2015/06/12 のログ
ヘルベチカ > (何度でも繰り返す。)
(幾度でも繰り返す。)
(再度再度繰り返す。)
(唯只管に繰り返す。)
(繰り返して、繰り返して。)

ヘルベチカ > (ぐぅ、と。喉の奥から声が漏れた。)
ヘルベチカ > (スプーンの動きが、初めて止まった。)
(当然だろう。あぁ、当然だ。)
(果たして何度。この机から立ち上がり、そして再度席についた?)

ヘルベチカ > (限界は訪れていたのだ。疾うの、昔に。)
ヘルベチカ > (口の中に収めたカレーを飲み下せないまま。)
(鼻で、数度深く息をする。)
(諦めろ、ヘルベチカ。)
(視界の端、誰かにそう囁かれた気がした。)

ヘルベチカ > (だから。右手を伸ばした。)
ヘルベチカ > (前へ進めるかどうかはわからない。)
(もしかすれば、一歩も進めていないのかもしれない。)
(けれど、ただ、届けと願って、手を伸ばした。そう。)

ヘルベチカ > (諦めないために。)
ヘルベチカ > (握ったスプーン。)
(冷たいステンレスの感触。)
(つるりと滑らかに、しかし使い古された傷があって。)
(救うという機能だけを突き詰めた。)
(手の中にある。)

ヘルベチカ > (掬い、口に運ぶ。)
(先ほどまで何度も繰り返した作業を、こんなにも不器用に。)
(咀嚼し飲み下す速度も、先程までより遥遅く。)
(荒野を一歩一歩進むように。)

ヘルベチカ > (一口食べた。)
(一口分減った。)
(二口食べた。)
(二口分減った。)
(食べただけ。カレーは減って。)
(食べた以上には。カレーは減らない。)

ヘルベチカ > (人生とは結局のところそういうものだ。)
(右手を上げれば手は上がり、一歩進めば景色は移り、何もしなければ何も起こらない。)
(カレーもそうだった。食べなければ、減らない。)

ヘルベチカ > (ゆっくりと。ゆっくりと、食べて。食べ続けて。そして。)
(からん、と。スプーンが皿の底へと転がった時。)
(すべてが終わった。)

ヘルベチカ > (座っていた席から立ち上がる。)
(先ほどお代わりに立った時とはずいぶんと違う、重い動き。)
(皿を、手にとって。少年は歩き出して。)

ヘルベチカ > (食器の返却場まで進んで。食べ終えた皿を、ベルトコンベアに乗せる。)
(もちろん食器には、米のひと粒も残していない。)
(スプーンを、洗剤かごの中へ放り込み、一言。)

ヘルベチカ > ごちそうさまでした。
ご案内:「食堂」からヘルベチカさんが去りました。
ご案内:「教室」に卯杖 露さんが現れました。
卯杖 露 > 耳に届くのは教師の声と、筆記の音。
あとはたまに、ひそひそ声や呼吸音、内緒話のメモが机上を滑る音。

実技でない普通の授業の風景はとても地味で、
生徒の人数やその持っている力を思えば随分と静かだ。

卯杖 露 > 卯杖露は勤勉な学生である。
少なくとも、今も田畑を耕しているだろう養父を思えば、そう評価されたいと思っている。
それに、露はこの地味な授業風景が決して嫌いではない。

卯杖 露 > それでも、お昼ごはんの後に眠くなってしまったり、集中が途切れてしまったりするのは仕方のない事なのだ。

時折耳だけで授業を聞いて、話の内容が予習の範囲内だと確認する。指されたって答えられる。……多分。
余所見だって視線だけに留めるし、その時間もノートを取り損なわない範囲に抑えるよう努力している。

卯杖 露 > 欠伸をしそうになって、少し俯く。
ノートには少し斜めになった字で、魔術の基礎理論についての板書が纏めてある。

内容は予習したものとほとんど同じであらかた理解できているけれど、
授業前に演習してみても上手く発動させることができなかった。
後でちゃんと纏めなおして、実技に繋げられるようにしなければ。

――そうでないと、注意力散漫になっていたとばれ…疑われてしまう。

卯杖 露 > そう思い直せば、眠気も少しずつ引いていく。
ほら、この"明かり"の魔術なんて、夜道を歩くには便利そうではないか。
養父は太陽に合わせて生活するような人だから、陽が落ちるまでには帰って来いとよく言うけれど、学校生活には色々あるのだ。

