2024/09/25 のログ
ご案内:「過日の落第街」に比良坂 冥さんが現れました。
ご案内:「過日の落第街」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
比良坂 冥 >  
日の落ちかけた落第街…その片隅。

ぱた、ぱた……と落ちる雨音。

ただしその雨は、赤く、黒い──。
打ちっぱなしの廃ビルの壁から突き出た鉄のボルトに、百舌の早贄のように人間が、一人、二人、三人──。
滴り落ちる紅い雨は雨足弱く、地面を濡らしていた。

「───……」

その中心に佇んでいるのは、一人の──くすんだ、色褪せた…そんな印象を与える少女。

少女に声をかけた三人は軽い調子で少女に絡み、自分勝手な言葉を並び立てた。
それだけ、ではある。
──苛立ちという程でもない、鬱陶しいな…という感情。

気がついた時には──この惨状は起こっていた。

芥子風 菖蒲 >  
血の匂いをかき分けたのは、黒い風。
風紀委員芥子風菖蒲はその日、たまたま落第街の警邏をしていた。
本当にそれは偶然だった。たまたま近くにいた。
風とともに流れてきた"嫌な匂い"を感じ、
一直線に廃ビルに飛び込んだのだ。
見開いた青空の双眸が見据えるのは、惨状。
ボルトに貫かれて、真っ赤な血を滴らせて絶命している。
酷いな、と内心独り言ち、表情が強張る。
……が、すぐに両目を丸くし驚いた。

「……あれ、冥……?」

その惨状の中に佇む少女には、見覚えがあった。
確か前に一回、警邏の時にたまたま会った子だ。
あの時は確か帰り道で送っていったはず。
何故彼女が此処にいるのだろう。もしかして、被害者なのか。

「大丈夫?何が会ったの?」

何の躊躇もなく、歩み寄る
純一無雑。知り合いを疑うことを知らない。
少年は、彼女は被害者の一人だと考えてる。

比良坂 冥 >  
「……?」

誰かがやってきた。
顔は…少し、覚えがある。
名前は…何だったか、でもこちらの名前を知っている。
きっと一度会ったか、会わなかったかくらい。

「……よく覚えてたね」

「名前」

鈍い喋りだしの少女。

何があったと問われれば、ゆっくりと"上"を見上げる。

百舌の早贄状態の遺骸を一巡、視線を巡らせて──。

「……さぁ」

「何か、あったの?」

昏い眼が、じっと少年を見つめている──……。

芥子風 菖蒲 >  
血の匂いが充満する。
慣れたくはない匂いだ。
死体の死因はなんだろう。
異能か?術か?横目で青空は状況確認しつつ、
ピリついた気配が全身から漏れている。
警戒だ。まだこの辺りに"犯人"がいるかも知れない。

「? 名乗られたら覚えてるでしょ、普通」

さも当然のように答えた。

「オレの事覚えてない?菖蒲だよ、芥子風 菖蒲。
 ……何かあったんじゃないの?それとも、さっき来た?」

もしかして、偶然事件現場に居合わせたのか。
その可能性も無くはない。ということは、
余計に危険な場所なのかもしれない。
だったら、一般市民の彼女を此処にはいさせられない。

「どうやって落第街(ココ)まできたかわかんないけど、
 とりあえず出ようよ。ココ、危ないからさ。外に出よう?」

ほら、と純粋な心配で彼女に手を伸ばす。
仄儚い底でさえ、青空は何も無しに受け入れるように見返していた。

比良坂 冥 >  
「……そうかな」

「……どうでもいい人の名前なんて、覚えてなくない…?」

場の空気にまるでそぐわない、淡々とした受け答え。
小さく首を傾げて、そう応える。

「……芥子風…菖蒲…」

ちゃんと、聞いた覚えたあった…かも知れない。
前も、この辺り(落第街)で会ったんだっけ。

「……そういえば、"この人達"に話しかけられたんだったかな…?」

「……邪魔だなって思ったけど、いなくなったし、いいかな…。
 ──前もそう言ってくれた気がする。どうして私に構うの?」

さも不思議そうに、昏い瞳は少年を見続ける。

──ざわり。
血の匂いに誘われてか、これも何かこの出来事に連なるものか。
擡げられた血肉を貪るために黒羽を散らし烏や、建物に住まう蟲が、集い始めていた。

芥子風 菖蒲 >  
「オレにとってどうでもいいって奴ってそんなにいないから、覚えてる。
 冥のことも、皆のことも覚えてる。あんまり忘れるなんて考えたこと無いかな」

