2024/10/07 のログ
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)3」に夜見河 劫さんが現れました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)3」に比良坂 冥さんが現れました。
チンピラ >  
ある夜の落第街。
数人のチンピラが、必死になって路地裏を駆けて行く。
見れば、その全員が大なり小なり怪我を負っている。
中には鼻が潰れて鼻血が止まらない者までいる始末。

互いに何かしら罵り合いを続けながら、チンピラ連中は必死に走って「何か」から逃げ続けている。
その何かが何なのか、逃げる先に何があるのか…それはまだ、分からないまま。

罵り合う声と、ドタドタと走る音だけが響く。
 

比良坂 冥 >  
落第街の路地裏。
適当に、声かけてくる暇人でもいるかなといつもどおりの少女。
打ちっぱなしのビルの壁に背を預け、手元で手帳をに視線を落としている…と。

にわかに、辺りが賑々しくなる。

「……?」

ちら、と視線を向ければ…血相を変えてこちらに走ってくる数人の…柄の良くない者たち。

……まぁ、この街じゃ別に珍しくもないことか。
なんて淡々と頭の中で片付け、自分には関係ないかなと視線を戻す。

チンピラ >  
そんな少女に気付かない程焦っていたのか、走って来たチンピラの一人が
少女にぶつかるような位置取りになってしまう。
衝突するかしないか、いずれにしても。

『テメェ、何処に目ぇ付けてる!
ボーっと突っ立ってるんじゃねぇ!』

そんな怒声が当のチンピラから。
非があるのは、少女よりも前方をしっかり確認していなかったチンピラの方なのだが、
そんな事はお構いなしといった雰囲気。
そうして怒鳴りつけてるのを見た他の連中が脚を止め、やはり怒鳴り声。

『バカ、何やってんだ! とっとと逃げるぞ。』
『だけどこのガキが…!』
『知るか! モタモタしてたらあいつが――――』

そんな言い争いを続けていたせいで、チンピラ連中が逃げていた相手が、姿を見せる。
 

夜見河 劫 >  
「……勝手に逃げるなよ。そっちから喧嘩売っといてさ。」

その声と共にゆらり、と現れたのは、顔を包帯巻きにした、灰色の髪の男。
包帯の間から覗く瞳は、勢いよく燃え上がる、どす黒い炎のような色を見せている。

右の拳には、少しの血。
怪我ではなく、殴った拍子についたと思しい血の跡。

少し状況を考えれば、すぐに話は見えて来る。
この男が、チンピラ連中を追い回していた犯人だと。

――昏い目の少女が、灰色の髪の男について何か知っているかは、また別の話。
 

比良坂 冥 >  
「……痛…っ」

呆けていたわけではないものの、走ってくるチンピラ達を避けられるわけもなく。
突き飛ばされ、そのまま地面へと尻もちをつく格好に。
手にしていた手帳が転がり、視線はそっちへ。
チンピラ達が何か怒鳴り、喚いていても何処吹く風だ、そちらを見ようともしない。

ぼうっとした様子のまま、チンピラ達にはさして興味も示さず、ゆらりとあられた人影へと、ゆっくりとその暗い視線を持ち上げる。

…‥この人がどうやら彼らを追い回していた、らしい。

自分に興味を持つ相手にしか興味を示さない少女が、その灰髪の青年を知る筈もなく──。

チンピラ >  
『あ、ああっ……!』
『やべぇよ、やべぇ……!』
『ちくしょう、ついてねぇ…!』

現れた相手を目にした瞬間、あっという間にチンピラ連中は恐慌に陥る。
数の有利がある筈の連中が、そこまで恐怖する程に追い詰められたのか、あるいは他に何事かあったのか。
恐慌状態で、「逃げる」という選択肢が頭からすっかり抜けて落ちたチンピラ連中は――

