2024/08/13 のログ
ご案内:「人類進化研究所」に宝生さんが現れました。
宝生 > 強化ガラス越しに奇妙な生き物が動いている
出来の悪いダンスの様にもがく姿は美しさの欠片もなく焼かれる蚯蚓の様
剥き出しの牙、体の至る所から生えた角、翼のなりそこないの様な骨が少ない筋繊維と共にバタバタと動くたび揺れている

「それで、この珍妙な生き物はなんだね?」

背後のコンピューターが答える

『素材番号0085です。複数体の生物DNAと肉体を魔術的アプローチで統合しました。』

端的に答える機械音声
そうかこれはあの85番だったかと改めて観察する

「なるほどなるほど、魔術的アプローチか。

これを行った魔術師には休暇を出したまえ、使い物にならん。」

人の形にすら収まらずおおよそ生物として破綻した失敗作
それを生み出した無能
どちらもここには必要ない

宝生 > コンソールを操作し廃棄処理に移る
強化ガラス越しの部屋は燃料が散布され数秒後に着火
中の存在が完全に炭化するまで燃焼を続ける

「これで何度目かね、失敗すら生温いと呼べる出来損ないを生み出すのは。」

『失敗の定義によりますが、博士が成功と呼んでいた0007号から…』

「いつの間に皮肉を覚えたんだね、私が言いたいのはそういう事ではない。」

目を閉じる
瞼の裏にはかつての黄金の日々
様々な素材をあらゆる手段で統合しそれを成功させてきた自分と素材番号0007号

しかしそれはもう既に過去の儚い記憶
彼女はここには居ない

宝生 > 「7番はまだ見つからないのか?猟犬は何をしている?」

懐から取り出す装置
シンプルな見た目にボタンのついたそれをカチカチと連打する
今頃どこかで猟犬に電流が流れている事だろう
つまらないただの嫌がらせ、ストレス発散に微力ながら貢献するボタン

『報告はされていません。外部ネットワークへの接続を行い検索いたしますか?』

「やめたまえ、君を外に解き放っては何が起こるか考えたくない。
必要であればオーダーをかける、それまできちんと大人しくしていたまえ。」

機械音声は答えない
オーダーは待機、それに意義を唱える事も疑問を呈することもない
絶対命令権を持つ人物がそう命じている

「あぁ7番…いったいどこに行ったんだ……私とのあの素晴らしい日々を忘れてしまったのか…」

涙が溢れる
アレとならもっと素晴らしい実験結果が得られた筈だ
ガラス越しの炭化した元素材も0007号を使えば耐えられた筈だ
魔術師の腕など関係ない、あれは完璧な素材だった

「やはり駄目だ、私の研究…人類の進化には7番が不可欠だ。」

涙を拭う
まだ希望はある
0007号は島の外には出ていない
当該脱出へのあらゆる可能性を潰している
そのせいで島内の捜索が遅々として進まないのも事実だが

「本腰を入れて捜索に当たるとしよう、私の…ひいては人類の為に。」

ご案内:「人類進化研究所」から宝生さんが去りました。