2024/10/08 のログ
夜見河 劫 >  
「ま、殴っていい奴とダメな相手ってのも、俺の主観。
学生街に住んでたり、学園にまともに通ってそうな相手は、殴らない事にしてる。
それでも、風紀には目を付けられちゃってるけど。」

そんな事を話しながら、少し歩いて到着した先は、コンクリートが打ちっぱなしの外壁が特徴の、小さめのアパート。
部屋はあまり広くないが、風呂トイレ別、小さなキッチンまである、割合まともな一室だ。

「座ってて。手当の道具、持ってくるから。
……後、何か飲みたかったら、水くらいだけど、ある。
ここの水道は、飲むのにはあんまり良くないけど。」

連れて来た少女を小さなソファ…少々安物だが…に座らせると、自身の顔の包帯を解いて捨てながら、
手当の道具を持ち出しにかかる。

よく見ればゴミ箱には包帯が結構捨てられている。
いずれも血で汚れて、所々が黒ずんでしまっている。
 

比良坂 冥 >  
「………」

彼のアパート…についてきてしまった。
座ってて、と言われたので言われたとおりに、周囲を眺め回す。

感じるのは、ちゃんとした生活感。
狭くとも此処に青年が住んでいるのだということが理解る。

「……手当は…もう大丈夫、だと思うけど」

言いながら、自分の首に触れる。
ぬるりと指先に感じる、血潮。
……まぁ結構深く刺さったし治ってるわけはなかった。

──…ともあれ。

あたりの様子を眺めまわしながら、彼が戻るのを待つ……。

夜見河 劫 >  
何と言うか、生活感が今一つ感じられない部屋、かも知れない。
冷蔵庫と電子レンジはあるが、他に目立った調理器具の類はない。
後は座卓にクッション、備え付けと思しい机に少し大型の一人用のベッド。PCどころかテレビすらない。

「……お待たせ。」

そう声がする方向に、救急箱を手にした灰色の髪の男の姿。
顔の包帯を外しているので素顔が分かる。
顔は良いタイプだが、あのどす黒い瞳のせいで顔を合わせれば「怖い」という印象が強い方だ。

「……服。あんまり血がかかると大変だと思うけど。
気になるなら、そのままでいいけど。」

言いながら、手際よく消毒液やらガーゼに包帯やらの準備。
常時型の治癒異能を持つ割には、怪我の手当の手順は悪くない。
あるいは、「巻き込んだ相手」に対する対処の為に学んだ、のか。
 

比良坂 冥 >  
「……いいよ。制服、よく汚れるし」

あまり生活感の感じられない部屋。
娯楽のごの字も見当たらない。そんな部屋だ。

「──……あぁ、でも」

しゅる…。絹擦れの音。

元々着崩していた制服を、払い落とすように脱ぎ去る。
特にそこに葛藤も、迷いも、何もなく。表情すらも変えずに。

…但し。

シャツだけでなく、するりと──下着までも払い落とす。
スカートの下から、ショーツまで。

なぜ?
部屋に連れてこられた、ということは
そういうことかな、と思ったから。

夜見河 劫 >  
「そう。それじゃ――――」

と、そこまで口にした所で、硬直。
目の前には、するりするりと制服を脱ぎ去っていく昏い目の少女。

(………そこまで脱げって言った覚えないけど。)

沈黙。
あっという間に、目の前には一糸まとわぬ少女の姿が。
少し、考える。

「………あ~。」

「そういうタイプ」は、落第街だと割かしよく見かける。
ただ、大体はお金目当てだったり、違反部活辺りで働いてたりする事が多かった。
そういった手合いは、もっと見た目が派手だったり、誘い方が露骨だったりした、と思う。
と、なると……もうちょっと考えて、それらしい結論が出る。

「……「そういうコト」をしてないと、不安になるタイプ?」

そう訊ねつつも、手当の用意の方はしっかり整える。
ちょっと考え込んだせいで目つきが悪くなったように見えたかも知れない。
ただ考え込んだだけで、機嫌を悪くしたりはしていないが。
 