自らよりも他人を尊重し生きる少年にとって、
周りとの縁とは大小関わらず平等である。
それが、他人(みんな)を侵害するような事象でなければ、
誰の上にも、青空は平等に広がっているのだ。

じ、と昏い瞳を見据える青空。
もしかして何だか、意識がハッキリしてないのか。
前はもうちょっと違ったような気もする。
何かが起きた、或いはされた。それは間違いなさそう。

「(ヤな気配だ……)」

「無理に話そうとしなくていいよ、ごめん。
 冥が話せそうな時に状況を話してくれればいいから」

ぞわりと肌をなぞる妙な感覚。
死臭に釣られて集まってくる蟲や鳥は、
此の肌に纏わりつく嫌な気配をより一層際立てる。
表情こそ、警戒中だから引き締めたまま、不思議そうに首を傾げた。

「なんで、って……オレがそうしたいから?
 誰かを守るのに、一々細かい事は考えたことないや」

守りたいから守る。
そのために誰かの前に立つ。
自分の位置は、既にそこ。他に理由はない。
行動理念は至ってシンプル。
早く行こう、と軽く手招きさえしてみる。
今は、とにかくここから離れるべきだと少年は考えている。

比良坂 冥 >  
「……………」

じぃ…を見つめる瞳の昏さは変わらない。
まるで少年の言葉の意味が伝わっていないかの様に。その色は変化を見せることなく──。

「……あぁ」

「……頭、いいんだね。私は、すぐ忘れちゃうから。
 とても大事だったものでも、そうじゃなくなったらすぐ」

どうでもいい人がいない、なんて。
大変そう、生きるのが。

「……?」

「……どうしたの? 謝って。
 ……何か、私に謝るようなことでも、したの…?」

どうしてもわからなさそうな顔をしていた、が───。

「……君が。したいから? ………私に構うのを?
 ………私に、そんなに興味でもあるの……?」

じとり。
昏い瞳に強い湿気が籠もる様な、そんな印象を与える。
…手招きされるように、一歩、遅い歩み出して少年へと続く、ついてゆく。

───その背後では、鳥葬にも似た光景が繰り広げられる。
   血肉も、骨までも、蟲に貪られ──彼らの生きた証すらも残さず朽ちてゆく

芥子風 菖蒲 >  
「別にいいワケじゃないよ。
 本当にどうでもいいなら、オレも冥みたいに忘れてると思う」

「オレ、一人じゃ生きられないからさ。
 皆のおかげで生きてるようなものだし、忘れられないよ」

少年は決して一人で生きていない。
多くの縁に繋がれて、助けられて立っている。
自らの生活能力のなさも自覚し、互いに支え合い生きる本質を知っている。
だから、全てが大事。それは、彼女も変わらない。

「ん、無理に聞いちゃ悪いでしょ。だから、謝った。
 冥の顔色悪いから、あんまり聞くのも……あ……」

後で回収しようと思った仏様。
"あ"っという間に自然の理に還っていく。
自分一人では回収できないし、彼女の安全を考えるなら尚更だ。
検死とかに回せるのかな、あれ。最悪魂だけ祭祀局に?

