美術教師。学園の草創期と時を同じくして「門」を潜ってきた異邦人。
専攻は金工だが、絵を描くし粘土も捏ねる。
島内の情勢に対する興味が薄く、噂を小耳に挟む程度に聞き流している。
常世学園の秩序を守り、自らもその一端となることを絶対的な忠誠の証としている。
「正しさ」を行動規範とし、学園の秩序が(あくまで主観的に)乱れると判断した場合、いかなる手段をも問わず牙を剥く。
「それでも、やらねばならんことがある」 / 20150705教室 | |
日恵野ビアトリクス | 「“描き上げた”ことは評価に値する」 / 20150703廊下 |
「――悪いな」 / 20150705屋上 | |
『室長補佐代理』 | 「夜の眠りは大事にしたまえよ」 / 20150704常世公園 |
一樺千夏 | 「……機を逸してしまったか」 / 20150704常世公園 |
かつてカミと呼ばれた犬があった。
犬は山を治め、捧げられた娘を骨にして返し、地は潤い、里は富み、長く栄えた。
犬は人前に姿を顕さず、人は山へ立ち入ることなく、人と山との繋がりは畏れの上に保たれた。
時代が変わる。
里に住まう人間はいよいよ増え、世とともに移り変わる。
繰り返し産まれ育つ人々の中からは、畏れと呼ばれる心が失われて久しかった。
やがて空は青黒く冴え渡り、日は光を強め、大地は渇く。
男は痩せ、女は細り、子が絶えた。
かつてカミと呼ばれた犬は、いつしか邪霊と名が変わる。
そしてある日、旅の僧が里を訪れる。
僧は人々の声を聞き入れた。
山へ入り、人々と同じくして痩せた犬と相対した。
その姿は幽鬼に似て、まさに邪霊と呼ぶに相応しかった。
僧の振るった錫杖が、犬を打ち据える。犬は見る間に傷つき、弱った。
その牙が僧の腹を裂いたのは、自らの身を守るために過ぎなかった。
無数の火に照らされた山を降りると、そこには見も知らぬ人々の顔が並んでいた。
犬が人の言葉を解したならば、それらは鬼の一群であった。
鬼の振るった手斧が錆びながらにして閃いたのを、犬は覚えている。