2024/07/13 のログ
ご案内:「数ある事務所」にエルピス・シズメさんが現れました。
ご案内:「数ある事務所」にDr.イーリスさんが現れました。
Dr.イーリス > イーリスは、応接間にあるPCの前にいた。
PCに繋がれている線。その線に繋がっているのは、一機のドローン。そして、タンスに機械の四足と、上部から二本のアームがついた変なメカ。
カタカタと凄い速度でキーボートを打つ。
画面に映るのは、プログラミング画面。

所々体が溶けて中の機械部分が剥き出しになっている箇所があるのは変わらずだが、結構元気になっていた。
やがて、イーリスはキーボードに触れている手を止める。

「後は動作チェックでございますね」

本当に、エルピスさんがPCを用意してくれたので作業が捗る。
イーリスの体内コンピューターがドローンに指示を送る。するとドローンのプロペラが回転して、浮遊し始めた。
その様子を見て、イーリスは微笑む。
ちゃんと、再起に向かっている。呪いの克服はまだだけど、それでも手紙さんのお陰で効力が弱まっている。

エルピス・シズメ >  
 一方のエルピスは応接間のソファーに身体を預けている。
 備品の確認と資料整理を終え、軽い休息を取っていた。

 イーリスの報告を聞いて、ゆっくり立ち上がる。
 彼女がPCを活用している姿を見て、"用意出来て良かった"と内心で喜んだりもしている。

「ん……うん。順調そうで何より。
 テストはどの部屋使っても大丈夫だから。」

 ソファーからゆっくりと起き上がり、冷却サーキュレーター型メカの調子を確かめる。
 イーリスが作ってくれたメカの一つ。おかげで快適に過ごせている。

 確かめてから、イーリスに視線を戻す。

「身体の具合はどう?」

Dr.イーリス > 「エルピスさんがPCを用意してくださったお陰で、とても作業の効率がよくなりました。ありがとうございます」

ドローンをゆっくり着地させつつ、椅子から立ち上がってエルピスさんへと振り返る。

「感謝です。ひとまず、今はこの辺にして私も休息を取りますね」

ソファーへと向かい、ゆったりと腰を下ろした。

「大分、調子がよくなってきました。先日会いに行った信頼できる方、えっと、先生手紙さんって方なんですけど、その方が異能で私の呪いを弱めてくださいました。お陰で紅い文様も今は消えて、呪いの苦しみも一時的に弱まり、こうして動けています。ただ……呪いが強まれば、また紅い文様が浮き出て……苦しくはなりますね……」

呪いの効力が弱まっている事を笑みを浮かべて話、呪いが強まった時の懸念を口にする時は目を顰める。

「手紙さんとは、紅き屍骸と戦う上で共同戦線を張っています。その手紙さんに協力者がいらっしゃるらしいですけど、私はその方の事までは把握できていません」

まだ説明できていなかった近況をエルピスさんに伝えた。

エルピス・シズメ >    
「どの道そろそろ欲しかったから……間が良かったのかも。
 僕もこの冷房用の機械のおかげで涼しくて助かってるよ。ありがとね。」

 柔らかく微笑み、視線を合わせる。
 そっと彼女の座る位置を確保し、隣り合うように座り直した。

「この前送り届けてくれてた人だね。素性は分からないけど、腕の良い異能使いが居て良かった。」

 目を細め、そのまま瞑って思考の海に潜る。

 どの様な異能かは推測し辛いが、よほど異能の扱いに優れている人物であることは確かだ。
 "複雑な呪い"へのレジストともなれば、どのようなアプローチであれ一定の技量と知識は要る。

(詳細は知らない方がよさそうだけど……僕にはできないこと。凄い人、だなぁ。)

 一旦、思考の海から戻る。

「うん、イーリスちゃんの状況は理解したよ。
 知られたくないこともあると思うから、あまり探らないでおこうと思う。」

 "コンタクトがない"、と言うのはそういうこと。
 見知らぬ協力者たちに信頼を寄せ、小さく息を吐きだした。

 

Dr.イーリス > 「お役に立てて嬉しいです。その冷房メカは、私がここを出ていく事になってもそのまま事務所に置いておきますね」

瞳を細めて微笑む。
エルピスさんにはお世話になりっぱなしだから、少しでもエルピスさんに役立てているなら凄く嬉しい。
暑い季節だけど、冷房メカのお陰でとても快適なお部屋になっていく。