比良坂 冥 >  
「……? 部屋に連れてこられたから、そういうコトかと思って」

違うの?とじっと眼を見る…。
気恥ずかしさや、羞恥心はまるで感じられない。
場馴れしてる…とでも言うべきか、全く動じることなく。

「……不安…っていう程でもないかもだけど」

今は、依存する相手がいるから。

「…………」

「……もしかして、本当にそんな気なかった…?」

夜見河 劫 >  
「うん。」

素直に一言。全く考えてなかった、という様子。
その後、少し考えて、

「……まあ、納得いかないとか、そういうなら、俺はいいけど。
ただ、そういうの、あんまり上手く…そう、気持ちよくさせられるか、自信はないよ。」

これまたあっさりと、生々しい発言を。
経験があるんだかないんだか。

「……ま、どっちにしても、」

そう、どちらにしてもまずは大事な事。
用意した手当の道具を手に取り、

「傷の手当、してからね。」

そう、一言。
事に及ぶにしろ、しっかりと手当てをしてないと出血が危なくなったら色々困るだろうから。
 

比良坂 冥 >  
「……そっか」

じゃあいいか、と外されたブラを身に着け、ショーツを履き直す。
…ブラにも少し血はついていたけど、黒なのでまぁ目立ちはしないか。

「……傷の手当、慣れてるんだね」

なんとなく、青年の手当てを受けながらそう呟く。
出血は多かったけど、失血らしき症状はない。
顔色が良くないのは…元々だろう。

「……何もなしに部屋に連れ込まれたこと、そんなになかったから」

夜見河 劫 >  
「……さっきも言ったかもだけど、俺だけが怪我するなら兎も角、
関係ない相手まで巻き込んで怪我させるのは、嫌だったからね。

女の子巻き込んじゃって、お前と似たような反応で返された事もある。

染みると思うけど、痛かったら俺の肩とか首とか、爪立てていいから。」

下着を着直した少女にそう言いながら、傷の手当に入る。
応急処置の包帯を外し、手際良く傷を消毒液で消毒。
止血テープで傷を開かないよう固定したら保護フィルムを貼って保護。
最後の仕上げに包帯を巻いて、出来るだけ目立たないようにしておく。

「――はい、おしまい。」

最後の仕上げを終えると、そう声を掛ける。
首や肩辺りに爪を立てられたとしても、動揺も見せずに手当をやってのけた。

「……腕。」

そして、もうひとつ。
昏い目の少女が服を脱いだ際に、ばっちり目に入ってしまった、腕の切り傷痕。

「…痛くない?」

咎めるでも、同情するでもなく。
切った時に、痛くなかったかとだけ、訊ねる。
 

比良坂 冥 >  
「……やっぱりマゾ?」

爪立てていい、なんて言われたらまた同じことを聞く。

「……大丈夫。痛いのは慣れてるし。……ありがとう」

手際よく治療された、首へと触れる。
包帯の手触り、痛みは…当たり前のようにあるけど、問題ない。

「……? ……あぁ、これ……」

なんのことだろう、と一瞬わからないような表情を浮かべていたが、
ああ…と、アームカットやリストカットの痕のことだと気がついた。

「……どうだったかな。 最初は痛かった、かも…?」

「……二回目、三回目になると、同じとこだと血もそんなに出ないし。平気」

下着姿のまま、立ち上がって、払い落としたスカートを履き直す。

「……ホントにしなくて良かったの?
 …お礼、出来ること多分それしかないけど。…お金もないし」

光を灯さない瞳。
じっ…湿り気を帯びて見つめる眼は、何処までも深く昏い。

夜見河 劫 >  
「痛いのがある程度平気なだけ。
異能もあって、殴り合いし続けてる間に、多少の痛み位は気にならなくなった。
…ホントはあんまり良くないんだろうけど。」

マゾである事は否定。
最も、平気で殴り合いに飛び込んで殴られているのだから、まともじゃないと思われるのも仕方がない事。

落第街暮らしだと、それこそ色々な相手と遇う機会がある。
腕に傷のある、所謂二級学生らしい女子を見かけた事もあった。
そんな中でも、昏い目の少女の腕の痕はかなり目立つ。
そうして、彼女の方の返事を聞けば、少し考えて、

「…手当。
必要になったら、また来なよ。なるべく、痛くしないようにしとく。」

最初は、巻き込んでしまった後ろめたさから、だった。
そちらの手当さえしてしまえばもう充分の筈。
――自分でも、何を言ってるのだと思いたくなる。

(……アレかな。やっぱり、あの「眼」を見たから、かも。)

自分と何処か似た、だが違う瞳。
あんな瞳をした者を見た事が殆どなかったから、気にかかってしまったのか。

「別に、ホントにお礼とかそういうの期待してた訳じゃなかったんだけど――――」

少し考えながら、口を開く。
……最初に追いかけてた連中を、結局は怒り任せでほぼ一撃で潰したせいで、半端に燃え残りがあるのか。
それとも、これも何かの「気の迷い」なのだろうか。