「…………」

でも、そんなに群がるのか。
あの畜生の群れだって、何処から出てきた。
そんな気配、何処にも──────……。

「……ん、うん。あるよ。冥がどんな人は興味ある」

ついてくる彼女に歩幅を合わせつつ、
何の躊躇いもなく答えた。
言葉に一切の嘘はない。全てが大事なら、当然彼女もだ。
青空はどこまでも昏い底にだって、広がっているのだから。

比良坂 冥 >  
「……そう、大変なんだね」

一人では生きられない。
不思議、じゃあ誰にも愛されなかったら、彼は死ぬのかな。
そんなことを思いつつも、少年の背後につく。

「……顔色?…いつものこんなものだよ。
 ……どうしたの?」

あ、なんて小さな声をあげる少年に首を傾げる、視線を終えば…凄惨極まりない光景が目に入る。

「……あれはどうでもいいものだから、気にしないでいいよ」

記憶からも、この世からも消えるもの。

「……私は」

「……私にしか興味のない人にしか、興味ない。
 ……芥子風くんは、そうじゃないね……?」

じとり、じとり。
言葉に宿る湿気が濃い。
夏も終わったばかりだというのに、梅雨の最中にいるかのようだ。

芥子風 菖蒲 >  
「大変だけど、そういうモンだと思う」

何かを背負って生きるって、元々そういうものだと思ってる。
だからこともなしげに答えてみせるのだ。

「……気にするよ。誰かが死んだんだから」

それは確かに名も知らぬ誰かであった。
菖蒲もどんな人物かしらない。
けど、どうでもいいはずがない
生命の終わりは、死は軽んじるべきものではない。
だから、不意に立ち止まった。くるりと振り返り、
一礼、一瞬の黙祷。今は急事である以上、
これが限界。その祈りが、せめて餞に成ればいい。

「……ごめん、いこ……、……?」

そう、足を止めた。振り返った。
意図せずして、昏と青が、重なった。
じとりと肌に纏わりつくような妙な湿気。
たじろぐような気配さえ、少年は一歩も退かない。

「ん?うん」

別に人の出す気配なんて、悪意でなければ個性のうち。
あっけからんと、頷いた。何一つ調子を崩さない。

比良坂 冥 >  
「……誰かが死ぬと、気にするっていうこと?」

眼の前の少年は、そういう人らしい。
どうでもいい人も、いないらしい。

どうでもいい人でない人が死ぬのは、余計に気になる…?

向き合った少年。
その少年の視界に映ったのは、感情の感じられない少女の顔。
──と、袖が少し余り気味の手に握られたカッターナイフ。

さん…ッ

そんな音がしたかどうかも怪しい。

少女が自分の白く細い首に、紅い線を走らせていた。
……表情すら変えず、少年の顔を昏い眼で見たままに。

ぱっと紅い華が散り、夥しい出血が制服を見る見る、紅く染め上げてゆく。
そして漸く──小さく、小さく、口の端に僅かな笑みに歪めていた。

どうかな。
これで、気になる女の子になったかな──?

芥子風 菖蒲 >  
「普通気にす────……!?」

不意に彼女の手に握られたカッターナイフ。
なんでそんなものを持っているんだ。
そう疑問に思う前に、空気が一瞬張り詰めた。
一瞬で爆発するかのように、鮮血が花開く。
白雪を染め上げる、嫌になるほど綺麗な赤。
青空が揺らいだ。滴る鮮血、濃厚の血臭。
動揺よりも、行動のが速い。

「冥……!」

ほぼ反射的な行動ではあった。
咄嗟に彼女へと飛びついた。
自身の衣服に血が飛び散るのも厭わず、
先ずは患部を強く抑えた。
衣服の袖を使い、強く、強く抑え込む。
手が、黒の衣服が紅に染まっていく。

「何してるの、ホントに……動かないで」

自らを傷つける意図が理解出来なかった。
だが、今はそれどころではない。
するりと背中か生える青い糸。
朗らかな晴天のように温かな光を持つ、菖蒲の異能。
それがするりと首に繋がれた。
太陽の陽のように温かな感覚と共に、
少しずつ、止血も、傷口の修復も早まっていく。
操作系の異能の応用。人の再生力を"操作"している。
手慣れた手つきではあるが、
彼女の意図に乗るかはさておき、夢中にはなっている。