「そうですね。あの呪いを沈めるのですから、とても優れた異能です」

名前と異能で呪いを弱めてくれている事だけを告げて、手紙さんが公安だとか、『単独捜査本部』である辺りは伏せる。その辺りは公にしてはいけない情報故。
本当は手紙さんの名前を出すべきか迷ったけど、公安である事や『単独捜査本部』の事を口にしなければ、単にイーリスの友人というだけで済む。
エルピスさんもその辺りは理解してくれていた。

「……先日は、お恥ずかしいところをお見せしてしまいましたね」

そう口にして、やや視線を落とす。
先日の件とは、エルピスさんに泣きついてしまった時の事。

「……その……ですね、呪いを通して……“王”が私に囁きかけてきたのです……。“王”が……私を闇に誘おうと……屍骸達の“王女”へと堕とそうと……そう、私の脳裏に……」

エルピスさんのお隣で、イーリスは両手で自身の体を抱き、そして震えだす。

エルピス・シズメ >   
「パソコンのレンタルにしてもおつりが来ちゃうかも。
 ……ぁ、僕の寮……男子寮に持って行っても大丈夫?」

 "ここだけで使うにはもったいない。"
 とても気に入った素振りが見て取れる。

「なり振り構わないなら、王手の一つ足り得るよ。」

 "触れてはならない"と判断できるのも、既視感からの経験だ。
 既視感が働く時はいつも頭痛がする。

 少しだけ頭が痛んだのか、かるく左のこめかみに指を押し当てて離す。

「そっか、それで……」

 彼女が泣きついてきた時のことを思い返す。
 あの時は『特に不安定だった』。エルピスの認識ではそうだ。

「夜は月も出る。呪いも強まるし、王様も何かするなら誘う。
 それだけ王様と密接に繋がっているのなら……イーリスちゃん、大丈夫?」

 震え出した彼女に気付けば、真横で気遣うように声を掛ける。
 表情や文様、瞳の色なども確かめておく。
 

Dr.イーリス > 「パソコンを借りているだけではございませんよ。この事務所に匿っていただいていたり、他にもエルピスさんが私のために動いてくれていますからね。もちろん、男子寮に持っていってください。義手のメンテナンスも、この戦いが終わればやらせていただきたいです。随分と遅れてしまい、申し訳ございません……」

冷房メカを男子寮に持っていってもいいと笑顔で頷いてみせた。
義手のメンテナンスについて、何だかフラグを立てているような気がするけど、回収しない事を祈ろう……。

「このタンスのメカ、《タンスガーディアン》も必要とあらばこの事務所に置いておきましょう。なんとこの《タンスガーディアン》、鉄壁の盗っ人さん撃退装置です。中に入っている貴重品を何がなんでも守り抜き、時には四本の肢で全力で逃亡を図るなど、警備ロボットとして凄く優秀です。念のためタンスの後ろに緊急停止スイッチをつけておきましたが、あんまり目立たないので盗っ人さんがそのスイッチに気づく事はないでしょう」

胸を張りつつ、ちょっとどやっとした顔で発明品自慢を始める野良の発明家。
先程システムを構築していたタンスの変なメカである……。
なお、盗っ人さんの対策していると謡っているわりに、肝心の鍵でタンスの棚に鍵がついているなんて事は一切ない……。盗っ人さん、棚を開けたい放題……。
脚ある分、普通のタンスよりも随分と邪魔になる素敵じゃない仕様……。

「だ、大丈夫でございますか、エルピスさん……。少し苦しそうです……」

左のこめかみを指で押さえているエルピスさんに、イーリスは心配になり眉尻を落とした。
頭が辛そう……。
疲れているのかな……。やはり負担掛けてしまっているのかな……。
そういった申し訳なさも感じてくる。

「月……。そうですね……。今は落ち着いていますが、未だ呪いが私を蝕みます……。“王”との繋がりを、嫌でも感じてしまいますね……」

震えるイーリス。その表情は脅えているようでもあるが、なんとか恐怖を押し殺しているようでもあった。
今日も月が登る。エルピスさんは、一瞬だけ紅き文様が浮き出て、イーリスの右目が紅く光るのを目にするだろうか。