「――そうだね。
お礼とか、そういうのとか抜きで、ひとつ。

名前、まだ聞いてない。
抱く相手の名前位は、知っておきたいし。」

す、と、暫く前はチンピラを叩きのめし、少し前は少女の傷を塞いでいた手が、少女の頬に伸びる。
昏い瞳を見返すのは、何処か燻ったような、しかしどす黒く燃えるような、黒い瞳。
 

比良坂 冥 >  
「……そうなんだ。似てるね、私と。
 私も自分で自分の身体を刻んでるうちに、痛みあんまりわかんなくなったよ」

自傷癖を口にする少女。
目の前の相手とは…どことなく、あくまでも、どことなく。
自分と似ている部分があるようには感じていた。
そんな彼から、また来ても良い、なんて言葉が続けば少し眼を丸くして…。

「……もしかして」

「……私に、興味…湧いた?」

じ…。
深まる、瞳の闇。
陽光すら吸い込んで逃さない黒体の様だ。

「……比良坂、冥。──覚えても、覚えなくても良いよ」

どうせ、いつかは
いなくなる。

頬に触れられ覗き込まれる瞳…似て非なる、深淵。

夜見河 劫 >  
「そっか。」

自傷を繰り返すうちに、痛みが分からなくなっていった昏い瞳の少女。
殴り合いに身を投じ続けるうちに、痛みが気にならなくなっていったどす黒い瞳の男。

己に向かうか、他者から受けるか。
その違いはあれども、何処か、似ている所はある…のかも知れない。

「…そうだね。きっと、興味だと、思う。
殴る相手も含めて、誰かの事なんて気にした事、碌にないのに。」

自分でも、少し不思議そうに。
灰色の髪の男はそう返事を返しながら、そっと…壊れ物を扱うように、少女の頬を指でなぞる。

「冥…冥、か。うん、覚えとく。」

覚えなくてもいい、と言われた傍からこんな返事。
自分でも、おかしい事を言ったかな、と思う。

「――夜見河、劫。俺の名前。
覚えててもいいし、覚えなくても、まあそれはそれで。」

名前を聞いた以上は、こちらも名乗らなくてはフェアではない。
付け足した言葉は、我ながらひねくれてるな、とは思う。
 

比良坂 冥 >  
覚えなくてもいい、って言ったのに。

興味。
興味の対象となっている。
じゃあ、この人にとって今、自分は存在している。

「劫。 ……覚えた」

頬を撫でられれば、僅か、擽ったそうに目を細め──。

昏かったその瞳に、熱が灯る。
冷たさを感じる白磁の肌にも朱が差し、どこか、艶めいてすら見える───。

「──、えっちしたいな」

「キミのこと、劫のこと、もっと知りたい」

夜見河 劫 >  
「…そう。」

ストレートな言葉に、返されるのはシンプルな答え。

「なら、冥の事も、知りたい。
俺ばっかり知られるのは…何か、ずるい。」

どす黒い瞳が軽く細められ――頬を撫ぜる手が、するり、と少女の腕に伸びる。
数人のチンピラを叩き潰した腕とは思えない、穏やかな力加減でそっと手を引き、部屋に一つきりのベッドへ。

「……さっきも言ったけど、気持ちよくさせられるか、自信ない。
それだけは、本当にごめん。」

そんな、ムードのない言葉を口にしながら、自身が受け止めるような形で、
腕を引いてきた少女の身体を、ベッドに倒れ込みながら抱き留める――。
 

比良坂 冥 >  
「───」

細められた昏い瞳が熱に蕩け、揺れる。

「……教えてあげてもいいけど」

「……私から、逃げないでね

はじめて浮かべる、少女の笑み…。
可愛らしいように見えて、どこか薄ら寒い。
退廃的な爛れへ誘うような──そんな笑みだ。

「……いいよ」

「……繋がってるだけで、温かいから───」

ぎ…、と寝台を鳴らして…沈み込む。
深く昏い、水底へ───溺れるのは、繋がりの海。

逃げないでね。

少女の声が、反響するように、思えた───

夜見河 劫 >  
「――逃げないで、か。」

逃げる。果たして、今まで逃げた事があっただろうか。
……敢えて、自分が「逃げる」事があるとすれば、

「……いいよ、逃げない
…ただ、もしかしたら俺も、逃がしたくなくなるかも、だけど。」

軽く、口元が緩む。
どす黒い瞳を抜きにすれば、どことなく子供っぽさが見えそうな、雰囲気。

「…そ。なら、来なよ――――」


そうして。互いが互いを抱きながら。
まるで溺れるような一夜は、更けていく。

――逃がしたくなくなる。

漏れ出る空気のような言葉が、事実になるかは――分からない。
 

ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)3」から比良坂 冥さんが去りました。
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