2026/02/18 のログ
ご案内:「風紀委員会本庁・夜」に大神 璃士さんが現れました。
ご案内:「風紀委員会本庁・夜」に火倉 刹那さんが現れました。
大神 璃士 >  
風紀委員会本庁、そのオフィスの一角にて。
PCの画面と、紙のレポートに交互に視線を向ける人影がひとつ。

「……また、被害が出ているか。」

黒いジャケットの風紀委員が目を通していたのは、以前に自身も遭遇した甲種不明犯についての
報告書やレポート、目撃情報等である。
かの歩く暴威といえる存在による被害報告は留まる所を知らず。
以前に懸念していた、交戦報告の増加が現実となってしまっていた。

「………。」

ため息を吐きたくなるのを、ぎり、と歯を食いしばり、堪える。
沈んだ所で、事態が好転する訳でもない。

もう腕の包帯を外しても怪しまれる事がない位には時間も過ぎた。
改めて、巡回への復帰申請を出す頃合いか、と考え込む。

火倉 刹那 >  
「以上。本日の警邏報告になります。
 違反組織や委員会も最近は少々大人しいようで。
 件の凶悪犯に人員を割いても良いかと思います。…それでは」

奥の部屋での用事を追えた少女がパタン、とドアと閉じ、オフィスに姿を見せる。

頭、顔、覗く肌。
その殆どは赤黒い染みの滲む包帯に覆われている。
だというのに実に整然、淡々とした態度でオフィスを横切り、特別攻撃課のほうへと歩いてゆこうとしていた。

大神 璃士 >
常人よりもよく利く耳が、今日ばかりはその仕事ぶりの良さを恨めしく感じてしまう。
耳に届いたのは知っている声。それも、つい先ほどの報告書の中に名前が載っていた人物のものだ。
――報告書が正しければ、本来此処に居るはずがない、居られるはずがない状態の。

「…………。」

無言でPCを落とし、席を立ち、視線を向ける。
果たして、その先には以前に顔を合わせた事のある、特別攻撃課所属の少女の姿。
それも、見える範囲は包帯だらけの上、その包帯も役割を果たしているかが疑わしい有様だ。

「――――。」

大きく息を吐き、一度気持ちを落ち着かせてから、少々大股の歩みで、特別攻撃課の方向に
向かおうとする少女へと向かい、

「――どういうつもりだ、火倉委員。」

出来る限り感情を鎮めた、相手にだけ聞こえる声量で声をかけ、歩みを止めさせようと
少女の肩へ向けて手を伸ばす。

火倉 刹那 >  
肩を掴まれれば、少女の身体は僅かに揺らぐ。
あまり力が入っていない、そう感じさせるのに十分な手応えだ。

「……?」

「何か、大神先輩」

特に呼び止められる理由が浮かばなかったのか。
仄暗い視線は無感情に彼を見つめていた。

「バレンタインのチョコなら売り切れです。ありませんよ」

大神 璃士 >  
「冗談を口にできるだけの威勢はある、と言いたいつもりか。」

思わず目つきが鋭くなる。
大声を出す事は辛うじて堪える事が出来た。
別に此処で怒鳴りつけて、相手を晒し者にするつもりも自分達を見せ物にするつもりも、
黒いジャケットの青年にはなかったのである。

「……来い。」

腕を引く――事は自制し、代わりに制服の袖を軽く引く形で、連行を試みる。
とは言っても、既に身体からは拒否を許さぬ怒気が少しばかり漏れてきていてしまったが。

火倉 刹那 >  
「そういった他意はありませんが」

ああ、怒っているらしい。
何に対してかは良くわからないが。

「お断りします。業務を終えてプライベートな時間に入りますので。
 ……あの、聞いていますか先輩」

問答無用、と言った様子。
はぁ、とため息を零して連行されてゆく。

大神 璃士 >  
腕を引く事を容赦し、代わりに服の袖を引いて、無言で青年は少女を連行する。
すれ違う相手に奇異の目を向けられる――事は、幸いにも殆どなかった。
人の少ない時間帯を知ったるかの如く、すれ違う相手の殆どない通路を通り、人気のない方向へと。

やがて着いたのは、使われている気配のほとんどない一室。
「雑用」などで人目につかずに「仕事」を行う必要がある時の為に、鍵を預けられていた部屋であった。
少しのデスクと休憩用らしい少々草臥れた長椅子の他に、目立つ備品は見つからない。

