2026/02/23 のログ
ご案内:「商店街」に佐々木伊織さんが現れました。
ご案内:「商店街」に青霧在さんが現れました。
■佐々木伊織 >
畜産科は農業科と関わりが深い。
友人が初めて人参を卸した。
甘みをあえて抑え、風味を重視した意欲作だと言っていた。
あった。青果店でそれを買ってカバンに入れる。
隣に視線が行く。
隣の店は……精肉店、だった。
カタストロアが人に噛みつく度に僕の口の中にも血の味が広がる。
いや、それは違う。
カタストロアは僕なのだから。
斬られる感触も、胴体に大穴が開く感覚も。
生暖かい血の味も鋭い牙で肉を食む感じもあああああああああああああ。
僕は青い顔で道端で蹲る。
ふと、僕の服の裾から赤い砂が流れているのが見えた。
幻覚だ、いつもの。
僕の中に砂なんて流れているはずがない。
ザラザラと流れ落ちていく砂砂赤い砂こんなのは僕じゃない幻覚だ幻覚だ幻覚だ幻覚だあり得ないあり得ない砂が流れる僕の中の砂が全部全部全部
■青霧在 > 慌ただしく過ぎ去る日々。
そんな表現が似合うだろうか。
ここの所、時間の経過が妙に早い。
かの怪人カタストロアを捕えると決意してから、時間が足りないと思うことが増えた。
元々時間が余るような日々ではなかったが
ここの所の俺は、私生活を疎かにしてまで時間を捻出している。
同僚にそれを見透かされ、半ば強制的に対策本部から追い出された。
今日一日は戻って来るなと。
だから仕方がなく、疎かにしていた部分に今日を充てた。
日用品の入った大きなバッグを隣に浮かせながら商店街を歩く。
「自炊はまだ無理だな」
肉も野菜も、買った所で腐らせてしまうかもしれない。
そんなことを考えながら精肉店の前を通り過ぎようとした時、道端に蹲る学生を見つけた。
足を止め、その学生を眺める。
……これは、放置しない方が良いかもしれない。
そう思い、軽い足音を鳴らしながら学生に歩み寄る。
「すみません、大丈夫ですか?」
学生と人二人ほどの間隔を空け、少し屈みながら声をかけた。
■佐々木伊織 >
声をかけられる。
振り返れば、僕よりも背の高い学生。
学生服の……茶髪をした…
「だ、大丈夫です」
「少し具合が悪くなりまして……」
口元を手で抑えたまま。
ここで吐くわけにはいかない。
考えるな…何も思い起こすんじゃない……
「少し休めば…良くなりますので……」
市販の制吐薬を取り出して、震える手でミネラルウォーターの蓋を開けた。
この人………いや、そんな、嘘だ…
カタストロアが襲いかかった人じゃないか…?
大きな怪我をさせた…ああ、神様………
風紀委員だ、間違いない。
僕がカタストロアだとバレたら僕は……捕まってしまう…!
震える手が勝手にペットボトルの蓋を落とした。
■青霧在 > 此方に振り向いた学生は黒髪の男子。
面識はない。
一見痩せ型だが……体調不良のせいだろうか。
そう思えるほどに、酷い顔色をしている。
「あまり大丈夫そうには見えませんが…」
「救急車かを呼びましょうか?」
不安を与えないよう、なるべくおちついた口調を意識する。
ただ、他人を落ち着かせる為の声かけのやり方については全く詳しくない。
発破をかけることなら多少出来るが、今は逆効果だろう。
……しかしながら、随分と体調が悪いようだ。
即座に薬剤を取り出した辺り、治療中か持病持ちか。
何れにせよ、あまり放置していくのは良くないだろう。
男子学生の落した蓋をそっと拾い上げ、差し出す。
「何かお手伝いしましょうか?」
微笑んで尋ねる。
……あまり上手く笑えている気はしない。
■佐々木伊織 >
救急車だって?
彼は救急車を呼ぶかどうか聞いたのか?
