2024/09/02 のログ
ご案内:「落第街 路地裏の奥 廃墟群」にマリアさんが現れました。
マリア > 痛み、それは人間が有史以来克服できていないものの1つ
昨日の戦いの後、逃げ帰ってからずっとマリアは全身の痛みに襲われ続けている

「治療も効かない…どうして…」

何度治療の魔法を使っても変わらない
痛みを抑える魔法を使っても一時凌ぎ、寝ても覚めても痛みは変わらない
そのせいで今日はパトロールだってできていない

「あの怪物さん…なにをしたの、かな…」

逃げ際にくらった首筋への攻撃
恐怖でよく覚えていなかったけれど何かを注入されたのは覚えている
あれが原因、そう分かった所で何もできず1人で痛みに苦しんでいる

ご案内:「落第街 路地裏の奥 廃墟群」にさんが現れました。
> 昨夜、自分が”野暮用”で事務所を出ている間に起きた一連の出来事。
それを知った少年の胸中は――本人にしか分からないものだろう。
それでも、表面上は何時も通りの軽いノリはそのままに、腰には不抜の四刀を携えて。

「お~~居た居た…と。えーと、【魔法少女】マリアちゃんで間違いない感じかね?」

のんびりと、何時もの調子のままに緩やかに暗闇から姿を現した。
普通に歩いてきただけなのだが、靴音や気配は殆ど消していた…まぁ、それはいい。

(…つーか、イーリスのメッセージがマジなら何か苦しそうなのは、【呪い】が現在進行形で効いてるっつー事かね。)

少年としては、今の時点では殺し合いなんてする気も無い。会話が出来れば十分だ。
とはいえ、少年の場合はギフト持ち――彼女”たち”も含めて敵役になるのだろうが。

マリア > 不意にかけられる声
そしてそちらに視線を向ける

「誰…?」

刀を4本携えた赤い髪の青年
初めて見る男性、自分を探している様子

ただ、武器を携帯しているなら魔人さんかもしれない…

「う゛ぁっ…!」

その瞬間体に現れる黒い紋様
痛みが劇的に増加して膝をつく
初めての感覚、今までは痛いながらも耐えられはした
ただこれは違う、耐えられるどうこうではない

> 「…って、大丈夫かよ?」

うわぁ、何か黒い紋様が出てるし…。こちらを認識してから急に苦しみの度合いが増した。
…【呪い】の効果や発動条件もイーリスのメッセージ伝手で把握している。とはいえ。

(あーー…まぁ、【悪竜】だから俺に出来る事なんてたかが知れてるんだけど)

この後、自分と魔法少女が殺し合いになるのはおそらく避けられない。
けれど、ただ殺し合いして痛み分け、またはどっちか生き残るとか…それは面白くない。

「あー俺の名前は【赫】な。スラムで何でも屋さんを”してた”。
ついでに言うと、昨夜にマリアちゃんとバトルした女の子の友達みたいなもん。」

家族とか仲間、とは敢えて口にしない。どのみち警戒はされているし戦闘はおそらく避けられない。
ゆっくりとそちらに歩み寄るが、少女が少しでも動いたらやんわりと動きを止めるだろう。

マリア > 青年が何か言っている
それどころではないマリアとしても聞き逃せない単語が耳に入る

「あの、化け物さんの…仲間ですか…!」

敵の名前と、明確な魔人である自白を聞けば立ち上がる
魔法少女はどれだけ辛くても立ち上がらなくてはならい
それが魔法少女である証明だから

「貴方も、あの化け物さんみたいに…やっつけます!」

ステッキに白い光が集まる
集中力を絞り出した弱々しい光
あの溢れるような白い光にはとても及ばない

> 「え、やだよ死にたくないし。…っていうか化物じゃねーよ俺もあの子も、あと君も。」

本当に嫌そうな表情で口にしつつ、無造作に右手の人差し指をぴっと魔法少女に向けて。
ステッキに白い光が凝縮していく――あの白い光は少し弱々しいが…普通に人体は貫けるだろう。