部屋に入り、電気を点けると、黒いジャケットの青年はようやく少女の服の袖から手を離す。

「……此処なら人目もない。碌に使われていない場所だからな。」

改めて、鋭い目を明らかに重傷者の筈の少女へと向ける。

「火倉、何故お前が本庁(ここ)にいる。
報告書が間違っていないなら、肩部咬傷、胴部裂傷、骨折複数、出血多量。
普通であれば医療施設のベッドから離れる許可が出ない筈の重傷の筈だが。」

先程確かめた報告書にあった内容を再確認する形。
強力な自己再生系の異能でもない限り、病院のベッドから動く事が出来ない筈の怪我。
にも拘らず、平然と歩き回り、あまつさえ業務復帰という有様。
正気の沙汰とは思えない。

火倉 刹那 >  
有無を言わさず、連れて行かれた先は人気のない個室。

「どういうつもりですか、先輩。
 こんな部屋に連れ込んで、碌なことが浮かびませんよ」

淡々とした言葉とともに向けられるのは感情の温度の感じられない冷たい薄紫の視線。
鋭い視線もそよ風の如く流し、何のことやらといった風情である。

「何故と問われれば落第街の本日の警邏の終業報告に。
 許可がどうのもなにも、問題なく動けるので業務に従事しているだけですが…」

大神 璃士 >  
「怪我人を晒し者にしない為の配慮だ。
それとも、衆人環視の中で怒鳴られたかったのか。」

そちらがお好みであればとんだ被虐趣味か無関心さだ、と言わざるを得ない。
そうして、少女の返答を耳にすれば、思わずため息と共に更に視線が険しくなる。

「――成程、自分は大丈夫だから業務復帰は当たり前、と言いたいのか。
なら…少し、良い気持ちはしないが。」

確かめる必要がある。
これだけの、包帯が用を成さなくなる程に治り切っていない怪我でありながら、
平然とした顔で歩き回っている理由。

徐に、今度は少女の肩に向けて手を伸ばす。
肩を掴まれる事を許せば、然程力を入れていないにも関わらず、痺れるような痛みが
掴まれた部位に走る――筈である。
そうなるように、生命波動を少し流して痛覚を刺激してやる使い方である。

火倉 刹那 >  
「怒鳴られるいわれもないと思うのですが」

「件の凶悪犯に人員も割いています。
 刑事課もそれなりの人間が対策本部に出向いている筈ですから。
 こういった、手薄になりがちなタイミングを違反組織や異能犯罪者達は逃しません。
 問題なく動けるのであれば、仕事をするのは当然かと思いますが」

彼の手が肩へと触れる。
そして伝わる、痺れるような感覚。

しかし少女に伝わるのは、そういった痺れのみ。
痛覚を司る、その神経そのものが完全に死んでいる。
故に、表情一つ変えることはなかった。

「…なんのつもりです?
 強制的なスキンシップはハラスメントだと認識していますが」

大神 璃士 >  
「――――成程。」

その反応で、思い当たる可能性はほぼ絞られる。

「今ので、そんな平気な顔をしているなら――火倉、お前がそうして、平気な顔で
怪我も気にせず歩き回れるカラクリが、理解出来た。」

確かめた以上、もう充分である。
少女の肩を掴んだ手を放し、その手を軽く振る。

「何かしらの定期投薬による感覚鈍麻…も、考えられたが、そんな薬を必要とするなら、
特記事項に載っているだろう。
そもそも、健康問題的に風紀委員への志願が通るかが疑わしい。」

思い出せる限り、彼女が薬を定期服用しているのを見た覚えはなかったし、
そういった投薬を必要とする病気を患っているという特記も無かった筈。
であれば、考えられる最も高い可能性は、青年にも察しがつく。

「火倉。お前、痛覚障害か…あるいは、痛覚がまるで機能していないだろう。
それなら、その怪我でも涼しい顔で歩き回れるのも納得だ。

……お前に劣らずの大怪我だった青霧先輩は、似たような状況で動くのも辛そうな程だったからな。」

暫く前の総合庁舎での出来事を思い出す。
あの時の先輩の様子は、見ていて痛々しいレベルだった。