2024/10/23 のログ
武知一実 >  
「言ったけどよ……」

そもそも前提としてこれは無いな、と思ってたなんて言える空気じゃねえなこれ。
そして実際に試着した姿を見たら予想以上の破壊力だったとも言える空気じゃねえな。

「あいや、別に見苦しくなんか……
 オレの方こそ、変なの試させて……悪かった」

もう二度とギャンブル感覚で衣装選びなんてすまい、そう心に誓うオレだった。
リリィがカーテンの奥に引っ込み、着替えてる間もさっき見た光景が頭を離れない。
もし、万が一、そんな事無いと分かってても、今の衣装を着てハロウィンの街を歩くリリィと自分を想像してみる。

………いや、やっぱダメだ。無し無し。
あんな格好のリリィを他の奴らの目に触れさせるのは何か……癪だ。
いや、違うだろ。リリィへの注目と共にオレまで好奇の目で見られるのが嫌だ。そう、そうだ。

と、着替えを終えたリリィが再び現れるまでの間、オレもオレで唸ったり呻いたりしていたわけだが。


「……気持ちは分かるけどよ、淫魔がそれでやってけんのか?」

そういやかなり恥ずかしがり屋なんだよな、と出て来たリリィを見て思う。
淫魔にもホント、色んな奴が居るんだなと改めて思わざるを得ない。いや、コイツしかはっきり淫魔って分かってる知り合い、居ねえんだけどさ。
リリィが何やら企み顔で衣装を見て回る中、オレは戻されたマーメイド衣装を見遣った。……ほんのちょっとだけ、惜しい気もした。
が、そんな気持ちもリリィの声に吹き消されて。

「あン?透明人間セットだ?」

また珍妙なもん見つけたな。
面白半分でハットとコートと眼鏡をリリィが身につければ、なるほど肉体部分は綺麗さっぱり見えなくなった。
衣服はそのまま、という辺りがどんな理屈でそうなってるのか気になるが、透明人間らしいっちゃらしい。

「へぇ……本当に見えなくなってら。
 でも、見えなくなってるってだけで、実体はあるんだよな?」

腕やら顔やら、本来露出されている所を、まじまじと見つめてオレは感心する。
誰が作ったか知らねえが、おもしれえもんだな。

リリィ >  
カーテン一枚隔てて似たようなことをしていたとは露知らず。
件の面白セットを見つけるまでは、少年の方を見られない淫魔がいたのだそうだ。


「や、やっていけ……ないかもしれないので、見捨てないでください……。」

やっていけてたら腹を減らして倒れたりしてない。
恥ずかしさを引き摺って力ない声で告げたら、なんだかめちゃくちゃ縋ってるみたいになった件。いや、実際縋ってるんだが。
見捨てられたらまた道端に落っこちる日々である。常世島の風紀が乱れる。

無論見捨てられないように力になるべく頑張る所存。
その為にもイベントを楽しまねばなるまい。
まで考えて、はたとする。そうだ、自分が楽しむばかりじゃなくて、少年に楽しんでもらわなければ意味がないのだった。

「ありますよ、ほら」

試しにそのまま少年の手を浚う。
透明ならば顔色を知られることもないから、極々気軽に握る感触を伝えることだって出来た。
そうして一頻り遊んだ後で帽子を外してみると、その瞬間にポンコツ淫魔が現れる。よくできた面白衣装である。

「これならハロウィンぽくて面白いです……けど、見えなくなっちゃうのは寂しいから嫌だなぁ。」

何気なくぼやいて透明人間セットは元の場所へ返却。
さて、本腰を入れて少年のコスプレ衣装を選ばなければ。

衣装と少年とを何度も見比べ、これかな?いや違うな。っていうのを繰り返す。

「男性用のメイド服なんかもあるんですね。
 あ、これとかどうです?」

取り出しましたるは狼男セット。
赤いチェックのシャツに黒いズボン。どちらも襤褸のようなダメージ加工がされていて部分部分が破れているが、モフモフの毛皮が縫われていて実際は露出が少ない。
当然耳と尻尾もついている上、なんともふもふの肉球グローブと首輪もついている!
ネタではなくワイルドめなデザインのガチなやつだから、先程の猫耳カチューシャリベンジにもなるのではなかろうか。ドヤ?

