概要(クリックで展開/格納)
歓楽「街」・落第「街」・異邦人「街」か交わり合う境界線上に「発生」した「境界の街」。
通称、「常世渋谷」。
歓楽街より治安の悪い部分があり、かつ落第街ほどには闇・血に染まってはいない。
異邦人街の要素も多く含まれた「街」。
三つの街の融合体であるともいえる。

地球と異世界の文化がひっくり返した玩具箱の玩具のように無秩序に積み重なっている。
あらゆる都市文化が混淆し、あるいは独自に主張しあう混沌街。現代のバビロン。
常に変化を繰り返す生ける「街」。

歓楽街の誕生と広がりとともに「発生」した街である。
「日本国」のかつての「渋谷」に似ていると言われており、いつしか学園草創期の日本人学生から「常世渋谷」と呼ばれるようになり、それが今では通称となっている。
巨大な街頭スクリーンとスクランブル交差点、巨大なファッションビルが有名で、この景観が「渋谷」に酷似しているとされる。
「新宿」や「原宿」の要素もあるという。学生街のような綺麗に整理された街であるわけではなく、「闇」の部分も持っている。
常世島の都市行政区画では「歓楽街」の一部である。

「街」が一つの生き物であるかのように常に変化しており、ブームの流行り廃りも激しい。
「地球」と異世界の文化が混じり合い、独特のファッションが流行している。
常世島の最新モードを知りたければこの街に来るべきである。
一部の怪しげな店舗で販売されている異世界由来の服飾品(アクセサリー)などを身につける者たちも珍しくないが、そのために何かしらの問題に巻き込まれる場合も少なくない。

「夜の街」としての性格も強く、ホストクラブやキャバクラといった水商売系の部活・業種も多い。眠らない街としての側面も存在する。
これらの業種は必ずしも学園側から禁止されているわけではないものの、違法な行為を行った場合などは手入れが入ることもある。
悪質な店舗も一部存在し、その被害に遇う者もいる。

治安は上述したとおり必ずしもいいとは言えない。
しかし、日中であったり、人気の多い路地などであれば概ね安心して歩くことができるだろう。
もし危険や厄介事に遭遇したくなければ、入り組んだ街の奥や路地裏などには入らない方が懸命である。
常世渋谷には不良・違反学生グループ・ギャング等が存在しており、喧嘩などが起こることも珍しくない。
歓楽街・落第街・異邦人街という三つの街の境界に位置しており、微妙な問題も少なからず抱えていることから、風紀委員会や公安委員会も直接手を出すことがなかなか出来ない場所である。
この「街」は欲望の解放のためのある種の「必要悪」であるなど揶揄されることもある。

都市伝説の類が多く、特定の時間(黄昏時や朝焼け時の「境界的」な時間)に交差点などの「境界」の場所に赴くと、位相の異なる「裏常世渋谷」(「裏渋」などと略される)ともいえる空間に行くことができる、迷い込んでしまうとの噂がある。
あくまで都市伝説の類であり、現象の実態が全て解明されたわけではないが、少なからず行方不明者も出ている。
条件さえ知ることができればある程度自由な出入りが可能とも、一度迷い込めば出ることは難しいとも、様々な噂が流れている。
何かしらの道具(携帯端末であったり「本」であったりアクセサリーであったり)を用いることで「裏常世渋谷」に行くことも可能だとも言われている。
風紀委員会・公安委員会・生活委員会・祭祀局などはこの現象を把握してはいるものの、常世渋谷という「街」への人の流入を止めることはできていない。

この現象は不確かな点が多いため、この現象についての根本的な解決策は現在のところ存在しない。
元より、そういった現象が少なからず存在するのが常世島である。
「裏常世渋谷」への迷い込みは「街に呑まれる」などと表現されることが多い。
混乱や秩序壊乱を避けるため、「街に呑まれる」現象については一般に公開されてはいないが、一部の学生やSNS上では都市伝説としてこの情報が広まっている。
「街」という名の「怪異」とも表現される。

林立する建物群をジャングルの木々に例え、歓楽街の森などと呼ばれることもある。
「街に呑まれ」れば戻ることができないという警句は、「裏常世渋谷」にもそういった深い森のような側面があることを示しているという。
または「混沌」が極端に戯画された街とも呼ばれる。

上述した都市伝説を含め、「都市型」の亡霊・幽霊・怪異などの噂が多く、現実にそういった存在と出会ってしまう例も報告されている。
霊的な存在が原因での霊障事件も珍しくない。
そういった存在や事件が多く語られるのはこの街が「境界」上に存在しているからだとまことしやかに語る者もいる。

