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この日のために場所をとった、綺麗な教会。そこで新婦と別れ、正装へと着替える。とうとうこの日が来たと、少しの緊張を胸に。
「……貴子、もういい?」
中の様子を感じながら、小さくノックして扉を開ける。眩しいくらいの花嫁の姿がそこにあると確信して。
オフライン
(覚悟はできていたつもりだったが、 想像以上に緊張していた。 腰が細く見えるウエディングドレス。 広がったスカートを鏡の前で見ると、 まるで別人のようであった)
あ、ああ、もういいぞ。着替え終わった。
(赤面してないか確かめつつ、 一緒になる男へと声を掛ける)
妻となる女性を見て、思わず目を細めた。その姿が、全ての光を拾う秋輝の目には眩しすぎた。
「ああ……とても綺麗だ」
素直な言葉が思わず漏れた。
「とうとうこの日が来たね。……正直緊張してる」
歩み寄りながら呟いた。すぐ傍まで来て、微笑みを向ける。
(ゆっくりと、夫に近づく。 ついにこの日がやってきたのだ)
あ、ありがとう…そりゃ緊張もするだろ、教師と生徒の結婚なんだぞ。
(言いながら少し笑ってみせる。 今すぐ抱きつきたいが、 せっかく整えた衣装が台無しになってしまう)
…なんだか、よくわからないけどとても幸せなんだ。関係は変わらないのにな。
(今度は微笑み)
「正直そこは考えないようにしていたけど……貴子はそんなに気にしてるのかな」
かといって諦めるつもりも無かったのだが、それはそれ。
「……オレたちには家族が居ない。親も兄弟も。だけど、これからは二人が、お互いが家族だ」
少し離れて暮らすことになるけれど、と続けて。手を伸ばし、貴子の手を取る。
「だからね、オレも幸せだ。貴子と一緒になれる、それだけで」
周囲の視線がちょっとな…
(しかしそれももうすぐ終わる。 佐伯貴子の卒業によって)
……
(家族がいないことは、 表面に出さずとも、心の傷になっている。 しかし、その家族ができる。 今日この日から)
ああ、私のほうが幸せだ。こんなに…いや、やめる。
(このまま会話を続けたら涙が出てしまいそうだ。 寄月の裾を引っ張る)
「うん……また聞かせてくれればいいよ」
微笑んで、裾を掴む手に、自分の手を重ねた。その指が緊張で少し震える。
「オレが前の世界で失ったもの、全部を貴子が埋めてくれた。君と出会えて本当によかった……ありがとう」
過ちも犯した、自分を何度も見失った。けれど、ここまで来れたのは佐伯貴子という光があったからだと信じていた。
優しく手を引く。結婚式が待っている。
そうか…
(寄月は失ったものが埋まったと言ってくれた。 自分の場合はどうだろう)
私は、一人でも生きていけると思っていた。でも、幸福に生きていけるとは思わなかった。だから…ありがとう、アキ。
(そして二人は式場へと歩みを進める。 二人だけの世界を、 認めてくれる出席者達がいる)
式は滞りなく進む。皆に祝福され、普段は固い表情にも笑顔が浮かぶ。
指輪の交換を終え、誓いの口付けの時。
「オレたちは幸せなんだね」
微笑みながら囁いた。
「恵まれ過ぎているような気がするくらいだよ。『幸せだ』って、貴子が言ってくれるだけで……そう感じる」
頬に手を当て、ゆっくりと顔を近付ける。
(予想していたよりも、緊張はあれど、 幸福感が強かった。 なるほど結婚は人生での一大イベントというのも頷ける)
さあな?君はどうか知らないが私は幸せだ。
(この期に及んでそんな軽口で返す)
浮かれるんじゃないぞ。これは終点じゃなくて人生の出発点なのだからな。
(自分にも言い聞かせるように。 柔らかにキスを交わす。 情欲の混じらない、お互いがお互いを祝福するためのキス。 そして、誓いのキス)
重ねられた唇に意識が傾く。こんなに優しい口付けはいつ以来だろうか。
「……そうだね。二人の人生の出発点だ」
ここで満足してはいけない。ここが幸せの絶頂ではない。
「これからもっと……二人で幸せになれるんだな」
まだまだ幸せが続くことを確信して、言葉を紡いだ。笑顔が絶えない。幸せ過ぎた。
(そう、二人の幸福はここからはじまる。 すでに始まっていたのかもしれない。 しかし、改めて誓い会う)
ああ、そして抱えきれずに溢れた分は、他にも回してやらないとな。
(頬を染めてキスを終えると、 花嫁によるブーケトス。 花嫁が投げたブーケを受け取った女性が次に幸福を掴むと言われる。 寄月から一旦離れ、ブーケトスの準備をする)
えいっ!
(満面の笑顔の佐伯貴子が背後にはなったブーケ。 それを受け取ったのは一体誰か。 それは彼女の物語である)