…が、少年は腰に差した4本の刀にまだ手を伸ばさない。

「取り敢えず会話くらいしよーぜ?マリアちゃんが俺を殺したいのは分かったけど、話くらいはしてもいいと思うんだよなぁ。」

今、まさにその白光が己へと向けられようが、何時もの笑顔と軽いノリは崩さない。

崩してはならない。それが少年なりの”憤り”の代わりだ

マリア > 体の半分以上が消えても死なずに何かをしてきた化け物に何を言うのか
自分が化け物じゃないなんて当然の事を、なんて一々口に出す余裕もない

「化け物、ですよ…!あんなに気持ち悪い化け物、初めて見ました…!」

お話しよう、そんな事を言われたってそれどころじゃない
今すぐ目の前の敵を倒してこの痛みをどうにかしたい

魔人が近くに居る限りこの汚い紋様も痛みも消えない、それだけは分かる

「スターライト…レーザー!」

胴体に向けて放たれる光線
頭や細かい場所を狙う余裕は無い
魔力を込めるのに時間はかかったけれども速さと破壊力は今までと変わらない

> 「じゃあ、マリアちゃんがやらかしている事は”気持ちいい”っていうのか?そりゃないでしょーよ。」

正義の味方?大いに結構だ。俺はそういうノリは無理だが別にそれは悪くないと思う。
けど、やり方がよろしくないと思うんだよなぁ…色々ともう手遅れだとしても。

「――って、怖っ!?」

少女がなまじ激痛に耐えながら放ったからか、速度と破壊力は洒落にならないけれど…。
交わすのは不可能ではない。とはいえ、それなりに近い距離あので紙一重…ジャケットの裾がごっそり削れた。

「まぁ、俺は口下手だしこういうの向いてないとは自分でも思うんだよな…。」

独り言のように呟きつつ、吐息を零しながらも紅い双眸はぴたり、と魔法少女を見据える。
やっと右手が腰の後ろから4刀の内の1振りを逆手に抜き放つ――抜鞘。

脅威を前にして、魔法少女とという強敵を前にして。
相も変わらず鞘から刀身を抜くつもりは無い――その鎖は外れない。

「先に言っとくぞ。俺を殺してもその痛みは消えねーよ。他の誰を殺してもな。魔人さんじゃなくてもだ。」

マリア > 精度に欠ける
全快であれば今の攻撃ももっと素早く連射できる
ギリギリと痛みと悔しさに耐えながらまたステッキに光が集まる

「そんなの、どうでもいいです…魔人さん達が居なくなれば、この痛みもマシになります!」

実際、目の前に彼が現れてから激痛が続いている
痛みが消えなくても、これが治まるならどうだっていい

使命でもあり、今は切実な願い
光がまた光線となり、迫る

> 「――そうかい。わーったよ…じゃあ。」

悪いイーリス。俺じゃ説得とかマリアちゃん止めるの無理かもしれない。
少しはイーリスが体を張った分には応えたかったんだけど…俺は三流だ、本当に。

「――【悪竜】舐めんな。そうやって考える事を放棄してるお馬鹿ちゃんに殺されるほど間抜けじゃねーよ。」

間合いを詰める。左手のリングのシールド起動。七重シールド全面集中展開。
おそらく、これで直ぐにバッテリー切れそうな程度にはあの光線の破壊力はマズい。

激突する光線と七重シールド―ー一気に5枚割れた。時間差で6枚目…そして7枚目。
ガラスの割れるような音が響き、シールドが砕かれた瞬間には光線の下を潜る軌道で間合いを詰めており。

「―――。」

無言で右手の逆手持ちの鞘を振るう。狙いは足首…と、見せかけて軌道が”跳ね上がり”わき腹を狙う。

マリア > 「う゛っ…!」

近付かれる、防ぐなり迎撃なり避けるなりすればいい
頭ではわかっていても肝心な体がついてこない
鞘が脇腹に突き刺さり鈍い打撃にうずくまる

落第街で鏖殺を繰り返した魔法少女がいまやこの体たらく
こうなってはもうこのまま目の前の青年か、他の誰かになぶり殺しにされるだけ

マリア > 『それだと面白くないであるなぁ。』

うずくまった少女の口は小さく言葉を発する

> 「―――。」

脇腹に突き刺さる手応え。すかさず鞘を引き戻しつつ、順手に
持ち替え、狙いは…”魔法ステッキ”だ。
少なくとも、アレを手放せさせれば攻撃手段はほぼ封殺出来る筈――だったのだが。