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Time:12:53:34 更新


ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」からレイニーさんが去りました。 (10/25-23:11:24)
レイニー > 一瞬の閃光の後に雷の落ちる音が聞こえて、
建物の軒下まで退避した人の中から小さく悲鳴が上がる。
数刻と経っていないというのに人垣ができ、ビルの入り口も見えなくなっていた。

刻一刻、とは言うが人の姿も直ぐに移ろいで。
急な雨に散らされた人の群れはいずこかに吸い込まれ、
伸ばされたオーニングの下から這い出てくる人の手には一様に無色透明のビニールの傘。
今日はさぞかしよく売れて潤った奴もいた事だろう。

「って言ってももう――」

相変わらずの稲光。
視界を焼く真白の閃光の後に僅かな晴れ間。

「女心となんとやら……って言うらしいが、読めねぇよなぁ」

言うや否や、黒雲ははけて行き、嘘のように雨が引いていく。
時間にして数十分、暴れ飽きたのか雨雲は勢いに任せて通過したらしい。
視界を降ろせば傘を片手に空を見上げて呆ける人々。

「ははっ、イイね。良い表情だ」

雲が完全に流れ、ストリートを打つ雨音も収まりを見せれば、
ケラケラと笑う声を最後に、男の姿も霧のように消え失せる。

広いベンチには誰の姿も在らず。
初めから其処には何もいなかったかのように、雨男は濡れたベンチに僅かな温度も残さない。
(10/25-23:08:33)
レイニー > 濡れて肌に張り付く髪をかき上げて、ファッションビル前のベンチに腰掛ける。
食べ歩きに待ち合わせ、常日頃は人の気配の絶えないのであろうその場所も、
こうも雨に降られては広いそのスペースもがらんどうそのもの。

だからこそ、人の姿がよく見える。
傘を取り出す用意の良い者、カバンやアウターを頭上に掲げて細やかな抵抗をする者、
迷惑千万といった顔で建物の軒下へ駆け込む者。
三者三様の対応の端に、諦めたようにその身が濡れる事を甘んじて受け止める少年少女の一団を見つけてはケラケラと。

「イイね、青春だ」

いや、知らんが。
ただ、どうしたものかと顔を見合わせたその人々がお手上げといった具合に雨に打たれる姿は、とても良かった。
衣服が濡れ、荷物も濡れて。
その上で濡れ鼠のお互いの姿を指差して笑い合う。
笑うしかない、というだけなのかもしれないが。

そんな姿のなんと穏やかな事か。
(10/25-22:32:24)
レイニー > 『続いては午後のお天気です。
暖かい日の続いた昨日までとは打って変わって、今週は各地で冷え込む日が続く予報です。
島内北部にかけては晴れ模様が多く見られますが、海洋上の低気圧の影響によりところにより――』

「――雨だ」

ポツリ、と。
見上げた壁面パネルの中でアナウンサーがうたうよりも早く、頬に触れた雫に言葉が口をつく。
ノックするように緩く肩と背を打ち始めた雨粒の感覚。
はじめは糸のように天から降りてきたそれは数瞬の間に急激に雨脚を増していく。
数日続いた秋晴れの澄空。
暖かな日差しを連れていたソレを追いやるように、稲光を内側に飼った黒雲は空を流れていく。

「いつぶりだっけね、歳を食うと忘れっぽくてよくねぇ」

クツクツと喉奥で笑ってひとりごちてこそいるが、当然自分も濡れ鼠。
平然と濡れながら愉快そうにいるせいで奇異の眼で見られる事もあるが、
皆、自分の事で手一杯なのだろう。
雨風の中で興味に任せて流れて行ける程の自由を持つ人が如何ほどいるというのか。
(10/25-21:30:20)
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」にレイニーさんが現れました。 (10/25-21:28:31)
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」からノーフェイスさんが去りました。 (12/24-05:35:30)
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から言吹 未生さんが去りました。 (12/24-05:35:07)
言吹 未生 > 狂犬はただ一つの戒めのために、じっと耐えている。
いつか復讐(!)を遂げる機が訪れるまでは。

着替えの最中。
野暮ったく地味な“白”しか纏っていない際に差し挟まれた、好きな色。

「……服の色じゃないんだ」

いや、“それ”も一応は服に入る、のか?
白皙の赤みをなおもいや増しながらつぶやく。

気の遠くなるような体感時間の末、着替え終えた装いを姿見に映す。
誰だお前は、と一瞬こぼしかけた。
身絡みひとつで、こうも変わるものなのだなあ、と他人事のように感心して。