……今日は夕ごはんを作る日だから、ちゃんと帰るけれど。

卯杖 露 > 携帯電話のライトでいいじゃないかって?そんなことを考えてはいけない。
折角実用性でモチベーションを高めているところなのだから、そんな思いはよぎってはいけない。
農業区は歩いて帰れる場所ではないのだから、緊急時の連絡用に携帯の電池は大事なのだ。浪費してはいけない。

ぐるぐると、自分を集中させる言い訳を考える。その時点で集中はできていないのだけれど。

卯杖 露 > 再び眠気が勢力を強めはじめたなか、何とか意識が途切れる前に授業は纏めに差し掛かる。
大体は予習通り。今日は眠りもしなかったし、内緒話もしなかった。
その上内容も概ね理解できているのだから、これは勤勉な学生の範疇だろう。

卯杖 露 > よかったよかった、と鞄を引き寄せる。
机上を片付けるためにノートを閉じ、その横に広げてあった教科書も閉じる。

教科書には"たのしいさんすう"と書いてあった。

即座にしまって、見なかったことにした。きっと先生も気付かなかったと信じたい。

ご案内:「教室」から卯杖 露さんが去りました。
ご案内:「教室」にアンジュ・キシモトさんが現れました。
アンジュ・キシモト > (PL:設定ミスにより入室し直します。失礼いたしました。)
ご案内:「教室」からアンジュ・キシモトさんが去りました。
ご案内:「教室」にアンジュ・キシモトさんが現れました。
アンジュ・キシモト > 「ですから、人間はこの『2045年問題』に対して、強い危機感と恐怖を抱いたのですね。この“経済管理AI汚職事件”によって、自分たちの技術が、自分たちの想定以上に進歩しすぎてしまっていたことに、ここで初めて気が付くわけです」

【教室等の一角、大講義室。
マイクで増幅されたアンジュの声が、静まり返った講義室に響いていた。ときたま、ぶうん、とエアコンが息を吹き返すかのように吸気音を立てるそれだけが、静寂に水を差す。
席は、半分ほどしか埋まっていない。出席している生徒も船をこぐ者がちらほら。アンジュは天然か故意か、それに気づく様子はないものの】

アンジュ・キシモト > 「この講義で説明している、私がもといた世界も地理はこの国とまったく同一でしたから、ひょっとしたら過去にはこの世界でも話題になったことがあるのかもしれませんが……ともかく、私のもといた“日本”では、これを機に憲法へ条文が1つ追加されたのですね。簡単に説明すると『ヒトに似せたAIを創ってはいけません、ヒトよりも賢くなる可能性のある人工知能を創ってはいけません』というものでした。これが、『2045年問題』に対する、日本人の回答だったのですね」

【淡々と言葉を続けていくアンジュ。その表情は何の感情も映さず、振り返って黒板に板書をする手も冷徹に淀みない。
またエアコンが、ぶぅん、と鳴った】

ご案内:「教室」に雛元ひよりさんが現れました。
アンジュ・キシモト > 「さて、人工知能、AI、生体工学の台頭が法によって抑制されたことで、この問題は一挙に解決されました。めでたしめでたし、というものです。日本人が自ら育てた技術に喰われることは無く、相変わらず地球の支配者は最強の霊長、人間のままでした。
……そう、日本だけがそう思っていました。自分の国の中だけ縛ればよいと」

【アンジュは書き終えた簡易な世界地図の、日本列島へ向けてとある大陸からすうと矢印を引いた】

「当たり前ですけど、外国に対して日本の憲法は何の拘束力も持ちませんね。当時もっとも人工知能、生体工学に進歩していた日本の技術が欲しい外国は、掃いて捨てるほど存在しました。技術の流失を防ぐことは不可能でした。それこそ、鎖国でもしない限りはね」

雛元ひより > 「なかなか興味深いの……。」

アンジュの淡々とした講義を聞きつつ、ひよりは黒板の文字をノートに書き写していく。
時間の歩みを知る機会があればこうやって出来る限り参加している。
別に誰かに強要されているとか必要だからとかではなくただ単純に興味があるからだ。

アンジュ・キシモト > 「結局、技術は外国で進歩を続け、日本は外国からの干渉によって着実に、ヒトを越えてしまった人工知能運用のテストベッドへと、その姿を変えていくのです……2045年の、到来でした」

