常世学園において、基本的に彼ら――違反部活狩りの違反部活の存在は『噂』の上に存在しているものでしかない。 そしてその噂ですら、一部の者しか知り得ないものである。
風紀委員や公安委員、または落第街に深く通じている中でも『鋭い』者は、彼らの存在が『噂』ではなく現実に存在している組織であることに勘付いている者も存在しており、
またごく一握りだが、風紀委員や公安委員の中には、彼らと通じて落第街の情報を手に入れている者も存在する。
しかし現状では、噂を口にしたところで周囲から笑われるのが大半である。それは組織に属する者達が基本的に、噂の域を出ぬように情報操作や認識阻害の術を駆使し、立ち回っているからである。
ただ、例外も存在する。相手が矜持を示したり、その相手が信頼の置ける者、或いは救済の必要な者であると認めたりした場合は、組織の名を明かしたり、勧誘をしたり、情報共有を行ったりするメンバーも存在するからだ。
この為に、彼らは完全に影に潜んでいるのではなく、『噂』として世にその朧げな姿が出回っているのである。
『噂』は落第街を覆う影の如く広まる。 それを受けて、噂を恐れて足を洗う違反部活生達も居れば、地下に潜んで各々の活動を行う者達も存在している。
このような地下に潜む者達の動きが過大なものにならぬよう、彼らは情報収集に多くの力を割いている。そして前述の通り、必要とあらば風紀や公安の『内通者』に情報を共有し、速やかに対処にあたることもある。
悪《ヴィラン》には悪《ヴィラン》の秩序が必要であると説く彼らは、落第街、スラム街で起こる逸脱を影で『鎮圧』し、闇へと葬る存在である。
鎮圧の最大の目的はシンプルに言えば、「大規模な犯罪をはじめ、事故や災害に対応し、裏世界の秩序を保つ」ことにある。
勿論、「秩序」の在り方は人それぞれではあるが、組織に加入した以上はこの「秩序」を守るため、行動することとなる。
『鋼の両翼』や風紀委員とは対立することも多いが、場合によっては協力することもある。
特に風紀委員とは違反部活という性質上、対立することが多いが、裏切りの黒から仕掛けることはまずない。
落第街では中毒性の高い薬が出回っていたり、人身売買、裏取引が数多く行われている。
組織にとって、そういった現状は、落第街の均衡が保たれている状態として見ている、というのが基本スタンスである。
犯罪に苦しんでいる人間も居れば、犯罪により救われている人間も存在する。
そして、落第街にしか居場所が無い者も多いのだ。
街に生きている人々だけでなく、日々行われている犯罪まで含めて落第街の形であると考えている。
つまり、落第街の浄化が目的ではないのだ。
組織が動くのは、「落第街の現状」が壊されようとしている時。
そして、そんな彼らが、「法で裁けぬ悪」であった時こそ、裏切りの黒が動く時である。
組織は、異能による犯罪歴を持つ二級学生を中心としたメンバーで構成されている。
行き場を失った者、己の罪の救済を求める者、己の力を行使する場を求める者など、組織に入り活動を行う個々の目的は様々である。
裏切りの律者《トラディメント・ロワ》のヴィランコードを持つ男。
かつて風紀委員だったようだが、とある事件で凶悪犯に遭遇した際に発砲許可を待たず相手を射殺したことで罪を負い、紆余曲折あって落第街へと堕ちた過去がある。
その異能は、己の命を燃やし、爆発させる『絶招の灯火《アニマ・エスプロジオーネ》』。
違反部活という形の組織ではあるが、コミュニティを保つ為の掟があり、これを破った者は力を奪われ、組織を追放されることとなる。
① 組織に大きな不利益の生じる行動は決して起こさぬこと。
(証拠隠滅の難しい過度な破壊行為や、大量殺人行為などをはじめとするあらゆる不利益行為)
② 基本的に本名は明かさず、ヴィランコード(コードネーム)を用いること。
ヴィランと名を冠するのは、自分たちが紛れもない悪の側に在ることを忘れぬ為。
③ 悪の矜持を忘れぬこと。たとえ、それが幻想であったとしても。