エルピス・シズメ >  
「『エルピス』ならそうしたし、僕も友達が困ってたらそうしちゃう。
 ……大丈夫、イーリスちゃんが謝ることじゃない。悪いのは王様だよ。」

 言い回しにフラグめいたものを感じたが、
 一周回って使い古された言い回しだ。言わぬが華と一旦流す。

 「これはどっちかというと、事務所に置いておきたいかな……」

 《タンスガーディアン》。
 男子寮に持っていったら何かの拍子で作動して御用になる未来が見えた気がした。
 気のせいかもしれないと首を横に振る。

(機械のことを話している時のイーリスちゃんはとても幸しそう。)
(本当、メカニックとしても発明家としても大成しそう。)
 
 閑話休題。

 話が本題に戻り、話している途中の頭痛を気遣われればすぐに頷き。

「大丈夫、ちょっと既視感……考えすぎただけ。」

 "実際に嘘ではない。トラウマが脳裏をよぎっただけだから。"
 そう自分に言い聞かせて、話の流れを戻す。

「……王様め。出来るならいっそこの手で呪い斬り落としてやりたいぐらいだよ。
 その繋がりが突破口になる可能性が、あったとしても……」

 彼にしては感情的な口ぶりと共に、紅が見えたイーリスとの距離を縮める。
 一瞬だけ迷う素振りを見せたが、イーリスを落ち着かせようとの意志で、
 彼女を支えようと、イーリスの身体に手を伸ばす。
 

Dr.イーリス > 「『エルピス』さんならそうした……?」

その言い回しには違和感。きょとんと首を傾げた。
まるで、自分ではない『エルピス』さんを表しているような……。

「では、事務所に残しておきますね」

《タンスガーディアン》に関して、そう首を縦に振る。

「既視感……。何か、嫌な事を思い出したのでございますね……」

そっ、とエルピスさんの背中に手を回して、少しでも気持ちが落ち着ければとゆっくり撫でる。
エルピスさんがこの事務所を紹介してくれた時も、なんだか今回と似たような感じだった……。
やはり心配にはなってしまう……。
まるで他人事のように、エルピスさんが『エルピス』と言うのと関係があるのかもしれない。

「エルピスさん……ありがとうございます。先日私が泣きついてしまった時も、あなたのお陰で不安が取り除かれて気持ちが楽になりました」

エルピスさんが体を支えてくれた。震えていた体もゆっくりと落ち着いていく。
イーリスの顔色から恐怖が抜けていき、体をエルピスさんへと寄せた。

「ふふ。とても、落ち着きます。エルピスさんには、本当にとても感謝です」

月が出る夜。だけど、エルピスさんの傍にいるなら、大丈夫……。落ち着いて乗り越えられる……。

紅き月輪ノ王熊 > 「イーリス…」
「聞こえているか~い…っ?」
「王様の命令だよッ」

「そいつらを、殺せッ!!」

イーリス・ロッソルーナ > 突然、脳裏に響く声にイーリスは目を見開く。

「……ッ! あ……ああああぁぁぁっ……!!」

エルピスさんの腕の中で、突然、悲鳴を上げた。
直後、紅き文様が浮き出て、右目が紅く煌めきだす。

「逃げて……ッ! エル……ピス……さん! お願い……!! 今すぐ……遠くに……逃げて!!」

エルピス・シズメ >  
「そうだね。……この話は、メンテナンスの時にでも聞いてほしいな。
 きっと直してもらう為にも、聞いてもらう必要のあることだから……この問題が、終わったら。」
 
 小さくうなだれて首を振る。
 最早背けきれない事実があることを肯定する。

(彼女が聞いてくれるのなら、それをモラトリアムの終わりにしよう。)

 自分の異能や状態に不安を思われている。
 それを振り払えるように、一言加える。
 
「だけど、"これ"が無かったら何もかも間に合わなかったから。」

 意志を込めて言い切り、気を取り直す。
 イーリスの不安の緩和に努めていたその矢先──。

 彼女に、呪いが届いた。

(視ている。あるいは視ていた。本当に腹が立つ!)

