2024/12/28 のログ
ご案内:「落第街・深夜のスラムの一角」にイスラさんが現れました。
イスラ >  
陽が墜ち、月が満ちる──。
どこか紅くも見える月の下、落第街。
掃溜という言葉のよく似合うスラムの一角にて。

違反生徒と思しき男達数人が、一人の少女?を取り囲んでいた。
よくある光景……かもしれない。
こんな街では、日常の風景の一つだった。

──少女?を取り囲む、男達が皆一様に魂の抜けた様な、虚ろな貌になっている以外は。

イスラ >  
「あれぇー? お兄さん達、私を犯すんじゃなかったんですかぁ♡」

ニマリと張り付いた笑みの少女?が、一人一人…その顔を覗き見あげてゆく。

男達は微動だにすることなく、ただ虚空を眺め、
ある者は涎を垂らし、またある者は白目を剥き、またある者は失禁し…それでも、ただ立ち尽くしている。

そんな、異様な光景の中心に少女?はいた。

イスラ >  
「……うーん」

一通りその顔を見上げた後、中央へと戻った少女?は実につまらなさそうに息を吐いた。

「きゃああああ~~~、助けて~~~、レイプされる~~~~~」

「って」

「叫び声をあげる準備も出来てたのになー……。
 …やっぱり前に会ったあの剣士さんは別格だったんだね…」

「逃がしちゃって、惜しいことしたかな」

無音の町外れ、一人舞台の様に、少女?ただ一人のみが言葉を紡ぐ。

ご案内:「落第街・深夜のスラムの一角」に夜見河 劫さんが現れました。
夜見河 劫 >  
深夜の落第街、スラムの一角にて。

「………今日も、誰もいなかったか…。」

無言で脚を進める、ほつれたブレザー姿の男。
燃えるようなどす黒い瞳は、どこか消化不良気味のような燻った雰囲気。

「…ここ暫く、碌な喧嘩に遇ってない。」

理由は言葉の通り。気兼ねなく殴り合いの出来る相手に遭遇する機会が、
ここ暫くの間皆無だったからである。
お陰で空虚が精神を食い潰しそうな感覚に遇う毎日。

「――――?」

女の声。聞き間違いでなければ。
それも、妙に危機感のなさそうな。

「………。」

少し考えてから、足を向けてみる事にした。
特に理由はない。強いて言えば、勘に引っ掛かるものがあったから、としか言えない。
 

イスラ >  
あれくらいを基準に考えてみたけど、どうもそういうワケじゃないらしい。
 もしそうだったら、とても刺激的で素敵で甘露で感じちゃうところだったのにね」

少女?は高く手を掲げる。
くすりと笑みを残し、その掌が何かを押し付ける様に、振り下ろされ──。

グ……ン──。

空間が圧される様な、異様な音と共に。
その場に立ちすくんでいたいくつかの人影は縦に拉げてゆく。
肉が潰れ、骨が砕け。
圧された血液を臓腑が吐き出される様はまるで鮮血の噴水の様に。

赤と黒は蛇の様に少女の?足元へ向かい。
数瞬前まで生命を宿していた容れ物は──固形のペーストとなって地面に貼り付いていた。

──そんな凄惨な空間に踏み込んだのは……

「──あれ。まだ誰か近くにいたのかな…?」

夜見河 劫 >  
「………。」

声が聞こえた筈の場所に近づき、もう少し…という時。
奇妙な音が聞こえる。
聞いた事のない、だが敢えて挙げるなら、何かを押し潰すような音。
それに続いて、聞き覚えのある音。
肉と骨が拉げて、形を失っていく音だ。

「――――。」

その空間に、ほつれたブレザーの男が足を踏み入れたのは、
ちょうど「それら」が潰されて、固形のペーストになった瞬間だった。
包帯が巻かれた顔が、小さく不快そうな表情。

「血生臭い。」

単純に血と、ペースト状の物体が放つ死臭が気に入らなかっただけのようだった。
包帯をぐるぐると巻かれた顔が、それを起こしたであろう――色素の薄い、
金の眼の美少女――と、外見上は認識出来る存在に、向けられる。

何処か燻るような雰囲気のどす黒い瞳が、金色の瞳に向けられる。

「――――お前がやったの、これ?」

イスラ >  
Bună dimineaţa! Mumie.(こんにちわ!ミイラ男さん)

その場の雰囲気にそぐわぬぱっと明るい笑みを浮かべ、少女?はにこやかに挨拶を向ける。
無論、そんな空気ではない。
挨拶のために掲げた片手を、己の整った顔の口元へと戻せば、くすりと小さく嘲笑う。

