十一年前の夏に起こった事件。
『魅浜異能集団覚醒事件』と呼ばれることもあれば、単に『魅浜事件』とだけ呼ばれることも。
ある日時を境として、平和であった日本某県魅浜市の
ほとんどの市民(おそらく全市民)に、何の前触れもなく何らかの異能が発現。
もともと異能者や怪異と縁の薄かった地域であっただけに、
市民たちが突然降って湧いてきた異能を自覚するにつれ市中は静かに、しかし確実に混乱へ陥る。
数日後、パニックが頂点と達するのと同時に、危険な戦闘向け異能者が徒党を組んで略奪を開始。
魅浜市はたちまちにして戦争状態となり、多くの犠牲者を出した。
異能保安部隊によって鎮圧されるまでには数ヶ月の時を要した。
「空を飛ぶ円盤を見た」「《門》が確認された」「某組織による人為的な異能発現実験が行われた」
など諸意見あるが、現在でも明らかになっていない。
この騒乱の鎮静化からそう時を待たずに火蜥蜴団の活動が始まっていることから、
彼らが一枚噛んでいたのではないか、もしくは惨事の発端となった
異能者集団が火蜥蜴団だったのではないか、とも言われている。
いずれにせよ、この手の不条理な事件は変容後の世界においては"よくあること"であることも手伝い
本腰を入れた原因解明が行われぬまま、人々の記憶の彼方に消えた。
よくある話なのである。