病院で僕を調べたらリザードマンに変身する異能がバレるかも。
いや、頭の中にカタストロアがいるんだ。
病院で四肢を拘束される結末だってあり得る。
「い、いえ! 本当に大丈夫ですから!」
慌てた様子でペットボトルの蓋を渡してもらう僕を。
心の中でリザードマンが低く笑った。
ポケットの中から出てきたのは。
いつか、どこかのタイミングで返そうと思っていた。
あの日、保健委員の蒼空さんと会った時に偶然僕の手に残った。
アラベスク模様のハンカチだった。
「座って休めば落ち着きますので……」
そうだ、あの時と同じように。
蒼空さんはいないけど……ベンチで座って落ち着けば、すぐに歩けるようになる…
そうしたら彼から離れて、離れて……
僕のズボンの中から、僕だけに見える赤い砂が落ちた。
■青霧在 > 蓋を返しながら、男子学生の様子を眺める。
男子学生の様子を見ていると、まだ入学したばかりの頃のことを思い出す。
魔術か何かの影響で頻繁に調子の悪くなるクラスメイトが居た。
彼か彼女かも覚えていないが、
丁度目の前の男子学生と似た感じだった……気がする。
彼?も言っていた、少し休めば落ち着くと。
「であれば、肩を貸しましょうか」
持病にしろ治療中にしろ、一人にはしない方がいいだろう。
万が一ということもあり得る。それに、どうせ急ぎの用も無い。
さらに屈み、身体を預けやすいように肩を差し出した。
■佐々木伊織 >
顔が近づいた。
間違いない。彼は念動力か何かでカタストロアを串刺しにした…!!
その時の感触が生々しく想起され、胃の粘膜が熱を持つ。
「いえ、本当……大丈夫です」
「僕も畜産科の男ですからね、肩を貸してもらわないと歩けないような」
「軟弱な……」
自分が畜産科だと風紀の人に教えてしまった。
青いを通り越して紙のように白い顔で近くのベンチに座る。
楽な姿勢だ。
別に回復体位を取らなければ動けないなんてわけじゃない。
落ち着くんだ、佐々木伊織……
「時々、こうなるんですよ」
「前も保健委員の方に助けてもらったり…はは」
彼は随分と優しい。
こんなに優しい人をカタストロアは。
いや、僕は……
■青霧在 > 「そうでしたか。それは失礼しました」
独力で立ち上がった男子学生の様子を確認し、此方も立ち上がる。
男子学生は畜産課であったらしい。
人間と違って意思の疎通が困難な動物を相手にする課。
内情や実際のカリキュラムについては全くの無知だが、
動物が容易に扱えるものでないことは、身を以て知っている。
確かに人並み以上の身体能力が必要だろう。
……顔色が目に見えて悪化した。
このまま崩れて消え去るのではないかと思えるほど、真っ白な様。
「そうなんですね」
相槌を打ちながら、隣に座る。
少し間を空けて、突然倒れたりすれば支えられるように意識だけはしておく。
……体調が悪化しただけだろうか。
それとも、極度の体調不良で幻覚か幻聴にでも襲われたか。
「もしかして、余計なことをしてしまったでしょうか」
もしくは、自分が関与したことで要らぬストレスを与えたか。
だとすれば、申し訳ないことをした。
無知の身で、余計なことをしていたとすれば、それは良くない。
■佐々木伊織 >
手をひらひらと振って力なく笑う。
「いえ、余計なことなんてそんな…」
そうだ、余計なんかじゃない。
これはチャンスなんだ。
千載一遇の好機。
ここで彼に自分がカタストロアであることを告げるんだ。
自分の中にヤツがいると。
自首することでこれ以上被害者も犠牲者も出すことはなくなる。
もう保身だけの問題じゃない。
僕が自分の身可愛さに自首を躊躇っている間にたくさんの人が傷ついているんだ。
「あの……」
彼はただの学生服。
あの時にカタストロアと戦った風紀委員の方ですよね、と切り出せば。
終わる。終わるんだ。
隣に座った彼の顔を見る。
夏に出る大好きなゲームの新作が脳裏を過った僕は最低最悪の屑野郎だ。
お前が臆病だから大勢の人がカタストロアの暴力に苦しんだんだ、佐々木伊織。
しかし……次の言葉が出てこない。
■青霧在 > 要らぬ気を遣わせているのだろうか。
此方に向けられた笑顔には覇気がない。
僅かに視線を落とし考える。
体調不良の最中、拒絶できないだけかもしれない。
実際は迷惑に思っている可能性だってある。
逡巡。
その間に、男子学生が再度口を開いた。
「どうか、しましたか?」
視線を戻せば、男子学生と目が合った。
やはり、迷惑だと言いたいのだろうか。
そう言うのであれば、すぐにこの場を去ろう。
しかし、続く言葉は紡がれない。
何かを言おうとしていることは分かる。
余程言い辛いのだろう。
「やはり、ご迷惑に……」
存外、俺が余計なことをしなければ既に収まっていた程度のものだったのかもしれない。
少々ネガティブが過ぎるかもしれないが、そういう人はいる。
そんな思いゆえか、腰が無意識のうちに少し浮いた。
■佐々木伊織 >
乾く喉、早鐘を打つ鼓動。
罪を罪のままにしていいわけがない!
