込むように破断ッッッ!!!


「こんなもん、いつまでもいつまでも弱点晒してたらあーイテテじゃすまないからねえ。」

「イーリス。」



「本日のメインイベントを見てくれてありがと♪楽しかったでしょ♪」

エルピス・シズメ >  
 王がイーリスのウイルスに対抗した直後、彼が目を見開く。
 そこにあるのは『衝動的な殺害欲』ではなく。『理性から成り立つ人間としての悪意』。
 
 急に上半身を動かし、
 あろうことか、呪いが向けられると同時に──王の喉笛へ歯を立てて、閉じる。
 
 『噛み付き。』
 獣の所作でありながら、彼らしからぬ人間としての『悪意』を以って、牙を立てた。

 ただ、それだけ。
 それだけだが、そこには『人の意』が込められていた。
 

イーリス製の対紅き屍骸ウイルス > ウイルスが“王”を貪りつくそうとする。
まだ前回から特に改良などはされていないウイルスだが、それでも前回は“王”に有効だった。
“王”の声は、呪いを通してイーリスに聞こえていた。
機械ウイルスが今の状況をイーリスに伝えてくれる。

イーリスが愛したから、エルピスさんが……。
『数ある事務所』で転倒しているイーリスは、動揺してしまうも、すぐに凛とした表情に戻った。

「……私の愛した人だから、あなたの好き勝手にはさせません……!!」

呪いを通して、“王”に言葉を投げる。
ウイルスがどんどん“王”に流れ込んでいく。

「……エルピスさん、逃げて…………!!」

呪いはエルピスさんにもかかっているもの。
ならば、“王”が暴れて呪いが強まっている今なら、エルピスさんにもこの声がとどくと思う。


だが、同じウイルスは全く通じなかった。

「そ、そんな…………」

生物型ウイルスが死滅していき、機械ウイルスもまた朽ち果てていく。
“王”の中から、ウイルスが消え去っていくのだった。

ご案内:「落第街裏通り・廃材溜まり」からイーリス製の対紅き屍骸ウイルスさんが去りました。
紅き月輪ノ王熊 > ……美しい。

王は彼からの噛みつきを敢えて受けて理解する。

負けてなお抗う姿は、
なるほどイーリスのソレに似ている。

その気高さ、美しい。


それが悪意であったとしてもだ。
だが、王にその歯は通ることはない……

「じゃあ、呪いをかけるね。」
「良いものを見せてくれたから、王様の慈悲を込めた呪いを―――ッ」

月夜が怪しく煌めき
呪縛が月光に交わりエルピスに降り注ぎ始める―――