【チャイムが鳴る。息を吹き返したように騒がしくなる講義室。三々五々出ていく生徒たち】

「来週は2045年からですね。復習、忘れずにね」
【生徒たちの背中へと呼びかけるが、聴こえているかどうかは怪しい。アンジュはため息を吐き、教卓に戻って資料を片付け始める。
講義室に残っているのは、片付けにもたつく生徒他、数人と言ったところだった】

雛元ひより > 「あ、あうう……ノートの上で寝たらめっ、なのー!」

ひよりももれなく片付けにもたつく生徒の一員であった。
と言うのも自分の異能で創り出した『猫』がチャイムが鳴ると同時に構えと言わんばかりにノートの上で丸まったからである。
おりこうさんなのは誇らしい限りだがそれは卑怯なの、とひよりは思った。

アンジュ・キシモト > 「あら……?」

【ふと顔を上げると、席の一角で猫と格闘する少女。栗色の髪に大きなリボンが愛らしい】
「(ここ、生き物同伴大丈夫だったかしら……)」
【思いつつ、少女に近づいて行った。
こっ、こっ、とエンジニアブーツが重いような、軽いような音を立てる。長机を挟んで、話しかけた】
「言うこと、聞いてくれそうですか?」
【猫が、という意味で訊く】

雛元ひより > 「あっ、せんせー! それが全然言う事聞いてくれないの……。」

元凶はノートの上で丸まり、大きくゆっくりと尻尾を振っていた。
これは機嫌が良く、リラックスしている状態を示している。
ひよりはそんな猫をしょうがないなーといった表情で頭を人差し指でくすぐるように撫でている。

アンジュ・キシモト > 「あらあら」
【少女に撫でられ、心地よさげにしている猫を見ていると、なんとも微笑ましい気持ちになった。
これぞ猫と言ったような奔放な振る舞いに、口癖と笑みがこぼれてしまう。
出来る事なら自由にさせてあげたいとアンジュは個人的に考えてしまうが、さすがにそこは複数の生徒が受ける講義。苦情が出てからでは、この子に余計嫌な思いをさせるだろうと心を鬼にする】
「けれどね、特別な理由が無い限りは、講義に動物を同伴させるのは遠慮してほしいんです。私とあなたで二人きりならいいけれど、他の生徒さんもいるし……聞き入れて、もらえますか?」

雛元ひより > 「むう……せんせーが言うなら仕方ないの。」

猫をじっと見つめ何やら集中しているそぶりを見せるひより。
その直後、自由奔放に振舞っていた猫はいきなり時が止まってしまったみたいに静止した。

「ごめんなさいなの、命令は聞くけど言う事は中々聞かなくて……。」

そしてノートを3wayバッグにしまい人形と化した猫を抱いてアンジュを見つめるとぺこりと頭を下げて謝った。

アンジュ・キシモト > 「……」
【硬直した。猫が。それを見たアンジュはショックによって。
強い刺激によって混乱を表現する脳の片隅で、通常生活用に最低限確保されたシステマティックな分析リソースが目の前の現象に理由づけを開始する。
異能、魔法。その二つの変数だけですべての事象に説明がつくこの世界で、その作業は困難を極めた。“なんでもあり”は、かくも怖ろしい】

「あ……と。その猫さんは、あなたの……?」
【異能、とか魔法、とは言わなかった。分からないからだ。疑問符だけを浮かべて、問いかけることにした】

雛元ひより > 「? そうなの、ひよりが創ったんだよ!」

その質問に首を傾げて疑問符を頭に浮かばせつつ良く出来てるでしょー?と猫をアンジュへ差し出した。
先程まで動いていた点を除けば綿100%のただの猫の人形である。

アンジュ・キシモト > 「……なんて、こと」
【猫を受け取った。なんとなく慎重な手つきになってしまうが、間違えようもなくただの人形だった。そこに命はないことを確かめて、“創った”と言われれば少女と人形を交互に見つめる】
「造り上げた無機物に、命を与えることができるの……?」

【少女に猫の人形を返しながら、慎重に訊いた】

雛元ひより > 「この学園に来る前に居たところの先生はごーれむって呼んでたの。」

そう言って懐から板チョコを取り出し先程と同様に集中すると、板チョコが光に包まれる。
光が収まるとそこには猫の形をしたチョコレートがあった。
ただしそのチョコレートは猫のそれみたく顔を洗っているのだ。

アンジュ・キシモト > 【ゴーレム。
事象に明確な名称が与えられれば、アンジュは納得したように頷いた。脳の記憶回路にかけた検索に、そのワードがひっかかったのだ。主人の意のままに動く人形。仮初の生を与えられた、生きる非生物。アンジュの表情がどことなく安堵の色を見せたのに、あなたは気が付くかもしれない。気が付かないかも、しれない】