「あっ…」

さわ、と髪を後ろから優しく撫でつける手。
あえかな感触に漏れた声は幽かで、きっと外には聞こえていないだろうけど。
じいっと、視線のシュガーコーティングに晒されて、居心地悪そうにもじもじと身じろぎする。

「満足は――……してないみたい、だね?」

ごちそうさま、なんて言葉の後に続いた単語。デザート。
汲み取ったその真意に、はあと嘆息して。
瞑り眼が開いて、覗き込む金色と再び相見えれば、

「そうだなあ――君は、どんな味付けがお好み?」

うっそりとした笑みを返してみせる。
それは間違いなく甘くなろうが――それに留まらぬ、その先の符牒を求めて。

――頃は降誕祭の一日前。
聖人の行跡を言祝ぐに先駆けて、ろくでなしがろくでもない囁きを落とした夕べ。
(12/24-05:25:17)
ノーフェイス >  
これはちょっとした、先日の仕返しでもある。
なんか随分好き勝手されてしまった気がするし――今日ものっけからいいのをもらったし。
彼女が"社会秩序のため"のルールを遵守することは、ようく知っているので。

言葉は挟まない。ただ上機嫌にそれを見守る。
いえ、服役しているので、おいそれと離れないだけですけど。

また今度仕返しされる気がするけど、そんなの現在の快楽とは引き換えにできない考えだ。
熱っぽい視線――だとしても、そう、流石に、これ以上のことは社会通念上ダメなので。
自分はそんなに気にしないけど、ノーを突きつけられて肉体的な損傷を被る可能性があるので、控えておく。

「――"黒"か"紺"だよね?なーんて」

見守りながら、買い物のラインナップが一つ増えた。もちろん、あえて聞かせている。

「うん」

そして。
そっと彼女の背後に立つと、後ろから髪型に手をふれる。
少しだけ整えるようにして、落ち着けて。
あらためて"挑戦"の結果を、更衣室の姿見に映した。背後に控える様は美容師の真似事のように。

「ごちそうさま………、……未生」

無言でしばらく確かめた。
じーっと、じーっとみつめた。
黄金の双眸は、融けた砂糖のよう。
顔をさげて、耳元に唇を近づけた。

「"ケーキ"……」

更衣室の外に溢れることを厭うような、くすぐるような声。

「"やっぱり、うちで作ろっか?"」

お店で食べるんじゃなくて。
彼女のアドヴァイスを経て、囁いたのはそんな"遠回り"な言葉。
賞賛と、睦言と、諸々籠もって、鏡像に映っているというのに、あえて顔を覗き込んでみせた。
言葉尻を拾えば単なる稚気。食材の買い物のお誘い。献立のセレクト――
いくらでも、"付け入る隙"はあるだろうが――プレゼントのおねだりも、そっとしのばせてある。
(12/24-04:58:13)
言吹 未生 > 「…………むう」

“挑戦”。挑め。
かつてと同じ言葉に、ちろちろと炙られ――ている事さえ気づかない。
水面下の策動さえ、未認識のまま。
…まあ、収穫もあった。
ただの擬態のための伊達眼鏡だったが、市民権(!)を与えてやるべきかも知れない。

お店の中で騒いではいけません。
そんな当たり前の警句に、縛られたように従順となる。
脱いだコートをハンガーに掛け、次いでセーラー服を脱ぎに掛かる。
しゅる、ぱさ。
衣擦れの音が、即席の半密室に否応なく響く。

「――…!」

それに掻き立てられる妄念を振り払うようにかぶりを振る。

――どうしよう。ただ脱ぐより恥ずかしいんだけど?

それでも視線や何やに耐えて、
セーターとスカートにいそいそと体を通しながら、
壁に身を預けて特等席で観戦する相手へと、恨みがましい目を向けた。

「……強いし、効率もいい。
 冗長であればあるほど、事細かに干渉出来るだろうけど――
 それは翻って付け込む隙やほころびも出やすくなるからね」

振り返された言葉に律儀に応えてやる辺り、何だかんだで誠実なのだ――。
惚れた弱み、と言うのもあるんだろうが。
(12/24-04:44:53)
ノーフェイス >  
「それにキミはいじめてくれって言うと手を引っ込めるタイプ」

