2024/09/23 のログ
ご案内:「追想~【十年前の冬】~」に切人さんが現れました。
切人 > ――白い積雪が真紅に染まる。振り抜いた歪な刃がまた一つ首を落とす。

「――…。」

襤褸寸前の衣服に、丈の全く合っていない裾が擦り切れた黒いコートを羽織る少年。
振り抜いた右手の刃は、刃毀れと錆で既に使い物にならない有様——なのに。

―一つ、二つ、三つ四つ、そして五つ。少年が無造作に刃を振り抜く度に誰かの首が落ちる。
その場から全く動かず、ただ刃を振り抜くだけで呆気無く死が訪れる。慈悲は無い。

「……■■■。」

掠れた呟きは冬の寒空に掻き消える。背後から迫る誰かを、振り向きもせずに斬り捨てる。
既に周囲は死屍累々…入り乱れたそれらは、片や風紀の衣服を纏い、片や不揃いの衣装。

―—珍しくも無い、風紀委員会と違反組織の激突。その最中に突然割り込んだ浮浪者のような少年が。
善悪区別無く、面識も無く、憎悪も怨嗟も何もなく、ただ”斬りたい”という己の業に従って。


―—結果、生き残りは少年のみ。それ以外の全員が首や胴を断たれ、雪を血に染め斃れている。


「――――…。」

動くモノはもう無い。斬れそうなモノは居ない。…つまらない。まだまだ斬り足りないのに。

切人 > ゆっくりと吐き出す息は白く細い。錆びた刀を肩に担ぎ、鬱蒼とした暗闇の隙間から見上げる寒空。

「―――■■■■。」

掠れた声が何かを呟いて。人語とも獣の唸りにも似たそれの意味は誰にも分からず聞こえやしない。
…動く気配。どうやら生き残りが居たらしい。刃を担いだまま、コートの裾を引き摺るようにソイツへ足を向ける。

『…ぅ…ゴホッ…て、てめ…ぇ…何モン…だ、このクソガキ…何が目て――ぁ。』

煩いので、右足でソイツの頭を踏み潰した。それだけで破裂した生き残りの誰かの頭が赤い花を雪に咲かせる。

―—何者?そんな事はどうでもいい。目的?…ただ斬りたいだけだ。全部を、片っ端から。
その欲求に従って斬っただけだ。恨みも区別も無い。彼の刃はただ鏖殺するだけ…例外は無い。

飛び散った鮮血であちこち黒い染みとなった襤褸とコートを一瞥し、担いでいた錆刀を地面に突き刺す。
纏っていたコートや襤褸の衣服を脱ぎ棄てて、死体からなるべくマシそうな衣服を奪い取り身に付ける。

切人 > 「―――!」

目に留まった刀。風紀委員の誰かの持ち物だろう。丁度いいので、錆刀はそのまま放置してその刀を拾い上げる。
軽く二度、三度と振って確認してから抜き身のまま肩に担ぐ…鞘なんていらない。

武器に愛着は無い――壊れたら次を、無ければ己自身を刃として。ただ、斬って切って伐って――…

…その果てに、荒涼とした世界に例え己一人だけになってしまったとしても。
最後は自分自身を斬って終わる末路。が見えていても。

「―――?」

向こうから騒がしい音が聞こえる。どうやら風紀の応援か何かが来たらしい。
…逃げる……までもない。向かってくるなら全部斬り殺すまでだ。

切人 > この世界は二つに一つ――斬れるか、そうでないか。
少年の世界はそれだけで区別されていて、後は全部ただのオマケでしかない。

…余分なモノなんていらない、ただ斬りたい、それだけ。

喧騒が近づいてくる――風紀の死体から奪い取ったばかりの刃を緩やかに握り直す。

―—来いよ有象無象、来いよ世界。片っ端から斬り殺してやる。
切る人()はただそうして振るわれるのみ。己すら斬り捨てるソレには自我すら必要ないのかもしれない。

切人 >                                             
                              
―—後に【凶刃】と忌まわれ、或る死闘にて片目と刃を断たれるまで続く、殺戮刃の軌跡。
                                  
                                
                   

ご案内:「追想~【十年前の冬】~」から切人さんが去りました。