2015/06/29 のログ
ご案内:「屋上」に霜月 零さんが現れました。
■霜月 零 > 「……」
一人、屋上にやってくる。この時間は流石に誰も来ないはずだ。
……先程、氷架から電話があった。「話があるから屋上で」とのことだ。
なので飛び出してきたのだが……
「早すぎたかね……」
まだ、氷架は来ていないようだ。
■霜月 零 > そもそも、男でしかも鍛えている自分が速足で移動したら速くつくのは自明だ。氷架はそこまで運動能力に優れているようにも見受けられない。
「……ま、待つか」
安全のための格子にもたれかかって、待ち人を待つことにする。
その心は、少しざわついていた。
■霜月 零 > 「しっかしまあ……俺も俺だよなあ」
ボヤく。と言うのも、ついつい手癖でいつも通り刀を持ってきてしまったのだ。色気も何もない。
……いや、何が色気だ。そんな話になるとは限らないじゃないか。何を期待しているんだ。
「……どうなる、かね」
だが、この場で自分が言う事は決めている。後は、相手次第。
■霜月 零 > 正直、自分の気持ちが今でも信じられない。
いや、気持ち自体に最早疑いはない。ただ、そうなってしまった自分の心の動きが信じられなかった。
「どうしちまったんだか、俺……」
溜息を吐く。自分では氷架とは釣り合わないと、今でも思っている。
彼女には華がある。が、自分は地味だ。あの輝きに添えるにはいかにも地味。
それを思えば、手酷く振られてもおかしくない。そんな相手だ。
だが……その輝きよりも、内面が零には大事だった。
■霜月 零 > 「……」
不真面目を装いつつ、その実律儀で義理堅い。
そんな奴なのに、つまらない意地の張り合いが出来る。
そっけないようで、実は強がり。大人なようで子供。
そう言った要素の全てが、好ましく思えた。
「まさか、なあ……」
本当に、何がどう転ぶかはわからないものだ。のんべんだらりと学生生活を終えるまで一人でいるとばかり思っていたのに。
■霜月 零 > 妹に気になる相手が出来たと聞いて、正直驚いた。
その経緯を聞けば「ちょろ過ぎだろう」とさえ思った。
……が、それは知らぬが故の妄言であると思い知らされた。
やられる時は、本当に一瞬。本当に、転げ落ちるようにそうなってしまった。
その転げ落ちた先が、花畑なのか奈落なのか。それはこれからはっきりする事だろう。
■霜月 零 > 「……」
遅い。いや、実際は本当に数分しかたっていないのだが、それでも非常に長く感じる。
釣る気のない釣りで時間の経過を楽しめるはずの自分が、ただただ時間を気に掛け、踊らされている。
「いかんな。一旦落ち着け、俺」
一旦深呼吸。あまり汗をかいた状態で会うのも嫌だから、素振りに逃げることは出来ない。
■霜月 零 > 「……」
そわそわ。気が逸る。駄目だ、深呼吸も大して効果がない。
本当に数分、ここについてから10分程度しかたっていない。だというのに、まるで何時間も待ちぼうけを喰らっているような気分だ。
「……まさか?」
逆に、少し心配になってきた。
■霜月 零 > 彼女は自分から振った待ち合わせをすっぽかすタイプじゃない。何かあったら律儀に電話を入れてくるタイプだと思う。
だとすると想定されるのは、単に来るのに時間がかかっているだけの可能性。
そして……何かしらの問題が発生し、連絡も出来ず到着も出来ない状態である事。
「……!」
その可能性に行き当たり、心が騒めく。
■霜月 零 > 思わず腰の太刀に手をかける。あまりに時間がかかるようなら、こちらから様子を見に行くべきか?
