2024/10/22 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街」にリリィさんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 中央街」に武知一実さんが現れました。
リリィ >  
お互いの授業が終わり、合流果たすその瞬間から、このポンコツ淫魔は輝かんばかりの笑顔であった。そりゃあもうニッコニコのぺっかぺかであった。
その上人目も憚らずブンブンと全力で腕を振るものだから、余計なところまで存在を主張していたのはご愛嬌ってことで。

兎も角、ご機嫌です!を全身で表現しながら共に常世渋谷、そのセンター街にあるとあるファッションビルの中に少年を案内する。
広々としたコスチュームショップはハロウィン間近であることと立地柄、多くの若者で賑わっていた。

「すごいですねぇ、かずみん様!いっぱいありますよ!」

あからさまなネタ枠からちょっと際どい衣装まで選り取り見取りとはまさにこのこと。
小物類も豊富らしく、近場のラックからふわふわした猫耳カチューシャを手に取って頭にかぽっとハメてみた。
角と耳が渋滞しとる。

武知一実 >  
学園に通えるようになった、とは聞いていたけれど本当に学園に居るとは。
信じてなかったわけじゃないが、何だか感慨深いものを感じつつ、待ち合わせていた場所でリリィを発見する。
こちらに気づいたリリィは満面の笑みで腕を振って存在をアピールしているが、いや……ちょっと、他の奴の視線が……。

半ばリリィをその場から逃すように連れ立って向かった先は常世渋谷。
バイトをした際に紹介されたらしいショップへと行くんだと告げられ、着いた先はハロウィンコスチュームが一面に並んでいた。

「ああ……凄いもんだな、これ全部仮装用の衣装なんだよな?」

はしゃぐリリィに衣装にグッズと目を向ける先が多すぎて困る。
そんな中で猫耳を手に取り身につけたリリィがドヤ顔で此方を見た。

「おう、似合って……るとは言い辛ぇけど、可愛いんじゃねえか」

角をどうにかせえ、角を。

リリィ >  
あんまりはしゃぐな転んだら恥ずかしいって釘を刺されていたから、道中は比較的大人し……いや、辛うじてスキップしてないだけで、結構弾んでたかもしれない。色々と。
しかしご機嫌ポンコツ淫魔は気付かない。少年に多大なる気苦労をおかけしながらの移動であったそうだ。
何故そんなにも浮かれポンチなのかといえば、

「うふふ、こうして放課後にお友達と遊びに行くの、夢だったんです!」

とのこと。

「そうですね、普段は個人のみならず業者にも卸してたりするみたいですが。
 わたしがバイトさせていただいたお店も普段は此処にお願いしてメイド服を調達してたそうですよ。」

着心地もよかったですと太鼓判をポンっとな。
広々とした店を見るに、今は大部分がハロウィンコーナーに侵食されているが、普段からそれなりに繁盛している様子。

「似合ってないのに可愛いとは??ちょっとわかんないんで実演お願いします。」

渋滞してるカチューシャはすぐに頭から退けて、ラックに戻す――と見せかけて少年の頭にひょいっと装着させたい悪戯心。はてさて。

武知一実 >  
やたらとひょこひょこするリリィを宥めすかして歩かせるのに苦心したのは言うまでもない。
ただでさえパッと見ても分かる淫魔が制服姿で歩いてるってだけでも人目を引くのに、色々と揺らしてちゃ余計に衆目は集まる。
いったい何がそんなに楽しいってんだ――――

「………そうかよ」

大目に見てやるしか無くなったじゃねえか、クソっ。
そんな道中だったが、無事に目的地に辿り着けたのは僥倖だった。

「へぇ……あ?メイド服?」

荷運びのバイトをしてるってのは聞いてたが、メイドなんてのもしてたのか。
オレもあんまりバイトは選り好みしない方だけど、コイツも大概だな……と、少し親近感も沸く。

「そりゃあ、角があるのに獣の耳なんて付けてたら違和感が――」

何か着けられた。
オレからは一切見えてねえけども、たぶん、さっきリリィが着けてた耳が乗っかってんだろうな、と容易に想像がつく。
……え、楽しい?と思わずジト目でリリィを見るオレである。