「違うんです」
彼の目を見て、オレは。
「いやぁ、薬が効いてきまして…」
「気分が優れない時って吐き気が落ち着くとすっかり良くなりますよねえ」
モヤシ野郎の口を借りて言葉を形にしてやった。
「でもあのまま蹲っていたら往来の邪魔でしたし」
「声をかけていただける、というのは本当にありがたいです」
軽佻浮薄に喋り、上っ面の表情を貼り付けて。
あの夜の風紀委員にまくし立てた。
お楽しみの邪魔をしているんじゃあないぜ、伊織くゥん。
オレとお前は一心同体。
最近は馴染んできたからな、表に出ている人格に干渉するくらい簡単なんだよ。
「それにしても」
空を見れば、雲ひとつない空。
どこまでも続く、青……
「いい天気です」
■青霧在 > 俺はその瞬間、自らを恥じた。
男子学生の目が俺の目を見て、何かを言おうとしている。
拒絶が飛び出すとばかり思い込んでいたその口から、もっと違う言葉が飛び出そうとしている。
そう、直観したからだ。
勝手に罪悪感を感じて、拒絶から逃げようとしていた。
手助けをしようとして、結局は自分のことしか考えず、目の前の彼から目を逸らそうとしたのだ。
何か伝えようというのなら、助けを求めるというのなら。
向き合わなければならない。そう思い、浮いてしまっていた腰を下ろそうと―――
―――なんて、根拠のない確信を得ていたからこそ。
「あ、あぁ……そうか……」
突如流暢に話し始めた男子学生の様子に、拍子抜けた声が漏れた。
同時に、強い警戒が漏れ出た。
マズイ。
そう思い、警戒を即座に引っ込める。
しかし何だ、この強い違和感は。
先程までの彼とは別人のよう。
今にも倒れてしまいそうな雰囲気はどこへやら。
此方が呆気に取られているうちに、まくしたてるようにしゃべり続ける。
先程までのような温和な態度を保ちたい。
しかし、保てない。
気が付けば、再び腰が浮いていた。
「……いい天気、ですね」
視線は空へ向けつつも、魔術を用いて監視を続ける。
二重人格か?珍しくはあるが、無い訳じゃない。
先程までの不調が心因性のものであるのなら、関連しているのかもしれない。
■佐々木伊織 >
「空って何度も表情を変えますよね」
「今は青でも、暮れれば赤へ」
「僕は空が好きなんですよ」
四色型の視覚を持つ爬虫類の眼には空はそんな色に見えちゃいないが。
まぁ、いいだろう。
今は人間の流儀に従ってやるさ、なぁ伊織くん?
「ああ、話しすぎてしまいました」
「男のお喋りってあまり良くみられないんですよね…」
「ほら、牧場主の子息が通う畜産って封建的なところありますから」
実際にはそんな事実はないが。
テキトーなことを並べて煙に巻いてやるか。
「あ、買い物が青果店で人参を買った後、ってくらいの進捗でした」
「それでは僕はこれで失礼します」
覚えているぞ、あの時の風紀委員。
「今日はありがとうございました!」
次に会う時はその顔を引き裂こう。
■青霧在 > これ程お喋りでは無かった筈だ。
やはり別人か、別人格か。
とはいえ、その手の症例…と言ってよいのか。
そんな無知の身で決めつけるのも如何なものか。
……いや、今はどうでもいい。
この強い違和感がぬぐえない以上、警戒を緩めてはならない。
「……そうなんですね」
牧場主の事情なぞ、知らない。
知らない以上、必要以上に疑いたくはない。
しかしながら、胡散臭い。何を企んでいる。
空の話も、脈絡がない。
体調不良が一周回ってハイになっているのか?
思考ばかりが巡り、動けない。
制圧……いや、その選択肢はあり得ない。
不審だ、不審だが……ただそれだけだ。
「…元気になったならよかったです、お大事に」
そうして何も出来ぬうちに、男子学生は去っていく。
買い物途中、場所やあのバッグを鑑みるに本当のことだろう。
「…………」
立ち去る男子学生の背を目線で追いつつ、思考を回す。
「………」
ふと、数日前の記憶が脳裏で再生される。
「…………」
『常在的にあの姿、というわけでもないのでしょう』
『変身系の異能者の可能性があるか』
「…………」
後輩の言葉と、それに応じる俺の声。
「まさか……な」
流石に突飛が過ぎるだろう。
二重人格だとして、何故それがカタストロアに繋がるのか。
論理的ではない。あまりにも飛躍が過ぎる。
そんなわけが、ない。
―――気が付けば、男子学生は既にどこにも見えなくなっていた。
既に答えは出せなくなった。
あの男子学生はカタストロアではない。
そう結論づけ、ベンチから立ち上がる。
まだ買い物の途中だ。俺も早いところ、済ませてしまおう。
―――出した結論が間違っていないことを願いながら、その場を去った。
ご案内:「商店街」から佐々木伊織さんが去りました。
ご案内:「商店街」から青霧在さんが去りました。