「……落ち着け、俺」
違う。その判断は極めて怪しい。
まず、現在経過時間はせいぜい15分。速足で来てしまったことを考慮すると、氷架ならこれくらい遅れてもおかしくはない。
そして、様子を見に行くにしても、彼女がどのルートを使うのかがわからない。
女子寮まで行ってすれ違いました、では話にならないのだ。
「クソっ……!」
だが、心は乱れに乱れる。剣士として平静を保つ訓練は一応してきたはずなのに、本当に形無しだ。
■霜月 零 > 幾度となく刀に手をかけて走り出そうとし、そのたびにそれを自制する。
この状況で、勝手な不安で動くのは上手くない。そもそもこの付近の治安は決して悪くない。夜とは言え、警邏している風紀もいるだろう。危険性は低い。
ならば、変な筋を残さないように、耐えて待つのが正着だ。その、はずだ。
ご案内:「屋上」に雪城 氷架さんが現れました。
■霜月 零 > 「……クソ、どうする」
心が乱れる。冷静な判断を、焦りが無為にしようとする。
待つことは得意だったはずが、この様だ。
「クソっ……!」
不安に勝てない。そのまま走り出そうとして……
■雪城 氷架 > バンッと大きな音を立てて屋上の扉が開く
銀髪を月の光に輝かせて、きっと待ち望んでいたであろう顔がその場に現れた
走ってきたのか、肩で大きく息をしている
「ごめん!!…ちょっと、遅くなった……」
■霜月 零 > ずっと待っていた顔。見たくて仕方がなかった顔が、飛び出してきた。
「……おせぇよ、馬鹿」
溜息を吐く。呆れや怒りではなく……安堵の溜息。
「とにかくまあ……無事で来てくれて、良かった」
■雪城 氷架 > 「うん、ごめん」
素直に頭を下げる、長いツインテールが揺れた
「…っても10分ちょっとだけど……心配してくれたんだな。やっぱ優しいヤツだな、零」
ふぅ、と息を落ち着けて、くすりと笑う
■霜月 零 > 「当たり前だろ、ったく……」
嫌味や皮肉を言う気にもならない……本当に、心配だったのだ。
「で、だ……話って、なんだ?」
息を整え、単刀直入に聞く。
覚悟は……固めた。
■雪城 氷架 > 「あぁ、うん…」
こほん、と咳払いをして
まっすぐに零の顔を見る
目はそらさない
「寮に帰って色々考えたり、友達に相談してみたりして、確信できたよ。
………私、たぶん………お前のこと好きだ………好きになった…んだと思う」
ものすごく目を逸らしたくなるけど、逸らさない
その代わり、徐々に頬に紅が刺していくのが月明かりの下でもはっきりとわかる
■霜月 零 > 「……!」
ぴく、と体が震える。顔が紅潮し目が逸らしたくなるが、じっと見据えてくる目がそれを許さない。
そのまま、その目を見つめて言う。
「……じゃあ、俺からも一つ、いいか?」
■雪城 氷架 > 「……ど、どうぞっ」
テンパッテ思わず敬語になる氷架
目を逸らさずにいるのが正直辛い
目の前の零の顔も赤くなっているけど、きっと自分も真っ赤だろうし
■霜月 零 > 少し目を閉じて、軽く深呼吸する。
……よし、覚悟をしっかり固めた。
「……俺は、お前を好きになった。だと思う、じゃねぇ……こりゃあ、間違いなく惚れちまった。
俺はまあ、その……地味で、お前に釣り合うかは、分かんねぇ。
だけど……それでも。俺と、付き合って欲しい」
顔を真っ赤にして、だが必死に目は逸らさない。
心臓はバクバク言っているし、もう自分でも言ってることが滅茶苦茶に思えてくる。
それでもしっかりと、強い意志で見据えて告白する。
――霜月零は、雪城氷架に恋をしたのだと。
■雪城 氷架 > 「そ、そう…か………。
はは!なんかヘンだよな!まだ話すようになってそんな経ってないのに。