リリィ >  
学園に通い始めたこともあり、ぱやーっとしたとても間抜けっぽい笑顔が燦々と照る。
店内の照明にだって負けないぜ。

「はい!といっても接客はしてないんですよ、ビラ配りだけです。日払いに釣られました。」

ああいう仕事ってお給料いいんですねー、なんて引き続きぱやぱやしながらポンコツは語る。
店と客とポンコツ淫魔の為にも接客は今後とも控える心算だが。余談。

そんなことよりも、猫耳装備した少年が問題だ。
15歳には確実に見えない目付きの悪さ――悪人面っていってもいいかもしんないそれにちょこんと乗っかったふわふわの猫耳。

「ぶふッ!」

予想はしてたが、予想以上に似合わない。ついつい噴き出してしまって、慌てて口を抑えて顔を背ける。
暫くぷるぷると笑いを堪えようとするんだけれども、好奇心に負けてチラ見してしまった。ジト目がこっちを見ている。猫耳の。

「んっフフフフ!だめ、ちょっと威力高すぎます、これはダメ……!」

笑いすぎて涙目になりながらカチューシャ回収。今度こそラックに戻しておいた。
その後も暫く笑みを引き摺ることに。

「すみませんでした。はぁ……既にすごく楽しいんですけどどうしましょう。
 なに着てもらおうか悩んじゃいますね。」

呼吸を整えながら近場のマネキンを確認。
女物はやたら種類が豊富だけれど、男用となると途端選択肢が狭まる。
いや、ネタ枠はチラホラ見つけられるけど。ていうか、吸血鬼多くない?という気持ち。

武知一実 >  
初めて会った時の、リストラされたリーマンみたいにブランコに座ってた姿はもう影も形もねえな、とリリィの笑顔を見て思う。
転入することを後押しした甲斐もあったし、制服選びに付き合った甲斐もあったってもんだ。
あと……そうだな、腹ペコになり過ぎないよう吸精されるのを申し出た事も、悪くなかったと思える。

「ビラ配るだけで高給……? まあ、今アンタが無事で居るならそれで良いんだけどよ……」

何だそれ怪しくねえか?普通接客やもろもろの業務して貰っての給料なんじゃ……
……ああ、接客はさせらんねえって判断されたんだろうな。払いが良いのも手切れ金……とまでは行かなくとも似たような何かか。

―――ま、それは置いとくとして

「オイコラ」

勝手に乗せといてなに噴き出してやがる。
いよいよ自覚するほど目つきは悪くなる。眉間に皺も寄る。

「これはダメ、じゃねえよ。何一つ行ける要素がなかったろ……」

カレーに餡子入れたら美味くなるとでも思ったのか。
見えてる地雷を盛大に踏み抜いていくリリィにもう少し苦言でもぶつけてやろうかと思ったが、拍子抜けするくらい楽しそうだから言葉に詰まる。
……まあ、うん、今日くらいは大目に見てやるか。

「まあこれだけ多いと探すのもな。
 こういう時はロクに見もしねえでパッと取ったもんを試しみてるのも一興じゃねえか」

こんなふうに、と横に並んだハンガーラックから無造作に一つ取り出す。
ふわりと広がったフレアスカート、青色を基調として所々小魚の意匠がある。
そしてその上に掛けられたピンク貝殻ビキニ。

………。

………は??? 仕入れ担当3ヶ月くらい季節間違ってんじゃねえか???