「ううん」

「勝手にこの人たちが潰れちゃったの♡」

「……って言ったら、ミイラ男さんは信じてくれる?」

にこりと、目一杯の愛嬌を詰め込んだ様な顔。
余りにも血腥いこの場において、凄絶なるまでに違和感を放つ少女の足元からは、吸い上げられる様に、肉塊から流れる血が吸われているのだ。

──騙す気も何も無い、虚言以下の戯言である。

夜見河 劫 >  
「………騙す気、ないだろ。」

思わずため息。
潰れた肉塊からは、まるで逆回しのように少女のような見た目の「何か」に、血が吸い上げられていく。
それを目にして、流石に勝手に潰れたなどという言葉を信じる程、この男は暢気ではない。

「魔術か…そうでなけりゃ、念動力(PK)
どっちにしても、お前がやったんじゃないの?
……血を吸い上げてるって事は、吸血鬼?」

どれもこれも、自身の知識と、場の状況からの推測に過ぎない。
しかし、当たらずとも遠からず…だろうと、男は考えている。

「ま、当たりでも外れでもいいや。
どうせ落第街(こんな所)で一人を囲んでるなら、殴っていい奴だろうし。」

その殴っていい奴も完全に潰されて、殴りようも殴り甲斐もない有様だ。

イスラ >  
「あは♡」

騙す気もない、などという少年の言葉には、実に愉しげだ。

「そうそう、魔術。
 あ、念動力だったかも?
 吸血鬼…だったかなぁ、忘れちゃったな♪」

口元にあてた手指を巧みに動かし、笑みを抑えられない口元を隠す。
どの道、この惨たらしい現場を造ったのがこの少女?というのは変わらないのだが。

「ね、こうなって当然だよね♪
 ボクはただ彼らの大事なものを一つずつ奪って逃げただけなのにさ。
 こんなカワイイ子を取り囲んでコロスだのオカスだの、ひどいよねえ♡
 ミイラ男さんがそういうことわかってくれるヒトで良かったぁ♪」

既に物言わぬ肉塊となった者達を嘲り笑う。
その言葉すら、何処に真偽があるのかはわかってものではなかっただろうが。

夜見河 劫 >  
「血を吸い上げる生き物なんて、吸血鬼しか思いつかない。
万聖節の前夜祭(ハロウィン)なら、2ヶ月くらい前にとっくに終わったよ。
迷って出たならさっさと帰ればいいのに。」

揶揄うような口調の少女のような生き物に、無気力そうな声を上げる。
そうして、もう一度ミンチよりひどい有様の肉塊に軽く目を向ければ、ぐ、と小さく手に力を入れる。

「……まあ、見た感じ、随分と楽しそうに見えるし。
お前の言ってる事が本当かどうかは分からないけど…やってて楽しかったんでしょ?」

大きく、息を吸う。手に力が入る。

「――こいつらの大事な物が何なのか、そもそもお前の言ってる事が本当なのか、俺には分かんないけど、」


「お前は殴ってもいい奴に見える。」

イスラ >  
「そうかな♪
 ヒル、コウモリ、種によってはタニシなんかも。
 なんなら人間だって他の動物の血肉を食するよね♪
 あー、ハロウィン!合わせて何かすれば良かったかなぁ…その頃はちょっと忙しくって──」

つらつらと並べられるは、戯言。
何がそんなに面白いのか薄ら寒い笑みを絶やさず、少女?の口はまわり続けていた。

けれど。

「え?」

殴ってもいいやつ、なんて言われれば、それはピタリと止まって。

「何言ってるの?ダメダメ。
 こんなカワイイ子を殴ったりなんかしたら捕まっちゃうよ?
 ぼーこー罪だよ。牢屋に入れられて美味しくないご飯食べることになるよ?

 おうちに帰れなくて、悲しむ人がいるよ」

まるで、道化。
子どもに悪いことを諭す様な、戯けた言い回し。
眼の前の存在にさしたる興味を見せた様子がないように見せて、その実…非常によく見ている───。

己の芸術(アート)の良き素材足り得るのかどうか、それだけを。

夜見河 劫 >  
「――そう。」

お道化たように、道理を説いて来る少女のような見た目の生き物。
その言葉を、ほつれたブレザーの男は一言で軽く受け流す。

「俺の知ってるカワイイ子は、普通こんな物騒な所に来ないし、こんな
ミンチみたいな連中に囲まれる事も無かったと思うけど。
俺の勘違いだったのかな。」

惚けたような発言に対し、こちらも惚けるような言葉で切って返す。
そして、ざり、と足を一歩、踏み込む。

「……お前の眼は、獲物を見る猛獣みたいに見える。
俺の事も、獲物の一匹程度に見てる、そんな眼。

自分が一番、他の奴とかどうでもいい、玩具か何か位、って奴の眼だ。
俺もこの辺りに住んでるから、そんな眼をした異能使いを何度も見たよ。
――遊んで遊んで、潰しても知ったこっちゃない、って感じの。