……でも、多分……」
そういうことなんだろう
本当に、何処で誰に惚れてしまうかなんてわからないことなんだ
「とはいえさ、私達まだお互いのこと知らなさすぎると思うんだ。
私は、零のことを芙蓉の兄貴、ぐらいにしか見てなかったし、
ぶっちゃけ最初カフェで見かけた時は何帯刀してるんだこいつみたいに思ってたし……
だから、その」
ようやくその視線を外して、もじもじした仕草をとって
「し…知り合おうな、ちゃんと……」
まずは、それが必要だ。
好きだという気持ちにはウソはないし
自分を好きだといってくれる気持ちも素直に嬉しかった
うまく言い表せないけど、思いが通じた気がして
■霜月 零 > 「ったく、俺も自分で早すぎるって思うぜ」
軽く、照れ隠しの様に頭を掻く。
「まあ、俺も氷架の事は、炎の巨人事件の被害者で、妹の友達で…くらいな認識だったよ。
多分まあ、ちょっと急きすぎではあるよな」
ははは、とこちらも目を逸らし、そして手を出しだす。
「ちょっと半端かも知れねぇけど……よろしくな、氷架」
きっと、お互いの思いは受け入れられたのだろう。後はそれを確かめる時間だ。
そう思い、握手の手を差し出す。
■雪城 氷架 > 「ん…こちらこそ、零」
差し出された手をきゅっと握る
「……で、ええと……こ、コイビトってことでいいんだ、よな?」
恋人になったら何をするものなんだっけ?
デートに行ったり…デートに行ったり……
意外と思いつかないことに気づいた
「………」
むい、と顔をあげて
そこまで背が高い方ではない零相手でも見上げる小柄さ
じっと、黙ったままその顔を見る
■霜月 零 > 「まあ、そうだ、な……うん」
握り返された手の感触に心満たされながら、見上げてくる顔を見つめる。
「…………なあ」
そして、そのまま声をかける。
■雪城 氷架 > 「な、なんだ?」
ちょっとどぎまぎしてしまう
もう友人という枠組みを超えているのだと思うと、不思議と見る目も変わってしまって
その、地味だと自称する顔が凛々しく見えてしまったとかそういうアレがあったので
思わず声が上擦ってしまった、恥ずかしい
■霜月 零 > 「い、いや、えっとだな……」
切り出しておいてなんだが、とても言うのが恥ずかしい。
だが、いつかはすることだと思うし……こういう時は、男から振るのが筋だろう。
「昨日は、事故だっただろ?だから、あの、だな……」
しっかりと、しないか?と。
赤くなりながら、氷架の綺麗な瞳をじっと見つめる。
■雪城 氷架 > 「………」
そうだ、恋人になったらすること、と言えば代表的なのがそれじゃないか
そんなことも思いつかないくらいにもしかしたら自分は舞い上がっているのかもしれなかった
「…いいよ」
つないでいた手を解いて、その手を零の肩へとかけて、ちょっと背伸びをする
……それでも少しばかり届かないが
■霜月 零 > 「…ああ」
小さく返し、小さな体に合わせてちょっと屈む。
細かい作法なんて知らない。ただ、あるがままに。
手を腰と肩に回し、そっと抱き寄せながら…
「……」
そっと、唇を重ねた。
■雪城 氷架 > 「んっ───」
目を閉じて、それを受け入れる
柔らかいモノと柔らかいモノが触れる感覚
はっきり言ってしまえば、ソレは気持ちの良い行為だった
きゅ、と零の肩を掴む手に少し力が入る
■霜月 零 > 「ん……」
心地よい。あの時も気持ちいいと思ったものだが、それ以上に心地よい。
キスとは、こんなに心が安らぐ行為だったのか。
肩を掴む氷架の手に力が入る。それが愛おしい。
ずっと続けていたい――そんな気持ちにさえなるが、そういうわけにもいかない。
「……」