リリィ >  
「あ、ビラ配りにしては、ですよ!
 接客できたら……とも思いましたが、歩合制だと厳しいですよねー。」

人気キャストになれたらがっぽがぽ。そうでなければまあ普通。
落第街やらの方の店でなければデメリットは殆どないように思えるから、まあオイシイ仕事ではあるのだろう。
まあ、このポンコツ淫魔にはあんまり関係ない話だ。
少年のおかげで一番のネックであった食費に関しては随分と見通しが明るくなった。

「似合ってなくても可愛い可能性に賭けてみたくなりまして。」

ふふふと言葉尻が楽しげに揺れる。
他にもうさ耳だの犬耳だのケモミミだけでひとつのコーナーが埋まっているけど、これ以上悪戯したらさすがに怒られそうなのでやめておく。

「かずみん様も中々にギャンブラーですね?
 ……えっと、……」

少年が無造作に手に取った衣装を見て閉口。
ハロウィン要素さん迷子なってる??

「お互いのものを選ぼうって提案したのはわたしですし、
 かずみん様がそれを着ろと仰るなら……着ますけど……。」

その場合、覚悟はできてるんですよね?っていう副音声。
目には目を歯には歯を。やべぇ衣装にはやべぇ衣装を、だ。

武知一実 >  
「ああ、そういう意味でか。
 ま、その内出来るようになんじゃねえか?」

ちょっとドジが過ぎる時もあるが、リリィだってバカじゃねえんだ。
コツさえ掴めれば接客だろうと何だろうと人並みにこなせるポテンシャルはある……気がする。コツさえ掴めれば、な。
まあそこまでして働いて稼ぐ理由も……無い筈でもあるんだが。

「そういうのはアンタみてえな可愛いどころがやっから成立すンだよ」

ようは遊んでみたかっただけじゃねえかコイツ……ッ
さっさと衣装選んでコイツの気を逸らさねえと……!

……とか思ったのが間違いだったんだな、ってオレは手にした衣装を見て思ったのだった。

「雑な賭け事とかもう絶対しねえわ……」

ただ、カッコつけた手前、手に取ったものをすごすご無かったことにして戻すのも悔しい。
そして同時に一つの考えが弾き出される。
もしかして、こういうのも着せられるかも、って思わせたらリリィもはしゃぎ過ぎることは無いのでは?

「……まあ、正確にゃオレが選んで決めたってわけじゃないが。
 一見寒そうだけど……お、ほら。海草モチーフのカーディガンもある、マーメイドとは奇を衒ってて良いんじゃねえか?」

ここは一つ臆さず踏み込んでみるか。
リリィが怖気づいて気持ち大人しくなればそれでヨシ、だ。
怖気づかなかった場合?……どうすっかな……。

リリィ >  
「! 出来ると思います?本当に??」

目を瞠る。
淫魔であることは時々忘れるが、ポンコツである自覚は常日頃ばいんばいんしてる胸にあるので、少年の評価に驚いた。
何処かそわそわした様子で念押しめいて首を傾げる。

「むむ……相変わらず口が巧いんですから。」

さらっと告げられる言葉にちょいと唇を尖らせて頬を軽く抑えた。
気を抜くと緩みそうな口許を指で支える為だ。誤魔化すようにもにもにと頬を捏ねる。

「かずみん様って不運属性ありそうですもんね。」

頷きながら神妙な面で告げる。実際ポンコツ淫魔に憑りつかれてるようなもんだし。

「海藻モチーフのカーディガンとは?? ……うわ、本当だ。
 製作者様は何を思ってこれを?ネタ枠なんですか??」

海藻柄とかじゃないんだ……。
チベスナみたいな顔して少年が手にしているそれを見つめる。

「…………着るっていいましたから、着ますよ。ええ、着ますとも。
 知ってます? 悪魔は嘘を吐かないんですよ。」

尚、このポンコツ淫魔は度々嘘を吐く――!
が、此度は着ると言った以上は着る心算らしい。おずおずと少年の手から衣装を受け取らん。

「ただちょっと、あの、一回試着していいですか……?
 面積次第では土下座するんで許してください……。」

武知一実 >  
「思ってもねえこと口にするほど無責任じゃねえよ。
 実際アンタ一人でバイトしたり、学園の転入手続きしたり出来てんだ、時間は要するかもしれねえが絶対に出来ねえとはオレは思わねえ」

