猫乃神ヘルベチカ †
| 性別 | |
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年齢 | 17 |
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種族 | 人間 |
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立場 | |
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学年 | 二年 |
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所属 | 図書委員会、Cafe E.Goery |
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設定 †
◆
私の頭の中の図書館 †
「みなさん、こんにちは。新入生オリエンテーション、図書館案内を担当する、猫乃神です」
「普段本を読む人も、読まない人も、この学園では課題のために図書館を使うことは多いと思います」
「ですので、簡単な図書館の説明をみなさんにさせていただくのが、この時間の目的です」
「強制参加ではないので、途中で抜ける人、最初から不参加な人、いると思います。特にこちらでは呼びとめたりはしません」
「ただし、知っていても、知らなくても、決まり事を守れない人は、罰されますので、気をつけてくださいね」
「それでは、いきましょう。私の後についてきてください」
(注:知らなくていいです)
構造 †
図書館群:
多数の図書館の集まり
図書館:
割り当てられた分野の蔵書を収めた建物
図書館内の設備:
背丈を超える書架
/書架の合間の机
/机に取り付けられたコンセント
/机は平机と学習机
/一人がけから四人掛け
カウンター近くの入口
/休憩室
/自動販売機で売られるジュースにお菓子、惣菜パン
/図書の持ち込み厳禁
書庫
/全ての本は開示され学ばれるべきと考えられている、閉架のない図書館の
/収められた本
/禁書魔導書異端の書
/選んで読むことは出来ない
/一人求める書物は与えられない
/選ばれる
/迷い込む
/導かれるため選ぶのは本の側
/手に取ることを選ぶのは本の意思
/図書館
/本来は人が己の意思で背表紙に手を伸ばす場所
/選択する場所で選択されるという矛盾
/図書館に相応しくない書物
/選ばれれば読まされる
/失われる自由意志
/ここに入り込んだお前に自由意志など無い
/整理整頓
制度 †
委員会 †
書籍 †
図書委員会 架空書架(C/D) †
担当書架 | 名称 | 担当分野 | 現在の異能 | 現在の魔術 | 現在の特殊能力 | 備考 |
第零架空書架(C/D0) | 鱗内サンセリフ | コンピュータサイエンス、情報および総記 | | | | 管理官 |
第一架空書架(C/D1) | 兵トレイジャン | 哲学および心理学 | | | | 焚書官 |
第二架空書架(C/D2) | 想野フーツラ | 宗教 | | | | 警備官 |
第三架空書架(C/D3) | 犬井バスカヴィル | 社会科学 | | | この世界に存在する90度以下の鋭角から出現できる | 延滞図書回収官 |
第四架空書架(C/D4) | 欲野アベニール | 言語 | | | | 警備官 |
第五架空書架(C/D5) | 猫乃神ヘルベチカ | 自然科学および数学 | なし | なし | なし | ××× |
第六架空書架(C/D6) | 楔ロックウェル | 技術 | | | | 施設技術官 |
第七架空書架(C/D7) | 錆川ディン | 芸術 | | | | 修理官 |
第八架空書架(C/D8) | 火引パラティノ | 文学および修辞学 | | | | 移動図書官 |
第九架空書架(C/D9) | 壊島クーリエ | 歴史および地理 | | | | 事務官 |
第十架空書架(C/DX) | 台詞 | 電子情報以外 | 島内に誕生した『新刊』を手近な書架に自動保管する | | | 架長 |
ネットワークの海に広がる電子情報を分類し、それを各々一冊の書籍、ひいては書架と捉え管理する、図書委員会の役職。
担当官は自己の担当情報を管理する義務を当たられる。
取り扱い範囲は島内全域であり、書架である以上閲覧の可否を問わず、あらゆる情報を分類管理する義務がある。
情報の行ずれによって異なる分野へと分類されることがあり、
その場合には担当官同士の協議をもって、その情報の分類科目を決定する。
+
| | 図書委員のお仕事 1
|
これは俺の物語じゃない。
雨降る街路は寒々とした灰色。
時折避けきれぬ水たまりを踏めば、少年は顔を顰めて。
傘を持つ手に力が入った。
学生街。普段であれば生徒たちに溢れるこの通りも今は静か。
きっともう少しすれば、華のように色とりどりの傘に溢れるだろう。
けれど今、この野には、二輪だけ。
少年の持つ紺色と。
男の持つ、黒と。
「返してもらいに来た」
雨音に負けぬよう、張った声。
紺色傘の少年が発した。
黒傘の男は嗤う。
「いいだろう、また延長したって」
黒い傘がくるりと回れば。
また一つ、何かが壊れる音がした。
少年は紺色の傘を、閉じる。
「いいや。終わりだ」
ざぁざぁと。雨が少年を包み込んで。
「返却の時だ」
ぱぁっ、と。何かが空間を迸った。
いかづちのおとがきこえる。
37兆2000億の細胞が励起する。
猫の耳、毛が逆立って、其処から迸る激しい雷。
網目状に宙を走り、繋がり、分岐し、再び繋がり、そして分岐する。
描かれる巨大な黄金図。
それは文字のように見えた。
それは一枚の絵画のように見えた。
見るものによって姿を変えるロールシャッハ・テストのように。
そして、最後には接続された。
この島に聳える図書館群。
その一端に、雷の先端が、触れて。
図書館と図書館の間に、光の橋がかかる。
大量の図書館の間に、幾重にも幾重にも雷が橋をかける。