「すごいのね、こっちに来てから魔導の勉強をする中で、ゴーレムについても一通り学んだけど……見た感じ、核も無しにここまで自律させられるなんて。先生、ちょっと感動してしまいました」

雛元ひより > 「えへ~♪」

嬉しそうに目を細めるひより。どうやらアンジュの表情には気付いていないようだ。
再び集中して停止させると『プレゼントなの!』と招き猫のポーズを取った猫のチョコレートをアンジュに渡した。

アンジュ・キシモト > 「あ、あら、いいの……?」
【綺麗に静止した猫のチョコレートを受け取り、微笑んだ】
「ありがとう。ふふ、ちょっと食べるのがもったいないくらいですね。えーと……ひより、ちゃん?」
【自らの名前をそう呼んでいたかなと思いだし、あなたの名前を呼んだ】

「とってもいいものを見せてもらっちゃったわ。お礼……になるかどうか分からないけれど、今度私が開いてる喫茶店で飲み物をごちそうしましょう。暇なときにいらっしゃいね。場所は、学生街の商店街から路地に入れば、あなたなら迷わずたどり着けるようにしておきますから」

雛元ひより > 「やったー! 絶対行くの!」

目をキラキラと輝かせるひより。
そして鞄を背負い『せんせー、さよなら!』と元気に挨拶をして教室から出て行ったのであった。

ご案内:「教室」から雛元ひよりさんが去りました。
アンジュ・キシモト > 【ええ、気をつけて帰ってね。とその背に呼びかけて、そしてアンジュは独りになる。いつの間にか、講義室にはもう誰もいない】

「……少々動揺しすぎて、疲れてしまいましたね」
【胸元へと手を当てる。心臓の鼓動はない。アンジュは自嘲的に微笑むと、教卓へ戻って自らの荷物を取った】

アンジュ・キシモト > 【フラッシュバックのように、元いた世界のことが思い出される。かつてアンジュの主だった男が言った言葉を、反芻した】

「岸本管理官……『不気味の谷のこちら側』には、まだ私以外、誰もいないみたいです」

【笑みは痛々しいものになって、それも消えるとアンジュは講義室から出ていく。講義予定の更新の為に、職員室へと歩いて行った。
こっ、こっ、こっ、
とエンジニアブーツが一定過ぎる拍を刻んで、消えて行った】

ご案内:「教室」からアンジュ・キシモトさんが去りました。
ご案内:「保健室」に蓋盛 椎月さんが現れました。
蓋盛 椎月 > (雨が降ってきた。)
(ベランダの素焼きの鉢植えをひさしの下まで動かしておく。
 そうしてから窓を占める。
 今日は蒸し暑い……)

蓋盛 椎月 > (雨足が強くなってくる。
 ぼんやりと外を眺めながら煙草に火を付ける。)
(二つほど大事件が片付いたような気がするが、
 相変わらず巷は騒がしい。)
(コゼットが襲われたという魔物。
 俄に活動を始めた怪異対策室三課。
 さらには旧ロストサインメンバーが動き始めているという話は
 事情通でない蓋盛の耳にすら入ってくる。
 というかそのうち一人がなんか相談に来た。)

蓋盛 椎月 > (常世学園を指して混沌のるつぼと呼ぶ者もいる。
 それは否定出来ないし、自身もそう考える。
 異能者、魔術師、世界中どころか異世界からも人材がかき集められたこの場所は
 あらゆる存在のサラダボウルだ。)
(では特別地獄であるとか鉄火場であるか……というと、
 別段そうは思わない。)

蓋盛 椎月 > (地獄と呼ばれる場所はどんなところになのか?
 “ここは地獄です”なんて看板に書かれたところに行ったことはないからわからない。
 けれどここよりひどい場所なら山ほど見てきた。
 様々なことが忘却の向こう側に追いやられてはいるが、
 それは未だに覚えているし識っている。)

(相互理解は果たされず、それどころか言葉の一つのやりとりも行われないまま
 互いが互いを憎みながらぱらぱらと死んでいく
 異能と怪異のぶつかり合い。
 この数十年の間にさまざまな都市や集落、生存圏が
 消えては生まれ生まれては消えていった。)

蓋盛 椎月 > (十年ばかりそういったところばかりを渡り歩いて
 “医者ごっこ”を続けてみた感想としては――
 “保健室の先生ごっこ”ぐらいが身の丈にあっているかな、といったもの。)