念を押すように聞き返すリリィに、頷きを返す。
頼りねえところはあるが、だからって何も出来ねえ奴だとは思わねえ。抜けてるかと思えばクソ真面目なところだってあるんだ、ドジと相反する部分だってきっとあるだろ。

「何の得もねえ世辞言ってどうすんだよ、事実だ事実」

オレが事実として思ったことを言ってるだけ。いつも言ってる事だろうが、それでなんで口が巧いって評価になるんだ。
ホント、理解に苦しむっつーか理解する気にもなれねえっつーか……やたら過大評価し過ぎたろ。

「うっせーほっとけ」

まあ何かと不遇な半生ではあったが。
さすがに運まで悪いと救いがねえな、いっそ笑えてくる。

「たぶん上がビキニじゃ寒いだろうって苦肉の策だな。
 どっからどう見てもネタ枠だろ、これを真面目に出してんならちょっと正気を疑うぜ」

そしてそんな代物をリリィに試させようという。これまた正気じゃねえ。
が、これくらいの狂気ぶつけねえと大人しくなりそうもねえからな……まあ、適当に試着させて没にして次はちゃんとしたのを探して選ぼう……

「おうよ、じゃあほれ。
 別に悪魔だからって嘘ついても良いと思うけどな」

そしたらオレも悪魔ってことになんじゃねえの、評価的に。
いや、オレの場合すぐバレるような嘘は吐くだけ無駄って思ってるだけで、必要に応じで嘘も方便も使い分けるが。

「土下座なんてしなくとも、普通に無理だったって言えや良いんだ。
 ……まあ、案外似合うかもしんねーだろ、淫魔ーメイド」

うん、語呂が良い。
リリィに衣装を渡して、試着室へと向かうように促しつつ、そんな事を思うオレだった。

リリィ >  
訊ねたのはポンコツ淫魔だが、少年の評価が意外に高いことに驚く。と、同時に普通に照れた。
にやつくのを我慢した所為で顎のところに細かな皺が寄って不細工になってしまった。むぐぐ。

そうですか、と、引き結んだ口の隙間から呻き声に似た五文字が返る。
そこまでは耐えられたんだけれど、その後の評価に見事撃沈。
そっと両手で赤くなった顔を覆うのであった。

「もうやめてぇ……わたしのライフはもうゼロです……。」

恥ずか死しそう。ワンチャン貝殻ビキニより恥ずかしい。

だから憎まれ口みたいなのを叩いたのかもしれない。
ほっとけと言う声に漸く少しだけ笑った。


「正気を疑いつつも着せようとするかずみん様はいじわるってことでOKですか!
 ……着てきます!」

受取った衣装を抱いて試着室へ向かう背中に聞こえてきた淫魔ーメイドの語呂の良さに、くっ、て笑いを堪える声が聞こえたかもしれない。


数ある試着室の内のひとつに引っ込んで、暫し後。
――少年の端末に通知音。「個人的にはアウトな気がするんですけど、一応ジャッジしてもらえますか」って短いメッセージが届く。

何故態々端末でメッセージを送ったかって?声を張って変に注目を集めたくないからだよ!
少年が試着室の方に来たら、制服の時と同じように……否、それよりもだいぶ恥ずかしそうに肩を窄ませて、可能な限りちっちゃくなってカーテンに隠れているポンコツ淫魔を見つける筈。
いちばん端っこの試着室を選んでる所為で見つけ辛いだろうけど。