しばらく唇を重ねて、名残惜しそうにそれを離した。
■雪城 氷架 > 「───っ、は……」
唇が離れた
心臓がバクバク言ってる
異脳を使いすぎた時とは全然違う鼓動の高鳴りだ
…あぁ、これがドキドキする、ってことなんだな
「…な、なんか……気持よかった……」
ふい、と目を背けるその顔は真っ赤でした
■霜月 零 > 「あ、ああ、俺も、だ……」
顔を真っ赤にして、目が泳ぐ。
駄目だ、結局直視できない。可愛過ぎる。
「あ、えっと……こ、この後どうする?」
とはいっても帰宅しかないのだが、その判断すら怪しくなるほどに、心が揺れ、神像はバクバクと言っている。
■雪城 氷架 > 「……夜更かししてもいいけど、女子寮、厳しくってさ」
苦笑する
「今日はお互いの気持ちを確かめられた、ってことでいいんじゃないかな……。
で、今気づいたけど…私めちゃくちゃ甘えに行くタイプかも…それだけは覚悟しといてくれよな」
自分がこの青年に惚れてしまった理由がわかった気がする
トラウマを刺激されて、気分が悪くなった時も、その後も
この霜月零という男子は、妹の芙蓉と同じ、真っ直ぐなんだ
真っ直ぐで真っ直ぐすぎる、きっと直情的で、どこか不器用なところもよく似てる
でもきっと、そういうところを好きになったんだ
あの時吐瀉物で汚れるのも気にせずに、安心させるために自分を強く抱きしめてきた、その時に
多分もう意識して、惚れていたのかもしれない
じーっと零を見つめて、唐突にむぎゅっとその体に抱きつく
体格差があるので中学生が抱きついてるようにも見えてしまうのが何だが……
■霜月 零 > 「はは、まあ送るくらいはするさ」
なんだかんだ夜だ。護衛はいた方がいいだろう。
「まあ、あれだ……どうせなら、どんどん甘えてくれ。それくらいの方が、こう、だな……彼氏甲斐が、ある」
言いながら、恥ずかしそうに頬を染める。いかん、随分と恥ずかしい事を言った気がする。
抱き付かれれば、慌てもせずそれを受け入れて
「……ま、よろしくな」
優しく、その頭を撫でてやった。
■雪城 氷架 > 「…じゃー遠慮しない。
寮までも送ってってもらうし、
暇な時はデートに連れてってもらうし、
夜退屈したら電話で話し相手にもなってもらうし、
こうやって、触れ合ってももらう」
頭を撫でられる
不思議と子供扱いというようには感じず、心地が良い
「…そうだな、零は強いんだ。
ふふ、私にも頼れる彼氏が出来たってコトだな」
本音を言えばこの学園都市で戦闘技術を手にしている者、
それは同時に不安の対象にもなる…でも、大丈夫だろう。
そんな力強さを、自分の頭の上の手から感じたから
■霜月 零 > 「はは、そりゃあいいや。俺も退屈することはないだろうよ」
にか、と笑う。
騒がしいのは好きじゃなかったはずなのに、そんな時間も彼女となら楽しく過ごせる気がした。
「氷架に心配かけない程度には、強くなっとくさ。それに下手には戦わねぇ……氷架の所に、帰ってくる」
それは、ウィリーにも言った言葉。
修羅でもなく。剣士でもなく。
自分は芙蓉の兄であり……氷架の彼氏であることを選ぶ。
そんな、小さいけど大きな誓い。
■雪城 氷架 > 「んっ」
満足気に笑って、抱きついていた零から離れる
「む、それは当たり前だな…。
零は公安でも風紀でもないんだから、無理に自分より強いのと戦う必要はないんだからな」
うんうん、と頷きながら答えて、そこへ「でも」と付け加えて
「芙蓉のこと、私は詳しくは知らないけど。
ブン殴ってやらないといけないやつがいるんだろ。
それは、私は止めない。
大事な妹の為に怒れるお前も、私が好きになった零だと思う」
■霜月 零 > 「……」
