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The RHAPSODY, or voids in the culture Edit

大衆の観点から見た《大変容》とは如何なるものであったか?
平易な言葉で表すなら「ファンタジーの反乱」であろう。絵本、昔話、ゲーム……そういった創作物で語られるのみであった存在の数々が、実体を持ち、形ある脅威として全人類の生活を脅かしたのだ。
なれば、《ザ・ラプソディー(乱痴気)》は起こるべくして起こった不可避の帰結といえる。

Tragedy of the RHAPSODY Edit

《ザ・ラプソディー》とは、21世紀初頭、《大変容》による世界的混乱の初期〜中期にかけて全世界規模で発生した焚書活動、ファンタジーという概念に対する魔女狩り行為を指す言葉である。
空想力を根源にしたあらゆる創作物へのバッシングの機運、締め付け、締め出し、村八分。大戦下の大日本帝国にて『敵性語』が抑圧されたのと同じように、ファンタジーそのものを敵性概念として奉り上げた。世界規模の戦火拡大に伴う自粛ムードとあいまって、多くの創作物が生存の危機に瀕した。
とはいえ、その焚書活動は徹底的なものとはなりえなかった。三大宗教の教えはすでに半数以上の地球人類に深く根ざしたものとなり、出版技術・運輸網・インターネット網の発展によって世界各地の伝承・神話も国境を超えて知られるところとなっていた。いずれも大なり小なりダメージを負ったものの、『滅亡』の憂き目にあったのは最終的にごく一部の創作物に限られた――『打たれ弱い』創作物に。

まず、いの一番に『二次創作』が被害を受けた。アマチュア文筆家による草の根創作は、それがわずかでも既存の伝承・神話を諧謔しているものであれば残らず否定され、次々に消滅。世知辛い現実のみを題材とした作品だけがかろうじて保護・維持された(それらもやがて自粛ムードに押されていくが)。
その後、バッシングの拡大解釈はさらに広がり、大作小説やゲームに至るまで、やはりファンタジーの諧謔を帯びているシナリオは徹底的に抑圧を被った。思考停止間際の大衆意識の例に漏れず、儲かっている企業・拝金主義に見える企業から順に、罵声の集中砲火を浴びることとなった。「貴様らがこのような創作物で金を稼いだから天罰が落とされたのだ!」……などと。
被害の全容は詳らかになっていないが、結果的にこの騒乱によって一番の被害を被ったのはコンテンツ大国・日本ということになろう。《大変容》を受け入れられない者たちによって、若き娯楽の大部分が枯死を迎え、笑って生きる余裕を自ら棄てるという負のスパイラルに陥った。

ちなみに、ここで言う『抑圧』『消滅』とは、不特定多数から認知される術を失うことを指す。
当然ながら、抑圧対象となった表現者や表現そのもの達も、ただ大衆から無視されただけで真に消滅するということはない。懸命に草の根活動・交流を続ける者たちも大勢いた。しかし、草の根は草の根の弱さゆえに、現実を覆いつつある戦火や雷霆に対して防御力(冗長性)を持たず、最終的には他の表現物よりも早い死を迎えた。

The aftermath of the RHAPSODY Edit

……結果的に《大変容》によって地球文明は崩壊せず、かろうじての共存という形で《マレビト》達と人類は一応の和解を得た。
やがて彼らの内に、空想を愛する心も復活した。人類に贈られたかけがえのない賜物『想像力』は、かかる戦乱を経ても些かも失われることはなかったのだ……見かけの上では。

《大変容》さなかの混迷を記録した媒体はほとんど残存していないが、それ以前の記録は十分に残っており、いまの時代を生きる者が《大変容》以前の人類の営みを垣間見ることもできる。しかしながら《ザ・ラプソディー》によって、その記録には不自然な空白・欠落・不整合がいくつも見受けられる。
されど、いまを生きる者がそれを見ても、単なる『謎の空隙』にしか映るまい。『削除した』という記録自体が残っていないのだから、《ザ・ラプソディー》という歴史上の事象それ自体も、いまを生きる人々にはほとんど認識されていないのだ。それは、我々が騒乱から学ぶべき教訓さえも失われていることを意味する。
たとえこの真実を知ったところで、たかが娯楽の記録、それもごく一部が消滅しただけじゃないか?と軽視する者もいるだろう。だが、欠落は欠落であり、永遠に取り戻せない過去の欠片であり、この世界に穿たれた消えない古傷のひとつなのだ。

Residues of the RHAPSODY Edit

さてさて。
空想を愛する我々は知っている……非業の死を遂げた人物や動物は悪霊・幽霊・怪物と化してこの世を呪うことを。

では、非業の死を遂げた『物語』はいかに?

かかる戦乱の戦没者は篤く慰霊された。『物語』を慰霊する者はいずこなりや?

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Last-modified: 2019-02-05 (火) 16:26:49 (1929d)