魔狼であり、妖のリーダーである大白狼の父親を、
退魔師の母親がリーダーとして組織された討伐隊が討滅しようとした際に、
魔狼の父親が母親に一目ぼれし、討伐隊の他のメンバーを全て戦闘不能にした後に母親を誘拐。
そのまま紆余曲折あって二人は正式に結婚し、彼はその二人の間に生まれた。
父親の「白狼」に一文字足りない存在として「はくろ」と名前を付けられた彼は、
『妖』と『人間』の橋渡しになることを両親に期待され、それを願われていたものの、
その願いは叶わず、『妖』は『親人派(狼王軍)』と『滅人派(反乱軍)』に分離。
さらに、母親の説得は『籠絡された』として聞き届けられる事を無く、
母親を誘拐された報復として『人間』と『妖』は全面戦争に突入する。
その事実は親人思想の強い『狼王派』の一部の『妖』からの支持を失わさせ、
徐々に『滅人派』は勢力を伸ばし、ついに『狼王派』は敗北、
夜襲を受けた際に、父親は二人を逃がす為に奮迅し死亡した。
直前に父親から受け取った『牙の1本』が、
彼が常に持ち歩く守り刀である『血濡れ狼』である。
なんとか逃げ切った彼と母親は、
その後『妖』の追手から身を隠すように人の世界に降り、
母親と共に各地を転々として生活していたが、
徐々に『人間』による『妖』の差別、迫害の過激化は進んでいき、
ある夜、二人の家を武器を手にした人間が取り囲み、火を放った。
母親は彼を逃がす為に個人単位では使用が禁止されている符術『渡し舟』を使用し、彼を異世界へと逃がした。
そうして、彼は『常世学園』の世界へ流れ落ちた。
精神が不安定になった事で魔狼の血が暴走し、その場に居た数人を殺害して捕食。
それを公安委員会にマークされており、自身の本能の自制が出来ておらず、
共同生活の際に暴走の危険あり、として入学を拒否された。
荒んでおり、乱暴な言葉使いで喋る。
子供の頃に自由に過ごせなかった為に、
気を抜いている時は全体的に子供らしい行動が目立つ。
逃亡生活の末に、命の軽さを知り、
『いかなる手段を取っても自分の命を守る』事を最優先にするようになった。
その為には殺人でも恐喝でもいかなる犯罪行為でも行うが、
そのことについて母親に咎められた事があり、
そうしなければ生き残れない自分に罪悪感を感じている部分がある為、
必要以上に人の命を犯すという事は好まない。
加えて、大切な人二人が自分の為に死んでしまったトラウマから、
『自分が殺すのは構わないが、自分のせいで誰かが死ぬのは困る』という信条を持っている。
幼い頃に父親を亡くしている為に『愛情欠乏症』になっており、
愛情、特に男性からの愛情を求める。
ただし、自分が愛されるわけがないとも思っている為、
あくまで冗談めかした態度でそういう行動を取る事が多い。
数日前に惣一に提案された提案を飲むことにした。
それなりに関わりある相手が死ぬのは嫌だ。
あいつの事は嫌いじゃない、偉そうだし正直ムカつくやつだが、
根の部分はまっすぐで、イイやつだ。
俺の見てない場所で死ぬのは絶対に許さない。
半梟の運び屋から荷物を受け取り、
無事、次のチェックポイントまで運搬した。
異邦人の半獣、いや半鳥か。
同類だと思うとなんとなく放っておけなくて、
無駄に世話を焼いちまった。
真っ直ぐに夢を追いかける姿勢には好感を持てる。
あいつはそのうち夢を叶えそうだ。いや、叶えて欲しい。
常世公園で惣一とご飯を食べた。
類は友を呼ぶってーか、その後なんか同類っぽいのが2人くらいと、
あといつか女子寮ですれ違った大女が来た。何事だよ。
おいおい、昼間の公園だぞ、
お前ら授業はどうしたんだよって思わなくもねーが、
ま、面白いやつらだったから良しとする。人の事もいえねぇしな。
どうなんだろうね、あいつら、
なんてーか、上手く行くといいんだけど。
大女には女装を見破られたかもしれねーな、
んな事する気はねぇけど、
女子寮に居る間に変な事したらマズそうだ、気を付けねぇとな。
そういや、女子寮に昨日男子が何人か侵入したっつってたっけ。
今まで侵入が無かっただけに無警戒だったけど、
警戒とかされると俺もマズいかもな。
今帰った後に女子寮でかいてんだけど、
なんかこう、すっげぇバカにされた気がするんだけど、気のせいだよな?