『――っ、おい小娘、立てっ!』

尻餅をついている少女の腕を強引に掴んで立たせ、素早くポケットを探ると
金属音と共にバタフライナイフを取り出し、その刃を少女の頬に当てにかかる。

『――動くな、動くなよ!
動いたらこの女、どうなっても知らねぇぞ!』

――取った行動はある意味最適、人としては最低。
つまり…関係のない第三者を人質に取る。
 

夜見河 劫 >  
それを目にして、灰色の髪の男は小さく舌打ちをする。

「……のんびり追っかけてたのが悪かった。
引き延ばさないで、とっとと潰せばよかった。」

言いながら、握り締めていた両手から力を抜き、その場に棒立ちに。

その様子を目にした残りのチンピラ共が、引き攣ったような笑い声を立てながら、
ぎこちない足取りで灰色の髪の男を包囲しにかかる。

――そして、まず一人がその顔に目掛けて拳を一撃。
激しい殴打音が、響く。
 

比良坂 冥 >  
「……? あ……」

あれよあれよという間に引き起こされ、頬に冷たい感触…。
現れた彼から逃げるために、人質としてちょうど良かったらしい、けど。

「………」

少女は全く動じた様子もない。
ただ、急に無防備となり一方的に殴られた、その青年を見て。

……ああ。
この人、私のことを気にして、手が出せないんだ。
私なんかの為に、殴られて、痛そうな音がしてる。
別に、気にしなくていいのに

「………」

視線を落とす、頬の辺りに鈍い光…押し当てられたナイフが見える。

ひた、と…。
ナイフを持ったチンピラの男の腕に少女の冷たい手がかかる。
それに男が気づいた時には。

とすん。

ナイフが滑り込むようにして、少女の細い首へと突き刺さっていた。
──…これで気にすること、なくなった?とでも言いたげな暗い視線が青年へと向けられる。

…白刃を伝い、赤い雫が少女の白いシャツを赤黒く、染めていく。

夜見河 劫 >  
『………あ?』

灰色の髪の男が殴られているその最中、最初に響いたのは、少女を人質に取っていた…筈の、チンピラの声。
人質の少女が、手を取って……ナイフが、その首に刺さっている。

『な、この女、狂って――――』

瞬間。
今までの殴打音よりも一際激しい音が数発響き。

「……………。」

目を向ければ、囲んでいた筈の連中は悉く地面に突っ伏して、何処かしらを抑えながら呻き声を上げている。
その中心に居る、殴られ続けていた灰色の髪の男が――顔の包帯を血塗れにしながら、
ナイフを自分から首に突き刺した少女に、燃えるような眼を向けながら、一歩、踏み出す。

「……何考えてんの。」

何処か、怒りのようなものを感じる一言。それだけを言葉にして、這い回るチンピラを足蹴にしながら、もう一歩。

『ひ、ひぃ……!』

思わずバタフライナイフごと、人質を放してしまったチンピラに向けて、更に一歩。
どす黒い瞳が、氷のように突き刺すような視線を向け、


「――――お前は、『思い切り殴ってもいい奴』だ。

 

夜見河 劫 >  
少しの時間の後。
顔が原型をとどめない位にぐしゃぐしゃになったチンピラを放り出し、
灰色の髪の男は昏い目の少女に腕を伸ばす。

「……ホントに、お前、何やってんの。
俺が何言ってるか、聞こえてる?」

何とか抱えようとしながら、そう声をかける。
 

比良坂 冥 >  
「……? 何、って」

「……私が刺されそうだから、手を出せなかったんじゃないの?」

だったら、刺されてれば、手を出せるよね。
そんな、単純な思考。

自らの手で首を抑えている、が…鮮血はまだ溢れている。
喉にまで達していないにしても、浅くはない傷だ。

だというのに、少女は痛がる素振りすら見せない。

「……」

「……余計だった?」

首を傾げる。…ちょっと痛んだ。

夜見河 劫 >  
「――あそこは、俺が黙ってればよかった。
引き上げてく所を、お前を捕まえてた奴をぶん殴って真っ先に黙らせれば、それで済んだ。」

気が晴れるまで自分をぶん殴っていれば、そのうち引き上げて行くだろうと読んでの判断。
相手が相手である、おまけに目の昏さは兎も角、顔立ちはいいと思える相手だった。
「お楽しみ」に持ち帰ろうと油断した所に背後から不意打ちをかければ、一番安全に助け出せる。

「動くなよ。血が止まらなくなる。
……くそ、こんなのしかない。」

悪態を吐きながらブレザーの内ポケットから取り出したのは、ハンカチと、自分が使っている包帯。
応急処置程度にはなるか、と、殆ど使われていないハンカチをガーゼ代わりに、
少女の首の傷に包帯巻きをして止血を試みる。