比良坂 冥 >  
「……───」

眼の前までが血に染まる
頸動脈の位置は良く知ってる
死に這い寄られる感覚が心地よく、思わず笑みを浮かべていた。

「……これで特別になった?」

誰かの特別な存在で在ること。
誰かに興味を抱かれること。

──二人で血に濡れる。温かな命の雫に。

誰かの特別になれそう、なら。
手段を選ぶことしない、それを止める理性すらも、存在しない。
比良坂冥は、そういう(精神破綻者)だった。

「……」

昏い色の眼を細める。
ほら、この瞬間は私しか見ていない
それに、安心する。やって良かった。

彼の異能か、青い空を映したような糸によって傷が繕われ──。ほどなくして出血は収まるだろう。
……ぐら、と、失血で膝が揺れる。それでも少女は満足げに笑みを浮かべていた。

芥子風 菖蒲 >  
傍にいた以上、彼女が倒れないようにその体を支える。
曲がりなりにも武芸者の端くれ。
余りにも手慣れた手つきであったのが目に見えた。
頸動脈の位置も、どうすれば死ねるのか。
そう、自ら死ににいった。躊躇いもなく
当然驚きを感じるがそれ以上に……──────。

「……そんな事、しちゃダメだ
 自分で自分を傷つけて死のうしちゃいけないよ。
 オレ、今すっごい生きた心地しなかった。……大丈夫?」

それ以上に彼女を思い心配し、悲しんだ
少年は感情表現が下手なだけど、決して無感情ではない。
青空も哀しみに揺らぐ、失意に表情は曇っている。
でも、彼女が死ぬことはなかった。それだけは、安堵した。
するりと青い糸も、少年の体に引っ込んでいく。

「特別……?良くわかんないけど、
 自分を傷つけたり、死のうとしたりしないでよ。
 そんな事しなくても、冥が普通に生きてればずっと見てるよ」

その異常性を異常だと少年は理解できていない
良くも悪くも、他人に寛容的過ぎるのだ。
よもや、その自傷行為が自らの気を引くためとは思うまい。
もう、と心配はしつつも、やはりちょっと呆れていた。

「わかった?やめてね、ほんとに。
 ……辛いなら、オレが支えるから、頼ってくれていいよ」

抱き抱える準備は出来ている。
血の匂い(彼女の匂い)が、二人に満たされている。

比良坂 冥 >  
「……?
 ……どうして?
 ……私の命と身体、私のものなのに…?」

自分のものを使って誰かの視線を、気を引いてはいけない?
少女には、少年の心の機微はわからない。──わからないが。

自分を抱き抱え、紡ぐその言葉に嘘を感じられない。
本当に心配して、本当に気にかけてくれている。

「……そう、特別」

「……芥子風くんは、多分…誰にも優しい人だから、誰にもこうする。
 ……私を見てはくれるけど、私だけを見る人じゃない。」

「……こんなことをするのは、きっと私だけ。
 ──ほら、一分間も使わずに、君の特別になれた。」

簡単。
どこにでも売っているカッターナイフで、己の首に線を引くだけ。
試行錯誤して、誰かの気を惹こうと努力するより、よっぽど手っ取り早い。

「……辛い?何が辛いの…?
 ──私は、気持ちいいのに」

薄ら寒い笑みを浮かべたまま、自分を抱える少年の体温を感じる──。
落ち着く──、自分だけが独占できる空間は、それだけで乾ききった心を満たしてくれる。

ただ、それだけのために自らを血の海に鎮めたと、悦びを顕にしていた──。

芥子風 菖蒲 >  
小さく首を振った。
彼女を見下ろす青空は、今にも泣きそうだ。
少し揺れれば、雨も降るでしょう。
それほどまでに、他人のことに気にかけれる。

「違うよ、冥だけのモノじゃない。
 オレは冥が傷つくと悲しい。元気だと嬉しい。
 だから、一人だけのモノじゃないよ。だから、言って」

「自分を傷つけたくなったり、辛い時は頼っていいから。
 オレも言われたら冥の為に頑張るから、しちゃダメ」

人は一人では生きては行けない。
少年はそれを知っている。
だからこそ、自分がその"誰か"に成りたいと願っている。
どんな形でも支えに成れれば、それでいい。
それが生き甲斐。だから優しく、言葉が諭す。