「―――!?」

ぞわり、と。少女の口から呟かれた小さな言葉はこの至近距離だから聞き取れた。
思わず苦い表情を浮かべた――距離を取らなざるを得ないと悟り、後方に跳躍しつつ。

「おいおいギフターの旦那!覗き見は紳士としてどうかと思うけどなー俺!!」

マリア > 『幼気な少女を寄ってたかっての暴行、私は涙が止まらないである!』

少女は立ち上がり、顔を抑える
声は少女の物だがその言動はかつて出会ったあの怪人そのもの

『と言う訳で、世の魔法少女にはテンプレな覚醒回である。
視聴者諸君におかれては是非リアルタイム放送を楽しんで後に神回だと凡作回だのと熱い議論を交わして欲しいのである!』

両手を広げ笑顔を浮かべる
そしてその手にはステッキが力強く握られていて

『さぁマリア、やり方はもう知っているであろう。
堕ちた翼で再び羽ばたいて見せるである。』

「…はい、ギフタ―さん。私、頑張ります!」

ステッキに黒い光が集まる
現実ではありえない光景、だがそうとしか表現できない
黒く暗く、全てを塗り潰す様な色に染まったステッキ

少女はそれを己の身体に深く突き刺した

マリア > 「あ゛っ…がぁっ…!」

溢れる血潮
肉を裂き骨を砕き臓腑を潰しながらステッキはマリアの体の中へと埋められる
少女の体内に完全にステッキが埋められ、倒れそうになるのを四つん這いになりながら耐える

時間にして数十秒
立ち上がり、顔をあげた少女は凄絶な笑みを浮かべた

> 「――よく言うぜ全く…相変わらず扇動が上手いわあの仮面紳士さんは。」

冷や汗が頬を伝う――生温い時間は残念ながら終わりらしい。
仮に彼女を止めるとして――殺さずに止められるか?イーリスみたいに貫けるか?俺は。

「覚醒出来るなら俺もしてぇよちくしょう!!テンプレってありきたりだから厄介なんだよなぁ…!!」

黒く光る魔法ステッキ――覚醒がダークサイドの魔法少女とか笑えん…あ、ごめん今笑ってる俺、引き攣り笑いだけど。

(神作だろうと凡作だろうと駄作だろうと…そう簡単に死ぬ訳にゃいかねーでしょ。)

【悪竜】と名乗って連中の”敵役”になった意味がなくなる――少なくとも”ここ”が死に場所ではない。

「……おいおい、マジですかよ。」

そして、少女が魔法ステッキを体内に埋め込んだ…くっそ、あれじゃ手放させるのも個別破壊も出来ない!!

その数十秒の間、少年は全く動けなかった…恐怖?警戒?まぁ多分それら全部ひっくるめてだろう。
ほんと、一流なら少しでも隙があれば止めるか殺しに掛かってたんだろうけどなぁ。

「――ハハ、中々凄いスマイルサービスしてくれるじゃねぇのマリアちゃん。」

改めて、右手に不抜の刀を提げながら左手も腰の後ろから抜鞘…二刀流になる。

(…バリアのチャージは…あー間に合わんなこれ。温存しとくべきだったか。)

変に冷静に目の前の暗黒魔法少女を眺めつつ、【悪竜】は双刀を携えて見据える。

「――いいぜ、とことん相手になってやる。ギフターの旦那の手のひらでダンスするのは癪だけどな…!!」

マリア > 「凄いです、あんなに痛くて苦しかったのにそれがどうでもよく感じます…
これなら今までよりももっともっと魔人さんをやっつける事が出来ます!」

ぴょんぴょんとその場で跳ねる
痛みが消えた訳ではない、現に黒い紋様は浮き出たまま
けれども今は痛みが全部無視できる、痛い筈なのに苦しい筈なのに気分はとても清々しい

「お待たせしました悪竜さん。ギフタ―さんを狙う悪い竜、捨て置けません!」

指をさし、少女が姿勢を低くする
瞬間、少女の足元が爆ぜた

実際に爆発が起きた訳ではない
土煙をあげ少女が居た場所にははっきりと分かる程小さな足跡が残っている
凄まじい勢いで地面を蹴り、その勢いのまま青年に肉薄

「さっきのお返しです!」

少女の拳に黒い光が集まる
双刀の防御の上からも構わず小さな拳を振り抜く

> 「いやぁ、待ちたくなかったというか…ハァ。」

正直、今の俺は死線の上に立っている気がバリバリにする。
だが、ここで退く訳にもいかないし――かといって死ぬ訳にもいかない。

少女が姿勢を低くすると同時に、少年も僅かに身を沈めて何時でも対応できるように。
――彼女の足元が爆ぜた――はっっや!?