虞淵。強大過ぎる敵。そして、芙蓉の仇。
そこまで詳しくは知らないのだろう。だが、彼女としては当然、退いてほしい、戦わないでほしいと言いたいはずだ。そうだと思う。
だというのに、彼女ははっきりと、そいつを殴るのは止めない、と言ってくれた。
妹のために怒る霜月零も、自分の愛した霜月零だと。
「……ありがとな」
いい女だ。心からそう思う。
自分を包み隠さず、その上で相手を尊重できる。これはなかなか出来る事ではない。
「そう言ってくれる氷架だから、俺も惚れたのかもなあ」
笑みが零れる。いざあの虞淵と向き合ってしまった時、やはり霜月零は刀を抜くだろう。
だが……帰る。何としても、この女性の所に帰ってくる。
だって……雪城氷架の隣が、霜月零の居場所なのだから。
■雪城 氷架 > 「見た目以外も、結構いい女だったろ?」
くす、と笑う
すっかりいつもの雪城氷架だ
くるりと踵を返す
「さて、そんじゃもう夜も遅いし、寮まで送ってってくれよ、零。
……あ、あともう一つ」
言いながら振り返って
「ココに来るのが遅れた理由、言ってなかったよな。
寮出たらさ、九郎がいたんだよ、そんで…『お前が好きだ』って言われた。
びっくりだよな~、まさか自分が告白しに行く直前に、誰かに告白されるとか、そうそうないぞこんな経験。
………ちゃんと、友達続けられるといいんだけどな…」
最後は声のトーンを僅かに落として、頭を掻いた
烏丸九郎は大事なバンド仲間で、そして友達だ。それは変わらない
■霜月 零 > 「おう、思ってた以上にいい女だったぜ」
偽りなく笑う。ああ、本当にいい女だ。こんな人が自分の彼女とは、本当に夢のようだ。
だが、氷架の言葉を聞いてドキリ、とする。
烏丸九郎……彼は、きっと自分よりも先に、雪城氷架に恋をしたのだろう。
しかし……氷架は、自分を選んでくれた。それは、彼にとっては『横からいきなり掻っ攫われた』ような気分かもしれない。
そして、それは氷架の心にも影響があるはずだ。義理堅い彼女は、どうしてもそれを意識してしまうだろう。
だから、送っていくために隣に並んで、ぽんと頭に手を置いてやる。
「気にすんな……とは言えねぇけど。せめて、精一杯幸せになろうや。
多分、俺達に出来る事っつーのは、それくらいだ」
烏丸九郎の恋は破れた。だから、せめて精一杯、彼の愛した女性を幸せにする。
それが、霜月零に出来る唯一の事だろう。
そして、それはまた氷架にも同じこと。
彼を振ったのだから……その分幸せになることが、きっと出来る精一杯のはずだ。
■雪城 氷架 > ぽんと頭に置かれた手…そうだ、ちゃんとわかってくれている
烏丸九郎を選ばなかったこと、
烏丸九郎に対してもてなかった感情
罪悪感がないわけがない
「わかってるよ、そのくらい。
少なくとも私が九郎に何かしてやろうなんてそんな気はない、
そんなの、きっと誰も求めてないし、必要ないことだもんな。
…元通り、軽音部の仲間として大事にするだけだよ」
たたっと小走りのようにして屋上の扉へ向かう
「寮母さんや括流に怒られちゃうからな、ほら行こう、零」
そう言って右手を差し向ける
きっとその手を取り合って、夜の異脳学園都市を歩き帰るのだろう
まだお互いの知らない部分を少しずつ、語り合いながら───
ご案内:「屋上」から雪城 氷架さんが去りました。
■霜月 零 > そうだ、自分らはこれから前に進んでいく。
そこで迷ってはいけない。精一杯真っ直ぐに、幸せになっていくのだ。
「おう、行くか」
笑って手を取り、語り合いながら彼女を送り届けた―――
ご案内:「屋上」から霜月 零さんが去りました。
ご案内:「教室」に久藤 嵯督さんが現れました。
