○月×日 記録者:クラスカ
夕刻、浜辺にて【怪異/異邦人】カエラムを発見。
単身であり、周囲に他の生徒の姿は認めず。
観察を継続したところ、浜辺の自然、景色の変化に興味を示していたふしがあり、最低限の感情と知能は存在すると判断できる。
また、海辺の亀と音声による交流を行っていた様子。言語体系は不明。
今後も経過の観察を要する。
背面に大鎌を操る様子は見られなかったが、万が一を考え、接触の際は過度の刺激は避けること。
○月△日 記録者:クラスカ
夕刻、スラム街にて【異邦人】グレゴリーを発見、接触。
グレゴリーは非常に冷静な態度を取り、記録者が身分を明かしても、敵意を露わにすることなく、聞き取りに終始できた。
学籍登録直後に彼が起こした事件に関しては、被害者がグレゴリーの世界での『天敵』に相当する外見であり、過剰防衛を行ってしまったとの陳情。
最終的な処遇は司法側に一任されるものとしても、自分の行動を罪であると客観視できる知能がある点、
また彼が同様の事件を再発させていない点は、判断の材料として考慮するべきであると考える。
なおの交渉を続けようとしたところで、彼の逃亡により聞き取りは打ち切りとなった。
逃亡に際しても記録者に危害を加える様子がなかったことを、特記する。
△月□日 記録者:クラスカ
転移荒野巡回中に【異邦人/怪異】通称ソラとルナを発見。
距離を取り観察を行ったところ、共に自ら興味を示して接近する様子は見せず。
しばらく時間が経ったところで、彼らなりのコミュニケーションなのか、ソラがルナを掴んで投擲(害意なし)した。
飴玉を餌として提示すると、ソラルナ共に喜びの感情を見せた。
ソラは人懐こく、ルナはやや猜疑心が強いようである。
現時点では危険性なし。無意味な刺激は避けること。
地球で言う「妖精」「精霊」に近い存在であると考えられる。
△月●日 記録者:クラスカ
昼間、屋上にて【異邦人】α(以後『魔王』)と【異邦人】β(以後『従者』)との会合に接触。
会話内容から分析する限りでは、『魔王』も『従者』も地球上の文化に詳しく、外見は地球人と相違ない。
「レア」「コモン」という比喩話をしていたため、会話の内容は富豪による遊戯の一貫だと判断していたところ、『魔王』と『従者』の魔力の波形が常人と大きく異なる点を察知。
また遊戯を戦略に例えた言い回し、「常世島への布告を打つ」との言葉から、『魔王』と『従者』の正体を「異邦人の侵略者」であると仮定する。
『魔王』は紫髪の小柄な少女。
『従者』は黒髪の大柄な中性的な人物。
今回のケースでは目立った危険性は見られなかったが、要経過観察のため、接触は禁止されたし。
今後の発見例如何では公安委員会と風紀委員会への連携も視野に入れる。
△月◆日 記録者:クラスカ
本来は今後風紀委員会及び公安委員会へ引き継ぐべき業務外の仕事であるが、今後生活委員会内部への注意喚起のため記録を行う。
放課後、落第街路地裏にて【地球人】虞淵(名称は後に公安委員会保有の生徒データより確認)と相対。
黒髪黒瞳で右眼に眼帯をつけた一見すると単なる大男であるも、戦意、腕力、また肉体の頑健さは常人を遥かに凌ぐ。
格闘技らしき技術を使うも委細不明。
連座した風紀委員を挑発する素振りを見せ、交戦の際も一切の躊躇なく凶行に及んだ。
戦いにのみ興味を示すようだが、概ねこのような人種は弱者の蹂躙も好むため、遭遇の場合会話での説得は困難と断定。
落第街周辺での委員会業務を行う際には要警戒。
☆月□日
夕刻、落第街酩酊通りにて【分類不能】鳴鳴と遭遇。
和風の袖が長いだぼついた服に身を包み、首の付け根から胸にかけて光る五芒星が刻まれている童女、の姿をした人間外の何か。
遭遇時には女生徒を亜空間へ捕えており、そのまま女生徒を亜空間へ取り込む。
今際の女生徒の叫喚が単なる死に対する恐怖と異なっていたため、空間操作以上の精神に干渉する能力を持つ模様。
難解な言い回しと古事を好み、コミュニケーションを試みてくるが意思の疎通は不可能であり。
目的も不明。反応を引き出せないかいくらか試みたところ、交渉、挑発、駆け引きなどあらゆる行動が無意味に帰すると思われる結果に終わる。
常世学園にとって大きな脅威になると判断、怪異対策室三課へ情報を提供。
万が一遭遇した場合は必要に応じて風紀または公安と連携し速やかに対処すること。
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