それは実体験で知っている。妄想遊びはひとまずそこまで。
ちょっと非ぬことでも考えさせてやろうかと思ったが、想定以上に頑な。

「でも、逆はたしかに――ボクも浮かばない」

もし彼女が、この"枝"にいたらどうなっていたか。
ifの遊びは彼我の関係までに想像は至らず、ゆえに"現在"だけが肯定される。
少しだけその思考を咀嚼するように顔を伏せて――時間差で薄っすらと微笑が浮かぶ。
現状の肯定に。

「…………」

礼を述べかけた唇を、ふと閉ざして。
彼女のぎこちない問いかけに対しての、慈愛に満ちた表情でその"思わず"をごまかす。

「あえてそうするのもないわけじゃないケド。
 ……"挑戦"してみようよ、未生」

煽るのもちゃっかり忘れない。よりシンプルな言葉のほうが強い、らしいので。
そうして堕落に誘うのだ。戦いは常に水面下で起こっている。

「いやなんか……フレームレスなのもあるけど印象変わるなぁ、って。
 ちょっと大人っぽくなるよね、ドキっとした。
 いいの、ボクが嬉しいのー。 はやくしてー。お店のなかですよー」

てちてち、と掌をクラップして急かし倒す。
そこまで混雑しているわけではないが――騒ぐ場所でもないのは確か。
壁に背を預けて、上機嫌。あまり見られるショウでもないし。

「……"シンプルな言葉のほうが強い"、だっけ」

カーテンを閉めると。
だいぶ静かだ。店内にささやかに流れていたBGMも少しだけ遠くなる。
そんな中(明らかにおかしい状況を作りながら)、ふと確認するように彼女の言葉を再演する。
(12/24-04:18:44)
言吹 未生 > 「ん、確かに皇国公用語も、この国の言葉も随分似通っているね。
 ……存外、根源のルーツは同じものなのかもね?」

あるいは/それこそ、何某かが“そうならなかった”世界線の如くに。

「言葉繰りの末席を汚す身から言わせてもらえば――
 能く伝えるには、よりシンプルな言葉の方が、強いよ?」

言説と思惟の怒涛で圧する技法とは別の、意志を叩き付ける手管の用い手として一言助言。

「……いじめる気も、衣鉢を継がせる気も、良民たる場合の君には無用のものだね」

なお莞爾として、まぼろしの少女の慕う言葉を両断する。
それはひとえに、このふたりの出会いが――今のこの形でなければならぬと。ならなかったのだと。
そう、暗に言い切るものでもあった。

「え、でも、おんなじ暗い色で揃えれば紛れる……紛れられ、ない?」

人、それを“浮く”と言う。

「待って。眼鏡ってそんなにいかがわしいアイテムなのかい?
 いや、寒いならそもそもジーンズとかズボンを――
 え、待って、やらしいだけで選ぼうとしないで?!
 市井に紛れるって言う表題はどこへ行ったの!?」

わあわあと追いつかぬツッコミで大わらわの最中。
不意に向けられた言葉。細められる瞳。
それにほんの少し面差しを朱くしておれば――ぐいぐいぐいと。

「え゛っ、ちょ、ちょっと。何をさも当然のように一緒に入るの?
 着替えぐらいひとりで出来るってば! ねえって――」

狂騒に一旦の幕を引くように、カーテンがしゃあと引かれる――。
(12/24-04:03:38)
ノーフェイス >  
「てゆーか……難しすぎるよ、この国の言語。
 いくらでも言葉を尽くしてもあふれてくるって、けっこうコワいことだぜ。
 キミのとこも多分同じの使ってて……どっかで枝分かれしてるんだと思うんだけど。
 これで歌う気にはなれないなー、ボクじゃ伝えられない気がする……」

語るようで誤魔化せてしまう、難解極まるこの言語。
流暢に話してはいるが、顔立ちや名前からもわかるように別の言語圏にいた人間だ。
思い悩むように顎に手をあてるものの、ピンとこない。

「ソレこそ甘ーく熱っぽく、いじめてください、みたいなー?」

明らかな韜晦に入った。憧れの一形態。

「あとはー……どうすればあなたのようになれますか、とかね」

もうひとつは同化という形態を。
恋と憧憬、それはこの少女の口からこぼれたもの。
そういう側面を持っているのだ、ということだ。

「……市井に紛れる話をしてましたケド!?
 いや、眼帯ならもーちょっとレザーとかでキメッキメにしても良かったんだけど、
 眼鏡なんてR指定直行のセクシーなアイテムつけてくるからさ、
 シックに落ち着いたほうにいっちゃうな――ンじゃ両方買お。
 脚は見えてるほうが嬉しいけど、長い裾も想像をかきたてるよな。
 寒いなら――ストッキングとかも揃えよっか、黒いのスキ。やらしーから」