散々殴られて血を流していた灰色の髪の男だが、そんな合間に流れてくる血はいつの間にか止まっていた。
 

比良坂 冥 >  
「……その間いっぱい殴られるのに?
 もしかして、マゾヒストだった?」

…もっと殴られたかったのかな。
だとしたら、ちょっと悪いことをした。
目の前の青年の算段なぞ理解る筈もなく、ただ暗い眼が、彼の瞳を覗く。
……変わった瞳。

「……」

別に痛みも出血も慣れてるし、どうせ死なないと思って入るけど。
とりあえず言われた通りにする……。
もう血が止まっているし、なんでそもそも包帯まみれなのかとか色々あるけど。
…まぁ、落第街だし、へんなのは数えてたらキリがない。

夜見河 劫 >  
「…殴られて感じたりはしないけど、生きてる実感は持てる。
相手をぶん殴ってる方がずっと強いけど。」

そんな事を言いながら、何とか応急手当を終わらせる。
とはいえ、所詮は応急。随分血が流れたし、もっとしっかりした手当をしないと危ないかも知れない。

どす黒い瞳が、昏い瞳を覗く。
何処か自分に似ているけど、何かが違っている、そんな瞳。

「……応急手当はしたけど、しっかり手当しないとまだ危ないかも。
少し歩くけど、寝床にしてるとこがある。其処ならもっとしっかり手当出来る。

立てる? 危ないなら、背負ってくけど。」

無理に立たせる事はせず、まずは訊ねる。
そう言えば何か落としたっけ、と思って目を巡らせると、手帳が少し離れた所に。
止められなければ、拾って渡す事にしよう、と。
 

比良坂 冥 >  
「……生きてる実感? …ヘンなの。人のこと、言えないけど」

交わされる、暗い視線と昏い視線。
ヘン、という意味では似てる…かもしれない。

「……大丈夫、こんなの、よくあるし…。
 多分、死ぬこともないし……」

立てる?と聞かれれば、緩慢な動きで立ち上がる。
…失血でそうなっているわけでなく、元々鈍い。

「……キミ、優しいのに、人を殴らないと生きてる実感持てないの?」

そんなことを訪ねながら、拾ってもらった手帳を受け取る。
とてもか細い、ありがとうという小さな声でお礼が聞こえた。

夜見河 劫 >  
「……優しいわけじゃない。
お前は多分、「殴ったらダメ」な相手。」

小さく息を吐きながら、そう一言。
周囲に転がっているチンピラ連中を見下ろし、また一言。

「……こいつらは、俺の主観だけど、「殴ってもいい奴」。
普通に学園に通学してる相手に手を上げたりとか、危ない薬売ってたり、まっとうな真似をしてない奴ら。
風紀委員にまともに顔を向けられないような、奴ら。

そういう奴らをぶん殴るのはいいけど、それに「殴ったらダメな相手」を巻き込むのは、嫌なだけ。」

小さく、そう一言。

「……だから、今のは、俺が悪い。
ダラダラ引き延ばしたりしなかったら、お前が捕まって痛い目に遭う事もなかった。

……ごめん。」

そう、小さく謝りながら、肩を貸そうとする。

「死ぬ事がなくても、俺の気が済まないだけ。
肩、貸すよ。歩くの、楽になる筈。」

ヘン、と言われた事には、軽くため息。

「普通は変だと思うよ。人を殴らないとそんな実感持てないとか。

……あんまり言いたくないし、言ったらまずいけど、異能の副作用。
傷とかの治りが凄く速い代わりに、生きてる実感がない。
誰かに殴られたり、誰かをぶん殴ったりしないと、充実感…っていうのかな。
そんなのが、感じられない。」

そう言いながら、嫌がられなければ寝床の部屋に連れて帰るつもり。
自分のせいで怪我をした「殴ったらダメな相手」を放り出すのが、嫌な性分だった。
 

比良坂 冥 >  
「……私が勝手に怪我しただけなのに、謝られても」

ほとんど表情の変わらなかった少女が僅かに眉間を寄せる。
困っている…のかもしれない。

「……殴っていい相手とダメな相手がいるの、よくわかんないけど…」

ぐ、と肩を持ち上げられる。
あ…この人、わりとマイペースだ。

「……ヘンだとは思うけど。
 別に、ヘンなことが悪いわけでもないし」

それを言うなら、自分もヘンだし。

特にやることもなかったわけで、どこかに連れて行かれるなら、きっとそんまま…。