落第街のほうで仕事があった、
あの手の仕事は久しぶりだったからか疲れた。
肉ばっかり食ってるやつのアレは尋常じゃないくらいに苦い。
帰りに風紀委員のやつと話した。
噂になっていた、『二級学生』の拾い上げ、
どうやら、あれは本当だったらしい。
正直眉唾な情報だったし、
都合のいいやつが流した噂じゃねぇかと踏んでたんだがな。
1年分の学費免除という凄まじい優遇っぷり、
審査内容はさぞ厳しいもんだと思っていたが、そうでもねぇらしい。
本来、二級学生というのは存在しないはずのもので、
風紀委員側の手違いによって発生するものなのかもしれねぇな。
本当の関係、嘘の無い関係。
汚れきった俺には、少し辛いような気がする。
公園で読書をした後、特別講習に行った。
特別講習の内容は寝てたから覚えちゃいねぇ。
いや、多分、寝てなくても覚えてられなかっただろうな。
昨日公園で会ったちはやに再会した。
クソ真面目に前に無礼を働いたと謝ってきた。
俺もやりすぎたって思ってたから、それは気にすんなって返したんだが。
そこまでは別に良かった、その後が問題だ。
あいつは、俺の手を握ってきた。
人を殺して、名前も知らないやつの***握ったようなきたねぇ手を、
何も知らないまま、白魚みたいな真っ白な手で、
まるで、生まれたばかりの小鳥を握るように握ってきた。
俺は、それを振り払っちまった。
何も知らないやつに、あんな綺麗なやつに、こんなもの、握らせられない。
ちゃんと事情を話せば良かったのに、
何も話さずに、ただ振り払っただけだ、
ただ善意で俺に手を伸ばしたあいつを、無駄に傷つけた。
本当、クソ野郎だよな、俺。
公園でなんだか眠そうな女に声をかけた。
ただの暇つぶしだったが、
まぁ、話し相手としては申し分ない面白い奴だった。
『無能力者』を自称してたけど、
寝ぼけてる時の顔の印象と、
目が覚めはじめてからの顔の印象が随分と違った。
多分なにかしらの能力を持ってるんだろうな。
寝起きは特別マヌケ面を晒してるってなら話は別だけどな。
手品が特技らしい。
アガリ症らしいけど、ま、
可愛けりゃその技術を『買って』くれるやつもいるんじゃねぇかな。
公安委員がやっている二級学生の『審査』に行ってきた。
何の事は無い、『審査』は『審査』だ、
受けて、必要な事を答えて、いい返事が聞けるか、聞けないか。
ただそれだけの事だったんだが、
お節介を焼いたバカのせいで話がややこしくなっちまった。
『俺が正義だ』とばかりに善人面してる風紀よりは、
『俺が正義だ』とか口では言いつつも、内心では苦しんでる公安のほうが、
なんとなく親近感は沸くし、理解もしやすい。
あの公安委員の女のあの顔。
俺が相手したくもねぇやつに買われて相手してる時の顔とそっくりだったよ
黒髪の『人』と白髪の『妖』が暮らしている世界。
二つの種族はそれぞれ髪の色から『白』『黒』と呼ばれている。
世界の形は円形で、球形ではなく、
世界の果ての外側には『神世』と呼ばれる神が暮らす世界があるとされている。
『神』は度々境界を越えて『現世』に現れ、境界付近の『人』や『妖』を浚っていく為、
境界付近には俗に『紅杭』と呼ばれている塔が大量に立てられており、
双方から差別対象とされている『灰』と呼ばれる、
『人』や『妖』から選ばれた生贄が括り付けられている。
そのような事情から、円の中心に行けば行くほど階級の高い者が暮らしており、
円の『中心』を取り合って、『白』と『黒』は常に争って来た。
『妖』族、王族とされているのは『白い狼』の一族だが、
それ以外にも様々な存在が居る。
真の姿はそれぞれだが、人型に変化すると全員が純白の髪の毛を持ち、
種族の特徴であるパーツが頭部の何処かに現れる。
『人間』族、『神』の子孫であると言われている種族。
種族の半数が退魔の力と高い身体能力を持つ『武人』で、
半数がそれを持たないかわりに高い知力を持つ『文民』になる。
一般的に武人のほうが階級が低いために、
どちらかといえば外側に過ごしている人間が多く、
文民は中心に近い場所に過ごしている事が多いが、
例外的に王族とその直属部隊の人間は、
稀に生まれる『両方の才能』を持っている人間を世界中から召致しており、
『文武両道』、神にもっとも近い存在として、文民と武人の尊敬を集めている。
『白』からも『黒』からも忌み嫌われている存在。
白族の内、妖怪の姿から人の形に変異できない者と、
黒族の内、どちらの才能も持たない者、
種族とは関係なしに罪人、半妖等が含まれている。
種族としては最底辺に当たり、
そもそも外側のほうで過ごしているのは勿論、
白族や黒族に強制で連行されて『赤杭』の生贄として使用される。
世界の為に『飼育』されている人達。
世界の外側、神界に暮らしているという種族で、
『全てを兼ね備えた完全なる存在』と言われている。
紙と墨の世界に過ごす者からすれば『恐怖』の象徴であるが、
それと同時に『絶対なる力』の象徴でもあり、
紙と墨の世界で過ごしている人間は全て、
『神に近づき、神を越える事でこの世界の真の支配者になれる』と信じている。
黒族は神の『技と体』を模し、白族は『心』を模していると伝えられており、
白族は自分には無い姿形と、技を真似る事で神に近づこうとし、
黒族は自分の持っている技と身体を高め、さらに神の心を知る事で神を目指している。
『神』は稀に境界を越え、世界に訪れては、人を浚って去っていく。
ただし、分っている事は精々圧倒的な力を持っているということだけで、その目的は謎に包まれている。
どんな低級の存在であれ神殺しを成した場合、世界中の尊敬と恐怖を集める事になる。