2025/01/21 のログ
ご案内:「Gibson House 201」にネームレスさんが現れました。
ご案内:「Gibson House 201」からネームレスさんが去りました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)3」にネームレスさんが現れました。
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■ネームレス >
湯上がり。一日のタスクを終えて、自己と向き合う時間。
スリッパをぽすぽすと鳴らして歩き、ソファに休めたネコマニャンの頭をそっと撫でてから隣に腰掛ける。
冬ともなれば日の入りが早く、カーテンの向こうの居住区の空はもう真っ暗だろう。
搾っておいたオレンジジュースを用意して、火照った体に栄養と水分を補充しようとして。
「―――ん」
学生手帳――プライベート連絡用のアドレスにメッセージが届いていることに気付いた。
ソファにもたれかかりながら充電用の台座からつまみ上げると、差出人に眉根を寄せる。
「……椎苗からなんて珍しい。なんだろ」
ルーズリーフとペン――アナログの筆記具とヘッドフォンからは、
ひとまず眼を離して、添付されたファイルを確認した。
今の時代、ビデオテープを介さずとも、映像を私的に送付することは容易だ。
――便利になったものだ。
再生。
■ネームレス >
「!?」
驚きに黄金の眼を瞠られる。
護衛を依頼している少女の艶姿が不意打ちで飛び込んできたのだ。
心拍がドクドクと乱れたが、背景のカーテンや照明の佇まいで何が起こったのかを理解する。
「ははーん……」
着せ替え人形にしたくなる気持ちも、わからないでもない。
素材は良いのだ。色々おすすめはしてるけど、本人の動きは鈍い。
決して着飾ることに興味がない――というわけでは、なさそうなのだけれど。
経済的にも、精神的にも、そちらに気を回す余裕がないようだから。
麗貌に苦笑を浮かべて、火照った体に毒だった映像を改めて吟味しながら。
ひとまず、差出人には――こう返しておこう。
――――『ごちそうさま』
一言、テキストでお礼は言っておく。
さて。
「…………感想は言ってあげるべきかな?」
本人にも。
楽しそうに唇を緩めながら、少し考えて……。
■ネームレス >
『どれもよく似合ってたよ』
出し抜けにそう伝えられるテキストのあと。
『キミ自身が、いちばん良いと思ったのはどれ?』
からかう言葉ではなく。
彼女があらためて振り返って、これと思うもの。
あるいは、自分が選んだもの――それを飾りたいと思った感情。
服装は、自己表現と対話と考えている。
『こんど、教えてくれる?』
表現方法は、どうぞご随意に。
端末を持った腕を前方にのばす。
フロントカメラを起動し、撮影。
■ネームレス >
一枚目。
シャワーあがりの、濡れた流血色が張り付く。
火照った肌、まっすぐカメラを見つめる艶めいた視線。
唇にはうっすらと、意味ありげな笑みを貼り付けていて。
だらしなくくつろげたガウンの襟元に、鎖骨の窪みが覗いた。
ニ枚目。
指がかかって、アップになった開かれた胸元。
形のよい丘陵の描く谷間が、曲線が。
そのうえを這う、長い指先が、火照った肌のうえに手の影を落とす。
三枚目。
引き締まった細腰。腹筋の段差が浮かぶ。
黒く染められたシルクのナイトガウンに、
いやらしく際立つ白い肌、臍の窪み。緩められた帯までが。
添付されたファイルは、アップショットの視点を、少しずつ下降されていった。
このまま、そう、このまま――写真は、四枚添付されていた。
四枚目。
―――、
■ネームレス >
四枚目、アップになったネコマニャンのぬいぐるみが写っている。
物語性と連続性のある三枚から、突然脈絡もなくあらわれる。
まるで自主規制のような。
クリスマスに、デビュー祝いのようなタイミングに贈られたものだ。
さて、どんな気持ちでこれらを視ているかな。
そんなことを考えながら、ふたたび台座に戻す。
「着たがるモノだと思うんだケド、みんなそーでもないらしい」
幼少の頃、それこそ楽器やCDだけではなくて。
服も欲しくて、お洒落をしたくて、しょうがなかったものだけれど。
素敵なものはだいたい高価で、ショーウィンドウ越しの別世界だった。
いまは――――。
■ネームレス >
「……………」
若者はみんなファッションに夢中になる――なんていうのは昔の話なのか。
個性、表現――異能、という可視化された才能によって、
ファッション自体が、かつてよりも下火なのかな、なんて。
良い素材を持ってるくせに、着飾りたがらないやつが、知り合いには存外多い。
「……こんど、あいつ自身に選ばせてみるか?
贈ったリボンもなかなかつけてくれないし。
似合いの揃えでも、あいつの感性に問うてみるとか……」
着たいもの、表現したい感情、示したい帰属、その他諸々。
他人に見せる自分の姿。それを考えて、気を遣わなければいけない部分。
気に入りの白いトレンチに視線を向ける。
また、黒いアウターも見繕おう。さいきんは常渋にも足を向けていない。
もちろん、彼女の人生にとって服装は――本旨ではないかもしれないけど。
自分で選んで飾る行為。それはとっても、創造的だと思う。
「ま、今回のファッションショーで多少抵抗も薄れただろう」
楽しみが増えた。
オレンジジュースで渇いた喉を潤して、さて、自分に向き合おう。
ご案内:「Gibson House 201」からネームレスさんが去りました。