「魔法少女から物理少女に転向かよ―――っっ!!」

咄嗟に双刀で少女の拳を受けつつ、後ろに飛んで衝撃を殺そうとするが――小さな拳が振り抜かれ、少年の体が吹っ飛ぶ。


ドンっ!!!!!と、派手な音と共に少年の体が吹っ飛んで背後の廃墟に激突し、そのまま廃墟が崩れて瓦礫の山に埋もれる。

――――…

――――――…

――――――――…


「…だああああ!!死ぬわっっ!!」

瓦礫が粉々にいきなり吹っ飛んだかと思えば、少年が飛び出てきて着地。
衝撃で衣服のあちこちが破れたり汚れたり、頭部からは少々流血しているが元気そうだ。

マリア > 魔法で戦ったりステッキで敵を叩いた事は有った
そして今、初めて拳で敵を殴りつけた

「…凄い!私凄いですっ!それになんだかとってもスッキリしました!」

ぐっ…ぱっ、と自分の手を握って開く
敵を直接殴るという行為がこんなに気持ちいい物だったなんて、と嬉しそうに
全能感に酔いしれながら元気に戻ってきた青年に向き直る

「もっと、もっともっと試したいです!」

また地面が爆ぜ、青年の後方へ着地しまた跳ぶ
先程とは違いタイミングをずらして背後からの飛び蹴り

少女の足だけでなく全身から黒いオーラの様なものが漏れ出ている

> 「俺は実験動物かサンドバッグかよ!!」

地面が爆ぜて少女の姿が消える――後方…いや、これは…!

「あっぶねぇ…!!」

反射的に身を沈めてギリギリで飛び蹴りを回避しつつ――魔術展開。

見えない空間の圧により、飛び蹴り直後の少女の体を真上から地面に叩き付けようとする。
仮にそれが成功したとしても、深追いはせずに改めて距離を取るだろう。

(…視覚に頼るのは無理だなこりゃあ…と、なると)

残りの感覚と魔術の併用で切り抜けるしかない。異能?あるけどクソの役にも立たないんだなこれが。
そして、矢張り抜刀をする気は無い…悪いがマリアちゃんじゃ抜刀する”条件”を満たしていない。

気になるのは黒いオーラだ…彼女の全身から漏れ出たそれは、ギフトの真価の一端かはたまた――

(防戦一方じゃ俺の方が削り殺されるか…ハァ。)

【悪竜】を騙っているとはいえ所詮は三流剣士。覚醒した魔法少女に圧されっぱなしだ。

マリア > 色々な事を試したい
楽しい、だから少女はこう答える

「そうですっ!」

やっつけはする、ただその過程を楽しんだってばちは当たらない
躱され、地面に叩きつけられる
その勢いで土煙が巻き上がる

そして叩きつけられた直後、土煙の中から少女の手が伸びる

「アハハハッ!全然痛くないですよ悪竜さんっ!!」

胴体を服と肉ごと鷲掴みにして、廃墟へと投げる
黒いオーラは鎧として、少女の力として機能する

面倒な詠唱なんて必要ない

「はは…楽しい、ギフタ―さんが教えてくれました。
あの化け物、まだ死んでないんですって。

私にした事のお礼をしてあげないとですね?」

心が昂る
魔法少女にあるまじき復讐心
それを抱いている違和感ももう感じない

> 「おいおい、耐久性もやっぱりチートにな――…」

空間の圧で地面に叩き付けた直後、巻き上がる土煙からいきなり少女の手が伸びてきた。
…痛くないのは兎も角、即座に動けるんかよ…!?
彼女の異常な怪力で、服ごと胴体を鷲掴みにされて廃墟へと投げ飛ばされる――先ほどよりも激しい勢いで廃墟に少年の体が激突する。派手にまた瓦礫の山が一つ出来て――


「――良い事教えてやるよ。そういうのを”復讐心”っていうんだぜ?魔法少女が”聞いて呆れる”な。」

直後、音も気配も無く少女の前に肉薄し、鞘の先端に不可視の空間の捩じれが発生。
黒いオーラの鎧で守られた肉体に通じるかは分からないが、空間螺旋の槍と化した鞘の突きを胴体に叩き込もうと。

(正直、これでダメージが通らないと色々形振り構ってられなくなるんだけどな…!)