■久藤 嵯督 > 放課後の教室。窓からは夕日が差し込んでおり、あたりを炎のような橙色に照らす。
誰もいなくなった教室の中、久藤嵯督は一人眠っていた。
昨晩は夜遅くまで動いていたため、睡眠が不足している。
そのため授業を全て寝て過ごし、放課後になってもまだ眠り続けている。
彼自身が近寄りがたいオーラを醸し出しているために、誰も彼を起こすことは無い。
■久藤 嵯督 > 転入してきたばかりの頃は、物珍しさで話しかけてくる者がいた。
それから彼とは仲良くなれない事を悟ったのか、次第に誰も近寄らなくなっていった。
嵯督はそれでいいと思っているし、普通に学園生活を送る分には何の支障もない。
もうすぐ試験だが、前日に勉強しておけば点数は取れる。
だから、つまらない授業をまともに聞く必要もない。
財団の指示を受けて始まった学園生活であるが、嵯督はここでの日々に何の価値も見出してはいなかった。
■久藤 嵯督 > 虚無の日常を透き通るように通り過ぎれば、やがて来たるは闇に蠢く混沌たち。
求めるものはそこで手に入る。学園では風紀委員の仕事さえこなしておけばいい。
夢の中で夜を待つ少年は、輝ける夕日になど目もくれなかった。
■久藤 嵯督 > 机に突っ伏して、寝息を立て続ける。
授業の大部分を寝て過ごしていたので、もうそろそろ起きてもいい頃合かもしれない。
ご案内:「教室」にギルバートさんが現れました。
■ギルバート > ヤバい忘れ物をした!
明日までのレポートに必要な教材は、一式丸々教室に忘れてきてしまったのである。
公安での激務に意識の大半を費やしていたためか、テスト期間を目前に致命的なミスをしてしまった。
今日の現場は自分の担当ではなかったことが、唯一の救いであった。
隊長に一言詫びを入れ、急いで走ってこの場所、時間。
「はあ……何をしているんだ。オレは。」
大急ぎで走ってきたために、息を落ち着かせながら扉を開ける。
そこにいたのは仏頂面の同級生。
ギルバートも似たようなものではあったが、自分はここまでではないと内心思っていた。
「……寝てるの?」
■久藤 嵯督 > 「……」
足音と気配で何者かが近付いてくるのに気が付いた嵯督は、目を瞑ったまま意識を覚醒させる。
慌てた様子と自分に対する反応を見て、彼が敵性存在ではなく一般生徒であることを理解した。
「……今起きた。何か用か?」
むくりと顔を上げ、淀みきった黒い瞳が少年を捉える。
外を見ればもう陽が沈み始めており、そろそろ仕事の時間に入るところだ。
仕事にはやいところ仕事に向かいたいので、用があるのなら手短に済ませて欲しいところではある。
だが風紀委員としての立場上、生徒の頼みはおいそれと無碍には出来ないのだ。
■ギルバート > 「いや、お前に用はないんだけど……。」
相変わらず生活感のない男だなと思う。
生きた人間と話している感じは、毎度のことながらあんまりない。
それでも風紀委員ということなのだから、人のために何かをするという気概みたいなものがあるのだろう。
普段の行いから公安も注視している人物であったが、ギルバートは情報部署の人間ではないため詳しくは知らない。
「オレはただ、忘れ物しちゃっただけだよ。」
「……それより。まさかこんな時間まで寝ていたのか?」
「いくらなんでも風邪引くよ。最近寒いからさ。」
■久藤 嵯督 > 「忘れ物程度でバタバタしていたのか。そそっかしいヤツだな」
まるで遠慮のない物言い、これが人を遠ざける要因の一つである。
目の前にいる少年が公安委員会護島第一隊所属のギルバートであることを、嵯督は知っていた。