武知一実 >  
「見捨てるわけねえだろ」

何を今更、と心なしかか細い声で告げるリリィを見る。
縁が出来た手前、もう見捨てるなんて出来るはずもない。
というか、見捨てた後の事を考えたらちょっと空恐ろしくてとても見捨てる気にはなれない。風紀に要らん仕事をさせない為にも。

そんなことを考えながら、透明になったリリィを検分する。
顔や腕が消えてる……ということは、服の下も消えてるんだろうか。
そんな考えが脳裏を過ぎり、次いで先の淫魔ーメイドがフラッシュバック。要らん事思い出すなよ、と思わず首を振って追い払い。

「え、ああ……はは、本当だ」

不意に手に何か触れる感覚があり、スッとオレの手が持ち上げられた。
確かに実体はあるが見えなくなっているらしい。本当にどういう理屈なのか、興味を引かれて思わず確かめる様にリリィの手の形を確かめる様に握ったり撫でたりしてしまう。
ハロウィンらしいパーティーグッズだな、と思う反面、何だか少しだけ心細い。

「……ああ、そうだな。事故の素にもなりそうだしな」

リリィのぼやきに同意して、透明人間セットは棚へと戻された。
そろそろ当初の目的を果たさない事には、いつまでも遊んでしまいそうだ。

「男性用メイド服って……執事じゃダメなのか?」

何かとんでもねえ発言が聞こえたが、リリィが取り出したのは、やたらとダメージ加工の入ったシャツとズボン、そして耳と尻尾にグローブ。……首輪?
なるほど、狼男か。オーソドックスと言えばオーソドックス。シンプルにして王道、ってやつだ。でも、え?首輪?

「……へえ、悪くねえな。
 正直、さっきのお返しで人前に出せねえようなの選んでくるかと思ったんだが、まともじゃねえか」

変なの来ても一応粛々と受け入れる気ではいたよ、いやマジで。

リリィ >  
その答えを聞いた瞬間のポンコツ淫魔といえば、心の底から安堵したよな笑顔を浮かべたのだそう。
こうして常世島の風紀は知らず知らずのうちに少しだけ守られたのであった。まる。

「!!」

透明であるものの、息を呑むような気配と、触れた手から驚きを悟ることはできようか。
ぽかんと口を半開きにした間抜け面を見られないで済んだのはポンコツ淫魔としては幸いだ。
きゅ、と、一度指を絡めるようにして握り、離れる。束の間のじゃれ合い。

「トレンチコートに帽子に眼鏡と、これでもか!って厚着しても透明ですもんね。」

どんな事故が起こるかわかったもんじゃない。否、言い訳じゃなくて。
頷きながら棚へ戻した後のこと。

「執事じゃつまらないじゃないですか。
 あ、わたしが執事でかずみん様がメイドっていうのも面白かったかもしれませんね!」

お揃いっぽくてそれはそれでと笑いながら引っ張り出したフツーのコスプレ。
トゲトゲしたスタッド付の首輪には千切れた鎖もついてる。チョーカッコイイ。
ハロウィン感もばっちり。

「わたし、そんないじわるじゃないですもん!
 でも、人前に出せないようなモノの方がよかったですか?やっぱり執事とメイドでお揃いにします?」

武知一実 >  
細い指に柔らかな掌、そういえばこうしてじっくりとリリィの手を感じる事も無かったな、と思い返す。
オレがリリィに触れることはあっても、逆はそんなに……手は!手は無かったなって!
と、ともかく少しの間じゃれ合って、離れれば。少しだけ、物足りない、ような。

「服以外は見えないわけだしな……事故る前に怪しまれるか。
 あ、でも片方が見えない状態なら、至急精気が必要って時に近くに人が居るとこで吸精してもパントマイムか何かだと思われるかも」

オレが透明になるかリリィが透明になるか……訝しまれるならオレの方が良いか。
そんなことを言ってから、自分でも何言ってんだろうと我に返る。今の無し、無しで。

「おもしれえか……?
 そもそもアンタはシャツ系の衣装はやめといた方が良いだろ、ハロウィンの場でボタン付け直すのはさすがにやだぞオレ」

ただでさえ制服だってパツパツなのに。あんなカッチリした格好、布地が可愛そうまである。
え?オレのメイド服?……論外だろそんなの。いや、ウィッグとか付ければ行けるか……?
と、考え込むオレの前に出された狼男セット。うん、メイドよりはこっちの方がなんぼかマシだ。