マリア > やっぱり戻ってきた
この程度で悪竜と言われた存在が倒れるなんて思っていない

「あはっ、じゃぁ私も教えてあげます。」

突きは深く少女の胴体に突き刺さる
けれども最初の鞘での一撃と違い顔色は全く変わらない

「そういうの、負け犬の遠吠えって言うんですよ。悪竜さん?」

くるりと回転しながら横凪ぎに蹴りを放つ
拳と同じか、それ以上の威力はやはり少女の異常に強化された体のなせる技

距離が開けばけほっ、と少女は咳き込む
当てた手を見てみればそこには赤い血が滲んでいる
首を傾げつつも少女は気にしない、口の中をどこかで切ったのかなと
だってこんなに気分爽快で動けているんだから

> 「――おいおい、何言ってんだ?俺は最初から負け犬だぜ?」

悪竜なんて所詮は”役柄”みたいなものだ。思ったより悪名が広がったけど。
そもそも、少年が何かに『勝った』事なんてただの一度としてないのだから。
それより、やっぱりあの黒いオーラのせいか魔術と併用した全力の突きも然程聞いてない。舌打ち。

横薙ぎの蹴りに対して、即座に不可視の空間障壁でガードするが、それもあっさり貫かれて蹴りが脇腹に食い込む。
明らかにアバラが数本イカれた音が響くが、それに怯んでも構ってもいられない。

(だったら――!!)

強引に吹っ飛びそうになる身を魔術でその場に押し留める。
軋む全身に叱咤激励を入れながら、即座に左手の鞘に魔術を展開。
更に捩じれを強く高速で発生させて、咳込んだ少女の口の中――防御の薄いであろう場所を容赦なく狙って突く…!!

マリア > 「そうなんですか?では悪竜さんは負け竜さんです!」

硬い壁の様なものを感じたがすぐに砕けて肉を蹴る感触が伝わる
手加減をした覚えは無いのに飛んでいかないのは彼の魔法か異能なのか

「でも、そんな事どうでもいいですよね。丈夫ならそれだけ沢山楽しめます!」

突き出される鞘の突き
この技を見るのは二度目
この距離で、同じ技を使うなんてと青年を睨み

「酷いです悪竜さん、私を甘く見過ぎです!
お返しにあの化け物と同じにしてあげます!」

突きだされた鞘を掴む
強化されたのはただ身体能力だけではない、反射神経だって今までよりも向上している

そして、先程ギフターに授けられた知識の一部、武術の知識の中にある中で最悪の反撃を行う
青年の顔、目の辺りに放たれた一本拳
防ぎ損ねればダメージは勿論、ぐちゃりとブドウが弾けるかもしれない

> 「そりゃどーも!!いっそそっちの方が正解かもな!!」

生憎と少年の異能は何の役にも立たない…これはつまり魔術だ。
その全容は未だに不明瞭ではあるが、色々応用は効くらしい。

「俺はどっかの誰かさんと違ってそこまで丈夫じゃねーんだよ!!」

うちの事務所に居るキメラな美少女さんなら真っ向からこの娘と肉弾戦出来そうだけど。
生憎と、俺はそこまで人間離れしていないので無理なんだなこれが。

「うっわ――…さっきより強く魔術上乗せしたんだけどなぁ。」

やっぱり二度同じ攻撃は何とやらってやつ?これは悪手でしたねハイ…。
――そして、攻撃直後、鞘は掴まれている、この至近距離――魔術を展開するが間に合わない――!!


グチャッ!!


何かが爆ぜるような、潰れるような水っぽい音と共に少年の右目が潰された
――が、それがどうしたというのか。そもそも――…元から少年の右目は殆ど見えていなかったんだから。

そのまま、上半身が仰け反ったが――即座に顔を引き戻す。
少女が鞘を掴んだままなのを見遣り、隻眼を僅かに細めれば。

更にお返しだ――遠慮せずに受け取れよ。」

瞬間、少年の全身に黒い竜の幻影が重なり――鞘を持ったままの少女を彼女を凌ぐ怪力で地面に叩き付けようと。

――更に駄目押し、刀を無造作に放り投げ、少女に右腕を向ける――その腕が異形の黒い竜の腕に変化。

先ほどの少女が放った光線よりも容赦のない熱線が、竜の掌から迸り――焼き尽くさんと。