武知一実 >  
訊ねられたから正直に答えたというのに、リアクションは形容しがたいもので。
なんでそんな顔を?と思うものの訊ねるのは野暮かと口を噤む。

呻き声のような声を上げたり、顔を隠したり。
全く忙しねえ奴だなあ、と此方もどんな顔をすればいいのか分からない。
まあ、見てて飽きねえから良いんだけどよ。

「そんなダメージ負わせる様なこと言った覚えねえぞ……?」

事実しか言ってねえんだから、とやっぱり呆れるオレだった。
まあ、直後に不運属性だのなんだの言われるんだが。

「アンタだってさっきやったろ、耳。
 その意趣返しだと思えば良いじゃねえか……」

まあ、我ながら多少意地悪が過ぎる気もしたが。
ともあれ試着室へ向かうリリィの背を見送って、今後は真面目に当日着せる衣装を探す。
そしてこれがなかなか難しいもんで、なまじ何着せても似合いそうだから迷う迷う。

と、そんな中リリィからの連絡を知らせる通知が鳴った。
メッセージを一瞥し、怪訝そうな顔になって試着室へ向かう。いや、アウトだと思うならジャッジ要らねえだろ。オレは映像判定機じゃねえぞ。

と、試着室の並ぶ区画に来れば、奥の方に角の生えた生首みたいになってるリリィを見つける。髪が白いからよく目立つ。
取り敢えずその試着室の前へと向かいながら、

「おぅい、ジャッジってどういうこった」

リリィ >  
八つ当たりじみて恨めしげに少年を睨める薄いイエロー。
果たして今後この少年がどれ程小恥ずかしいことを言っているのか自覚する日はくるのか。
否、このポンコツ淫魔が淫魔らしからぬ性格故に気にし過ぎなのかもしれないけど。
でもここ日本だよね?ジャパニーズだよね?奥ゆかしい大和撫子な民族だよね??

「わたしはいいんですぅ、かずみん様がいじわるするのはダメです。」

まあ、ポンコツ淫魔はポンコツ淫魔で、自身のことを棚に上げたりもするのだが。
べ、って最後に舌を出して翻る顔の口許がほんのりと笑みを滲ませているのに気が付けば、随分気安くなったものだと気付くのかもしれない。淫魔ーメイドに笑った可能性もあるけど。


そんなこんなで、なう、試着室。と、試着室前。

「ハロウィンってことで多少の露出はセーフかな、という気持ちと、いやでもこれはという気持ちが鬩ぎあっていまして。
 この衣装を選んだご本人に御意見を賜わろうと思った次第で御座います……。」

照れ隠しにやたら硬い口調で説明したら、ちょいちょいと手招きしてもう少しだけ接近を誘う。
試着室から出る気はないらしく、むしろ少しだけ奥まった場所に立ったまま、身体を隠すカーテンを退かす。

小魚が踊る青色のフレアスカートから伸びる白く輝く生足魅惑の淫魔ーメイド。裸足。
そして肝心の貝殻ビキニは、デザイン的にはホタテなんだろうけども、ボディだけは淫魔らしいこのポンコツ淫魔の胸の所為でサイズ感がアコヤ貝か??って感じになっている。
要するに、貝部分より肌色部分の方が面積がデカい。し、貝殻を繋ぐ紐が胸に食い込んでむちっとしたボリューム感がエグい。
ネタ枠海藻カーディガンはというと、さすがにカバーしきらないというか、なまじ腕や肩が覆われてる分、むしろ自然と目線が谷間にいくというアシスト機能付きだった。

本人は本人で手を前にまわしてもじもじと組み合わせるものだから、腕で胸を寄せるみたくなっててシンプルに視覚の暴力。

「ど、どうでしょうか……?」

わいせつ物陳列罪とかで捕まらない??