(棚や冷蔵庫を漁る。
 相変わらず飲食物に関しては不都合のしない部屋だ。
 今日の飲み物は何にしようか……)

蓋盛 椎月 > (インスタントの箱入りカフェオレから一つ取り出す。
 やっぱりこれがいい。
 冷たい飲み物はついつい飲み過ぎてお腹を壊すし
 珈琲や紅茶だと砂糖やミルクの有無をいちいち考えなければいけないから
 カフェオレというのはものぐさにはちょうどいいのだ。
 いつものように湯を沸かしてカフェオレの粉を溶かす……)

蓋盛 椎月 > (スプーンでカップの中身をかき混ぜて、
 口にする。変わりのない味だ。
 不味くもないがさして美味しくもない、ほとんど無害な味……。)

「いい場所だな~、ここ」

(口に出してみる。外世界が硝煙の霧なら
 ここはせいぜい土砂降りの雨といったところだ。
 荒事と犠牲はあれど憎しみと悲しみの総量はひどく少ない……
 ひどく安らかな場所とすら言っていい……。)

蓋盛 椎月 > (ここで限りなく永遠に“保健室の先生ごっこ”を続けること……
 それが今の自分の望みだ。)
(まるで保健室を私物化するように、
 常世学園という楽園でぬくぬくとひなたぼっこしている……
 卑怯だとは言わせない。弱者なりの処世術なのだから。)

ご案内:「保健室」に山吹 冠木さんが現れました。
山吹 冠木 > 「保健室な……ここって余り来ないんだが」

保険の先生が居ればいいけど……と呟きながら、
入り口の扉をコンコンとノックする。

蓋盛 椎月 > 「おや……今日はもう閑古鳥かなと思ったけど。」

(ノックの音に振り向く。空になったカップを置く。
 煙草はデスクの灰皿に。)

「入ってますよーどうぞどうぞー。」
(気楽な調子で、扉の向こうに声をかける。)

山吹 冠木 > 「っと、失礼しまーす……」

僅かに緊張した調子で返事をすると、保健室の扉を静かに開ける。

「……お休みでした?」

蓋盛 椎月 > (灰皿の吸いさしの煙草をグリグリと押し付けて火を消す。
 だら、と背もたれに体重を預ける。)

「お休みに見えた? まああたしはほら休むことが仕事みたいなものだから
 休んでいるとも言えるし仕事しているとも言えるね……
 キミはどういうご用件かな? 具合悪くした?」

(へらへら笑って、さして内容のないセリフを吐く。
 リラックスしなさい、とばかりにひらひらと手を振ってみせる。)

山吹 冠木 > 「……そういうものなんですか?」
僅かに考えるようにしていたが……
本人がそういうのなら、そうなのだろう。

「あ、はい。ちょっと手を……」

押し潰された煙草の灰皿に僅かに眉をしかめつつ、
室内に入っていく

蓋盛 椎月 > (表情の僅かな変化に気づいて)
「おや、煙草は嫌いだったかな? 悪いね中毒患者なんだ。」
(不良養護教諭はさして悪びれる様子もなくそう言って、
 棚から救急箱を手に取る)

「手? 切りでもした? どれどれ、見せてー」
(近づき遠慮無く手を取って、その状態を確認しようとする。)

山吹 冠木 > 「いえ、嫌いではないんですけど……香りが強いのに慣れてなくて。
 って、保健室なのに煙草いいんですか?」

その言葉に首を捻りつつ、両手を差し出す。
見れば……指先は所々擦り剥け、泥の様な汚れがこびり付いているだろう

蓋盛 椎月 > フ。あんまり良くはないけど、あたしは保健室の主……
つまりはあたしがここのルール……だからいいのさ。(※よくない)

擦り傷か。とりあえず泥を取り除かないとねー。
森林保全活動でもしてた?
(装いを見てそう言うと、シンクまで連れて行って
 手を水で洗い流させる……)

山吹 冠木 > 「…………」
それはつまり良くないことなのではないだろうか。
そう思ったが、それを静かに腹に留めておく程度の分別はあった。
他に気にする相手が居るでも無し、問題がないならそれでいいのだろう。