 紅き文様と呪われた右目を見据え、近づく所か即座に距離を詰めて抑え込む。否、抱きしめに向かう。
 成せるのならば、全ての腕を以ってイーリスを抑え込む。抱きしめる。

 ──弱められなお届く呪いの強さを認めつつも、
 ──"弱められてしまった"呪いであることは変わらない事実を見過ごさない。

(なら、活路はある。誰かが道を作ってくれている。)
(呪いの根源は、結局感情だ。呪詛だ。悪意だ。弱まっているなら特にそうだ。)

 故に、何があったとしても彼はこう告げる。

「負けるなッ! 逃げるなッ! 少なくとも僕が居るし弱くない……!
 イーリスちゃんの呪いを弱めてくれた者がこの島に居る事実も思い出して!」

「だけど王は一人。……だから今の呪いなら『勝てる』ッ!
 その呪いはもう、イーリスちゃんにとってはただの『強迫』だッ!」

「熱を帯びた激情も、抗えないように見える欲求も、誰かを傷つける不安も。
 イーリスちゃんなら向き合えて、呑み込める。……いいやもっといける。」
 
 半ば賭けだ。
 だけど、ここで勝って欲しい。

 強い想いを込めて、檄を飛ばす。

エルピス・シズメ >  
「王にはっきりと拒絶を告げて、
 呪詛返しの代わりで宣戦布告でも返してやれ!」
 

イーリス・ロッソルーナ > 『エルピス』さんの事については、メンテナンス時に聞くという事で頷く。

今は聞く余裕もなく、呪いがイーリスを蝕み、そして“王”により殺害欲を埋め込まれている。
イーリスはそもそも殺害欲なんてものは持ち合わせていないどころか、殺人という行為を忌避していた。だから、増幅する殺害欲もない。
だが殺害欲の増幅ではなく、“王”の命令で殺害欲が植え付けられていた。

「ああああぁぁっ………!!」

必死に抗おうと、双眸から涙を流しながらも、響き渡る悲鳴。
やがて落ち着き、植え付けられた殺害欲により殺人兵器になっていく。

「……アナタヲ……コロ……ス……」

それは感情の籠っていない兵器のようだった。
先程流れ出た涙が頬に垂れているのがより異質に感じられるだろうか。
しかし、イーリスの体は外見から想像できるぐらいに弱かった。
エルピスさんが抱きしめてくれているなら、いくらイーリスが藻掻こうがその両腕が外れる事はないだろう。力としては、十歳の子供が藻掻いているのと全く変わらない。

「うっ……コロ……ス。コ……ロス……」

エルピスさんの言葉に、イーリスは頭痛を覚えているようだった。
エルピスさんの激励を聞いて、殺害欲に抗っている。
右の紅い目が、一瞬、青く煌めく。

「……負けたくない……です。負けたくない……! お願い……私を……とめ……て……」

青く戻った右目から大粒の涙を流すも、再びその瞳が紅くなった。

「……コロ……ス……」

殺害欲を植え付けられたイーリス、その体内コンピューターが《タンスガーディアン》に指示を送る。
《タンスガーディアン》の引き出しが複数一斉に開き、中から複数のアームが出現し、それぞれマシンガンやスナイパーライフルといった重火器の銃口をエルピスさんに向けた。
今にもその銃口から火が吹かんとしている。

エルピス・シズメ >  
「『全然ダメ』と来た!
 いつも僕は、想定より甘い……!」

 自分の浅はかさに毒づく。
 これは順当でも正当でない。

 思考を回す。既視感も既視感の元凶も全て使う。勿論自分の身体にある『炉』もフル活用だ。
 『感情を回して』リソースを捏ね上げ、あらゆる限りの状況を演算し、状況と突破口を探す。

「こんなイーリスちゃんは、見たくなかった……な!」

 全ての銃口が向いている。
 とは言え勝手知ったる『エルピス』の拠点。
 
 地の利を活かし、弾丸が放たれる前にイーリスの頭と全身を庇い地下室に飛び込んで困る。

「止める……ああ、そうか。
 ……ちょっとだけズルをしてしまおう。」 

 転がり込んだ先で、イーリスを強く意識する。
 やる事は一つ──エルピスでない誰かの異能。『想いを継いで』。

 効果は、"文字に表すだけなら簡単だ"。『想いを継ぐ』。ただそれだけ。
 ただし、霊媒・サイコメトリー・予知・思考強化・同期、etc──

 ──両指では足りぬほどの幾多の異能が『それだけの為に使われる』。

「その殺意が感情や欲求なら、それを……寄越せッ!」

 この『想いの継ぎ方』は、異能にとって想定外であったとしてもだ。