昼夜問わず、その手にランタンを持って学園を徘徊する少女。
セーラー服の上にはいつも、黒い羽織を着ている。
黒く短い髪に切れ長の目は橙。
落ち着いた雰囲気を纏ってはいるものの、中身はかなり抜けている。
かつて二回の死を経験した後遺症で、痛覚に対して鈍感になっている。
自身の持つ異能の発展のため。
自身の持つ異能の終息のため。
行方の知れない兄を探すため。
伏見一族に流れる“分解”と“再構築”の属性を宿した血。
一方は、自身の肉体を因子と呼ばれる最小単位にまで“分解”する属性。
一方は、バラバラになった因子をあるべき姿に“再構築”する属性。
伏見の一族は、この血によって半・不死の存在として生き長らえる。
「人間は老いて死ぬものである」という前提を覆せるほどの不死ではないため、彼らは不死存在の中では下位に位置している。
この異能は自動的に発動する能力であるため、伏見の人間は不慮の事故や直接的な殺害によって死亡することはない。
実際、灯継も過去に二度の死を経験しているが、今日も元気に授業を受けている。
死んでも死ねないという事実を理解して以降、彼女はその魂を、わざわざ“灯火”という不完全な状態にして過ごしている。
切っても折れても砕けても再生します。でも年取るし寿命で死にます。
自分の魂をランタンに入れて持ち運んでいます。
ランタンの灯火が消えなければ死にませんが、消えると死にます。