そういう奴は、大抵殴っていい奴だった。」

どす黒い瞳に、燃えるような輝きが宿る。
正義感だの、使命感だの、そんなものからは限りなく遠い輝き。
ただ、己の衝動を拳に載せて叩きつけたい、その為には後先などどうでもいいとさえ感じさせる、頽廃の輝き。

イスラ >  
「わぁ…出会ったばっかりなのに、ボクのことよく知ってるみたいな言い方。
 よくないよー、そういうの。
 長く付き合ってみたら案外いいやつだった…なんてこと、あるかもよ?」

華奢な肩を竦めて見せながら、歩み寄る青年に悪びれもなくそんな言葉を続けて。

「喧嘩なんかより、もっと楽しいことしようよ」

ドス黒い瞳に見据えられて、射抜く様な視線を受けても。
少女の様な何かは、その言葉も表情も浮ついた、軽やかなままに。

する…、と胸元のリボンを解いて見せる。

「それとも…私がなんの抵抗をしなくても、殴っちゃうの?」

ぱさり、はらり。
衣擦れる音が連なり、少女?はそのシャツのボタンも全て解き払う。
スカートの隙間から白いショーツがするりと落ち、白磁の肌をはだけさせ慎ましやかな双弓のシルエットを覗かせる。

「ほら、武器もなぁんにも、持ってない…♪」

薄ら寒い、貼り付いた様な笑み。
これで、どうして見せてくれるのかと。
ただただ興味本位で一歩前へと踏み出す少女?の様な、怪物は未だ笑ったままだ。

夜見河 劫 >  
「………。」

衣擦れの音と共に、少女のような見た目の生き物はするりするりと衣服を解き、脱いでいく。
その様に、ほつれたブレザーの男は一度足を止め、軽く笑いを浮かべる。
形こそ笑いだが、外観を繕ったような、ひどく空虚な笑顔。

「……色仕掛けのつもり?
ま、男には有効な手だと思うけど。」

実際、まっとうな男には有効すぎる手立てだろう。
――先程、僅かだが感じた、こちらを値踏みするような雰囲気の、形容し難い視線さえなければ、だが。

「武器なんて持ってなくても、人を大怪我させたり殺せるような能力を持ってる連中なんて
珍しくないのがこの島、この街。
脱いだだけじゃ何の保障だってありゃしない。
…やっぱり、俺の事、揶揄ってるだろ。」

そして何より、

「――悪いけど、もっといい身体の女の子、知ってるから。
だから、脱がれた所で何の意味も――ないっ!!」

だん、と、地面を蹴り、一息に距離を詰める。
通常の人間ならばあり得ない踏み込みの速度。
――人間が普段意識せず使わない、「限界」を超えている速度。

そうして繰り出されるのは――少女のような見た目の「何か」の顔面に向けての、真正面からの拳――!

イスラ >  
「──騙されてるほうが、幸せだったと思うよ?」

少女から届いた言葉は、それが最後だった。
地を蹴り、繰り出されたのは人知を超えた速度の拳。
その拳は反応する素振りすら見せない少女の顔面を捉える。

伝わったのは、肉と骨が爆ぜる感触。

──それも、必要以上の。

少女を形造っていた顔が、身体が。
文字通りに爆ぜた

殴られた箇所から、紅い薔薇が咲くが如く。
その場から全方位に爆ぜ貫かんと伸びた赤黒い棘が、余すことなく殴りかかった青年を貫かんと。
その密度は、その一角を囲う建造物の壁を剣山にするかの如く。
鋼鉄すら容易く貫くだろう、紅の棘。
半径10メートルに及ぶそれが、殴りかかった拳を中心に拡がっていた。

夜見河 劫 >  
「――――――!!」

拳が届いた直後。
届くのは、全身を貫かれる――という言葉すら生温い、身体がバラバラになる程の、衝撃と貫通。
当然、至近距離で少女のような見た目の何かを殴り飛ばした男に、それを回避する術などありはしなかった。

