2025/10/09 のログ
ご案内:「落第街・中秋にて」に銀の狼さんが現れました。
ご案内:「落第街・中秋にて」にハインケルさんが現れました。
■落第街にて >
夜の落第街。
後ろ暗い違反部活などの活動や、あるいは風紀委員などの巡回。それ以外の諸々などで、夜も静かである
というばかりではない落第街だが、全てが全て、そうである訳でもない事も事実である。
そんな一角が、偶々この夜にも存在した。言ってみれば、それだけの事。
よくある落第街の夜といっても、特に問題はなかったかも知れない。
敢えて、普段と違う事を挙げるなら、その日は空がよく晴れていて、夜空が綺麗であった事。
何処からでも、地上から眺める夜の空は綺麗なものである。
そしてもう一つ――
その日は、とても大きな、真円の月がよく見えたという事。
10月6日、中秋の名月。
最も綺麗な満月が見られる、一年に一日の夜。
■ハインケル >
そんな落第街の廃ビル群の上を飛び回る影が一つ。
昨今のパルクール…なんかとは桁の違う運動能力を見せるそれは小さな少女のもの。
長い金色の髪を靡かせ、風のように飛び回る少女は実に機嫌良さげに天を仰ぐ。
「紅くはないけどまんまるおつきさま。
薄暗い街も今日はばっちり照らされてるね」
フルムーン。
体全体に力が漲る日。
それを発散することも含めての落第街の見回りである。
■落第街にて >
落第街の廃ビルの上から眺める夜空。
高層建築によって切り取られ、遮られる、地上から見上げた景色よりも、空に近い場所から見上げる夜空は
よく見える事であろう。
常よりも大きく見える、丸い月。
その周囲を彩るように小さくも煌めく星々。
暗い色の空を照らす月と星々の存在で、普段よりも明るい色に思えるかもしれない夜の空。
月の影響を受ける身にとっては、絶好調という言葉すら温く思えてしまうかも知れないだろう。
そよ風に過ぎない強さの風さえも、敏感に感じ取れる程に。
――その風が運んでくる、ほんの僅かな匂いと…小さな遠吠えすら、聞こえてしまうかも、知れない程に。
■ハインケル >
夜の風が運んでくる音、匂い。
ライカン・スロープの鋭敏な嗅覚と聴覚はそれを的確に捉える。
「───」
ビルの屋上にトン、と降り立ち、その方角へと視線を向ける。
「……覚えがあるよーな、なんか厭な感じもするよーな…?」
数瞬の迷い。
諦観の色の交じる溜息を残し、強く屋上の床を蹴る。
見て見ぬふり──まぁ、見てるわけではないけど──は、後味が悪い。
風を切り、飛びそうになる帽子を片手で抑えながら、少女は目的の方向を疾走する。
■銀の狼 >
方向を定めて進めば、近づいているという実感は直ぐに得られるだろう。
音量を増す遠吠えと、はっきりと分かるようになる「匂い」。
それらが、距離を進める度により強さを、確実さを増していく。
それを放つ者にも、接近する少女の存在が分かったのか。
途中で遠吠えは聞こえなくなるだろう。
だが、その時にはもう遠吠えを頼みにする必要もない程に、距離を詰められている筈だ。
――そうして、少女が廃墟のビルを幾度も飛び回り続ければ、「それ」は其処にいる。
特に高い廃ビルのひとつ。その屋上に、大きな月を背にするように「それ」は佇んでいた。
銀の毛並みをそよ風に揺らし、逃げるでも、近づく者に威嚇を向けるでもなく。
「それ」は静かに、しかし確たる存在感を持って、佇んでいる。
銀色の、狼。それもただの狼ではない。
全長3mにも及ぼうかという、巨躯が、静かに佇んでいる。
近づいてきた少女の存在を明らかに悟ってか、そちらへと視線を向けながら。
■ハインケル >
「こんばんわ。いい月夜だね♪」
トン、と。
銀の獣の前に軽やかに降り立つ。
まるで知り合いに散歩中に出会ったかのような気軽さで言葉を向けながら。
というか…匂いと、気配。
そんなこんなでなんとなく感じてはいるのだけれど。
「ちょっと会わなかった間に随分大きくなったね? そんなだったかな?」
相手がどんな常態かはわからない。
ぱっとみれば、でっかい狼の魔物。
本当に思ってる相手で合ってるのか。
月のせいなのかどうなのか。言葉が通じてるのかどうか。
こちらをちゃんと認識しているのかどうか。
とりあえず話しかけてみればわかるかな?な試金石。
■銀の狼 >
じ、と、銀の狼は己の前に降り立った少女に視線を向ける。
深い、紺碧の瞳。その目の色は、少女の記憶にあるものと全く一緒だと、直ぐに分かるだろう。
問い掛けに対し、銀の狼は吼え声にもならない程の小さな息使いで返し、のしり、と無遠慮に一歩を踏み出す。
足音こそなかったが、重量感を感じさせる一歩。
大した強さでもない異世界の妖魔やそこらの獣程度ならば、足だけで叩き潰せてしまいそうな。
その指先から生える爪も、並みの刃物などよりも遥かに鋭そうである。
息遣いすら聞こえてきそうな距離にまで、巨大な狼の顔が迫り、しかし、そこで少女が退く事をしなければ、
その直後、襲い掛かるのは――――
べろん、と、顔を嘗めにかかる、舌。
言葉は兎も角、どうやら狼の方も目の前に居るのが誰か程度の認識はついている、らしい。
■ハインケル >
向けられた視線。
その深い色の瞳には、当然覚えがある。
見た目こそ、怪物じみたものに変貌しているけれど。
「やっぱりリヒト?」
言葉に反応した様子も含め、確信めいて問う。
故に獣の顔が迫ろうと逃げることなどもせず、迎える。
…顔を舐められるのは想像してなかったけれど。
「わ、ちょ……! それはノーマナーじゃないの!?」
人間の時でも許してないけど!?と、ぴょんと少し後ろへと飛び退いて。
「…で、どうしてそうなってんの? 満月のせい?」
うひー、と濡れた頬を袖で拭いつつ。
…こうした能力…というか血、種…そんな眷属にはあまり珍しいことではない気はする…けど。