「真っ先に意地悪しかけてよく言う……
 人前に出せないって分かってるモンを人前に出るイベントで着てくってのもな……それとも今度吸精する時にリリィはさっきの、オレはリリィが選んだの着てするとかしてみるか?」

ていうかオレのメイド姿は人前に出せないもの認定なのか。
否定はしねえが……お、良いのあんじゃん。
話ながらもリリィ用の衣装を物色していたオレは、衣装の一つを抜き出す。

「さっきのは無しで、リリィはこれなんてどうだ?」

そういって差し出すのはドレス調の魔女衣装。黒猫やカボチャ、蝙蝠の意匠が所々にあしらわれているやつ。つば広のとんがり帽つき。
背中が開いてて、オフショルダーで翼も出せるしリリィにはちょうど良いんじゃなかろうか。
問題は背中もだけど前も結構開いてるってことなんだよな……。

これ(魔女)それ(狼男)お互いにそれぞれ今から試着してみねえ?」

リリィ >  
「成る程、そんな使い方も? その時は着るんだったらかずみん様でしょうか。」

ぽやぽやぽやと想像してみる。外での吸精はなるべくならば避けたい事態ではあるが。
ポンコツ淫魔が透明化を少年に進めた理由は、吸精時の蕩けた表情を見られたくないだろうから、って気遣い。
まあ、そんな事態は極力起こさないように、都度都度吸わせてもらいに行こうとポンコツ淫魔は思ったそうな。

「そ、そんなに頻繁にボタン飛ばしたりなんてしないですもん!
 それに、サラシでぎゅーっと潰せばなんとか……ならないですかねぇ?」

なるかな。ならないかも。
自分の胸を見下ろす。相変わらず足許が見えない。
さらしはいま手元にないので、自分の手でぎゅっと押し潰してみた。
手ではあんまり効果がなさそうに見えるのですぐやめる。

「何のことだか忘れちゃいましたぁ。
 ん、と、さっきの?……って、」

とぼけているのか本気なのか。

はたりと瞬き、首を傾げる。さっきの?
というと、透明人間セットか淫魔ーメイドか。後者なら大問題では。否、精気の対価的な話に通じるならば後者である方が都合は良いんだろうが。
さて少年の思い浮かべるさっきのとはどっちなのだろう。というか、

「えーと、えと……コスチュームプレイにご興味がおあり……ということでしょうか。」

何故衣装着て精気吸う話になってるんだろうという素朴な疑問。
否、興味があるってんならやるけども。力になるって約束は果たす心算だ。

疑問符を浮かべていれば何やらこれぞってやつを見つけたらしい。受け取り、広げて吟味してみる。

「魔女ですね!こちらも中々オーソドックスな……ろ、露出多くないです?」

オフショルで露出多い認定する淫魔ァ!
ぽっと顔を赤らめる。だがしかし、貝殻ビキニよりは断然マシ。

「わかりました、いいですよ。併せてみましょうか。これって翼出しておく想定ですよね?」

確認しながら共に試着室へ向かおうか。

武知一実 >  
「いや、そん時はアンタが着ろよ。
 その、なんだ……あんまりアンタを…人目に付かせたくねえし」

同じ様な表情でも男女だったら女性の方が人目を引くだろう。
それに、あんまり……他人に見せたく、ねえ。
とまあ、そんなオレの内心を知ってか知らずか、何やら決意を固めてるリリィ。何を決めたんだか。

「頻繁でなくとも、そもそも飛ばさねえようにって言う話だ
 そんな手間かけてまで参加するもんでもない……だろ……」

そもそも一人でサラシ負けるのかこの淫魔。
そんな疑問を抱きつつ、リリィを注視してたら手で胸を押し潰し始めた。
柔い塊がリリィの手の上から下からあふれ出るのが見……てない見てない。軽率にそういう事すんな!

