2024/09/03 のログ
ご案内:「落第街の一角」に九耀 湧梧さんが現れました。
九耀 湧梧 >  
落第街のとある一角。
直近で起こった様々な騒動の中にあって、この一角だけは驚くほどに静かだった。
人の気配らしいものも殆どない。
ひどく静かな、月も見えぬ夜。

「………此処は静かなものだ。」

その一角を、小さな足音と共に往く人影がひとつ。
黒いコートに、赤いマフラーの男。
和の鎧を思わせる、右腕の装甲がかしゃりと小さく音を立てる。

「ここ暫く、騒がしかったからな。
静かな日は、本当に久しぶりだ。」

数日前の事、それに、直接見た訳ではないが、落第街で暴れ回る「自称魔法少女」の噂は聞こえていた。

だが、この一角は、そんな騒乱とは今は無関係だった。
静かな、星の綺麗な夜。
 

ご案内:「落第街の一角」に八ツ墓 千獄さんが現れました。
八ツ墓 千獄 >  
『相も変わらず目立つ格好ですこと』

『──お陰様と言うべきか…貴方を見つけるのは簡単ですね』

月夜に降る、女の声。
簡単に姿を見せないのはいつものことか。
反響するように、居所のわからぬ声が、男へと届く──。

その声、違えることがなければよく知る女のものだろう。

九耀 湧梧 >  
かつ、と小さくブーツの音を立て、道を往く男の足が止まる。
ふ、と小さく息を吐き、視線を真正面に。

「そちらは相も変わらず慎み深い事で。
最近は、奇妙な斬殺体の噂もとんと聴かない。

ま、ここ暫くはこの辺り、随分と血腥い騒動が多いからな。
其処に紛れたとしても、分からないかも知れないが。」

別に嫌味の類ではない。
実際、ここ暫くの落第街の騒動は少々度が過ぎると思っていた処もある。
こうして静かに過ごしていられるのは、本当に有難い。色々な意味で。

「――さて、何の理由もなく人を探し回っていた訳じゃないだろう。
用があるなら、話位は聞くが?」

――最も、凡その見当はつけられるが。

「刀剣狩りは、妙な書物に奪った剣や刀をしまい込んで見せている」。
刀剣狩りのネームとその暴れ方の陰に隠れ気味だが、その噂位は届いていてもおかしくはない筈だ。

(……最も、廃業から随分と経つがな。)

八ツ墓 千獄 >  
『心外ですね?
 それではまるで(わたくし)が見境なく人を斬り殺す殺人鬼のようではないですか?』

くすりくすり、と。
小愉快な笑みの交じる女の声色。

『用ですか?そうですね…それは勿論…』

しん……。
静寂が訪れる。
そして、それを破るのは──。

「──矢張り、刀剣狩り(ブレードイーター)(わたくし)の恋路には邪魔かと思いまして」

狂笑混じりの女の声とともに男へと差し向けられた──閃光の如き白刃の一閃。
収束された光が貫くかの様、その一撃と共に…一振りの白鞘を携えた、黒衣の女がその場へと姿を現した。

九耀 湧梧 >  
「こちらこそ、心外だ――なっ!」

剣気と殺気を感じると共に、すとん、と手元に落ちて来る刀。
刀身半分ほどを鞘から抜き、襲い来る白刃の一閃を受け止める!

「またぞろ、好みの相手(一振り)でも見つけて、知らない間に誰かが斬殺体になってたのかと
思っていただけさ――!

しかし間が悪い…! 折角の相方の「化粧」が台無しな時に、遊び(斬り)に来るとは――
みっともない姿を見せて、こいつも残念だろうぜ…!」

――そう、先日のとある事件で少しばかり働かせ過ぎた刀は、所々、鋼色が剥げて落ちている。
その剥げた痕から覗くのは、木目も確かな、しかし金剛石もかくやという黄金の輝きを見せる奇怪な刀身。

叩きつけた歯応えは、鋼鉄かそれ以上。
なのに、明らかに樹木で出来ているという、奇妙な刀。

そのまま、一瞬だけ力を込め、受け止めた白刃を打ち返す為の圧し切りを放つ――。
 

八ツ墓 千獄 >  
「貴方の仕事の成果でしょうか?」

打ち払われた一閃。
狼狽することもなく後方へ、黒衣の裾を翻し加齢に転身…地へと凶々しき血色の瞳の蝶が舞い降りる。

「最近はとんと出会いがなくて寂しい想いをしているので御座います」

愛しい雄自身を撫でる様な手つきが白鞘の柄を撫で、妖艶に潤む血色は男を薄く細められ、男を見据えていた。

「でしたら、大事にしまっておけば宜しいものを。
 果たして剥げたのはお化粧なのでしょうか。厚化粧を無理強いするのはお勧めできませんよ」

打ち合いに感じた感触は異常なもの。
その一振りが尋常のものでないことは、文字通り身体で感じることが出来ている。
──と、なれば。火が入るのがこの女である。

「嗚呼。無理矢理に想い人を奪うというものも、興奮するものですよねえ?貴方は如何ですか?」

九耀 湧梧 >  
「これでも、公安の怖いお兄さんに目を付けられてから廃業していたんだがな。
噂の回り方の強さと薄れ方の遅さは、どうも考えてたより強かったらしいな。」

