青垣山内にて未知の怪異を発見、これを討滅。
紅葉を纏い、それを自在に操る魔なる者として紅葉鬼と命名。
被害は出なかったものの危険な性質と致死性を持つため、研究の進行と危険の回避のため詳細を記す物である。
赤黒い靄のようなものと紅葉の入り混じった、おおよそヒトの形をしている。
赤黒い靄は呪いと瘴気の凝縮されたものであり、それらと紅葉を操る核になるような存在があると思われる。
鬼と名にあるが、一般的にイメージされる鬼とは姿が似ていないことに留意。
『境界』
紅葉鬼は在る種の結界のようなものを展開出来るらしく、その中に迷い込んだモノを狙う。
結界内部は外部と隔絶されるわけではなく、縄張りのようなものと思われる。
紅葉鬼本体の“気配”と言ってもよく、霊的感覚のある者なら不吉な予感と生命への怨嗟を感じられるだろう。
『掌握』
紅葉を霊力で自在に動かし、それらにより巨大な掌を作り握りしめる攻撃を行う。
身に纏った、あるいはその場にある紅葉の量にもよるが、耐霊術式または物理強化の無い装備だと致命傷を負う。要警戒。
植物に依る攻撃、と見るのではなく、質量を持った霊体に依る魔力攻撃と判断すべき。
『炎上』
紅葉を霊力で燃え上がらせ、それらによる炎の掌の攻撃を行う。
怨念の籠もった呪いの炎であり、通常の炎ではない。人間、動物のみを燃やす炎であり、樹々や無機物は燃えない。
その分、一度人間を燃やすと消えづらく、長く燃え残る危険な炎である。
呪術の類であるため、護符や祈祷、祈りによる対処が望ましい。
赤黒い靄の霊体、纏わりつき中に詰まっている紅葉、と二つの要素を持つが、実体は別にある。
中にそれらの中核となる物体が確認されており、それこそが本体であり核なのだと推測される。
そのため核以外への攻撃は効果が薄い。
核は強い呪いと魔力を帯びており、物理的な干渉は受けにくいと判断される。
が、報告される討滅例によると刀による一撃で破壊されたとある。これが特別な刀によるものなのか異能によるものなのかは不明。
神秘性の宿る物品による攻撃、あるいは霊的な干渉及び祓魔を推奨。
紅葉鬼の本質は、生命への嫌悪にある。
人死にや事件などへの嫌悪感が青垣山の在る種の神霊や自然発生的な霊の形を借りて、呪いとして産み落とされたものだと推測されているが、詳細は依然不明。
人間の苦しむ姿を観察しようとする傾向などがあったことから、“紅葉狩り”を形だけ真似るように人間を狩っているという推理もある。
発見報告及び討滅報告の際、核とされたのは白い紅葉であった。
これは当時都市伝説として流行していたモノと合致している。
しかし、時折SNS等で行き交う噂話に、白い紅葉がこのような振る舞いをした例は、報告“自体”はされていない。
つまり、何であれ核とする可能性がある。
それが紅葉でなくとも、この鬼は身に纏い、性質を変え、人を襲うモノである可能性が残っている。
引き続き、調査は続けられる。