「こンの……ッ
 そりゃマーメイドだよ。二人の時にわざわざ透明になる必要もねえだろ」

見られたくない、ってんならまあ、話は別だが。だったらとっくに何かしら策を講じてるはずだしな。
普段と違う格好での吸精、また違って感覚を得られるかも……と、それだけのつもりで居たんだが。

「なッ!?……そういうことじゃねえよ、ただ違う格好なら違う感覚かなって、思っただけで……!」

そうか、確かにそういう事だよな。
そう思うと途端に恥ずかしくなる。ヤバイ、耳まで熱くなってきた。

すっかり赤くなった顔を誤魔化す様に衣装を押し付ける様に差し出せば、リリィがそれを確認する。

「しょうがねえだろ、背中開いてる方が翼も出せて楽だろうしよ。
 それに、どうしてもっつーんならストールでも巻いて隠せばいいじゃねえか」

ぽってなるな、ぽって。オレがそういうの求めてるみてえじゃねえか。
何で淫魔の癖にそういうところで恥じらうんだよ、ったく……。

「おう、併せてみようぜ。 翼出せる様にって選んだんだ、そりゃ出してくれよ」

そんな話をしながら再びの試着室前。それぞれ選んだ衣装を手に中へ。
オレの方はすんなり着替えれたけど、グローブまでつけると毛皮の演出の所為か結構暑いなこれ……。

リリィ >  
ぱちぱち、と、瞬きを繰り返す。
なうろーでぃん、なうろーでぃん。

「ええと……吸ってる時のわたしって、そんなに変な顔してます?」

お見せ出来ない程に変な顔をしているのだろうか。不安になってしょんぼりと眉を下げた。
ポンコツ淫魔的には、うまい!うまい!うまい!ってしてる心算故に。

「え!折角のイベントですよ?手間も暇もお金もかけるべきでしょうっ!」

意義ありとばかりに気色ばむ。今後ともイベントには積極的に手間も暇もお金もかけて参加する所存。
それは少年の為でもあるし、自分の為でもある。
めらめらと燃えているのは私欲の炎だけではないはずだ。……恐らくは。

悔しげに、或いは憎々しげに呻く声に私欲の炎はすぐさま鎮火。
にんまりと満足気に猫科めいて笑うのだが、それもまた一瞬の出来事だ。

淫魔ーメイドで、吸精……?
想像するだけで顔面が熱くなる。

「そ、それを言ったら、そもそも吸う時に衣装チェンジする必要だってないじゃないですか!
 それとも、ドレスコードですか!?ドレスコードが必要ってことですか!?」

二人してあわあわと真っ赤な顔で慌てふためく。なにしとんじゃこいつら。
幸いにして周囲はそれぞれハロウィンに思い馳せてはしゃいでいるから、注目されることはないが。

「えぇ……? っと……、まあ、ご興味があるなら……は、はずかしいですけど、いいですよ……?」

少年は否定するが、言ってることはそういうことだろうに。
怪訝そうに片眉を上げるも、否定を否定することはないし、肯定もしないことで言及を避けるとして。
そういう約束ではあるから、否やを唱えることはない。さて。


試着の時間。衣擦れの音が続くが、それもいずれは止んでカーテンが開く。
少年は既に着替えを終えているだろうか。帽子を被るのに邪魔だったから角は消して、代わりに翼は出しているけれど室内なので畳んだ状態。背中が開いてるのは気恥ずかしいが、やはり楽。※尚、前面。

当然の如く谷間が主張している。だが先程の貝殻ビキニが衝撃過ぎて若干の慣れが窺える様子。

「着れました!ちょっと大人っぽ過ぎません?大丈夫かなぁ。」

心配そうにくるりと回ってみせるが満更ではなさげ。
目立たないがあしらわれたハロウィンの彼是が可愛らしくてお気に入り。

武知一実 >  
あ、いまいち理解してない顔してやがる。
瞬きを繰り返すリリィを見て、どう説明したもんかと思案する。
が、変に回りくどい言い方をしても、理解から遠ざかるだけだろうか。

「……別に、変じゃねえよ。 オレが単に、吸精してる時の顔、他の奴に見せたくないってだけ」

だからまあ、思ってるままを口にした。
しょげられると少しだけ心苦しいし。

「お、おう。そうか、そういうもんか……」

すごい勢いで反論された。
いや、そこまでしなくとも十分楽しいんじゃねえかとは思うんだが……違うのか。
それならまあ、コイツのやりたいようにやらせるのが一番……なのか?