「……?優しいワケじゃないよ。
 困ってる人を、見捨てれないだけ」

「それに、オレは冥が傷つくのも、悲しむのもイヤだよ。
 本当に気持ちいい……ようには見えないけど……ううん」

何かマヨ先輩の似たような感じ。
ベクトルはかなり違うけど、なんだろう。
此の妙な狂気的な感じが似ている。
傷つくことは痛く、辛い。少年はそう感じている。
だから、彼女の悦びが今一理解できない。
そういう風に感じる人もいる。そう考えると、
無碍に出来ない。うーん、と困り顔。
少し考えた後に、少年はそうだ、と自らの手を見た。
彼女の(におい)に塗れた、自らの右手。

芥子風 菖蒲 >  
 
              そして、何の躊躇いもなく舐め、噛み砕く
 
 

芥子風 菖蒲 >  
ごりっ、にちゅ。
生々しい音と、痛み。
骨が砕けて、鮮血が吹き出る。
雑多に噛まれた手はデロリと赤い肉が露出し、
絶え間なく赤い血液が右手から溢れてくる。
ぴくりぴくりと、痙攣する親指が項垂れる。
口の中で、彼女の(あじ)と自分の(あじ)が混ざりあい


ごくり


「……ん、冥って、こんな味か。あ、オレもか……んー……」

何気なしに呟くも、やはり表情は困り顔(アンニュイな)
純一無雑。彼女を理解しようとした上での行動。
その狂気的な行動、躊躇いのなさこそが菖蒲なのだ。

「やってみたけどオレはやっぱり痛いだけだ、ごめん。
 冥は……どうかわかんないけど、オレはイヤだから出来たらやめてほしい……かも?」

自らに行った事など、気にも留めない。
普段通り。変わらず彼女を心配する。

比良坂 冥 >  
───眼の前で血が爆ぜる。

「……?」

彼の、その自傷行為の意味はわからなかったが、
直後にそれが『好奇心』あるいは『理解欲』であるということが理解った。
──そう、眼の前の少年は自分を理解してくれようとしている。痛い思いまでして。

「……何を言ってるの?
 私は別に辛くもないし、傷ついてもいないし、悲しくもないけど…」

互いの血の香りに噎せ返る中、色を失ったような表情へと戻り、淡々と。

「……君には私のことはきっと理解できないから心配しないで。
 心配するだけ、無駄だから──」

別に構って欲しくないわけじゃない。
けれど、自分の全てを受け入れて、自分だけを見てくれる男の子でも、ない。
それなら───いらない、かな。

「──………あッ、あ、…ッ」

突然。
ばち、ばちッ…と音が鳴った。
血塗れの黒いチョーカー…監視対象に着用させられている、異能抑制装置だ。
──それが、火花を散らし、焼け焦げていた。

芥子風 菖蒲 >  
やっといて何だけど後から余計に痛くなってきた。
ズキズキしてくる。痛いには痛いけど顔に出すほどじゃない。
いってー、とこぼしながら軽く右手を振った。

「心配するよ。いきなり自分事を傷つける人、心配しないワケ……」

バチッ。暗闇に何かが迸った。
彼女の首からだ。首輪?チョーカー?
それが火花を爆ぜて、焼け焦げている。
何かの装置になっているんだろうか。
何となく、それだけで"ワケあり"なのは分かる。

「冥、大丈夫……!?」

言われた傍で、すぐに心配する。
無駄と言われようと、何を言われても、
自らを省みること無くそう言えるのだ。
ある意味では、その精神は人には遠い。

「怪我もしだんだ、病院にまで連れてくよ。待ってて……!」

拒絶されようとも、躊躇なく手を伸ばす。
よもや、拒絶されたとまでも思っていない。
そういう少年なのだ。青空は、誰に対してもその上に広がっている。
そこに昏い雲があっても、その上は青空なのだから。