広がり広がりゆくそれは、最後に。
ヘルベチカの文字を、映し出した。
「描かれよ。猫乃神」
顕現する。
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+
| | 図書委員のお仕事 2
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ある日。
雷の多かった日。
空に迸る雷を、多くの生徒が目にした日。
その、次の日。
ぺくしっ、という気の抜けたクシャミが図書館に響いた。
音の主は、カウンターの内側。
貸出用PCの前に腰掛けていた少年。
親指の付け根で鼻を擦って一息吐けば、頭の上の猫耳がぴくぴくと震えた。
図書委員の主な業務の一つ。
貸出・返却の管理。
貸し出すときは、生徒の学生証のバーコードを読み取ってから。
返却するときは、それもなく。
図書に付されたバーコードを読み取るのだ。
外へと持ちだされるとき。外から帰ってくるとき。
常に本はこの場所を経由する。
人の入りが多い時には列のできるこのカウンターも、今は少年以外に人影無く。
図書館の中にも数人の人影が有るだけだ。
多数の図書館から成る図書館群。
この図書館の蔵書に人気がないのか、それとも偶然なのか。
いずれにせよ、暇を持て余した少年は、もうしばらくの余暇を楽しむ。
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+
| | 図書委員のお仕事 X
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「だからさ。離れとけって言ったのに。バカなやつ」
猫乃神ヘルベチカは、笑った。
己を庇い、今、虫の息で地面に倒れ伏す少年を見下ろして。
しゃがみ込んだ。手を伸ばせば、髪を梳くように頭を撫でる。
「人のいいやつは、この島じゃすぐに死ぬか、食い物にされる。誰かの都合のいいように」
だから、と前置きして。
己と異なり、猫の耳など生えていない、黒髪の少年の頭を。
ぽんぽん、と二、三度優しく叩いてから。
「お前も、そうなった。悪いな」
立ち上がった。少年は笑っている。
最期の時に至り、気が触れたのかもしれなかった。
けれど、それにしては、明るい笑顔。
歩き出す先は、禁書延滞者の待つ方向。
既に身はボロボロだ。
あまりにも惨めで、視線の先、男は笑っている。
制服の頑丈な生地には穴が空いて。
体の節々の痛みで、歩くのも億劫そう。
頬の傷から流れた血を、もう拭うこともない。
その体から、ばちばち、と音を立てて迸る雷。
37兆2000億の細胞が励起する。
命の最期を燃やし尽くして、そして。
指向性を持った雷が、禁書延滞者の男へ向けて迸ると同時。
「さようならだ。そして、ようこそ。猫乃神ヘルベチカよ」
ざん、と首が断ち切られる音。
心底、つまらなさそうな顔で。
男は、猫乃神ヘルベチカという少年の命を終わらせた。
そして、少年の肉体から離れた頭は、固い音をたてて地面へ落ちる。
勢いで二、三度転がって。
血に塗れた金の髪が覆った後頭部。
それを上に向けて、止まった。
そうして金髪の少年は、長く短かったその生を終えたのだ。
「ふん。最初から大人しく従っておけばよかったのだ」
つまらない、といった口ぶりの男。
転がった頭へと、歩み寄って。
「それでは、渡してもらおうか………――――なんだと?」
異常に気付いた。
死した少年の頭部に。あるはずのものが。
猫の耳が、ない。
「なんっ、きさ、ま、まさかッ!」
慌てた様子で、周囲を見回す。
自身がぼろぼろに砕いた建物達の間。
その一点で、視線が止まった。
一際酷く砕かれた建物。真っ二つに断裂した壁面。
そこから垂れ落ちた、一本の黒いケーブル。
その先端を手の中に掴んだ、
「殺すッ!」
黒髪の少年に向けて、男は手の中から衝撃を迸らせた。
塵を巻き上げ、高速で飛来する一閃。
少年の頭、黒髪の合間から覗く猫耳を断ち切るより、触れるより早く。
”なんぴとも猫を殺すこと一匹とて罷りならず”
ルールが敷かれた。
此処に定められた一条。
だから、つまり、既に。
終わっていた。
距離損失を受けながらもファイバ・コアの中心を迸った光。
それは、最終的に図書館の、OPACの一端へと触れて。
図書館の内側へと潜り込もうとする。
金髪の猫の残した、最後の能力の欠片が。
黒髪の無能な猫の手から、迸る。
図書館は遮断する。
OPACシステム。其処から先は、スタンド・アロン。
如何なるクラッキングスキルを持とうとも。
如何に正当な手順を踏もうとも。
そもそも用意されてなどいない回線を、通ることなど不可能だ。
銀の鍵を持つものであっても。
電脳の中に身を浸し、人を抜けだしたものであっても。
それは、そもそもとして、彼らのルールの外側にあった。
だから、これは、魂の物語。
猫乃神ヘルベチカの魂を認めた図書館は、励起する。
秘奥の奥底、禁書庫の中。
焚書館の手に渡れば、即座に焼却されうるような、書物が並ぶその場所で。
光が触れた。
一冊の本が、書棚を転がりだした。
宙に浮く。
その46ページ、5行目、8つ目の文字。光る。
次の一冊。190ページ目。2行目。2つ目。光る
次の一冊。3ページ目。10行目。行頭。光る
禁書庫の内側、何冊もの本が書棚から転がりだして、宙に浮かんで。
光る文字列が単語を形作る。
光る文字列が一節を捧げる。
光る文字列が文章を描いて。
光る文字列がそれを呼んだ。
「描かれよ、猫乃神」
遠く、図書館から離れ、砕かれた町並みの中。
黒髪の猫乃神ヘルベチカの、呟いた一言があった。
「その魂を寄越せ!それがあれば、私は、図書館の最奥まで――――」
叫ぶ男。引き継がれたそれを求めて、手を伸ばして。
同時。
界
を
視 で に 悉
元 ゃ く
耳 あ 埋
。 、 め
瞳 と 尽
の く
猫 す
猫が鳴いた。
これは、僕の物語だった。そして。
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