事前に生徒の資料を見て確認したので、一般的な情報は一通り把握しているのだ。
もっとも特別危険視しているわけでもないので、うっかり忘れてしまいそうだ。
「その通りだ。しかしそれは無駄な心配というモノだ。
俺は決して病気にならない。例え俺がそう望んだとしても……な」
"無形"の力で、病に対する抵抗力は極限まで高められている。
お陰でちょっとした風邪をおおげさに演じて病欠を取ることも出来ない。
まったくもって不便な身体だと思う。
「今は涼しい方だが、これからまた暑くなる。
風紀委員として言っておくが、熱中症対策まで忘れるんじゃないぞ」
■ギルバート > 「わかってるよ。それぐらい。」
口を尖らせてジト目で返す。
入学して暫く経つが、それでも久藤のことはよくわからなかった。
人間が親近感を持つためには、共感が必要だ。
そういったものが彼からはまるで感じられず、そのため教室でも孤立しているのだろうと考えた。
まあ、当人が気にしているとも思えなかったのだが。
「そういや……"現代魔術における多様性"、だっけ。」
「アレのレポートってもう提出した?」
資料を鞄に詰め込みながら。
■久藤 嵯督 > ごくありふれた雑談、別に受け答えする分には苦にならない。
本部にいる一部の人間もそれをやりたがっていたが、進んでそうしようとする人間の神経が未だに理解できない。
ただ一つ理解出来るのは、目の前にいる少年がわりかしおせっかいな気性の持ち主であることぐらいだ。
受け答えをしている間は退屈も少しは紛れるので、精々利用してやるとしよう。
「いいや、まだだな。清書がまだ途中なんだ。
残業がなければ明日には提出出来る。で、それを俺に聞く理由は?」
筆記具すら出していないので、鞄に何かを詰める必要がない。
椅子から立ち上がり、鞄を肩にかける。
■ギルバート > 「意味なんてないよ。気になっただけ。」
「オレもなかなか終わらなくてさ。」
「お前マジメにやってるイメージないから、どうなのかなって。」
今日中には終わらせたいところが本心であったが、急な出動があればそれも叶わないだろう。
いつものことではあるが、学生との両立の難しさを毎日噛み締めている。
どうしたもんかなと思案したところで、鞄のベルトを締め終わった。
「期日はまだ先だけど、遅れるなよな。」
「(……オレも人のこと言えないけど。)」
踵を返して大あくび。久藤よりも先に教室を出て行くのであった。
ご案内:「教室」からギルバートさんが去りました。
■久藤 嵯督 > 「俺も留年は御免だからな……期日は守るさ」
もっとも自分は、ほぼ終わっているも同然なのであるが。
魔力のない者が魔術を使う方法さえ知っているのだから、別段何かを調べることもなく仕事の合間に書いただけ。
学園とはこの程度のレベルなのかと、つい嘗めてしまいそうだ。
フックにかけられた鍵を手に取ると、教室を出た後鍵を閉めていくのであった。
ご案内:「教室」にライガさんが現れました。
■ライガ > 左手に持ったタブレットに、何やら書き込んでいる。
前方不注意でたいへん危ないが、器用に人を避けて、扉から入ろうとしt……鍵のかかった扉にぶつかった。
「っだーーっ、なんで閉ってるんだよお」
赤くなった鼻を押さえて涙目だ。
がっちゃがっちゃとしばらく扉を動かそうとしている。うるさい。
■久藤 嵯督 > がちゃがちゃと扉を動かす公安委員会の青年を見かねて、再び教室の前まで戻っていく。
そして青年に向かって。鍵を差し出した。
「俺が閉めた。用があるなら、お前が戸締りをしておけ」
やはり、学園全体のレベルは低いものと見て相違ない。
否、低レベルだからこそ学ぶ必要があるのであろうが……