半径10mに及ぶ、全方位に伸びる紅の棘。
鋼鉄さえ容易く貫通するであろうそれに、抵抗する術などなく。


ほつれたブレザーの男は全身を穴だらけにされて、
間違いなく生命活動を停止した。


――襲い来る死の瞬間。
顔が棘によって貫かれ、頭が破裂する刹那。

まるで、獣の如き獰猛な、しかし確かな歓喜の笑顔を浮かべて。

イスラ >  
青年の全身を文字通りに針の筵とした紅い棘。
青年の肉体が、その生命活動を停止すると──棘はバキバキと音と立て、崩れてゆく。

「───あれ」

棘の檻が崩れる中から、何も変わらぬ様で顔を出す少女?は、不可思議な表情を浮かべていた。
無惨な屍骸となった青年の脇へとしゃがみ込み、じぃ……と金色の眼がその痛ましく損壊した遺骸を見つめる。
長く伸びた指先の爪、つついたりしてみても、確かに死んでいる。
しかし妙な違和感を感じて…

次の瞬間には遺骸の真上から紅の大鉈が、断頭台の如く降り掛かっていた。
…既に生きていない、動ける筈もない青年の意外は更に上下を分断される。

「……いや、これ…♡」

に…と口の端が持ち上がる。
思わず、自分で自分の綻んだ口元を抑えてしまう程。

「少し時間は掛かりそうだけど、凄いね…キミ♡」

「ボクの拷問哲学(セオリィ)芸術(アート)になかなか適した素材かもしれない。
 だって、生命(いのち)が失われているのに存在(キミ)が失われている気配がしないよ?」

頬を紅潮させ、その場で捲し立てる様に歓喜の声をあげる。

そして──徐ろに自らの華奢な腕を引き千切った。

──べしゃり。べとり。と、粘ついた水音が路地へと響く。

「──目を覚ましたら、覚えておいでよ。私の名前。再会した時は、キミの名前をぜひ、聞こう♪」

青年の頭部と思しき部分を優しく遺った手で撫でつけ──その身を無数の蝙蝠に変え、夜闇へと散らす。

残されたのは凄惨な現場。
そして己の腕を絵筆に壁に残された"Wladislaus Drakulya"の血文字によるサインが、血生臭く───。

夜見河 劫 >  
――――「不死」とは何を以て証明されるものか。
あるいは超再生。致命傷を負っても瞬時に再生され、命に別状はない。
あるいは限定的時間遡行。「死ぬ直前」まで巻き戻り、「何事もない」ように活動する。

……恐らく、最も単純で、かつ最も理解しやすい「不死」とは、「死から甦る」事だろう。
つまり「不死」の概念に「死」は決して否定出来ない要素として組み込まれているという、奇妙な理屈。
不死である為に「死なねばならない」。

もしも、少女のような見た目の「何か」が、男の異能を奪おうとしていたら、
その行為は致命的な毒を抱える事に近かったかも知れない。
不死である為に「死ぬ」事を許容せねばならないのだから。

少女のような見た目の「何か」が去ってから、少しの後。

穴だらけの残骸と化した骸に、異変が起きる。
まるでビデオの逆回し――あるいは開いた穴を埋めるように、肉体が「戻っていく」。
傷が繋がり、塞がり、砕けた筈の頭が形を取り戻していく。

それは、人の見る夢の最もおぞましい形。
「死」を否定し、「不死」を夢見る者に「現実」を突き付ける、「死ねず」の異能。
原理不明・概念不明・理由不明・経緯不明の「不死身」の肉体。

やがて、ボロボロになった服を着たひとつの人影が立ち上がる。
顔に巻かれた包帯は、頭を粉々にされた時に一緒に消し飛んでしまった。

「――――久々に死んだな。
第6の連中よりは、余程気持ちのいい死に方だった。」

既にその身体には、一片の傷跡すら残っていない。
ただ、久しく得られなかった感触への暫しの満足感があるばかり。
そうして周囲を眺めれば、血文字を目にして頭を軽く傾げる。

「………なんて書いてんだ、これ。」

頭を潰された時に、よくある事だった。
生き返って来て少しは、頭の働きが少々鈍い。

「――後で語学に詳しい奴に訊こう。
風紀にも連絡しないとな……。」

あんな攻撃をしてくる奴は、下手に捕縛に向かっても死人が増えるだけだ。
聞き入れられるかは知らないが、一応報告程度はしておくに限る。
――生き残った事については、死ぬような場所を避けられた、と言い訳するしかない。

「…携帯端末、無事に残ってるかな。」

まずは写真にでも撮らないと、今の頭では直ぐに忘れてしまいそうだ。
最初の心配事は、其処から始まるのだった。

ご案内:「落第街・深夜のスラムの一角」からイスラさんが去りました。
ご案内:「落第街・深夜のスラムの一角」から夜見河 劫さんが去りました。