2024/06/20 のログ
ご案内:「◆女子寮(過激描写注意)」に端集シスイさんが現れました。
■端集シスイ >
息が荒くなる。
手が震える。
ぐっと押し込み、より深く。きちんと場所にあたりをつけて、寸分たがわず固定する。この時代、多少裕福な家に生まれた学生のお小遣いでも余裕で買える器具でも、十二分な処置を施すことができる。最先端の時代はお洒落にも手厚く、常世島のコスメショップをはじめとしたメーキャップを頼れる場所はどこも人気だ。薬局やコンビニでさえ気軽に買えるのだから。
首の太い血管が、心臓に呼応して、脈うっているのがわかった。
こんなこと慣れたものなのに。
「……………」
すぅ、と息を吸って……意を決して、指に力を込める。レバーを押し込んだ。
カチッ――――ほんのささやかな、音。
■端集シスイ >
孔のあいた肌から、赤が一筋垂れ落ちる。吹き出すわけでもなければ、ゆっくりとこぼれるわけでもなく。水を垂らしたみたいに、色素の薄い皮膚のうえに、鮮やかな血が流れ落ちた。
「はぁ…………」
痛い。
市販の器具は、可能な限り処置の際に痛みが軽減されるようになっているが、開ける場所によっては当然痛覚があるのだ。そのため、安全かつ確かな孔を求めるなら、保険は効かないけれども美容皮膚科を頼るほうが遥かに利口だ。
だから、心底馬鹿馬鹿しいと思うのだ。
■端集シスイ >
だらりと、ピアサーを握ったままの手が体の横に落ちる。
浴室の床に、ぽたり、と真新しい朱のしずく、ひとつ、ふたつ……。
「加害者だよ、ウチは…………」
あの時、ボコ殴りにした生徒。そんなことされてもしょうがないやつだった。だからなんだというのか。相手がなんであれば自分がやったのは暴力。一方的な傷害行為だ。しかも、それが何かを生み出すわけでもないもの。たとえば誰かの貞操が助かったとて、それは副次的に生まれた結果に過ぎない。
襲い来る――強烈な、自己嫌悪。こんな、ささやかな自傷行為で、自分を罰したつもりになっても、なにも起こらない。すぐに血は止まり、綺麗な孔ぽこができる。最新の器具は、そういうようになっている。いつものカフスやパッチなどで孔は隠せるから、登校や登庁に困ることはない。
鏡のなかには、どこにでもいるようなメンヘラがいた。からっぽの胃がざわめく。薬をのむのにだって、なにかをおなかにいれなければいけないのに。
■端集シスイ >
シャワーの栓を開けばたやすく洗い流せる程度の懺悔の形に、ますます気分が落ち込んでくる。
「サイアク……」
うめく……だが、それでもまた。自分は落第街に足を向けるのだろう。渦巻くどす黒い感情をせめても鎮めようとして、哀れな生贄の羊を求める悪魔の如く。
ご案内:「◆女子寮(過激描写注意)」から端集シスイさんが去りました。