青垣山のたもと、鬱蒼とした林に埋もれるようにひっそりと居を構える診療所。
大掛かりな手術などが出来る設備は無いものの、一通りの医療設備は揃っている……ものの、
経年劣化が進んだ古びた建物にどこか薄暗い雰囲気、人口密集地から離れた立地と、全く商売っ気が無い
院長の腕は良いと噂であるが、院長の姿を見たと言う人間は少ない
実入りは少ないだろうに、経営が傾く様子もない、と不審な点は枚挙に暇がない
『患者で満員御礼の大病院よりかは縁起がいいだろう?』
元より患者も少なく、従業員が居るかも疑わしい寂れた診療所。
だというのに、気付くと珍しい病気の人間が入院していたり、路地裏で刀傷沙汰でも起こしていそうな人間が転がり込んでいる。
こんな辺鄙な場所で経営が続くはずがないという想像からも、ひとりでにある噂が流れていた
この病院は、自ら患者を呼び込むのだ、と。
傷付いた人間が、未知の病に苦しむ人間が、真っ当でないモノに救いを求める時、ふとした瞬間に扉が開くのだ。
万年床に就いた女がふと窓を覗いた時。
命からがら逃げ惑う男が曲がり角を曲がった時。
あるいは、ただ迷い込んだ子羊が途方に暮れた時。
有り得ざる『道』が此処へ繋がるのだと。
『浪漫はある話だがね。事実、私も選り好みする質だとも』
開店ガラガラ、戸締まり適当、薬品の棚にも鍵は無し――と防犯意識ゼロ。
だというのに、色んな所から人が来ることだけは事実らしく、医薬品だけ拝借していくようなちゃっかりした者も。
しかし、気づけばいつの間にか薬品は補充されているとか。
院長は酷く気まぐれで、患者を放って寝こけていることのほうが多い。腕が良いことだけは事実らしいが……
『珍妙な体質やら奇病以外は興味が無くてね。ナイフで刺されただの面倒なだけの難病だのは自分で治してくれたまえよ。薬ならそこらにあるだろう?』
名前 | 役職 | 備考 |
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鳳 久留里 | 院長 | 大仰な口調で喋るが、女性。稀に出没する。稀に。医者としての腕は確からしいが、気に入った病気と体質の人間しか診ない |
藤白 真夜 | アルバイト | 「いつの間に迷い込んでて、いつの間にか働かされてました……」本人のやる気は一応あるものの、受付くらいしか出来ていない |