とりあえず、似たものを何着か。
鼻歌交じりに入れている途中に、その笑顔に――言葉に。
ふと顔をあげて。

「――――――」

笑った。
眼を開いたまま。
それは、歓びでもあったが、何より。

"ひらめき"のような。

しばし黙ったあと、眼を細めて嬉しそうに。

「……ありがと。やっぱキミはイイね。刺激をくれる。
 清き聖夜に、キミを誘ってよかった――"日本式"に則るのも、アリだな。
 ――ほら、いこ。 おきがえー。 お邪魔しまーす」

ぐいぐい。その調子づいた勢いのまま、彼女を更衣室に連行する――当然のように入室しながら。
(12/24-03:35:55)
言吹 未生 > その黄金瞳がもたらす啓示に、重なる古言がある。
即ち――沈黙は金。

「……言語化する事で、物事は陳腐化しもする、か」

難しいが、腑に落ちるところもある。
あの熱狂の夜。旋律に浮かされて踊っていた者達は“それ”をしたのだろう。

「――っ…」

吐息交じりの囁きが背骨を貫き落ちて行く感覚。
ここが店の中でなければ、呼応するようにはしたない喘ぎを洩らしていたところだ。
けれどもそれは、刹那甦りかけた過日への念いを――今この場に於いては不要なそれをも抱き、深い所へひとまず落着する。

「……それこそ、想像出来ないなあ」

恐れられこそすれ、憧れなどされなかった己に、憧れ縋る彼女。
“そうならなかった”世界線の、交わりようなき虚像。
わずか眼裏に像を結んだそれを、苦い笑みで掻き消した。

闇に紛れるための服選びじゃない。
その言葉に目の鱗が落ちたような瞬きをしつつ、トップスのセーターを受け取った。

「そ、そっか。あ、でも、別に僕は目立ちたい訳じゃない、し……。
 ん、裾は短い方が動きやす……ああ、でもこれからもっと寒くなる、ね。ううん……」

されるがまま、探されるがまま。
そんな状況におたおたしながら、もごもごと定まらぬ返事を寄越す。
何せこう言った暖かみのある買い物など、技官以前以来のことだ。
しかも幾度も夜を添い越した仲のひととなど初めてで。
それでも――

「…君が仮に、模範的な市民であったら、敢えて目に留める事もなかったろうね」

そして戦いも遂情もしなかったろう。
こちらを見詰める黄金瞳。その虹彩の中に移る少女の貌は、確かに笑っていた――。
(12/24-03:15:24)
ノーフェイス >  
「ことばにしないで」

言い淀む彼女に、そっと言い添えた。

「だいじょうぶ――ボクもそうだったから。
 つぎは、もっと……"それ"に身を任せてみ?
 ココロとカラダに、染み渡って、混ざり合ってくんだ。
 からだがうごいたりするなら、それをとめようとしちゃダメ」

言葉にすると、それに引っ張られるから。型に嵌ってしまうのだ。
そうやって聴くんだよ、と――ささやいてみる。
黄金の瞳が爛と輝いた。嬉しそうに。

「熱いキミが好きだよ」

吐息に混ざって吐き出されたものは。
彼女の語る、冷たく、行き止まりに向かうような世界の印象をきけばきくほど、思う。

「その世界にボクがいたら、きっとキミにすがってた。
 ぎらぎら輝く異分子に、どうしようもなく"憧れて"。
 ――さいきんはそういうこと考えさせられてんだ、"音楽に出会わなかったわたし"」

穏やかに微笑んで、決して楽しい気持ちばかりでない郷土の話をねぎらいながら、
そっと胸にしまい込む。

「アウターのダッフルが黒いから、閉じてても覗く感じの白を差せばもっと映えるんじゃん?
 闇に紛れるための服選んでんじゃないんだ、黒を際立たせるには他の色も必要っしょ。
 ネイビーは……どうしよっか、裾って長いのと短いのどっちがイイ?」

と、トップスを押し付け、スカートの棚へ。ネイビーカラーを指で探しながら。

「重くなかったの。 だってぜんぶ簡単に出来たもん。
 いいコにしてれば愛してもらえる、なんて考えてたカワイイ時期がボクにもあったってコト」

短いのと長いの、どっちだ。って、両方見せて彼女に問う。
他の色を選んだっていい。

「ボクが悪いコだからこそ、愛してくれるヒトもいるんだよね」

ねえ、と。黄金の双眸あみつめた。
(12/24-02:39:13)