「ちょっと穴掘りを……届け物と小遣い稼ギッ!?」
傷口に触れる水の感覚に声が僅かに跳ねる。
不十分な消毒しかしてなかった所為か、かなり染みる

蓋盛 椎月 > 「穴掘り? 穴掘りってなんか面白いな……(おかしそうに微笑んで)
 何か探してたの? それとも埋めたの?」
(ジャ――――)
「はいはーい、男の子でしょ、がまんがまん。」
(慣れっこなのか、痛みに身動ぎする様子にもさして動じず洗浄を続ける。
 十分に洗ったら、軽く拭いた後救急箱から取り出した絆創膏を傷に巻く)
「これで大丈夫……かなっと。」

山吹 冠木 > 「……埋めてた物を掘り返してました。
 ちょっと土の中に置いとく必要がある物なので」

そんな無茶な、と思いつつ必死で痛みと、
悶えそうになる動きを堪える。
痛みに顔をしかめつつも、自分の手に施されていく適切な治療に、
感嘆した様な視線を向けていた。

「つつ……ありがとうございます」

蓋盛 椎月 > 「土の中に置いておく必要……か。
 なんだかミステリアスだね。呪われた品物か何かだったりするのかな~?
 でも素手で掘っちゃだめだよ。せめて軍手ぐらいはね。」
(楽しげにそう言う。詰問しているというのではなく、
 勝手な予想を適当に口に出しているだけ。)

「はいお疲れ様~。絆創膏余ってるからあげるわ。
 (大きさの違う絆創膏を雑にザラザラと押し付ける)
 お風呂から出た時にでも張り替えてといてね。
 ……ああそうそう名前教えて。一応来た人は記録しとく決まりだから。」
(ノートと鉛筆を手に取って)

山吹 冠木 > 「そんな面白いものじゃないですよ」
たまたま軍手が無くて……とバツが悪そうに応えつつ、
手をゆっくりと閉じたり開いたりしている。
「害獣用の罠に使うワイヤーを埋めてたんです。
 猪なんかは特に鼻がきくから、一ヶ月は地面に埋めておかないと
 金属の匂いに気づかれるんですよ」

「っとと、ありがとうございます」
(大量の絆創膏を落さない様に苦心しつつ、ぺこりと頭を下げる)
「あ、はい。 山吹 冠木です」

蓋盛 椎月 > 「あーなるほどね~。なんかもったいぶった言い方するから
 妙なものかと思っちゃった。
 あたしは都会っ子だからそういうのに馴染みがなくてさ~。」
(照れくさがるように手を振る。)

「山吹くんか。あたしは養護の蓋盛だよ。
 またなんかあったらよろしくね。
 生傷多そうなことやってるみたいだし。」
(さらさらと名前を記入する。
 人懐っこい、瑕疵のない笑みを浮かべて)

山吹 冠木 > 「すいません、なんて説明したらいいか悩んでしまって。
 俺の住んでた所は田舎だったんで、しょっちゅう被害が出てましたから。
罠は使い捨てだから、定期的に作りなおして仕送りしてるんです。
都会だと、やっぱりそういうことは少ないんですか?」
ばんそうこうを手提げ袋に仕舞いながら、首を傾げる

「蓋盛先生。はい、その時はよろしくお願いします。
普段はそうでもないんですけど、今回は偶々……」
困った様に頭をかきつつ、笑顔に釣られるように小さく笑みを浮かべる。

蓋盛 椎月 > 「猪が出るようなとこでは生活してなかったからなー。
 獣用の罠なんて間近で目にしたことすらないよ。
 人間相手の罠なら仕掛けたことはあったけど」
(首を振って、さらりと物騒なことを口にする)

「あら、そうなの?
 ま、ここで暮らしてりゃ荒事に遭うこともあるだろうし
 あたしはその気になれば死んでなきゃなんでも治せるから……
 その時は頼ってよ。……縁起でもなかったかな? ワハハ」
(なんでも治せる……というのは、彼女の異能
 《イクイリブリウム》のことを指している。)

山吹 冠木 > 「普通は山の獣道とか、畑の近くに仕掛けますから……
被害が無いなら、まず使うことはないですしね……って、
その罠もかなり危ない気がするんですけど」

僅かに表情を引きつらせる。
この島には色々な――主義信条から異能、魔術まで含めれば、
それこそ本当に多様な人間が集まっているが……
出来れば、対人用の罠を仕掛けなければならない様な場面には
遭遇したくはない。
使えなくはないが、使わざるを得ない場面などというのは、
まず楽しい状況ではないだろう。

「……そのレベルでのお世話にならない様、善処します。
 注意一秒怪我一生って言いますしね」
異能については知らないらしく、冗談か、
こちらをリラックスさせる為に言ってくれたのだと解釈したようだ