それなら尚更、自分がここに通う必要などないのではないか。自分はどうせ無能力なのだ。
あの事務員のように、学生以外の立場で風紀委員にだけ所属していればいいというもの。
「歩きタブレットは原則禁止だ。気をつけろ」
■ライガ > 「お、おお。
助かったよ、こっち来る途中灯りともってるように見えたから、閉ってるなんて思ってなくてさ」
鍵を有難く受け取り、ふと、顔を眺める。
「そういや……久藤、嵯督でいいんだよな。『連絡』まわってるし僕のことくらい知ってるだろ。
っと、忠告どうも……教室でも浮いてるって有名だぜ。口出し無用だろうが、少しは溶け込むくらいの努力はしたほうがいいんじゃないの?」
■久藤 嵯督 > 「ライガ・遠来・ゴルバドコール、手芸部所属、公安委員会。
よくご存知のようで……話の早いヤツは嫌いじゃない」
"生徒にしては"よく調べている方だ。
たまにこういう輩もいるので、辛うじて学園を見切らないでいられる。
顔を眺めれば、黒く深い瞳が青年を見返す。視線で眼球を斬られてしまいそうなほどに鋭い目付きをしている。
「かもな。たまに周囲の者の言ってることがわからん時がある。
情報伝達に支障が出なくなる程度には理解を深めてやらなくもない。だがそれ以上は馴れ合うつもりなどない」
■ライガ > 「いやあ、そっちこそ、最近の生徒の動向まで把握してるのか。すごいなー」
黄金色の眼でしばらく見つめ返すが、怖いなぁと肩をすくめて扉に向き直る。
鍵の向きを確かめ、ガチャガチャと回す。
「いや、妙に孤立してると頭おかしいのに狙われやすいから、って思ってたんだけどな。
まあ、早いうちに顔合わせといてよかったよ。
『本部』も底が見えなくて動きにくいかもしれないけど……お互い、せいぜいプロレスごっこでもやろうや」
扉を開けて、教室に入りかける。
「……あ、後で『上』に仲介頼むから、適度に情報交換しない?」
■久藤 嵯督 > 黄金色の眼が視界に入ると、うんうんと数回頷く。
なるほど、“虎の眼”だ。
「そいつはいい。問題児が向こうからやってくるともあれば、こちらから探す手間が省ける。
知っての通り俺は17歳で、『遊びたい盛り』の高校生だ。面倒の処理を手伝ってやらんこともない。
『ヒール』がいれば、なるべく俺に回してくれ」
出るたびに"死にたがる"から風紀委員に入れられたようなものなのだが、本人にはまるで自重する気配がない。
教室に入っていくライガを見送り……はしないだろうが、言葉なら返す。
「応じよう……こちらから知れる情報にも限界を感じていた所だ」
■ライガ > 眼が何か気になったのかな?
妙な色の眼をした連中はいっぱいいるけど、と考えながら後頭部を掻く。
「あ、デコイ役ね……、そういうやり方もありっちゃーありか。
風紀の制服も、いってみりゃ旗印みたいなもんだしなあ、最近は特に。
……ま、考えとくよ、僕でも相性の悪いやつはいるしね」
経験上だけど、なんか死にそうで死ななさそうだな、死神に愛されるってーの?
心の中でつぶやくが、口には出さないでおこう。
「交渉成立だな、風紀と公安、ぎくしゃくしてて情報交換がうまくいってない印象なんだよ、偉い立場の人らはやってるだろうけど」
じゃ、と手を振り、教室の中へ消えた。
ご案内:「教室」からライガさんが去りました。
■久藤 嵯督 > 直感的に不名誉なことを思われているような気がしたが、
あまりにも不明瞭な感覚なのでそっとしておく。
「違いない。特に"アレ"の後の公安を良く思わない連中も、決して少なくは無い。
お互い気を付けるとしよう」
また後日、と手を軽く挙げて去っていった。
ご案内:「教室」から久藤 嵯督さんが去りました。