ざ、と向き直り、軽く刀を振る。
鋭く重い一撃は刀の塗装を簡単に剥ぎ取り、銀色の塗膜がバラバラと落ちる。

「…あんたなら兎も角、この外見で侮ってかかる目の悪い奴は意外と多いのさ。
だから、化粧をしてやって「真剣に見せかける」必要がある。
ま…化粧の乗りが悪いのはいつもの事だ。こうして、強く打たれればすぐに地金が見えちまう。」

ふぅ、と息を入れ、すらりと刀を居合の構えに。

「生憎と、俺の場合は「手に余る代物」を持ってる奴からの回収作業さ。
ま、同じだろと言われれば返す言葉もないが。

しかし、奇特だね。いくらそこらの鋼より遥かに頑丈とはいえ、「木で出来た斬れない刀」まで欲しいもんか?」

と訊ねてはみるが、斬れない事を差し置いても鋼より堅い木という存在がそもそも異常である。
なれば、刀を狂愛する女が目を付けるのも是非も無い事か。
 

八ツ墓 千獄 >  
「奪われる側からすれば同じでしょうけれど、私は情愛を以って奪わせていただいております故…。
 淡々とこなされる業務のうちに引き裂かれるのは、実にお可哀想で御座いますね」

可哀想、などという感情の起伏をこの女が持ち合わせているかどうかは差し置いても、
奪うこと自体を一切否定しない女の有り様は異常の一言。
最も、相対する男にとっては言うまでもない、とうに承知の事実であろうが。

「どうでしょう?興味が沸かないわけではありませんね。
 どういった在り様なのか、もっと激しく打ち合ってみれば理解できますでしょうか」

柄に番えた手を滑らせ、腰を沈める。
男と、鏡に映すような居合の構え。

「参りますよ。私がそのお方を理解するまで、胴から腕を離さないで下さいませ──」

キン──。

小さな鍔鳴り。
同時、男を取り囲む様に出現するのは光条。
無限に四方八方から襲いかかるのは、紛れもない抜刀による一閃。
無限の剣閃に囲まれるかの様な男を前に、女は嗤い───。

閃剣絶刀───そして。魅せませ」

「──灼火燎原

再び抜き放たれた刃。燃え上がり逆巻く焦熱の焔が女を中心に巻き起こる
辺りが焦土と化そうが、憂慮すべきことなどなにもない───女の眼には、刀剣を持つ男の腕以外は映っていないのだから。

九耀 湧梧 >  
「誰も彼もがあんたみたいに「愛でる」為に集めるだけなら、俺の仕事も少なくて済むんだがね…。
――技の切れが、刀に左右される。実に面白くない、あってはならない事だ。

磨き上げ、突き詰めた技ならば――」

――刀の良し悪しなど、問題にならぬ。

《――空ナルヲ裂ク(斬空)――》

「……朧月!」

かちり、と鞘走りの音。

同時に、襲い掛かる一閃を迎撃するのは、瞬きの間に放たれる、月の如く乱れ舞う斬閃。
ただの斬撃と思う勿れ、その刃は「空を割く」――即ち、空間断裂を引き起こし、一閃を「裂き」にかかる。

無論、それは放たれる焦熱の炎に対しても同じ。
――一筋、頬に軽いかすり傷を作ったが、被害らしいものはその位。
一筋滴る血を親指で拭い取り、嘆息。

「相変わらずの手前で。……いや、以前より強くなったな。
これは、やはり――――」
 

九耀 湧梧 >  

――あんたには奪えない、最後の刀で、迎え撃つしかないか――

 

八ツ墓 千獄 >  
「潰える筈の命を不本意ながら貴方に掬われてしまいましたからね…。
 より強く、より美しく、より鋭い──貴方を殺す刃となって報いましょう。
 ──ふふ、大変で御座いましたよ。"本家"の怪物を切り抜け此処へ辿り着くのは」

放たれた、夜闇を煌々と照らす豪炎の壁が落第街の一角を包む。
これで邪魔は入らない───とでも言いたげに。

「そしてお見事。
 大体の相手ならば"詰み"なのですけれど。けれど"絡繰り"はもう理解して折ります故…」

「──こういうものは、如何でしょう」

鞘鳴りと共に再び発生する、無限の剣戟の檻。
その向こう側に、強烈な剣気を全身から放ち狂笑を浮かべる女の姿が在る。

「真伝・八間両断(はっけんりょうだん)

閃光。
薙ぎ放たれた一閃は超広範囲に渡る、"厚み"を持った在らざる斬撃。
その"厚み"は、その侭に示す存在強度
それが存在する空間、それ自体の強度を大幅に上昇させる──切り裂くのに一苦労かいてもらおう。──そんな心算。