2025/02/10 のログ
ご案内:「◆授業「生物の生殖」(受講Free)」に小鳥遊 日和さんが現れました。
小鳥遊 日和 > 異邦人たちに対しては、地球の生物がどうあるかということから説明する必要がある。
特にこの話についてはセンシティブな問題であるが、講師役としては、
幸か不幸か、現在は生殖器がない…人魚もどきになっている小鳥遊が選ばれたのであった。

教室に入ると、生徒たちの視線が自分にぴたりと据えられたのを感じる。
人間だった時よりももっと明確な…”可愛らしいペット”でも見るようなそれだ。

そのまま車椅子を動かして、教師用のテーブルにつく。

「今回は生物の生殖についてお話をします。
 受講・理解済の皆さんにとっては退屈な話かもしれませんが、
 これは人間と地球にある生物に共通するとても大事なシステムです。ご理解くださいね。」
一礼してから、ゆっくりとした調子で語り始める。

「まずは増え方からお話しますね。
 1つめは、自分たちのコピーを作って増えるタイプ。
 これは、ある程度複雑さを持たない生物や、鳥の一部もすることがあります。
 2つめは、交配です。 地球に住む生物の多くは、
 肉体的には男と女という2パターン…性別に分けられます。
 人間、動物、昆虫に一部植物も”性別”を有しているわけです。」
どこか甘さを感じさせる、幼気なソプラノの声が教室に響く。
よほど興味があるのだろう、生徒たちはなんだか満足げに何度も頷いていた。

小鳥遊 日和 > 一部生徒から驚きの声が上がる。 おそらくそういった情報を本当に知らない
異邦人なのだろう。 小さく頷き、講義を進める。
「色々なプロセスはありますが、つまるところは生物の男が持つ精子と、女が持つ卵子…。
 二人の遺伝情報を有した情報が合わさることで、新たな個体が生まれるわけですね。」
身振り手振りのひとつひとつが注目されているのを感じる。
「精子と卵子…当然それぞれは最初は壁に阻まれています。」

両手を広げ、顔の前で細くしなやかな指の腹と腹をそっとくっつけてみせる。
じわりと教室内の熱が上がるのを感じる。 やはり生殖については皆興味津々なのだなあ。

「ただ、このように精子と卵子が接触すると、その壁が薄れていき…」
ゆっくりと、指の腹から指全体、そして掌をくっつけていって、合掌のような手つき。
だれかの喉がゴクリと鳴る音が教室に響いた。

「そして、精子と卵子に刻まれたそれぞれの特性が混ざりあい……。
 こうして、一つになるわけですね。」
合掌から、指同士を組むようにして、祈るような手つきへと変える。
すらすらと手の触れる音が、静寂と奇妙な緊張に満たされた教室に響く。
教室にある生徒の殆どが、呼吸を忘れたかのように小鳥遊の手とその動きを見やっていた。


小鳥遊 日和 > 「生物の本分は殖えること…そうお考えの方もいらっしゃるでしょう。
 人間はその…交配するまでにある程度親密な時期が必要なことがほとんどです。
 気に入っちゃったから交配しちゃおう!みたいなのは、立場を危うくします。
 お互いの安全のために、これはやめましょう。」
ほうぼうから聞こえるため息。ものすごく”落胆”といった調子だった。
なんだか不憫だが、お互いを守るためのお話なのだ。仕方あるまい。

「その…もしそういった気持が昂りすぎてしまったら、すぐに相談してくださいね。
 今のわたしであれば、お話相手くらいにはなれるでしょうから…。」
落ち着き始めた教室内の雰囲気がたちまち熱を帯び始める。
もしかして、異邦人の人たちは思ったより人間に対して好意を持っているのかも。
それが嬉しくて、にっこりと笑顔を浮かべた。 生徒たちの問題解決ができるのはとっても幸せだ。

「では、この辺で授業を終了します。 ありがとうございました!」
講義を始めたときと同じように頭を下げ、教室を後にする。

メールボックスに異邦人たちからの『相談』が数十件ねじ込まれていることを知ったのは、
職員室に戻ってからのことだった……。

ご案内:「◆授業「生物の生殖」(受講Free)」から小鳥遊 日和さんが去りました。