ふんすふんすと鼻息を荒くしたり、かと思えば憎たらしく笑ったり。
それが終いには赤面して、本当にコロコロと見てて飽きねえな。
……いや、オレも顔は赤くなってる気がするが。

「うううぅ……何だよ吸精のドレスコードって!」

そしたらオレもネクタイしなきゃいけねえのか、とリリィに釣られてよくわからんことを口走る。
いかん、少し平静さを失ってる気がする。落ち着け落ち着け、バチるなバチるな……。

「ぅぐっ……そもそも誰のおかげで興味持つようになっちまったんだと……!」

言ってから我に返る。え、オレそういうの興味あるの……か?
いや違う、きっとさっきのリリィを見て妙な新鮮さを覚えてそれを引き摺ってるだけだ。コスプレに興味がある訳じゃない……そもそもプレイって何だよ、食事だろ。
一度心を落ち着かせるために深呼吸しとこう。はい吸って―……吐いてー……。
とりあえず変な方向に飛躍した吸精時の服装については、いったん保留とさせてくれいやマジで。


てな事があっての試着室前。
割とすんなり着替えれたおかげで、試着室から出てもリリィはまだ中に居るようだった。
時折向けられる周囲の視線が少し居心地悪いが、リリィが選んだものだから、それなりに似合ってるからのだろうと思い込んでスルーすることにする。

「お、出て来た……な」

周囲の目にむず痒くなりながらも平静を装っていれば、試着室のカーテンが開く。
中から現れたリリィは、なんて言うか、元の印象もあってか凄いドジっ子魔女に見えた。
くそっ、やっぱり似合ってるじゃねえか……

「自分で思ってるより普段から大人っぽいぞアンタは。見た目は」

見た目は。大事なことなのでもっかい言わせてもらう。
けどまあ、確かにちょっと露出が大胆過ぎたかも……ストール必須だなこれは……。

リリィ >  
ロード中は余程ぽけーっとした顔をしていたのだろうか。
過たず理解を果たした少年が言葉を探している様子を、不安げに眺める。
そも年頃の羞恥心とは疎遠気味のこの少年は見た目に関してはよく……よく?褒めてくれるから今まで然程心配はしていなかったのだが。
但し吸精時は除く、とか注釈ついてる可能性もあることに気付いて顔色をサッと青くした。

が、しかし。かかし。おかし。

「そ、………………、」

フリーズ。
再起動中です、少々お待ちください。

「………………そう、です、か……。」

蚊の鳴くような声を絞り出すので精一杯だった。
この少年の率直な言葉は一々心臓に悪い。深い意味はないのだろうに。
よく伸びる頬を抓んで伸ばして戒めとする。ヨシ!

「イベントは全力で楽しんでこそですよ。変に照れるとしらけちゃうんですから!」

そういう持論もあってビキニも魔女もOKを出したという裏話の暴露はいいとして。

「し、知りませんよぉ!
 ……や、真面目に考えたらアリといえばアリ……なのかもしれません、が……。」

咄嗟に吼えてからはたとする。
吸精相手が性的に興奮すればするほど得られる糧は質も量も増えるのだから、淫魔ーメイドで少年が興奮するのであらば理にはかなってるってことに気付く。

いやだが、しかし……と考え込むポンコツ淫魔の耳には漏電の音も届かなかったということで、
此処は一旦休戦としよう、そうしよう。



試着室を出て迎えてくれた狼男スタイルの少年を見る。
目付きの悪い少年にケモ耳が乗っかっているのはやはり少し面白いけど、フルセットな分しっくりとくるというか、違和感っていう程に目立つものではない。

「見た目は、って、褒めてるんです?それ。」

ひとまずは少年の抱く感想に頬を膨らませてみるが、すぐに空気を抜いて笑った。本気じゃない。

「かずみん様はお似合いですよ。狼男にして正解でした。」

険しい顔つきがモチーフとぴったりだ。
グローブには肉球がついてて茶目っ気もあるし、我ながらなかなかいいチョイスだったんじゃなかろうかと胸の内で自画自賛。

あ、でも耳が少し傾いてる。手を伸ばしてちょいちょいと直してあげて、一歩下がって全身のチェック。いい感じ。
首輪から垂れる鎖を掬って握れば、ポンコツ魔女とその使い魔みたくならないだろか。ワンとお鳴き。なんてね。

ご案内:「常世渋谷 中央街」からリリィさんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街」から武知一実さんが去りました。