武知一実 >  
「トンデモな理屈をぶつけて来ンじゃねえよ」

悪戯し合ったり、ってメッセージを送ってきたのはどこのどいつだ。
なのに自分が良くてオレはダメ、ってのは非常に納得がいかねえ。
この調子じゃハロウィン本番当日は何をしてきやがるのか、今から戦々恐々とするしかねえじゃねえか。
……まあ売られたからには受けて立つが。
にしても……楽しそうだから、まあ良しとするか。

そして場面は試着室前。

「淫魔がする葛藤かそれは。
 ……言い訳がましいのは承知の上だが、オレが選んだってのは語弊があるのは分かってるよな?」

無作為に手に取ったの目の前で見てたよな、と問い質したくもなる。
まあ、気持ちは若干分からなくもない、オレが逆の立場だったら真面目に選べと言ってるだろうしな。
とは言え真面目に検討する辺り、リリィもリリィだよなと思いつつカーテンが開かれて

「―――――っ」

文字通り絶句する光景が広がっていた。
フレアスカートは似合っていたが、どちらかと言えばパレオに見えなくもなく。
その原因たるビキニは、ビキニ……? ビキニか?と自問してしまうほどに、その……非常に目のやり場に困る。
決して忘れてたという訳じゃないんだが、改めて披露されるとやっぱり淫魔なんだなと思わざるを得ない肉感的なボリュームに意識がどうしても向いてしまう。
ブイに貝殻乗せました、みたいになってんじゃねえか。ってこんな柔らかそうなブイがあってたまるか。
……いやいやいや、見るな見るなと我に返って目を逸らし。

「あ、お、おう。様にはなってるがその格好で街に出るのはダメだな、悪い。
 というか、その手の試着って普通、制服の上から着てみるもんじゃねえの……?」

目を逸らしたはいいものの、あまりの衝撃に目に焼き付いてる感が半端ない。
恐るべしは淫魔(リリィ)のポテンシャル。真面目な衣装探すのがだいぶハードル上がるぞこれ。

けど、何だろう。外に出しちゃダメだけど、決して似合わない訳じゃない。
海辺で着てる分には、水着と言い張れるだろうし、いや、言い張れるか?無理じゃね?

「似合ってるとは思う。……つい見惚れそうになる程度には」

リリィ >  
「奇を衒ってていいっていいました。」

推したよね?の副音声。ジト目。赤ら顔。
アシスト機能付きカーディガンが小憎たらしくも肌面積を減らしてるからワンチャン……ありなの?どうなの?となった次第にて。

「!……下着みたいだったからフィッティング感覚で……!
 そ、そそそそうですよね、制服の上から着たらよかったんですよね!?
 すみませんお見苦しいものを……っ!」

ぼっと顔面が爆ぜた。片手に握ったままのカーテンを引き寄せて急ぎ隠れる。
一応貝殻の裏には下地がついているとはいえ……いやでもしかし制服の上からだったらなんか大丈夫じゃんってなって選ばれていた可能性もあるのでは?もうわからんね。
恥ずかしさのあまり若干泣きそうになりながらカーテンに包まって隠れている真っ最中、に、聞こえてきたその言葉は、

「っっ…………着替え、ますっ!!」

見事にポンコツ淫魔にトドメを刺した。完璧にライフがゼロになった瞬間だ。
レールの音を鋭く響かせ引っ込んだ試着室の中から、うーうー唸る声が聞こえてくるだろか。
暫くして着替えたポンコツ淫魔が出てくるんだけれども、落ち着くまで待ってたら相当時間がかかったのだとか。



「はぁ……恥ずかしすぎて死ぬかと思いました。」

淫魔としては赤点間違いなしの感想を零して出てきたら、アウトな衣装はしまっちゃおうねぇ。
気を取り直して棚を眺める。少年にもなんかネタっぽい恰好させたいな~なんてせせこましい反逆の意思を抱いてるのは内緒だが。

しかしそれも直ぐに頭から失せる。なんせポンコツなので。

「わあ、かずみん様みてください!透明人間セットですって!」

そんなポンコツ淫魔が手に取ったのは、トレンチコートと眼鏡とハットがセットになった『透明人間セット』。
悪用防止ということで、三点全て身に付けなければ発動しないが、してしまえば透明人間になれるという不思議アイテムらしい。
試しにその場で装備してみたら、すぅと淫魔の姿が消えた。帽子と眼鏡とコートに加え、制服等の身に付けてるものはそのままだけど。

「消えてます?消えてます?」

楽しげな声。